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3.ほのかな恋心(下)




樋渡さんのおかげで無闇に突撃してくる人はなくなった。教室内にはそわそわした空気が依然として残るも、午後は比較的平和に過ごせた。


しかし小さな刺激で誰がどう動いてもおかしくない、互いの心を探り合うような雰囲気は、それはそれで精神をすり減らした。

これならいっそ無視されて放っておかれた方がましまである。


わたし自身のしている、意地を張って融和の姿勢を取らない態度も、後々教室内でしがらみを生みかねないのだろう。頭ではわかっていても、これまでに受けた仕打ちはそう簡単に水に流せそうになかった。




終礼が終わり、逃げるように教室を後にする。

学校の敷地を出てすぐ、正門の横に設けられた送迎車の待機場所へ。急いだものの、迎えの車はまだ到着していなかった。



「——あれが、奥園の……」


「鳳の赤兎班は……」



車の待機場所にいると多くの人たちの注目を浴びてしまう。かといって教室で待つ気にはなれず、出来るだけ目立たないよう隅へと移動した。


ほどなくして大通りから見知った黒い乗用車が待機場所に入ってきて、ほっと胸を撫で下ろす。

空いた場所に停車した車へと駆け寄る。運転席の雪根さんと、後部座席の明将さんに思わず表情が綻んだ。



「おかえり。お疲れ様」


「お疲れ様です。ありがとうございます」



明将さんの隣に乗り込むと、雪根さんはすぐに車を発進させた。



「問題はなかったか?」


「話しかけてくる人はいましたけど、今のところは大丈夫です。一度困ったことになりかけた時は、樋渡さんに助けていただきました」


「ならいいが……。樋渡家は信用に足るらしいが、奥園の分家も一枚岩ではないからな。何かあればすぐに報告するんだぞ」


「そうします」



胸の奥がムズムズする。心配させてしまったことへの申し訳なさと、気にかけてもらったことへの喜び。

当たり前のように向けられる優しさに勇気が湧いて、直面している問題も自分でなんとかできそうな気がした。


膝の上に置いた鞄をぎゅっと抱きしめ、心をひた隠す。この想いは、絶対に悟られてはいけない。



「……樋渡さんから、母と義父が来週には釈放されるとお聞きしました」


「流れ的にはそうなるだろうな。奥園当主が敵に協力していた証拠は見つからなかった。さらには当主自身、日の元の敵を奥園の懐に入り込ませてしまった失態を認めた」



今後義父の権限は分家に移され、代替わりまではお飾りの当主として据え置かれる。この決定についても、義父は承認したらしい。



「義父は、……本当に無実なのでしょうか?」


「どうだろうな。怪しい点はいくつもあるが、どれも確信に至るものじゃない。現当主を擁護する旧家の圧力も相当あったらしく、宮城さんもかなり苛立っていたからな。あそこまで権限を削ぎ落とすのも大変だったようだ」



奥園は外つ国との交易を一手に引き受けている。

義父が当主になってからというもの、外つ国からの輸入品は主に旧家への商売を目的とした商品が目立っていたのだという。庶民ではとても手を出せない、宝飾品や嗜好品などだ。


