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スマホが無い  作者: にわかあめ
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スマホが無い

——スマホがない。


 朝目覚めると、いつもはそこにあるはずのスマホが無いことに気が付いた。枕元にも、毛布を捲りあげてみても、そこにスマホは無かった。


「こういう時はだいたい……」


 ベッドと壁の隙間に手を滑り込ませて、スマホが無いかどうか確かめてみる。でも、ない、ない。そこに形のある何かを感じることはできなかった。だんだんと焦燥感と不快感が込み上げてくる。今、特段スマホを使うような用事はない。別にスマホが無くたって、今すぐに不便が起きるということはないのだ。でも、すごく気持ちが悪い。スマホが無いということがわかっているその状況自体が非常に不快で仕方がない。


「早くスマホを見つけて安心したいのに……」


屈んでベッドの下を確認する。そこにもスマホは無い。毛布を何度もバサバサと振ってみる。しかしスマホは落ちてこない。いっそ他の誰かに電話でもかけてもらって、その音で位置を割り出そうか。いや、この家には自分一人きりだ。スマホが無ければ友人と連絡を取ることもできない。つまり電話をかけてもらうことはできない。


「なんで見つからないんだよ!」


 今度は作業用のデスクを確認する。以前開けたのは何年前かも分からないような引き出しも一応開けてみる。幼稚園の時に書いたのであろう絵、図工で作った小物入れ、卒業アルバム、参考書、どれも関係ないものばかり。一向に見つかる気配は無い。不快感は怒りへと変わっていく。怒りに任せて勢いよく最後の引き出しをしめた。


「もう、一体どこにあるんだ……」


 いつも見ているはずなのに、スマホがどんな色で、どれくらいの大きさで、どんな形をしていたか思い出せなくなってきた。ああ、誰かに教えてほしい。突然天の声が聞こえて、「ここにありますよ。」とか親切に教えてくれれば苦労しないのに。


「こんなにスマホが大切なら、寝る前に置いた場所ぐらい覚えておけよ。」


 怒りは自責へと変わる。場所すらも覚えていないなんて、本当は大切じゃなかったんじゃないか? いや、何をするにもスマホが必要なのはわかる。でも、いつの間にかその大切さを忘れてしまった気がした。そりゃあ落として画面が割れたりしたら嫌だけど、掃除とかケアとかしたことは無かったし、型にあってない流行りのカバー被せたり、充電しっぱなしで使ったり、付けたまま寝落ちしたり、雑に扱うことも多かった。


 スマホはいつもそこにある気がして。いや、ないはずなんてないと思ってた。


「ああ、どこにあるんだよ。スマホ。スマホが無い。」


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