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新しい時

「み、壬生さん!」

「オーナー」

「ええ‥」

喫茶店でモニターをみて、ハル、かなえを含め店内がざわつく。


「2年連続得点王ですか‥すごいことです」

そう、レンは2年目のシーズンも得点王を獲得した。


つまり、シーズンが終わりプレーオフが始まる。


「レンくんのチーム、2連覇しますかね?」と、かなえが壬生に聞く。

「壬生さん!どうなの?」と、ハルも興味津々だ。


「困りましたね、そんなに圧をかけられたら‥」といいながら、ニコニコしているから、困ってるのか喜んでいるのかどっちかわからない。


コーヒーを一口飲む壬生。

見守る2人。


「わかりました。わたしの見解をいいましょう」

それを聞いて、2人は拍手した。


「絶対はないんです」といい話始める壬生。

「ただ、九十九くんと、そのチームに余程のことが起きない限り、連覇は確実でしょうね‥」

それを聞いて拍手しながら盛り上がる2人。


モニターをみる壬生。

(プレイオフが楽しみですね)


そんな壬生をよそに、店内は盛り上がっていた。


ニュースでも、連日連夜取り上げられている。




-数日後-

モニターをみる壬生。

喫茶店のカウンターでコーヒーをマッタリと飲んでいる。

そのカップの隣に見慣れないシューズが置いてあった。


サイドにデザインされた9919というロゴがみてとれる。



1だけゴールドの縁取りで、他の数字より大きく強調されたロゴ。


9の数字はカクカクしたデザインだ。

ベロには99の数字とその下にRENと書かれている。


そう、レンのシグネチャーモデルだ。


「クールですね‥」とそのシューズを見ながらコーヒーを飲む壬生。


店の入り口からカラコンと音が踊る。

「おはようございます!」

「おはよーございます!」

「おはようございます!」

と、3人の元気いい声が店内反響する。


「おはようございます!みなさんお揃いで‥」とニコっとする壬生。


「壬生さん、今日はど‥」壬生に聞こうとしたハルがフリーズする。

「どうしたのハルちゃん」とかなえもハルのみている視線の先をみて、フリーズする。

「2人ともどうしたん‥」と、蘭も2人の側に行ってフリーズした。


「おやおや、気付きましたか?」という壬生はさぞ嬉しそうだ。


フリーズから立ち直るハル。

「み、壬生さん!これ!」

「クールでしょ?」と、両手で持ち上げみせる壬生。


「クールです!」とフリーズが溶けた蘭が応答する。

「か、カッコ良すぎる‥」と、かなえも続く。


うんうんと頷く壬生。

「これ、プレイオフ用なんですよ!九十九くんが真っ先に送ってくれました。ほら、黒バージョンもあります」


そう言われて出された黒いシューズをみて3人はまたフリーズした。




3人は満面の笑みで帰っていった。

それはそうだ、レンモデルのシューズをもらったからだ。

壬生さんだけでなく、みんなにも用意してあった。


帰りに3人それぞれ、レンと繋がっている空を見上げる。


壬生は見送りながら思った。

(九十九くんはどうするのでしょうね)