それらの品によって義父は旧家との繋がりを強固にし、政治期間・皇にも影響を及ぼせる力をつけた。

奥園にとって、そして日の元にとっての良し悪しは別にして、義父の人心掌握の才能は確かなものがある。

甘い蜜を求める旧家の者たちは、これからも奥園分家ではなく現当主の肩を持とうとするだろう。



「朔は、今の当主を怪しんでるの?」



後方確認用の鏡越しに雪根さんと目が合い、正直に首を横に振った。



「わたしは義父のことを、よく知らなくて」



これまで義父とは当たり障りのない会話しかしてこなかった。彼の鷹揚な人柄に裏があったとしても、母の愛した人の内面を覗き込むのはためらわれたのだ。


須藤雷也は義父をさも協力者のように語っていたけど、敵の言葉はどれだけ信用していいものか判断が難しい。



「ただ……、こんなことになって、これからも義父と一緒に暮らすというのは……、正直気まずいです」



母には申し訳ないけれど、これがわたしの本音だった。



「そりゃそうだ」


「……だろうね」



二人の同意に胸が軽くなる。

わたしはこの不安定な状況に、居心地の良さを感じているのだ。


いつまでもこのままじゃいられないのはわかっている。

だけどもう少しだけ、幸せな時間を噛み締めていたい。





「あ、朔おかえり」



赤兎本部へ帰ると、玄関口で啓斗さんに出迎えられた。



「ただいま、戻りました」


「お疲れさま。学校大丈夫だった?」


「おい、啓斗。俺たちには挨拶もなしか」



明将さんが文句を言いながら啓斗さんの頭をぐしゃぐしゃにする。



「年上無視するとかいい度胸してるね」



そこに雪根さんも加わるものだから啓斗さんはもみくちゃになった。



「いや、班員としては俺の方が先輩でしょ。むしろ挨拶はそっちからするもんじゃないの?」


「あぁ? お前、朔がいるからってかっこつけてんじゃねえだろうな」


「はあ!? 訳わかんないし、ってか痛い!」



これは、じゃれあいと思っていいのかな。



「もういいでしょ。忙しいんだから俺で遊ばないでよ」



髪の毛をぐしゃぐしゃにされながらも、啓斗さんはなんとか明将さんと雪根さんから脱出した。



「まったく……。宮城さんが朔のこと呼んでるよ。今後の対策を立てたいから、帰ったら執務室に来るようにってさ」


「わかりました。ありがとうございます」


「うん。急いでないみたいだし、部屋に荷物置いてくる時間はあるよ。アキさんと雪根さんは引き続き仕事だからね。特に雪根さんはさぼらないでよ」



しっかりと雪根さんに念押しして、啓斗さんは足早に奥へと行ってしまった。文句や反撃をくらう前に逃げたともとれる引き方だ。



「宮城さんのとこ、ひとりで行ける?」



心配そうな雪根さんには微笑みながら強く頷く。そうでもしないとこの人は、自分の仕事をそっちのけにしてわたしに着いて来かねない。



「はい。ひとりで大丈夫です」



威圧感や迫力はあっても、宮城さんに対しての恐怖心はもうない。ちゃんとわたしの考えを整理して発言できるぐらい、あの人の空気には慣れた。



「行くぞ。また後でな」



明将さんが不満そうな雪根さんを連れて仕事に戻る。

また後で……、去り際にかけられた言葉に顔が緩んだ。



だんだんと、ここがわたしの居場所になっていく。







       *






予告された通り、翌週に母と義父は釈放された。

須藤雷也というこの度の主犯が消失して、奥園側はわたしを赤兎班に預ける理由がなくなった。義父や母がわたしの身柄の引き渡しを要求するのは当然の流れだった。


それにも関わらずわたしが赤兎班での生活を続けていられるのは、宮城さんたちの尽力があったからに他ならない。


赤兎班は奥園本家を未だに疑っている。

さらには今後、敵は報復のためにわたしを狙う可能性が高い。外つ国の敵に良いように利用されていた義父の元では、守りに不安がある。見方によっては奥園を裏切ったわたしを、そう簡単に奥園の家に戻せるわけがない——。


