第12殺 森林にて
「これで、2人目にも無事勝利───」
カレンがそう言い残し、どこか満足気な表情をすると、その直後地面に倒れた。
「カレンさん?」
倒れたことの異変に気付き、駆けつけたのはアルピナだった。彼女は、右の脇腹を反射された銃弾に掠ったが、動けない程の怪我ではなかった。アルピナが動かなかったのは、動かなくてもカレン一人で何とかできると確信があったからだった。
変に動き、敵に逃げられるよりも動かないほうがよっぽどいい。
「胸の傷が開いていますわ...残り2人を追うのとカレンさんの応急処置をするために走るのとどちらを選びましょうか...」
数瞬迷い、アルピナは選択する。
そして、1時間後───
「ここでカレンとタイソンがバチコリ争ってたのか?」
「ワタクシもその戦いに参戦していましたが、バチコリと言う擬音はワタクシに似合いませんので、何もツッコミはしませんわ」
アルピナは、カレンをアジトに戻し、その後メルセデス・カルガンを連れて戻ってきたのであった。
昼過ぎのポカポカ陽気に当たりながら、カレンとメルセデスは『アビス・オブ・アビス』の2人───パンダくんとトワイライト・アルカディアの進んでいった道にやってきたのだ。
「ワタクシとメルセデスの2人での任務...メルセデスには警戒が必要ですわね」
「俺様は、アルピナなんかには興味はねぇ」
「アルピナなんかには───ってことは、カレンさんには興味があるのですか?いやらしい...」
「なんでそうなるんだよ!俺様は、殺しに興味があるんだ!家族同然のお前らにいやらしいことなんかできるか!」
メルセデスが、アルピナやカレンのことを家族同然と捉えていることが判明したところで、2人はその会話をやめにした。
「───んで、相手はこっちに進んでいったのか?」
「えぇ、ワタクシの目に狂いはありませんわ」
「アルピナの頭がとち狂ってるから正誤は半々だな」
「あら、何で殴られたいですか?」
「俺様が殴られることは確定なのな...」
───そんな会話をしていると、2人は森の中に建てられた一軒の小屋を発見する。
2人は、先程までのふざけた雰囲気ではなく、仕事の───暗殺者としての真面目なオーラを纏った。
「メルセデス」
「アルピナ」
2人は、名前を呼び合い頷いた。2人はそのままジャンプし、木に登った。忍者もビックリのジャンプ力だ。
もしかしたら、2人は忍者の末裔なのかもしれない。
───なんて、異世界に忍者がいるかどうかわからないので、ジャパニーズジョークはやめようと思う。
木の上に登った2人は、その小屋の見張りに入る。
「アルピナ、俺様は先に進んでいった2人を見てねぇからお前だけが頼りだぞ」
「わかっていますわ。暗殺対象か否かくらい、しっかり見極めます。ですので、暗殺してください」
「そんじゃ、そっちは任せたぜ。こっちはすぐにでも魔法は放てるように詠唱しておくからよ」
「そうしてくださると助かります。こちらもすぐに銃で対応できないかもしれませんし」
「【銀河渦巻く魂の波動を網羅し、
氷の結晶の奥深くに宿る恒久の冷気を呼び覚まし、
空虚な次元を彷徨う精神の螺旋を辿りながら、
氷雪の領域を切り拓く闇の魔力を解き放つ!
極より冷えた謙虚なる弾丸を呈す永劫の魔法よ、顕現せよ!
『ブラックホワイト』】」
メルセデスが詠唱したのは、空気中に氷塊を生み出し、それを銃のように飛ばす魔法『ブラックホワイト』であった。詠唱を短縮することもできるが、今回は時間が合ったので全て詠唱し、顕現させられる氷塊の数と、その氷塊の大きさを全てマックスにした。
空気中には30を超える数の氷塊が重力を無視して浮いていた。これも、魔法の力だ。
メルセデスが任意の方向に任意のタイミングで任意の数を放つことができる。この氷塊は飛び道具なので、銃弾と同じで、一度放ったら止めたり方向を変えることはできない。
一つ一つが、ラグビーボールのような大きさで尚且つ紡錘形をしている。当たれば、骨折どころか致命傷になるレベルだろう。
「メルセデス、1発家の近くに落とし、中にいる人物を外に出すことは可能ですか?」
「あぁ、もちろんだ」
そう言うと、メルセデスは顕現させた氷塊の一つを小屋の前に落とす。ズブリと、地に深く刺さるような鈍い音がした。
「これで、小屋の中にいる人が不審に思い外に出てくれればいいのですが...」
アルピナがそう呟くと、小屋の扉が開く。そこにいたのは───
───金髪で水色の瞳であり、体中に宝石をジャラジャラと付けて右手に眼帯をつけて片目に眼帯をつけた男───トワイライト・アルカディアであった。
「メルセデス!」
「あぁ!わかった!」
メルセデスが、出てきた標的に向けて攻撃を放つ。すると───
トワイライトは、アルピナとメルセデスの方を見てニヤリと笑う。まるで、2人の攻撃を読めていたかのような、そんな表情だった。
「「───ッ!」」
2人が、その表情に驚いた矢先。2人の乗った木の後ろで、耳が痛いほどの爆音が鳴り響く。
2人が同時に振り向くと、そこにいたのは───、
チェンソーを持った、パンダの着ぐるみを着た人物───パンダくんであった。
パンダくんのチェンソーは充電式です。だから、コンセントが無くても大丈夫!
充電式のチェンソーがあるかは知らないけどね!




