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ダークバトル・オブ・バック  作者: キハ&花浅葱
15/42

第15殺 氷の密室

 

 氷の密室に閉じ込められたアルピナとパンダくん。

 いや、この説明だと色々と語弊があるだろう。着ぐるみを脱いだパンダくんを逃さないために、メルセデスはアルピナとパンダくんの2人を氷の密室に誘った。

 そして、今からその氷を溶かすほどの熱戦が行われる。


 アルピナは、持ち前の金髪を翻して移動を開始する。狙うのはもちろんパンダくん。


 氷の壁を背に当てながら、アルピナはその密室空間を移動する。が───


「どこにも見当たりませんわ...」

 床や壁・天井の氷には反射した自分の姿が映っているだけ。そこに、パンダくんの姿が映ることはない。


「メルセデスは、思いの外しっかりしているので、閉じ込めるのに失敗したってことはなさそうですし...」


 アルピナは「潜伏」という選択肢に辿り着いた。それが一番合理的で、相手が取りそうな方法だったからだ。


 パンダくんは、これまで最初の一発では毎回、奇襲を行っていた。故に、今回も奇襲するためにどこかに潜伏していると考えたのだ。


 アルピナは、氷をトントンと何度か叩き、その壁の強度を確かめて、外に出れないことを知る。


「隠れる所として怪しいのは、柱...」

 この氷の密室は、約20m四方の立方体であり、その中心には大きな柱が立っている。隠れるのなら、そこに穴を開けて機を待つだろう。


 ”パンッ”


 ”パンッ”


 アルピナは、2発銃を放つ。だが、氷の柱はビクリともしないし、中から人が出てくる様子もない。

「ここを削って入るのは厳しい...ならば」


 辿り着いた結論は一つ。


 ”パンッ”


 アルピナは轟音を、自分の頭上で繰り広げる。たった1発の発砲。

「───」


 アルピナの目の前に着地してくるのは、短躯の老人───パンダくんであった。

何故(なにゆえ)に気が付いた?反射してもお前に見つからない位置にいたはず...」


「思い当たるところ全てに銃を向けるつもりでした。1発で見つけられたのは、ワタクシの運が良いのと、可愛いのが原因になりますわよ」

 アルピナはそう言うと、ニコリと微笑み、己が着ているワンピースの両裾を持ちペコリとお辞儀をする。


「───」


 直後、迫ってくるパンダくん。アルピナは、避ける様子もなくお辞儀を続けている。

「弱者を弔うのは、強者のノブレス・オブリージュですの」

「───ッ!」


 直後、パンダくんにぶつかってくるのは巨大な氷塊───アルピナの形をした氷人形『パペットアイス』であった。


『パペットアイス』は操ることができる氷人形を作り出すことができる氷魔法だ。


「先程壁を叩いた時、モールス信号でッ!」

「正解ですわ。冥土の土産に教えてあげるのもまた、ノブレス・オブリージュです」


 寡黙なパンダくんが焦ったように口に出す。先程、壁を叩いた時にアルピナはモールス信号でメルセデスに「氷の人形を作るように」と伝えていたのだ。もちろん、全文売っていたら長いから「doll」などとモールス信号で送ったと考えられる。


「───だが、まだ負けん」

 そう言って、まだ動きを続けるパンダくん。首を狙って蹴り上げてくるアルピナの氷人形をクナイをぶち当てて破壊する。


「───強者の油断こそ、弱者の狙う点だッ!」

「では、油断を見せない強者のワタクシに敵う相手はいませんわね」


 ”パンッ”


 パンダくんに向けて放つ、銃弾。


 ───否、銃弾が進む方向にあるのはパンダくんではない。パンダくんが割った氷人形の破片。


 地面に落下しようとしている氷人形の破片に向けて放ったのであった。

「チェックメイト」


「───ッ!」

 銃弾が、氷人形の破片に当たり、弾き返されてパンダくんの心臓に直撃する。


「───そしてフールズ・メイトです」

 そして、パンダくんからクナイを素早く奪い取り、手早い手付きでパンダくんの首を切り落とす。


 血が舞うよりも先に、アルピナは返り血を浴びる範囲から逃れていた。


「死者を弔うのもノブレス・オブリージュ。ですので、少しレクイエムに似たお話を。タイトルはゼロ度の氷にかけて『零』」


 そう言って、アルピナはクナイを捨てて銃をしまう。そして、乱れ一つ無いキレイな金髪に触れてこう言う。


「西暦が始まる前は、数字に素数なんてものはなかった。

 でも、西暦が始まるととある数字が新たに生まれ、その調和を壊した。

 そして、今の数字になったのである。新たにできた数字が『0』。

 西暦0年が無いのは、0がなかったからである。」


 アルピナは話を終える。すると、氷の密室は消えてなくなった。一瞬にして氷が昇華して水蒸気になったかのようにして氷の密室は無くなり森に包まれた小屋の前に戻ってくる。


「勝利しましたわ。メルセデス、小屋の調査を行いますわよ」

「全く、人使いが荒いんだからよ...」


「でも、しっかりワタクシの作戦に合わせてくれたじゃないですか。メルセデスは、何だかんだ言って優しい子ですからね」

「っるっせぇ。背中を切られたんだから、少しは心配しやがれや」


「ワタクシは、その程度の傷で死なないことを知っていますから、何も言いませんわよ」

「クッソ...この程度の傷だとか言いやがって...」


 そう言って、メルセデスはゆっくりと立ち上がる。背中の傷が痛むのか、それを庇うようにして変な体勢で歩き始める。


「それでは、小屋の中に行きますわよ」


 ───そして、2人は『アビス・オブ・アビス』のメンバーがいた小屋の中に入っていった。

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