そういった理由を積み上げて、宮城さんは義父と母にわたしの赤兎班の預かり継続を、なかば無理矢理了承させた。


他にも宮城さんは聴取を含めて義父たちと様々な話しをしたはずだ。わたしが教えてもらえたのはごく僅かな情報だろう。

だけどその少ない情報であっても、日の元の脅威——赤兎の敵がまだ国内に潜んでいることが察せられた。


もしかすると、わたしは終わりのない戦いに足を踏み入れてしまったのかもしれない。




いつ娘は家に戻れるのか。

母の質問に宮城さんは明確な日数を語らず、それに母は激昂したらしい。



「お前の母親の気の強さは一級だな」



感心混じりに言われたのは記憶に新しい。

気が強く、自分を絶対に曲げない母はわたしを赤兎班に預ける代わりに、週に一回の面会を宮城さんからもぎ取った。


母はこれまでもわたしとの面会を強く希望していたようだ。彼女の望みが一体どこで握りつぶされていたのかは……、おそらく調べてもはっきりしない。





そして、義父たちの釈放後。

母は毎週末の午後になると、赤兎本部を訪ねてくるようになった。


来訪した母を玄関で迎え、一階の応接室に通す。

室内にはわたしと母の二人きりだ。



「ねえ朔、あなたここの人におかしなことを吹き込まれてない? 家に帰りたくないなんて、本当にどうしたの」


「……うん。残りたいのは、わたしが希望したことだから。……いろいろありすぎて、お義父さんにもちょっと会いづらいし……」


「礼司さんは朔に感謝してるし、怒ってなんていないわ。そんなこと心配しなくていいのよ」


「…………うん」



迷いなく断言されたら、母が正しいように思えてくる。

もしかしたらわたしが過剰に義父を警戒しすぎているだけなのかもしれない……と。

この半年、普通の日常と離れた体験をしてきたせいで、世間と基準がずれてしまっているのも否定できない。


赤兎本部に居続けたいと望むわたしは間違っているのか。ぐらぐらに意思が揺らぎ、とても母と目を合わせていられなかった。



「あなた、どうしちゃったの……」



母の困惑はもっともだ。

しばらく会えないうちに娘が鳳の、しかもあろうことか自分たちに罪の疑惑を向けてくる赤兎班に留まりたいと言い出したのだから。


親の気持ちを優先して帰還を希望するには、この半年で母への隠し事が多くなりすぎた。

わたしは秘密を共有できる人が近くにいない生活に、怯えてしまっている。



「危ないことがあって、守ってもらったの」


「それは朔に降りかかったことなの? 勘違いしてないわよね。あなたは赤兎班の預かりになったから、危ない目にあったのではなくて?」


「そうじゃなくて、…………空木村の」


「そういや、来たらしいわね」



母は苛立たしげに髪をかき上げる。



「ここの班長さんから聞いたわ。代表を名乗る者と会ったのでしょう。そんな大事なこと、どうしてもっと早くお母さんに言わないの?」


「……ごめんなさい」



機会がなかったなんて言い訳、する気にもなれない。報告できなかったのは、母の機嫌を損ねたくない、わたしの臆病さが一番の原因だ。



「ねえ、本当に帰ってくる気はないの? またあの村の人間が朔のところに来ると思うと、心配なのよ。お願いだから、わたしの目の届くところにいてちょうだい」


「…………ごめんなさい」



何を、どう伝えたら良いのか。母を説得しきれない自分が歯痒い。



「でも、赤兎班の人は、わたしに会いに来た空木村の人との面会を断ってくれてるの。神代巫女も、宮城さんたちはならない方がいいって」


「そんなの当たり前よ」



向かいのソファに座る母が腰を浮かせてわたしに詰め寄る。



「いい? 誰に何て勧められようが、空木村にだけは行ってはいけないわ。神代巫女を継ぐなんてもってのほかよ。あの村の人間の言葉には耳を貸さないって、これだけは約束して」