そんな壬生も店の外に出て、空を見上げていた。



その先には、まだ見える月が淡くたたずんでいた。



プレイオフも連日盛りが上がった。

毎日毎日が楽しみで楽しい。

日本が世界が明るくなったようにも感じられた。


結局、レンのチームは2連覇でMVPと得点王を獲得し、今シーズンの全ての日程を終了した。


つまり、それは、オフシーズン!ということになる。



喫茶店

モニターをみている壬生とかなえ。

ふと、2人の目が合う。


そう、レンが帰ってくる-



レンは日本に戻ったら、真っ先に喫茶店ここに戻ってくる。


「パーティーですね!」というかなえの言葉に満面の笑みで応える壬生。

「忙しくなりますよ」






レンが帰ってきた。

喫茶店ここに帰ってきた。

それぞれの視線がレンに向けられる。

しばらくの間のあと、かなえが口を開く。

「おかえり‥」

「ただいま!」

それをきっかけに、みんなレンに飛びつく。


そんなみんなをみて、壬生はそっと目を閉じた。

まるで記憶に大切にしまうかのように‥。


みどりは、実家経由できたので、少し遅れてきた。

ハルと蘭が、みどりから離れず騒いでいる。

その目には涙がプルプル揺らいでいた。


パーティーは、一気にギアを上げる。


そんな中、レンがみんなに改めて感謝を述べる。


その一言一言には重みがあり、心に来るものがあった。



パーティーもおわり、片付けるもの、まだ話しているもの、食べたり飲んだりしてるものと、みな余韻を楽しんでいる。


レンも、壬生と一緒にカウンターでお茶を飲んでいた。


「壬生さん、まだフワフワしてるんですよね‥」天井のスポットライトを見つめそう言うレン。

「フワフワですか‥それは、いいフワフワですね?」と、いつもと同じ笑顔でレンをみる壬生。


「いいフワフワ‥確かに‥心地いい感じがします‥」と視線はそのままのレン。

「九十九くんは、また一つ上の世界に入りましたね!」と人差し指で上を指す壬生。


「壬生さん、周りがスローに見えることあるじゃないですか‥」

「ありますね!一番多いのは、シュートに行く時ですね」


「スローモーションに見え色々対応できるから、あの瞬間はホントすごい」

「そうですね!同じ時間が経過しているのに、全てがゆっくりみえますね!」とニコニコした壬生の顔がさらに緩む。


少し考え込む壬生。

「なるほど、そう言うことですか!」

「壬生さん⁈」

ひとり納得している壬生を覗き込むレン。


「九十九くんをみてて、気になる事があったんですよ!モヤモヤが解けました!」

「壬生さん!」

「あ、これは失礼‥とうとう九十九くんも‥なるほどです」といいニヤニヤが止まらない壬生。

「みぶさーん!!」とレンがいい詰め寄るも、うまくスルーされる。


(九十九くん‥恋してますね)‥壬生は嬉しそうだ。


「九十九くん。多分ですが、バスケ意外も時の流れが遅くなることありませんか?」

「‥バスケ以外‥?‥そう言われてみればそうですね‥楽しいとか心地よいこととか時間があっという間に過ぎるというよりは、ゆったりしてるというか‥ 」


「九十九くん、目を閉じて最初に浮かんでくるものは何ですか?」

そう壬生に言われて素直に目を閉じてみるレン。



真っ暗闇の中の中心に1人の女性がいる。


「み、壬生さん⁉︎」

「見えましたか?それが答えですよ」と優しく話す壬生。


「わたしは、好きなことなどをやっている時は時間が早く感じるっていい方は好きではないんですよ」

その言葉を聞いて、そっと目を開けるレン。


「ものすごい充実しているから、集中しているからであって、周りの時とのギャップが生じます。同じ1分、10分、1時間でも、まったく違うんですよ。無駄のない時間ときとなってると、わたしは思っています」

それを聞いて考えこむレン。


発想の転換?‥なのかなっと思った。

普通はそうは考えない。

いや、もしかして‥

「壬生さん、車を高速で運転している時に似てません?」

高速など、速いスピードを出してずーっと走行していると、例えば120キロ出てても体感は60キロくらいになる。

それに近い感覚なのだろうか?


「‥充実しているかどうかは疑問が残りますが、例えとしてはわかりやすいかもしれませんね!目的地に向かうという目標もありますし、違うとは言えません!」

「やっぱり、壬生さんは凄いです」そう言ってお茶を飲むレン。


(本当に凄いのは、九十九くんですよ‥)

壬生も同じお茶を一口飲み、優しくレンを見ていた。





壬生さんに言われて気付くなんて‥

レンは、自分が取るに足りない人間だと改めて認識した。


来シーズンはもっと過酷になるだろう。

だからこそ‥なのかも知れない。






喜びも悲しみも、痛みも苦痛も‥幸せも愛情も‥全てわかちあえる‥


決してマイナス要素ではない。

レンの中に咲き出した愛の感情の花々が大きく成長しそうな、そんな感じがする。


レンは、壬生と話したことによって、新しい時を刻むことができるかもしれない。


19歳の女の子が好きな自分、バスケが好きな自分、今の道を選んだ自分‥

なにもかもが、九十九レンなのだ。


しかし、大事なのは、何を選んだ‥かではない。

選んだ後に、その道を信じて進めるかだ。


そんな道に、そんな道を共に進んでくれる人がいる。


それは、幸せなことではないだろうか?


1人じゃなきゃダメだとか、無理だとか、まるで、自分で自分の首を絞め、もがくことをもうしなくていいんだ。


これからは、ずっと君と2人でこの道を進んで行こう。


大丈夫。


ボクがいる。


そして、なにより‥


君がいるから‥








この数ヶ月後、レンは婚約発表をした。





婚約発表をした数日後、レンは妻と2人で公の場にでる。


レンの隣には、この世で一番幸せそうな、天使のような、女神のような、素敵な笑顔をみせる眩い女性がいた。




あなたには、どの女性ひとが見えますか?


ハルですか?

かなえですか?

蘭ですか?

みどりですか?

フローラですか?


それとも‥

リサでしょうか?

百田でしょうか?

全日本の監督でしょうか?






あなたの瞳に映しものが、全てを語ってくれるでしょう。





本当に、レンは幸せ者ですね‥。






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