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5.東の麺とアルジの考え

この作品はフィクションです。

うどん。


アルジの説明するところによると、それは、海を隔てた先にある、東の大陸の麺料理であるらしい。


こちらで麺料理と言えば茹でた麺にソースを絡めて食べるのが一般的だが、東の大陸では、茹でた麺をスープの中に浸して食べるのが普通らしい。

使用する麺も、こちらはソースに絡まりやすい細い麺が多いが、向こうはスープの味が染み込みやすいように太い麺を使用する、とのこと。


「ま、百聞は一見にしかず、だ。とりあえず食ってけ。」

「…は?いや、待て。別に俺は、」

「さっきまで死にかけてたんだ。腹減ってるだろ。」

「それは、そうだが…、」

「ここからさらに奥へ行くにせよ、地上に戻るにせよ、腹が減ってちゃどうにもならん。ただ道中で野垂れ死ぬだけだ。」

「………。」

「それとも、金が無いのか?」

「なんだと!?」


……………。


「…………。………飯を食う金くらいは、ある。」


いかん…、ついムキになってしまった。

だが、屋台の飯を食う金も無い、などと思われるのは心外だ。無名の冒険者だとて、それくらいの持ち合わせはある。なにより、あのゴブリン達ですら、飯を食った後に金らしきものを払っていたのだ。ゴブリン以下の烙印など、押されるわけにはいかない。


しかし、


「………ゴブリンどもが食っていたものと、同じものを出すつもりか?」

「………。」


別の大陸で普通に流通している料理であれば、当然、人間が食べるためのものだろう。恐らくは、旨いものなのだろう。それは、理解できる。


だが、それでも、


「つまらねぇもんに縛られてんだな。」

「!」

「どうせ、魔物は敵だ、とか、人間としてのプライドが、とか考えてんだろうが、旨いもんを食いたいって考えるのは、人間も魔物も同じだ。そこに差なんてねぇよ。で、そんな奴らに旨いもんを提供するのが、料理人の仕事。」

「………、」

「俺は、相手が人でも魔物でも、神様でも魔王でも、相手の食いたい料理を出すだけだ。ま、作れねぇ料理は作れねぇから、俺のレパートリーの範囲内で、だけどな。」

「………ふん。生きとし生けるものは皆平等、か?結構な信念だな。それとも、金のために人間の魂を売ったか?」

「どう思われても構わねぇよ。」


俺の皮肉をさらっと受け流すと、男は沸騰する大鍋に向かった。


「俺は、相手が誰だったとしても、旨いと言わせる料理を出したい。それだけだ。」



相容れない存在、だとしても。

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