第29殺 その日 その①
カリファ・マクローレンの死。
それが起こるのは、『ジェネシス』と『アビス・オブ・アビス』の最終決戦が行われている現在から数えると4年前。そして、『ジェネシス』が発足してから数えると6年後の話であった。
『ジェネシス』のメンバーは、依然として4人である状態を貫いていた。人数を増やすと、要らぬスパイを入れてしまう可能性があったからであった。
チームメンバーを極力増やさないというのも、ボスの決定だった。
まぁ、幼馴染の4人で仕事をするほうが色々と働きやすかったのだろう。
「───次の仕事は大きくなりそうだよ」
ボスは、そう口を開く。アジトにいた他の3人───シトロンとアルピナ・フェニー、そしてカリファ・マクローレンはその声に耳を傾けた。
「どこの組織だ?」
「次に壊滅させるのは、この街───アイザロンスを牛耳っている暗殺者集団の一角『緋色の虎』だ」
「『緋色の虎』ですか...」
『緋色の虎』は、所属人数50人超えであり、殺しのエキスパートだらけの集団であった。
「面白くなりそうですわね」
「えぇ、そのようね」
「俺達の手でぶっ潰してやらァ!」
「まぁまぁ、落ち着いて。作戦の日程を説明するよ。まず、今から6日後に『緋色の虎』は年に一度行われる全団員を集めた会議を行う。だから、そこを狙うようにしよう」
「一気に50人を相手取るのですか?流石に、ワタクシ達3人でもその量は...」
「あぁ、わかっている。だから、これを使うんだ」
そう言って、ボスが取り出したのは野球ボールくらいの大きさの球であった。
「それは...」
「毒玉か」
「シトロン、正解だ。これが、僕が開発した毒玉だよ」
「ボスが飲んでいる毒と同じ?」
「あぁ、でも濃度が違う。こっちの方が何千倍も濃い。だから、一度でも吸ってしまえば死ぬ。そんな最低最悪な兵器だ。今回は、これを使用する」
「それで、ある程度数を減らすのですよね?」
「そうに決まってるだろ」
「まぁ、シトロンさん。そんな言い方はないじゃないですか。ワタクシだって悲しいですわ」
「んなの、知らねぇ」
「2人共、喧嘩はしないで」
「そう。カリファの言う通りだよ。それで、作戦としては───」
こうして、作戦会議は行われる。そして、その日───『緋色の虎』全員が集められて会議が行われる日がやってきた。
「作戦の段取りを確認する。まず、俺がこの毒玉を窓から投げて使用する。大気中の毒の効果は、1分から1分半だから、2分経ったところを見計らって俺とカリファは突入する。アルピナは、部屋の出口にいて逃げ惑う人物を食い止めろ」
「了解よ」
「わかりましたわ」
「───んじゃ、行くぜ」
そして、『緋色の虎』壊滅作戦は開始される。『緋色の虎』にも強敵はたくさんいた。だが、それを毒玉で一網打尽にするのだ。
「劇薬で楽に死ねると思うなよ」
そして、窓からシトロンは毒玉を投げて入れる。そして、空気が漏れないように窓を閉めた。
───すると、部屋の中に映し出されるのは阿鼻叫喚。
窓の内側では、人が藻掻きボロボロになって崩れていく地獄のような光景が広がっていた。扉を開けようとする者、窓を破ろうとする者、壁を破壊しようとする者、どれもが倒れ崩れていく。
「生き残りは...2.4.5人か...」
生き残っていたのは、50人以上の内の5人であった。しかも、どれもが毒で弱っている。
───そして、予定通り2分が経過する。そして、シトロンとカリファの2人は会議場に突入した。
「勝負しろや、お前ら!」
そして、シトロンは両手に握られているトンファーを武器に、近くにいる『緋色の虎』の名も知らぬ団員を撲殺する。
「脆い、脆いんだよッ!」
そして、そのまま2人目を倒す。すると───
「お前ら、よくもぉぉ!」
吠えるようにして、シトロンに決死の攻撃をしてきた『緋色の虎』の団員の1人。その団員はシトロンの真後ろから攻撃しようと画策していたようだった。
「───ッ!」
団員は、シトロンに向けてナイフを振り下げようとする。が───
”シュルシュル”
「───ぁ」
「シトロン、よそ見のし過ぎよ」
「助けてくれて、あんがとよ」
カリファが、シトロンの後ろにいた団員を正確無比である矢で射抜いたのであった。
「お、お前ら...よくもッ!」
残るは1人。だが、その一人も毒によりほとんど死にかけだ。だから、カリファは焦ることなく最後の一人に近付く。そして、静かに矢を額に放ち絶命させた。
「任務完了」
「お疲れ様、カリファ」
「シトロン、あなたもよ」
誰もが任務完了だと思い、安堵したその刹那。
「「───」」
シトロンとカリファは、同時に後ろに下がった。すると、先程まで2人がいた場所が爆発したのであった。
「いやぁ...避けられちったか。失敗失敗」
「───あなたは?」
「名乗るほどでも無いですが、勿体ぶるほどでもありません。まぁ、名乗る名を持っていないのですが」
そこに現れたのは、黒いローブを身にまとい顔にはアノニマスのような仮面を付けた人物。
───彼は、名前を持ち合わせていないのにも関わらず、彼の名前はシトロンが決して忘れることができない名前となった。
「人呼んで『戦争屋』。人呼んで『私刑執行人』。人呼んで死神。憶えてもらう必要はありません。あなた方はもう死ぬのですから」
「───は」
「シトロン、危ない!」
───突如として目の前に現れた「死神」と名乗る───いや、人に呼ばれる人物は、シトロンに攻撃を加えようとした。
それからシトロンを守ろうと、身を挺してシトロンを助けたカリファは、死神の持つ鎌にバッサリと体を斬られて地面に落ちたのであった。
───要するに、カリファは死神に殺されたのだ。




