歩き刻んでいこう
りんが一番ショックだったのは、レンにぃが代表を蹴り非難を浴びた時期だった。
当の本人は、気にはしてなかったが、りんは周りが色々言うのが許せなかった。
「レンにぃの事は、あたしがイチバンよく知っている!」
正義感だけが先走っていた。
「ネットの反応にその都度感化されていたら思う壺ですよ」と壬生に言われたりした。
本当に、レン一直線な子なのだ。
ある日、りんはレンの家に泊まることになった。
「ごめんね、レンにぃ」内心は喜んでいるりん。
明日ショッピングモールに用事があるのだが、りん宅からは少し遠い。
りんも家族で行くのではなく、一人でいく‥と、なれば、モールから近いレンの家がベストだ。
ダメ元で聞いてみたが、あっさりOKをもらった。
「ん?大丈夫だよ!気にしないでおいで」てな感じだ。
内心は物凄く嬉しいのだが、あえて聞く。
「か、彼女とかに怒られない?」
レンは、少し驚いた顔をする。
「彼女?りんは、そんなことまで気を遣ってくれるのか?‥いないから心配するな!りん、ありがと!」
その時のレンの笑顔は、りんの宝箱に保管された。
シャワーを浴びて戻ってきたら、レンにぃが、やたらあたしをみている。
ドキドキが止まらない。
鼓動が聞こえてしまうかと思うくらい。
誤魔化すように、りんが口を開く。
「ど、どうしたの?レンにぃ」
「んー‥」
「りん、髪そんな長かったっけ?」
そんな指摘にも心躍るりん。
(あたしのこと見ていてくれてるんだ‥)
シャワー後なので、顔の赤みも誤魔化せる。
「普段、まとめてるからね!」と髪を触るりん。
何気ない仕草だが、なんとも色っぽい‥。
レンも、一瞬視線をそらした感じだ。
そこを見逃さないりん。
「レンにぃは、女の子は髪長い方と短い方、どっちが好き?」りんの心臓は通常の3倍の動きをしている。
「うーん‥似合ってれば、どっちでもいいけど、そうだなオレの好みだと‥ショートかなー」
「ふーん、そうなんだ‥」りんがレンをロックする。
その視線に、さすがのレンも気付く‥「り、りんはどっちも似合うけど、オレはショートの時のりんが好きかな〜」
(好き⁈)りんの心臓はオーバーヒートした。
それ以来、りんはショートにしたのは言うまでもない‥。
ふと、スマホをいじりながら髪を触っていたら、そんなことを思い出した。
「ちょっと長いかな?平気かな?」とスマホのカメラでみるりん。
その髪は、まだ顎の辺りまでしか伸びていない‥。
りんは、壬生との会話以来、ずいぶん変わった。
レンだけでなく、その周りをみる視野を使えるようになった。
ハルさん、蘭さん、みどりさん、かなえさんからは、特に学ばさせてもらった。
皆、色んな角度からレンにぃをサポートしている。
そして、なにより、みんなレンにぃが好きなんだと‥わかるし、伝わってくる。
(ちかいようで、とおいな‥)
りんの心の片隅に、ヒビが入る‥
そのヒビ割れは、いとこという現実によって広がっていく。
(いけない、いけない!)
踏みとどまるりん。
(あたしなりにできる事をやらないと!)
「あたし、レンにぃのこと好きなの!」
りんは我慢できなかった。
レンに車で送ってもらう時に、それは起きた。
助手席でそう言ったりんの顔は紅く染まる。
「知ってるよ!りんにいつも言われてるし、行動でわかる」
レンの顔が穏やかになる。
「レンにぃ、あたしの好きは‥」
「わかってる」レンの顔が真剣になる。
「ありがとな、りん」
その言葉を聞いて、りんの緊張の糸が切れる。
自分意思とは関係なく涙が溢れる。
レンにぃに断られたと思う自分。
レンにぃに受け入れられたと思う自分。
どちらか、どちらなのか理解する前に体が反射して泣いている。
告白する勇気と力のせいなのかもしれない。
レンはレンで、まだ18の女の子にエネルギーを使わせてしまったことを反省していた。
告白は自由だが、それまでの過程が必ずある。
それに気付かないレンではない。
‥が、動くことはしなかった。
(ダメだなボクは‥)
りんは助手席で俯いている。
まだ、涙は止まらないようだ。
レンの答えしだいでは、さらに加速するだろう。
「りん」
その言葉に、りんの身体はピクリと反応する。
「いとことか、面倒くさいな‥」
りんは頷く。
「でもさ、いとこでよかったと思う」
え?っという顔をしながらレンの方を見るりん。
レンは一瞬りんをみてニコリとする。
「驚くことないだろ?いとこじゃなきゃ、この今もないんだよ?」
りんの周りの時が止まったようにかんじた。
りんは助手席ごと、何もない宇宙空間にでもいるかのようだった。
いとこであることを恨み悩んでいたのに、いとこじゃなければ‥なんて‥
お泊まりやお出かけなど、色々思い出す‥
涙がまた溢れてきた。
(レンにぃ‥あたし、バカだね‥)
こんな単純なことに気付き、幸せを見つけられないなんて‥
そんな自分が情けなく、また涙が溢れてくる。
「りん‥」と同時に頭にポンっとレンの手のひらが乗る。
頭からレンの温もりが伝わってくる。
(あっ、レンにぃの頭ポンポンかな?‥)りんは泣きながらもそう思った。
ポンポン‥
サワサワ‥
「れ、レンにぃ‥」
「りんは何も悪くない、悪いのはボクの方だ‥」
運転していて前を向いてはいるが、レンにぃの真剣さは伝わってきた。
それは、ある意味レンそのものを表しているとも言える。
前を向いて進む‥
「りん、ちょっと寄り道していいかな?お母さん大丈夫かな?」
りんはレンにぃの方をみる。
「だ、大丈夫!もうLINE送った」
「はやいな(爽やかな笑顔で笑うレン)なら、りん、少し付き合ってもららうよ」
「うん」俯いて返事するりん。
不安と期待が入り混じり、りんの心は今にも破裂しそうだった。




