表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/37

17(2-12)

今回も、読んでくださってありがとうございます。

 数日後、王宮より魔法陣が発表され、その便利さが知れ渡ると、爆発的に広まった。魔法陣は無料で公開され、羊皮紙や木の板に印刷され、無断複製も許可され、誰でも手にできるように配慮された。これにより、王家や宮廷魔術師団の名声は高まり、この功績はすべて、例の徴税官に全て注がれた。徴税官は無事准男爵の爵位を賜り、引き続き宮廷魔術師団に在籍することとなった。


 クリーンの魔法陣は邸にも逆輸入され、メイドたちにたいそう喜ばれた。そもそもアレクシス様とベルント様が、宮廷魔術師団でクリーンのスキルを研究していたのは、(やしき)の皆も知っている。その習得方法や、実用的解放を今か今かと待ち侘びていたのだ。皆嬉々として、掃除に洗濯にクリーンを活用していた。とりわけ喜ばれたのは汚物の処理である。他の場所よりも多少魔力は必要となるが、もうわずらわしい汚れに悩まされることがなくなった。功績は徴税官のものとなったが、皆魔法陣はアレクシス様の研究の成果(と思われている)と知っている。邸の者は皆、アレクシス様に大いに感謝した。


 なお、クリーンのスキルを使えば大体綺麗になるが、普通に洗濯や掃除は継続して行われた。いきなり雇用を打ち切ると、経済的に問題が出るし、また幾分作業は楽になったとはいえ、水洗いや天日干し、換気など、スキルの効果では補えない部分がある。何より多くの使用人を抱えるのがステータスという貴族のメンツもあるし、メイドなどは行儀見習いの側面もある。こういったことから、魔法陣が失業を生み出すことはなかった。


 一方で、庶民の生活は劇的に改善された。掃除や洗濯に割かれていた時間やエネルギーがカットされ、その分庶民の生活に余裕ができた。産業の生産性が上がり、経済は潤った。そして何より、庶民の生活の衛生面は劇的に向上。衣服や住居も清潔になり、大規模な設置工事が検討されては立ち消えていた下水道が不要となった。そのうち、教会などの慈善事業により、スラム街にまでクリーンの魔法陣が配布され、不潔な場所も人もすっかりいなくなって、疫病もほとんどなくなった。魔力がほとんどない平民でも、クリーンのスキルが使えるため、街の清掃は孤児の仕事となった。非力な孤児でも、道や側溝をピカピカにできる。じわじわと、みんなの生活が良くなっていった。王家の支持率は上がって行った。絶対王政においても、民衆の支持は大事だ。




 なんか、あの古文書に鑑定をかけただけで、こんな大騒ぎになるとは思わなかった。俺が生まれたのが、つくづくあの辺境の村でよかった。王都に生まれて、いろんなスキルを顕現させていたら、とっくに攫われるか○されていただろう。アレクシス様とベルント様には散々言われてきたけど、何気なくやってたことが、とんでもない影響を生み出してしまうものだ。もう遅いかもしれないけど。


 魔法陣については、アレクシス様が教授から「あれを読み解いたのか」と羨ましがられた。アレクシス様は、「徴税官が使ったクリーンのスキルと呼応して、偶然魔法陣が光ったのです」などと吹聴して、教授の疑いを(かわ)したが、教授が納得したかどうかは定かではない。とりあえず、「他の魔法陣も読み解くことができました」という(てい)で、ライトとファイアーとウォーターの魔法陣も作成しておいた。そのうち時間を置いて、王宮から発表されるだろう。また全て、徴税官に功績が行く寸法になっている。徴税官さんごめん。

今回も、読んでくださってありがとうございます。

評価、ブックマーク、いいね、とても励みになります。

温かい応援、心から感謝いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