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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第5章 航海編

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第58話 武術スキル

 武術スキルについては、ディートヘルム様がエキスパートだ。大体の武器に精通していて、どれもそれなりにレベルが高い。しかし、武術スキルはMPを消費しない代わりに試行回数が魔術スキルの10倍。レベルアップがとても面倒臭い。


 一方、歩法や目線、重心の運び方、礼儀作法など、いくつかのポイントを組み合わせればポイントが倍々に加算されることが分かっている。そしてそれらが共通するスキルには同時にポイントが入る。面白いのは、剣道の作法で素振りをしても剣術のポイントにはならないが、すり足とか重心移動とかは空手や柔道と共通しているようで、そっちにポイントが加算される。


 それからもう一つ。魔術スキルがMP消費量で成長するということは、MP消費の高いスキルを使うことでより早くレベルが上がるということだ。それと同様に、武術スキルもレベルの高い修練を積むことでより習熟度が上がる。一番分かりやすいのは投擲とうてき術で、これは石ではなくフェルト玉を的に投げた方が格段に成長が早い。それと同様に、格上の相手と組み手をしたり、重い剣で素振りをしたり。もちろんちゃんと組み手や素振りが出来ていないとポイントにならないから、各自力量に合った訓練をしなければならないが、武術を伸ばすにもそれなりにコツというかショートカットが用意されているということだ。


 しかも武術スキルは、ポイントが共通しているだけでなく、一つのスキルを伸ばせば他のスキルにも間接的に影響を及ぼす。投擲術が命中率を上げるのは既に知られたことだが、逆に剣術や槍術などを上げれば投擲時の攻撃力が上がったり、リーチが伸びたりする。一つの武術を極めるのもいいけど、こっちの世界ではマルチスキルを伸ばす方が効率よく強くなれるかもしれない。




 それから、マルチスキルといえば。


「めーん、めーん、めーん」


 ベルント様が忍術にハマってはや二年。彼は着実にレベルを上げ、なんと「分身の術」というスキルをゲットした。最初俺がアルブレヒト邸で手裏剣や苦無クナイを投げて忍術を発見した時には、火遁・土遁・風遁・水遁も全部属性魔法と一緒じゃないかとがっかりしたものだけど、作用が共通していたのは最初だけ。その後、忍術は独自の進化を遂げ、どちらかというと体術と魔術を組み合わせたようなスキル構成になっている。そりゃそうだ。忍術は魔術スキルと違い、手裏剣と苦無の投擲から生えて来たんだもの。経験値テーブルもMPベースの魔術系と違い、試行回数ベースの武術系のものだ。


 「遁」という言葉の通り、忍術は「忍ぶ」「隠れる」ためのスキルであり、最初に覚えた「火遁Lv1」などはまんまファイアーボール、「土遁Lv3」はロックウォールといった調子だったんだけど、これらは全て目(くら)ましのために使うもので、攻撃手段じゃない。そして魔術スキルはレベル4からが本格的な全体攻撃に成長するんだけど、なんと四属性がレベル4に達すると「忍術」に統合され、「分身」となった。


 「分身」は、いわば光学迷彩と認識阻害の合わせ技。つまり、四属性をレベル4まで上げることで光属性と闇属性が加わって、ここからは各属性と武術スキルの合わせ技が習得できるみたいだ。ちょっとそれ胸熱。ちなみに、分身の上には武術系スキルのうち日本の———こっちで言うところの秋津の武術スキルが必要みたいで、ベルント様はかつての俺のように無心で棒切れを振っている。


「とうとう気が触れてしまったのね…」


 ディートリント様が遠い目でベルント様を見ている。彼がなぜそうしているかはご存知のはずだけど、デルブリュックで剣術を見慣れた彼女からしたら、とても奇妙に映るようだ。


「武術の鍛錬を積むだけで初歩の属性魔術、そして光と闇の相反する属性の混合スキル。こんなに胸の踊ることはないよ☆」


 夫のアレクシス様は、まずは手裏剣と苦無から。ドワーフの親方に作ってもらったもののうち俺の分が、ベルント様からアレクシス様へとお下がりしていってる。


「とおー」


 そして父の背を見て、アロイス様も元気よく手裏剣投げ。刃物は危ないので、アルミで刃のない手裏剣を作ってお渡ししたが、もう既に的の中心を捉え、刺さるまでに成長された。その様子をご覧になったディートリント様は両手で顔を覆い、「気分が優れませんわ」と船室に戻って行った。きっとテラスハウスに戻られて、ドラマに逃避…気分転換なさるのだろう。




 そう。もうすぐ秋津に到着する。ウダールで面倒臭い目に遭ったのと、イクバールの先に目ぼしい交易港がなかったのと。俺たちは途中寄港することなく、まっすぐ秋津を目指した。なにしろ醤油や味噌の在庫が心許こころもとない。イクバールに残したガルヴァーニの皆さん、そして乗組員の皆さんに醤油の味を知られて、想定の消費量を大きく上回ってしまった。これ以上の布教のためには、潤沢な供給が必要だ。途中の地域の特産物は、その後でいい。


 秋津に上陸し、どこかに転移陣を設置できたらこっちのもんだ。そしたら俺のあやふやな記憶で伸ばすしかない剣道や空手、柔道などをちゃんと学ぶことが出来るだろう。もしかしたら、本当に忍者がいるかもしれない。秋津、楽しみだな。

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