第30殺 その日 その②
死神を他称する人物に攻撃されそうになったシトロンを庇い、カリファはバッサリと死神の持つ鎌で切られてしまい呆気なく命を落とした。
「おい、カリファ!おい、返事しろよ!」
「嬉しいことに死んでいますよ。あなたにとっては悲しいことでしょうが」
シトロンの体から、沸々と湧き上がってくる怒り。前々から少し気があった幼馴染を殺されたのだ。怒りがないわけがない。シトロンは、目の前にいる死神を名乗る人物を殺害することを決める。
「お前...こんなことして、生きて帰れると思ってんのかよ?」
「残念ですが、死んでいるのでこれ以上死ねません」
「面白くねぇジョークだな。死んでるってなら、地獄に帰れや」
「帰郷なら、もう済ましていますよ。だって地獄は現実なのですから」
バイブルは、ああ言えばこう言う死神に怒り心頭に発する。そして、持ち前の武器でありカリファと同じくらいの期間を共に過ごしたトンファーを武器に戦闘を開始した。が───
「おっと、すみません。戦場にいた人の内、一人は生かしておく主義なのです。死神は、誰かを生かすからこそ死神を名乗れるのですから。それでは、またいつか」
そして、死神はどこかに消えてしまう。その場に残されたのは、やり場のない怒りを溜め込むだけ溜め込んだシトロンと、シトロンを守るために死神に殺されたカリファであった。
「シトロンさん、先程の騒ぎは...カリファさん?!」
任務が終了し、アルピナもシトロン達と合流した。そして、カリファだったものを見つけてしまったのであった。
「シトロンさん、何があったんですか、シトロンさん!どうしてカリファさんは、体が真っ二つになって───」
「───死神に殺された。それ以上でもそれ以下でもないよ。俺を守るために、死んだんだよ...」
任務は遂行した。だが、その後の予想しなかったイベントに遭ってしまいカリファは死亡したのであった。
そして、シトロンとアルピナはカリファの死体を背負ってアジトに戻る。
「───カリファが死んでしまったか...」
ボスは、非常に悲しそうな顔をする。
「ボス、生き返らせることはできないのですか?」
「人は生き返らないよ。フィクションじゃあるまいし」
アルピナとボスの会話を、シトロンはソファに寝っ転がって聴く。彼は、悲しみに暮れていたのだ。
「それにしても、僕達意外にも『緋色の虎』の壊滅を狙っている人物がいたのか...誰かに雇われたのか?いや、それなら僕達に危害は加えないはず...なら...」
───彼が、怠惰に溺れていくのはカリファが死んだ日が始まりだった。
その日から───カリファの死から『ジェネシス』は大きく変貌する。
生気を失ったようにして、アジトのソファでずっと眠る生活を行い始めたシトロン。カリファの死体を縫合した後にホルマリン漬けにして、彼女の細胞を使用した人造人間の制作を開始したボス。そして、彼らを支えるために暗殺業により力を入れ始めたアルピナ。
一番元気であったシトロンが元気を無くしてしまい、元より自由人だったアルピナは、仕事全て自分に回ってくるのでより一層縛られてしまい自由を欲し始めた。
───そして、その日から2年ほど経った時。
「みんな、聞いてくれ。ついにカリファの細胞を利用して制作した人造人間───カレンが完成した」
ボスが、依然としてアジトのソファで怠惰に暮れているシトロンと、一人で全ての仕事を担っているアルピナの2人にそう報告した。
「それは本当ですか?」
「あぁ、本当だ。皆と同じように食事をするし排泄もする。人間に極度に近い人造人間が作ることができた」
「そうですか、流石はボスですね」
「───だが、カリファとは違ってカレンは感情が薄い。流石に、死んでしまった人から生者を生み出すことはできても感情を宿させることはできなかった。問題点としてはそれだけだろう」
「感情ですか...」
「よかったな、アルピナ。仕事が楽になるかもな」
「シトロンさんが手伝ってくれれば済む話だったのですが...」
「俺にはもう無理だ。人を殺すなんて、カリファが死んじまって、もう...」
そう言うと、シトロンは目に涙を浮かべて小さくなってしまった。
「今度から、一緒に生活しようと思う。それと、カレンが人造人間であるということは内緒にしていてくれ。偽りの記憶を知識として蓄えさせている。だから、仕事を探してここに入団した───みたいになってるから、よろしく頼むよ」
「了解だ」
「わかりましたわ」
───こうして、カレンは完成して『ジェネシス』の仲間となったのだった。
その後、メルセデスも仲間に加わり現在の5人のチームになった。
メルセデスが入団した理由は、カレンが自分だけ後に入ったことを疑問に思わないようにするためだった。
───と、カレンは人に近いが、人とは違うところが数個存在する。
例えば、感情が薄かったり。人を殺すことを厭わなかったり。自傷を厭わなかったり。
───まだ使用されたことはないが、人間で言う「死亡」の状態になっても、一度だけ全快で生き返ることができたり。
カレンは他の人にはない特性があった。そんなことは知らないまま、カレンは生きる。




