283 クリームソーダにかかせないもの
12月2日に『最愛の家族』6巻が発売になりました!
お家に迎え入れていただければ嬉しいです!
今回はクリームソーダの回です。
現実は冬なのに、お話の中では『これから夏』の話になっております……(;'∀')
先ずは、細長いグラスに氷を入れ、次にブルーベリーのソーダを注ぐ。そしてレモンを絞ってルビー色に変化するのを楽しむ。うん、これって何度やっても楽しいよね!
そしてその上にミルクアイスを丸く乗せてもらい、ブルーベリーと木苺、ミントをのせて、
「ぶるーべりーのくりーむそーだ! かんしぇい!」
そう! 前世ぶりのクリームソーダの出来上がりである!
ブルーベリーにレモンを絞ったことで変化した、鮮やかなルビー色はとっても綺麗! それにミルクアイスの乳白色にトッピングのミントの緑や散らした赤や紫のベリーたちが映えてとっても美味しそうだ!
「へえ、こういうのは初めてだな」
「とっても美味しそうだわ!」
「飲み物の上にアイスクリームか、面白いな」
そう、この国で飲み物の上にアイスを載せる、という食べ方はないらしい。
そしてこれを食べるためには必ず必要なものがある!
「すとろーくだしゃい!」
「はい、ストローですね」
私の声にトマス料理長が反応してすぐに用意してくれた。王都の雑貨店で草の茎から作られた丈夫なストローを見つけたので、最近のお気に入りでよく使っていたものである。
そしてストローはクリームソーダの時に真価を発揮すると私は思っている。
細長いグラスの上には丸いアイスクリームが飲み物を塞ぐように鎮座しているので、下のソーダを飲むためにはアイスクリームを食べきってからでなくてはいけないが、ストローがあれば、アイスもソーダも交互に好きな時に味わえるのだ!
まずはミルクアイスをスプーンで一口。うん、いつものように美味しい。
そしてストローでブルーベリーソーダを飲む。
ああ、口の中が幸せ~~!
冷たくて濃厚なアイスと、爽やかでしゅわしゅわ感が最高のブルーベリーソーダ。言うまでもなく相性抜群である!
「あいしゅ、おいちい! そーだもおいちい!」
夢中になって大好きなクリームソーダを堪能していると、
「なるほど、そうやって食べるのか」「じゃあ俺たちも」と、みんながめいめいにクリームソーダを作り始めた。
ローディン叔父様とリンクさんはレモンソーダ、ローズ母様は私と同じくブルーベリーソーダでクリームソーダを作り、堪能しながらうんうんと頷いている。
「冷たい飲み物にアイスか。この食べ方は面白い」
「アイスの下のソーダをどうやって飲むかと思ったら、ストローとはな」
「ええ、ストローがいい役割をしているわよね」
皆の評価は上々だ。
「うん、さっぱりしたソーダと、甘いアイスクリームが絶妙だな。すごく美味い」
クリスティア公爵はジンジャーソーダベースのクリームソーダをぺろりと食べきり、今度はブルーベリーのクリームソーダをおかわりしている。そして「次はバタフライピーのレモンソーダを」と指示している。どうやら随分と気に入ったらしい。
料理人さんたちもめいめいに好きなソーダなどでクリームソーダを作って堪能している。彼らは色が変わるのが楽しいらしく、もっぱらブルーベリーソーダやバタフライピーにレモンを絞ったソーダがお好みのようだ。
もちろん、シュワシュワのソーダは美味しいし、ミルクアイスも美味しい。
「これひとつで飲み物とアイスが楽しめるのですね! 贅沢な感じがします!」
「そうですね!」
「さっぱりした飲み物と冷たいアイスのコラボは最強です!」
「これから暑くなりますから、これはいいですね!」
「ソーダに触れている部分のアイスが少しシャリシャリしているのも、いい感じです」
色が変わるという、見た目も面白いとあって、大人気だ。
「氷を土台にするのは重要ですね。そうでなければアイスが沈んでしまいます」
ふむふむと堪能しつつ冷静にそう言うのはトマス料理長である。そう、アイスをのせるには氷の土台は必要である。
「ローディン様、これをレストランで出すには、氷専用の冷凍庫が必要になります」
これまで冷たい飲み物を提供するには、冷蔵庫で冷やしたものをお客様にお出ししていた。
そもそも電気がないこの世界では、冷蔵庫も冷凍庫も高価な魔道具なのである。そして冷凍庫は貴族の屋敷や商売に使用する業務用でしか普及していない、冷蔵庫よりもさらに高級品なのである。
なので必然的に冷たい飲み物といえば、氷を入れないものが多い。
冷蔵庫で冷えているなら、問題はないし気にしたことはなかったけど、そういえばレストランとかで氷を入れた飲み物はなかったように思える。
けれど、このクリームソーダはアイスを安定的に浮かべるために、土台に氷が必要だろう。
「そうだな。製氷専用に冷凍庫を作るか」
「相当数出るだろうから必要不可欠だな」
とローディン叔父様とリンクさんは軽く頷いている。魔法道具店を持っているのでそこらへんをすぐ対応できるのがバーティア伯爵家の強みである。
すでにクリームソーダがレストランメニューになるのは決定事項のようである。
「これレストランに出すのですね!」と料理人さんは嬉しそうだ。
彼らはお休みの日にレストランやテイクアウト店を利用するのを楽しみにしているらしい。
確かに、彼らは仕事で主人たちのために料理を作るものの、賄いは同じ料理であることは少ない。デザートとなると、試食の時ならばまだしも、普段は口に入ることは稀であるのが普通だ。
バーティア伯爵家で働く人たちは、他よりも恵まれていると執事のビトーさんから聞いているけれど、屋敷の従業員さんたちは、お休みの日に思う存分好きなものを堪能するのが楽しみなのだと言っていた。
まあ、確かにそうだよね。
それに、私も前世で休日にお出掛けをして美味しいと評判の店を食べ歩きするのが好きだったし。それと同じことなんだろうね。
料理人さんたちに「ああ、もちろん」と即答するローディン叔父様とリンクさん。
うん、これから暑くなるので、いいデザートメニューになるよね。
「炭酸泉はアースクリス国に数えるくらいしかないから、いい名物メニューになりそうだ」とローディン叔父様が言う。
そうだった。炭酸泉はこの国に数か所にしかない。つまり、とっても珍しいのだ。しかも森とか山とかにあることが多く、採水に行くのも大変なのである。こうやって平地に泉があるのはさらに珍しい。
ということは、炭酸水は、バーティアの特産品になるということだよね!
「ブルーベリーソーダにレモンを入れて色を変えるのも、お客様は喜ばれるでしょうね」
「このストローでアイスの下の飲み物を飲むというのもいいです!」
「どっちも楽しめますからね!」
どうやら、すぐバーティア伯爵領にあるレストランで提供が開始されそうな勢いである。
ではでは、クリームソーダと言ったらもう一つ、欠かせない物を作ることにしよう!
お読みいただきありがとうございます。




