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ダークバトル・オブ・バック  作者: キハ&花浅葱
34/42

第34殺 一心同体

 

「メルセデス、私を恨まないで頂戴よ」

「もちろんだ。そっちも、恨むんじゃないぜ?」

 カレンとメルセデスはお互いに睨みを効かせて武器を構えていた。だが、お互いに動くことはない。


「先手必勝!俺様が貰った!」

 直後、発射される小粒の氷塊。避けても打撲程度の怪我だが、それでも今のカレンは避けない訳にはいかない。


 ”シュルシュル”


 カレンは、メルセデスに向けて矢を放った後に逃げの一手に出る。カレンは、現在満身創痍に近い状態だったのだ。傷口に氷塊が一粒当たっただけで大怪我に繋がる可能性があった。


 カレンが放った矢は、メルセデスに当たることはなく頓珍漢な方向に飛んでいってしまった。

「左肩が怪我していて、上手く方向を定められないわね...」

 そう言って、カレンはため息をつく。カレンは、左肩と右手を怪我しているので弓矢とメリケンサックの療法が使用()()()()状態なのだ。


「今度は外さない...」

 そう言って、再度弓矢を構えるカレン。狙うのは、メルセデスであった。


「【銀河渦巻く魂の波動を網羅し、

 氷の結晶の奥深くに宿る恒久の冷気を呼び覚まし、

 空虚な次元を彷徨う精神の螺旋を───」

「ここ!」


 ”シュルシュル”


 メルセデスが魔法を詠唱している間に、カレンは弓矢を放つ。それは、正確にメルセデスを捉えて突き進んでいった。が───


 ”パキッ”


「んなっ...」

「───辿りながら、

 氷雪の領域を切り拓く闇の魔力を解き放つ!

 極より冷えた謙虚なる弾丸を呈す永劫の魔法よ、顕現せよ!

 『ブラックホワイト』】」


 カレンの放った魔法は、メルセデスに当たったものの体に当たり跳ね返された。まるで、体の中に鋼鉄の鎧を着込んでいるかのように。


 そして、そんなこんなをしている内にメルセデスの早口全文詠唱───要するに、顕現させられる氷塊の数と、その氷塊の大きさをマックスにまでされたのであった。

 空気中に重力を無視して浮いているのは、30をゆうに超える氷塊の数々。しかも、それの一つ一つがラグビーボールよりも大きい紡錘形をしているのだ。


「こんなの...アリかしら...」

 メルセデスの体を守ったのは、メルセデスが鎧のようにして纏っていた氷であった。体が冷えるという欠点もあるが、そんな欠点を忘れられるほどの防御力を誇っていたのであった。


「弓矢程度じゃ壊せない...直接メリケンサックで攻撃しないと行けないのね...魔法使いの中でも一位二位を争うくらいには厄介だわ。流石はメルセデスと言ったところかしら」


 全てをなぎ倒す炎を操る炎魔法。龍のように獰猛な水を操る水魔法。永遠に囚えることのできない風を操る風魔法。何もかもを飲み込む土を操る土魔法。秩序無き動きをする光を操る光魔法。混沌を染めあげる闇を操る闇魔法。


 そのどれよりも、カレンにとって氷魔法は強いものと感じた。


 それは、氷魔法の「強み」というものを散々メルセデスから聞かされていたからであった。

 カレンは、メルセデスから氷魔法の利点を、強みを、アドバンテージを、長所を、メリットを、美点を聞いていた。


 攻守共に優れ、形勢逆転にも持って来いの魔法───氷魔法。


 多少はメルセデスの誇張表現もあっただろうが、カレンはその強さのほとんどをメルセデスを見て学んでいた。

「本当に、メルセデス。アナタの相手をしたくはなかった」

「俺様もだ。カレンの強さは俺様もよく知ってるからな」


 カレンがメルセデスの強さを知っているのと同様に、メルセデスもカレンの強さを知っているようだった。

「強さは知ってる、それはお互い様だ」

「そして、強さを知っているからこそ」


 メルセデスとカレンがそう呟く。そして、お互いがお互いに口を開く。


「「───お互いの、弱さを知っている」」

 声が重なる。ここ2年ほど、苦楽を共にした2人は最早一心同体と言う言葉を使用しても言いすぎと言うほどではなかった。


 どうして、この2人が殺し合わなければならないのか。もしこの世に神がいるのであれば、その神は最低最悪な野郎だと形容する他なかった。


「カレン、最終ラウンドだ」

「随分と、せっかちなのね。でもまぁ、ここで決めないと私の体が持たないわ。だから、最終ラウンドにするのは同感よ」


 直後、カレンが動き出す。そのカレンを追尾するように放たれる巨大な氷塊。

 カレンは、斜めに動き、氷塊に当たらないよう調整していた。氷塊は、基本真っ直ぐしか飛ばないということを知っているのだ。


「まずは、近付いて」

 カレンは、メルセデスに接近してメリケンサックの付いた右手で一発殴る。利点は、強力な一撃を放つこと。欠点は防御する術を持っていないこと。


 ───だが、メルセデスも自分の近くに氷塊を落として巻き込まれることを考慮した結果放つことはしない。


 よって、防御する術を持っていなくても問題ないのだ。


 ”バキバキッ”


「よしっ!」

 カレンは、メリケンサックで氷を破壊した音を聴いて一度後退を選択した。その直後、メルセデスの拳が空を切る音が聴こえた。きっと、避けていなければ直撃していただろう。


「───これで、終わりだ」

「───ッ!」


 その直後、カレンは巨大な氷塊に四方八方を囲まれる。別に隙間が開いていないというわけではなかったが、カレンが逃げられるような隙間というものはなかった。メルセデスも、カレンの体格を把握しているのだ。


「───そう言えば、これをバイブルにも使用していたわね」

 そう言って、カレンは苦笑する。そして───


「終わりだ、カレン。とっとと眠れや」

 カレンに一斉に接近する氷塊。カレンは、全て避けきる気持ちで、それに受けて立った。


 そして、出来上がった氷塊から這い上がってきたのは───。




「おいおい、それでまだ生きてんのか。ゴキブリ並みの生命力だな。まぁ、後は新聞紙を丸めて叩けば死ぬほどの虫の息───正しくゴキブリなんだけどな」


 ───氷塊に体の所々を穿たれ、手足が変な方向に曲がり、喉が破れて顔面が抉れ、脳漿を撒き散らしていたカレンであった。

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