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スマホが無い  作者: にわかあめ
2/2

OOがない

——自分がない。


 朝目覚めると、いつもはそこにあるはずの自分が無いことに気が付いた。枕元にも、毛布を捲りあげてみても、そこに自分は無かった。


「こういう時はだいたい……」


 自分の得意なことは何か、長所は何か確かめてみる。でも、ない、ない。そこに形のある何かを感じることはできなかった。だんだんと焦燥感と不快感が込み上げてくる。今、特段自分を求められるような用事はない。別に自分が無くたって、今すぐに不便が起きるということはないのだ。でも、すごく気持ちが悪い。自分が無いということが分かっているその状況自体が非常に不快で仕方がない。


「早く自分を見つけて安心したいのに……」


自分の好きなものを確認する。そこにも自分は無い。全巻集めた漫画をパラパラとめくってみる。しかし自分は挟まってはいない。いっそ他の誰かに電話でもかけて、その反応で位置を割り出そうか。いや、それは他人から見た自分に過ぎない。自分がないなら、自分をしっている友人もいない。つまり電話をかけるのは無駄だ。


「なんで見つからないんだよ!」


 今度は作業用のデスクを確認する。以前開けたのは何年前かも分からないような引き出しも一応開けてみる。幼稚園の時に書いたのであろう絵、図工で作った小物入れ、卒業アルバム、参考書。一瞬手が止まる。不快感は悲しみへと変わっていく。引き出しに眠るそれらから目を背け、最後の引き出しをゆっくりしめた。


「もう、一体どこにおいてきたんだ……」


 いつも見ているはずなのに、自分がどんな色で、どれくらいの大きさで、どんな形をしていたか思い出せなくなっていた。ああ、誰か教えてほしい。突然天の声が聞こえて、「ここにありますよ。」とか親切に教えてくれれば苦労しないのに。


「こんなに自分が大切なら、特徴の一つくらい覚えておけよ。」


 焦燥感は自責へと変わる。なにも覚えていないなんて、本当は大切じゃなかったんじゃないか? いや、何を楽しむにも自分が必要なのはわかる。でも、いつの間にかその大切さを忘れてしまった気がした。そりゃあ落ち込んで立ち直れなくなったら嫌だけど、ケアとかしたことは無かったし、自分にあってないのに好かれやすいキャラクター被せたり、疲れが取れてないのに使ったり、自分の気持ちに嘘ついて行動したり、雑に扱うことも多かった。


 自分はいつもそこにある気がして。いや、ないはずなんてないと思ってた。


「ああ、どこにあるんだよ。自分。自分が無い。」



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