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303/320

303 おもいがけない効果がありました

今日で投稿を始めてから丸四年経ちましたヽ(^o^)丿

皆様応援してくださりありがとうございます!

これからもどうぞよろしくお願いします(*^-^*)


「後はあちこちの塀に埋め込まれている反射魔法の魔導具の破壊も必要です。また、敵兵の中には闇の魔術師が作った武器を持っている者も確認されています」

 あうう。まだまだ問題は山積しているんだね。

 私とローズ母様は少し前、私がフクロウの神獣様から『邪神の種』の話を聞いたことを機に、アーシュさんが五年間閉じ込められていたのは、闇の魔術師が作った死の結界だったことをアーネストお祖父様から教えてもらった。

 アンベール国王が十数年も前から此度の戦争を画策し、アースクリス国を確実に滅ぼすために他国から闇の魔術師をアンベール国に引き入れた。その闇の魔術師にアンベール国の北に位置する森を与え、そこを自らの政策に異を唱える者たちの処刑場とし、自国の民の命を与えたのだ。

 そしてその闇の魔術師が邪神の種を持っていたため、北の森で処刑された者たちの命を得て、凶悪に、そして強大に育っていった。

『邪神の種』を放置すると、その性質どおり、世界を滅ぼさんと強大に育っていく。そうなると光の力を持った者一人で対処することは難しくなり、複数名での討伐が必須となるとフクロウの神獣様から聞いていた。

 その例にもれず、強大な力を持つに至った闇の魔術師の前に、アーシュさんは光の力を封じ込められてしまったのだ。


 まさか、このアースクリス国に邪神の種を得た闇の魔術師がいたとは知らなかったよ。だってフクロウの神獣様が『女神様の強力な加護があるこの地に邪神の種が生まれ落ちることはない』と言っていたから。でも、他国から引き入れたのなら納得だ。

 その闇の魔術師は開戦後、戦場で数多の命を屠り、さらに強大になっていった。けれど数年前にアースクリス国の砦でアーネストお祖父様と対峙した時、光の魔力で半身を焼かれて逃げて行ったらしい。

 おお! アーネストお祖父様、強いんだね!


 そして、一年と半年程前、アーシュさんの居所を見つけたアーネストお祖父様の目の前で、闇の魔術師は禁忌を犯し、女神様の御手により粛清されたのだという。

 それにより闇の魔術師はいなくなったけれど、彼が数多の命を用いて作り出した闇の魔導具はたくさん残され、その多くはアンベール国王に渡っていたのだ。

 命を糧に作られた武器は、やはり普通の剣や弓では歯が立たない。

 死の結界、反射魔法、数多の闇の魔導具と、突破するには厄介すぎるものがアンベール城を何重にも取り囲んでいるために、おいそれと攻撃に出ることができなかったというのが、長い間事態が膠着していた大きな理由である。

 だが今、一番大きな理由となっていた死の結界に綻びが出始めた。

 ゆえにここからが戦いの本番となるのだ。


 そして、アンベール城壁に埋め込まれている反射魔法の魔導具は、リーフ・シュタット少年がその命尽きるまで、強制的に作らされたものである。

 彼はずっと、己の作った魔導具がセレン子爵によって犯罪に使われたことを悔やんでいた。

 ……もうこれ以上、反射魔法の魔導具を人を傷つけるために使わせてはならない。

 ――それなら、あれを使えばいいんだけど、アーシュお父様はあれを取っておいてくれているだろうか?

 もう捨てちゃったかな? 聞いてみよう。

「おとうしゃま、きゃんでぃ、ぜんぶたべた?」

 あれは、アーシュお父様の誕生日プレゼントのキャンディの花束の緩衝材としてたくさん折って入れておいたものである。

「えっ? キャンディ?」

 唐突な問いにアーシュお父様が驚いた。

「あい、ぜんぶたべた?」

「あれはアーシェラがくれた誕生日プレゼントだから、全部食べてしまうのがもったいなくて、どの種類も少しずつ残してあるんだ」

 あ、ローディン叔父様とリンクさんが言っていた通りだ。いくつかは絶対残してあるって。

 大事にしてもらえていて、嬉しい。

「きゃんでぃのいれものに、いっぱいおりづるいれておいたの、とっておいてりゅ?」

「ああ、もちろん。大事に取っておいているよ」

「――あ、そうか」

 アーネストお祖父様は私の言おうとしていることが分かったらしい。

「アーシュ、折り鶴はすべて残してあるだろうな?」と問いかけた。

「もちろん、一つ残らず大事にとっておいています」

 とアーシュお父様は何故かドヤ顔で答えた。

 でも、良かった。あの折り鶴が今は必要なのだ。

「よし。これは関わった者に緘口令が敷かれているものなのだが。実はな、冬にセレンがバーティア魔法道具店を襲った時、襲撃者の反射魔法を打ち破ったのは商品棚に飾られていたアーシェラの折り鶴だったのだ。私も検証に立ち会ったが、すべての折り鶴にアーシェラの光の力が残っていた。アーシェラが私たち一人一人に作ってくれた御守りに比べると、非常に微々たる力だったのだが、きっちりと反射魔法を無効化していた。また、それとは別に検証をしたところ、折り鶴は闇の力も無効化したのだ」


 そう。実はバーティア魔法道具店の襲撃事件の後に検証が行われ、私の折った折り鶴には全部光の力が入っていることが確認されていた。その他の形の折り紙も検証されたが、そちらには入っていなかった。どうやら折り鶴限定で光の魔力が付与されていたみたい。