「うん。少し前にここに来た空木村の……、照土さんにも、神代巫女にはならないって伝えたよ」


「それじゃあだめなの。……こっちの意思なんて、あいつらには関係ないのよ……」



わたしの手を握り訴える母は、今にも泣きそうだった。




空木村とは関わるな。神代巫女には絶対になるなと、母に言い聞かせられているうちに面会時間が終了した。


母が帰るのを見送るために玄関を外に出たところで、本部を訪ねてきた一樹さんと遭遇した。宮城さんに用事だろうか。



「朔さん。こんにちは」


「こんにちは」



母と一樹さんは初対面だ。袴姿の男性に、母は怪訝そうに眉を寄せた。



「どなた?」


「一樹さん。華闇の、土地守りの方だよ」


「……華闇」



一樹さんは警戒心を滲ませる母へと穏やかに微笑む。



「朔さん、そちらの方は」


「わたしの母です」



一瞬、一樹さんは目を見張るも、すぐに表情を戻して頭を下げた。



「奥園、愛里さんでしたか。初めまして。この地の土地守りを拝任しております、一樹と申します。お会いできてよかった。ちょうど、お話ししたいことがございましたので」


「わたしに何か? ……もしくは、この子に」


「お二人にお伝えすべきことがあり参じました。少々お時間をいただけませんか」


「ここでもよろしくて? この後に予定があるから、早く帰らなければいけないの」



恐々と一樹さんの顔色を窺うも、わたしの心配は無用だったみたい。一樹さんに母の棘のある態度を気にする様子はない。



「引き留めてしまい申し訳ございません。ご報告だけですので、すぐに済みます」



母は怪訝な顔をしながらも一樹さんへと体を向けた。


一樹さんから笑みが消える。伏せ目がちになった彼は重々しく口を開いた。



「空木村の神代巫女、照土優香さんが亡くなられました」


「…………え?」



母が目を丸くする。

わたしの頭も真っ白になった。


だって、その人は……。



「前にここへ訪ねて来た、照土さんの……?」


「はい。照土奥廉さんの妻で、愛里さんの叔母様にあたる方です」



照土優香。母にとっての叔母。

わたしからしたら、祖母の妹となるその人。


神代巫女だった祖母亡き後、村の総意で空木村の神代巫女を継いだと照土さんが言っていた。

彼女は年齢もあって神代巫女の潔斎が体にきつく、体調を崩したとも。


その女性が、亡くなった。



照土さん曰く、母は神代巫女の職務で忙しかった祖母の代わりに、その人と照土さんによって育てられたという。母にとっては繋がりの深い人。

しかしわたしからしたら、その人は見ず知らずの他人でしかなく、一樹さんにどんな顔をしたらいいのか迷い、気まずくなって母の顔色を盗み見た。



「あの女……、死んだの?」



呆然と呟いた母の口元が、次第に吊り上がる。



「……ふふっ」



思わずといった風に零れたその声。母は口元を手で覆い隠した。しかし込み上げる感情を堪え切れず、今度は腹を抱えて体勢を低くする。



「うふっ。……あははっ!」



そうして母は、高らかに笑った。



「……お母さん」



困惑するわたしの声は届かず、ひとしきり笑い終えた母は満面の笑みで空を仰ぐ。



「いい気味だわ。こんな嬉しい話が聞けるなんて、今日はなんて良い日なの」



言い終わってまた笑う。

呆然と見ていたら、笑い声がぴたりと止まった。母は真顔になって、ゆっくりと一樹さんへと視線を移す。



「神代巫女の犠牲がなければ成り立たない村なんて、早く滅べばいいのよ。継ぎ手がいなくなったから、あんたはこの子を奪いに来たのでしょう?」


「そのようなことは……」


「とっとと消えなさい。朔は渡さないわよ!」



母が背中でわたしを隠した。

一樹さんは否定しようと口を開くも興奮した母に言葉を遮られ、会話が成り立たない。

母はとにかく一樹さんを追い払おうと必死だった。



最終的には一樹さんが折れた。

宮城さんへの用事は日を改めると告げ、わたしたちに深くお辞儀をして彼は赤兎本部を去っていった。

