第42殺 創世記
「───この世には、知ってはならない52の話があるらしい。
その話の内、8つでも知ってしまえば自分の身に不幸が起こるというのだ。
それが、『死』なのか、『虚無』なのか。
その52の話。それは、いつだって4行らしい。」
カレンの口から唱えられる言葉。それを聞いて、生神はピクリと反応した。
「それは...」
「生神、お前には聞き覚えがあるのだろう?これで、8個目だ」
これまで『ジェネシス』のメンバーが鎮魂歌として応援歌として口ずさんでいた4行の詩のようなフォークロア。それは、8個知ってはいけないものであった。
カレンが、今回発表したのは8個目。
前に、いつ発表されたのか振り返ってみよう。1つ目のタイトルは『トランプ』で、それが紡がれたのはは、カレンがインフェルノを殺害した時であった。
「トランプには、ジョーカーを含めそれぞれに太古に滅んだ言い伝えがある。
数字が書かれた52枚のカードには、言い伝えが。
そして、2枚のジョーカーには、その言い伝えの規則が。
ジョーカーが2枚ある理由は、ジョーカーで始まりジョーカーで終わるからだ。」
2つ目は、カレンがタイソン・バイソンを殺害した時で、タイトルは『幽霊』。
「その人間は、生まれたのに流産と断定されて碌に育ててもらえなかった。
誰かにも無視され続けた。その人間が、自分を認識できるのは鏡や写真でだけ。
鏡では、無視していた人たちも無視するのをやめる。
そんな無視される人間が、この世には一定数いて、その総称を『幽霊』と言う。」
3つ目は、アルピナがパンダくんの中身であったゲインを殺害した時と、カレンがジェヘナを殺害した時の2回使用されたロアでタイトルは『零』。
「西暦が始まる前は、数字に素数なんてものはなかった。
でも、西暦が始まるととある数字が新たに生まれ、その調和を壊した。
そして、今の数字になったのである。新たにできた数字が『0』。
西暦0年が無いのは、0がなかったからである。」
4つ目は、シトロンが『アビス・オブ・アビス』のアジトに向かう時に伝えた話でタイトルは『原因と理由』。
「『原因』と『理由』の言葉には、大きな違いが存在する。
それは私情を挟むか挟まないか、だ。
『原因』は私情を挟まないが、『理由』は私情を挟む。
───この話が存在する『理由』は何か。この話が存在する『原因』は何か。」
5つ目は、メルセデスがローランを殺害した際で、タイトルは『0=1の証明』。
「0=1の証明をした学者Aがいた。
その学者Aは、知り合いの学者に0=1の証明をして見せた。
その直後、Aは姿を消した。知り合いの学者が、証明した紙を見る。
───そこには、何も書いていなかった。」
6つ目は、カレンがバイブルを殺害する時に話したもので、タイトルは『トランプ』。
「この世界ではジョーカーを除いてトランプは52枚ある。
だが、別の世界ではトランプがジョーカーを除いて51枚のところも、53枚のところもあるらしいのだ。
が、ジョーカーが2枚入っているのは固定で他のカードは最低でも8枚らしい。」
7つ目は、メルセデスがカレンを殺害した時に使用した言葉でありタイトルは『無限-1』であった。
「奇数から1を引いたら偶数だ。そして、偶数から1を引いたら奇数だ。
では、無限から1を引けば偶数か奇数か、どちらだろうか。
無限を自然数だと仮定して考える。
2で割っても、2をかけても無限なのは変わらない。無限とは一体───、」
そして、今回カレンが読んだ8つ目の話で、トリガーが引かれる。生神は、知ってしまったのだ。太古に滅んでしまった、トランプの1枚1枚に紡がれた物語のうちの8つを。
「何が───」
激しい悪寒に襲われつつも、シトロンを操るのをやめない生神。だが、彼は気付いていた。
自分に迫ってくる、未来の見えない常闇に。
「生神、アナタがどこにでも潜入していたのが仇になったようね。アナタは、知りすぎたのよ」
直後、生神の意識が闇に飲まれる。そして、操っていたシトロンの支配を解き、そのまま意識を深い深い闇の中に落としていったのであった。
「───勝ったわね」
カレンはそう宣言する。そして、動かなくなった生神の首に、背中に背負われている矢筒に入った矢を突き刺した。そして、首を切り取るようにして矢を回した。肉と皮は断つことができたが、骨は削れなかったのでメリケンサックでへし折った。
完全に、生神を殺害したのであった。
「8つ話を知った先にあったのは、虚無でも死でもなく『終わりのない終わり』だったようね。また、新たな話を知ってしまったかもしれないわ」
カレンはそんなことをつぶやく。カレンは、6つしか話を知らないのでもう1つ知っても問題はないのであった。終わり無き終わり。終焉無き終焉。深淵の中の深淵。
「───うん...俺は何を?」
「あら、シトロン。やっと目を覚ましたの?」
「俺は...生神の相手をしていたが急に失神しちまったようだ。迷惑かけたな、カレン」
「本当にいい迷惑だったのだけれど、そのお陰で勝利できたことだしチャラにしといてあげるわ」
「貸一つにならなくてよかったぜ...」
「───それで、『アビス・オブ・アビス』を崩壊させて死神及び生神を殺害したわけだけど...これで、終わりかしら?」
「あぁ、今度こそ終わりだろうよ。俺達以外の全員が一律死んじまったが...一応『アビス・オブ・アビス』を崩壊させた俺達は任務成功だろうよ」
「そうね。皆死んでしまったけれど...」
カレンは、死んでしまったアルピナやメルセデス、そしてボスの顔を順々に思い返した。
「───ねぇ、シトロン。私達、遠い国に行くのよね?」
「あぁ、嫌なら付いてこなくてもいいけど...何か別の意見でも?」
「遠い国に行くのは同行させていただくわ。その、遠い国に行った後の話で提案があるのよ」
「───なんだ?」
「私達、今度は誰かを生かす仕事をしないかしら?殺し合うよりも、生かし合う方がいいと思うの」
「それは名案だな。俺も賛成だ。もう、殺すのは飽き飽きだし懲り懲りだぜ」
───その後、カレンとアルピナは『ジェネシス』の拠点としていたアイザロンスの街を飛び出して遠い遠い国に移動したのであった。
そこで、2人は人を助ける仕事を行った。貧しい人を、苦しんでいる人を、助けを求めている人を救っていた。
───これは、2人の救世主が国中の国民を幸せにする起源の話───所謂、創世記なのであった。
ダークバトル・オブ・バック、これにて完結!
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました!
読者の皆様、そして合作の声をおかけくださったキハさんに感謝を!