 そしてその折り鶴が闇の力まで無効化したと聞いたのは、魔法道具店襲撃の後のことだった。


 ローランドおじい様やディークひいお祖父様は、反逆を企てたリヒャルトの追跡やその仲間の捜査をしている。

 その捜査で捜査員が踏み込んだ、ある屋敷でのこと。

 捜査員が広大な屋敷を捜索しているうちに、隠されていた魔術陣を踏み、突然昏倒した。

 その時彼は魔術陣に仕込まれていた魔術により、その身の内の魔力をごっそりと搾り取られたのだ。とっさに彼を助けようとした者たちもその魔術に巻き込まれて同様に次々と倒れていき……息はあるものの、自らの意志で指一本動かせない状態となっていた。


 その知らせを受けてリュードベリー侯爵と共に現場に駆け付けたディークひいお祖父様は、その症状がかつて出会った二人……菊の花の咲いている教会にいたトッツオさんやマリオンさんと非常によく似ていることに気づいた。

 そして、彼らを苦しめるその魔術陣の中心には、闇の魔導具が置かれていたのである。

 後日、その魔導具やその場に倒れていた魔術師たちの証言から、当時そこに潜んでいたのが、リヒャルトたちだったことが判明した。

 現在も逃亡中のリヒャルトだが、サディル国出身の魔術師が行動を共にしている。

 魔術師の出身地であるサディル国には闇マーケットがあり、『闇』と冠する名のごとく、そのマーケットには闇の魔術師が製作した闇の魔導具や、数多の危険な魔導具が集まっている。

 そしてその危険な魔導具を駆使するサディル国の魔術師が、その屋敷に魔術陣を仕掛けていたらしい。


 魔術陣は、追手から魔力を奪い取るもので、術にかかった者は指一本動かせなくなる。

 そして犯人たちは、彼らから搾り取った魔力で転移陣を発動させ、術にかかった者たちをあざ笑いながらゆうゆうと転移していったのだ。

 なにそれ! 悔しすぎる!


 その後昏倒していた捜査員たちは、闇魔法に対抗できる力を持つリュードベリー侯爵に救助され、魔術の傷を癒すことができる菊の花の薬を処方されて快方に向かった。

 そしてその時、その魔術陣を消したのが、私の折り鶴だったのだそうだ。


   ◇◇◇


 私はよく折り鶴を作る。

 昔懐かしい折り紙は私の格好の遊びの一つだ。

 私は日中商会のキッズコーナーでいつも一人遊びをしている。お絵描きや積み木も好きだけど、聖布を見つけてからは折り紙でいろんなものを作って楽しんでいる。

 そして紙飛行機を作って飛ばしたりしていたのだけど、風魔法を習い魔法の羽を飛ばせるようになったら、空を飛ぶ鳥の群れのようにたくさんの折り鶴を飛ばしてみたくなった。

 金色や銀色の聖布で折り鶴を作り、風魔法で飛ばしてみる。前世では折り鶴を飛ばすなんて考えたことがなかったから、自分で折り鶴を風魔法で動かせることが楽しくて、一つ飛ばせるようになったら、二つ、次は三つ、四つと操る折り鶴の数をどんどん増やしていく遊びにハマっていった。

 数を増やすと当然難易度が高くなるのだけど、苦労した分、できるようになるとやっぱり嬉しいものだよね!

 王妃様のところでもそうやって遊んでいたら、王妃様のお兄様であるリュードベリー侯爵が面白がって参加してきて、息子のアルとアレンにも遊ばせたいと言ったので、持っていた折り鶴をプレゼントしたことがあった。

 そして、リュードベリー侯爵が事件現場で魔術陣を見た時に、私の折り鶴が反射魔法を無効化したのを思い出して『もしかしたらいけるかも』と思いついて持っていた折り鶴を一つ置いてみたんだって。


『いや~、折り鶴をぽんと置いたら、そこから溶けるように魔術陣が消えたんだよ! 面白かった!』とご機嫌で教えてくれたのだ。

 リュードベリー侯爵の思いつきによって、私の折った折り鶴には闇の魔術を退ける効果もあることが立証されたのである。


 けれど『魔導具』は、術式や魔方陣を道具に組み込んで作り、魔導具と成すのが定石だ。

 だから、『無意識に作った』折り鶴にまで光の力が入っていたことは予想外だった。


 それがずっと不思議だったのだけど、後日そのことを知った久遠国神社の宮司であるサヤ様が、

『それは、鶴という「形」に宿ったのだと思うわ』

 とこれまでの私たちの疑問にそう答えをくれた。


 ――鶴は久遠国で神の使いとして崇められている。

『アーシェラちゃんはアースクリス国の女神様の神子様だし、アースクリス国と久遠国を結んだ「結びの子」でもあるから久遠国の神様とも縁が深いの。だから、無意識とはいえ、アーシェラちゃん自らが作った「神使(じんし)の鶴の形」に力が宿ることも不思議ではないわ』

 そして、サヤ様は折り鶴を一つ手に取り、『やはりそうだわ』と大きく頷いていた。どうやら私が神使の鶴を折ると、自然と光の力が載るらしいのだ。不思議だけど、納得である。

『だから、いろんな形の折り紙があっても、鶴だけに光の力が宿っていたのか』

 とローディン叔父様とリンクさんも納得していた。


 思いがけない形で、私は久遠国の神様との繋がりを実感することになったのだった。



お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
先生4年目おめでとうございます。読んであまり長い感じがなかったぢ4年になりましたね。こんなに面白い作品だから4年という時間があっという間になって。これからも長く読みたいです。体調が気をつけてくださいね…
投稿4周年おめでとうございます。どうぞ体調にご留意され、完走を目指してがんばってください(≧▽≦) 応援してます!
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