一樹さんに申し訳なさを感じる余裕もなく、振り返った母が両手でわたしの肩を強く掴む。



「いい? 絶対に外でひとりにならないのよ。あの村の奴らがそう簡単に諦めるはずがないの。この際赤兎班も利用して、何が何でも身を守りなさい」


「……お母さん?」


「華闇を信用してはいけないわ。あいつらは自分の土地が守られてさえいれば、神代巫女のことはどうだっていいのよ。助けを期待なんてできやしない」



一樹さんはそんな人じゃないと、とても言い出せる空気ではなかった。



「玄関前でなに騒いでんだ」



離れた位置で待機していた明将さんと雪根さんが、見かねて建物から出てきた。

赤兎班の班員に対し、母はあからさまに顔を顰める。



「何でもないわ。あなたたちには関係のないことよ」


「つってもなあ。今にも引っ張ってこいつを連れ去りそうな勢いだったろ」


「連れ去る? 朔はわたしの娘よ、人聞きの悪いこと言わないで」


「娘であっても、あんたの所有物ではないだろ。自分の子供だからといって、望む通りに動かせると思うな」



明将さんと母が睨み合う。

仲裁の言葉を探すも、ぴんと張り詰めた空気に頭が回らなかった。


……ううん。たとえ適当な言葉が見つかったとしても、わたしにはふたりの間に入れる気がしない。



「朔、おいで」



雪根さんに腕を引かれ、二、三歩母と距離を開ける。渦中を離れると緊張感が和らぎ、息が楽になった。

母が鋭い眼光をそのままに雪根さんを睨み付ける。明らかな苛立ちをぶつけられても、雪根さんはどこ吹く風だ。

やがて膨らんだ感情を吐き出すように、母は大きなため息をついた。



「……また来るわ。気が変わって帰りたくなったらいつでも言いなさいね」


「うん。お母さんも……気をつけて」



駐車場で待機していた奥園家の車に乗り込み、母は赤兎本部を去った。



「すみません。ありがとうございます」


「揉めてたみたいに見えたけど、大丈夫だった?」


「大丈夫、でした。……その、なんていえばいいのか……。わたしの認識が甘かったんだと思います」



空木村や神代巫女について、わたしと母では抱いている感情に差がありすぎた。

わたしは母の故郷について、関わると厄介ごとになりかねないと思いながらも、どんなところなのか知りたいと望んでいた。


しかしわたしの好奇心とは真逆で、母が故郷へ秘めていたのは強い憎悪だった。

かつて空木村で何があったのか。聞くのも憚られるほどに、母は故郷を、そして育ての親を憎んでいる。


決定的な違いだ。

人の死を喜ぶほどに誰かを憎んだ経験が、わたしにはない。



「ずっと一緒にいたのに、わたしは母のことを何も知りませんでした。何に悩んでいて、どうしてあれほどまでに故郷を憎んでいるのかもわからない。今さら、情けないです」


「親子の間でも言いたくないことなんてたくさんあるよ。それが普通。お母さんが朔に自分の昔を話さなかったからといって、朔のことが嫌いな訳じゃないはずだよ」



ねぇ、と。雪根さんが首を傾げる。



「俺の予想だけど、お母さんが朔に何も言わないのは、自分と同じ憎しみを背負わせたくなかったからじゃないかな。大切だからこそ、話せないことだってあるよ」


「確かにな。空木村の件についてはそれが裏目に出ているだけだろ」



明将さんは同意を示しつつも厳しい眼差しをわたしに向けた。



「母親の過去に同情するのは構わないが、当事者じゃない朔が一緒になって母親の故郷を憎むのは違うだろう」



ぐうの音も出ない。明将さんの言う通りだ。



「母親が憎んでいるものに、朔が一緒になって同等の憎しみを向けようとする必要はない。朔が生きているのは朔自身の人生だ」



わたしの人生、——か。


改めて考える。

いつも流されて誰かの言いなりになって、状況に甘える。そんなことの繰り返し。

わたしはわたしを、ちゃんと生きていると言えるのだろうか……。







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