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277 光の魔力の特性

8月29日にアース・スターエンターテイメントのサイトで

アースめし企画(作中の料理を実際に作ってみる企画)の

第二弾に『最愛の家族』の『茶碗蒸し』が掲載されました!

下記URLからどうぞご覧ください!

https://note.com/earthstar/n/n3076d118a6c5

茶碗蒸しのレシピを監修させていただきました。

茶碗蒸しと言えば、出汁を取ったり蒸し器を用意するなど手間がかかる料理なのですが、

レンチンレシピで簡単に作れるように考えましたので是非作ってみてくださいね(^-^)


 再びの山である。

 一昨日意識せずに魔力を使った私は軽い魔力切れを起こし、気を失うように眠りに落ちてしまったらしい。

 目が覚めたら、山近くのバーティア伯爵家の別荘にいた。

「いたいの、いたいの、とんでいけ~!」と言った次の瞬間、魔術陣が光ったとこまでは覚えていたのだけど、私の中の光の魔力が魔術陣の力を引き上げて浄化を一気に促進したと聞いた。こてん、と眠ってしまったのでそこら辺はローディン叔父様とリンクさんから聞いた話だが。

「地面に手をついたら動物たちの声が聞こえた」と言ったら、クリスティア公爵が頷いていた。彼も探索のスキルで動物たちが結界内に多数いることを感知していたのだ。

「『痛いの、痛いの、飛んでいけ』という言葉は、そのままアーシェラちゃんの持つ光の魔力を引き出す言霊になったのだよ。あの時私が展開していたのは浄化と治癒を齎す魔術陣だった。中心の魔術陣には光の魔力を込めていたから、私の光の魔力にアーシェラちゃんの中の光の魔力が呼応したのだろう。相乗効果となったおかげで浄化作業は想定したよりだいぶ早く終わったよ」

 とクリスティア公爵が言う。

 そして、クリスティア公爵の話によると、光の魔力が重なった場合にはその力の効力は『一+一=二』の足し算になるのではなく、かけ算となって何倍もの効力を生むのだという。

 私が知らずクリスティア公爵の力に重ねてしまった光の魔力は一気に膨らんで結界内を縦横無尽に駆け巡って、穢されていた大地や空間を浄化した。

 その光がおさまった後、獣を閉じ込めるための魔導具の結界に閉じ込められていた動物たちがかつて結界があった境目に集まってきて、結界が無くなったのを確かめると、山のあちこちに元気に散らばっていったらしい。

「光の魔力は浄化だけでなく、治癒の力も内包している。だから動物たちが例の毒で受けた傷をも癒したのだよ」

 そうなんだ。今まで命の危機にさらされていた動物たちは、やっと自由になれたんだね。本当に良かった。


 その後、山の視察のための拠点にしていた別荘で一日ゆっくり休んだ私は、今度は馬に乗って山に来た。当初の予定では私が山の視察に参加するのは初日だけだったのだが「浄化された後がどうなるのかを、見ておくことも必要だ」とクリスティア公爵に言われたからである。確かに、知らず知らずのうちに行使したとはいえ私も浄化に参加したのだから見ておくことも大事だよね。

 ということで今日も参加する運びとなったのである。

 この前はあちこちの調査も兼ねていたので些細なことも見逃さないように山の途中で馬車を降りて、そこから徒歩で登ったのだけれど、今日は浄化の結果を見るため、頂上付近の野原まで徒歩ではなく馬で来た。

「おいで、アーシェ」

 手を伸ばしてローディン叔父様に馬から降ろしてもらう。ちなみに今回はリンクさんと一緒に馬に乗ってきた。リンクさんは軍人の家系なので馬の扱いもお手の物なのだ。

「私の馬でもよかったのだが」というクリスティア公爵の言葉に、「アーシェは馬に乗るのは初めてなので怖がるといけません」「ええ。家族と一緒の方が恐怖心も和らぐでしょうし」と二人がやんわりと断りを入れていた。

 確かに私は馬車での移動は慣れているが、大きな馬に直接乗るのは初めてだ。前世で乗馬体験した時は、結構高くてびっくりしたことや、一人で乗り降りできないことに不安を覚えたものだ。

 今日も大きい馬に乗せられた時、その高さにビビり、リンクさんにしがみついた。落馬したら大けが確定だ。ただでさえ子供は最初大きい馬に恐怖心を覚えるのに、気を使う相手だと安心できないよね。

 ちなみに帰りはローディン叔父様と同乗することになっているので気持ち的にも安心である。


 馬から降りた後は、みんなと一緒に浄化魔法を施した場所を見て回る。一昨日は外来種の獣が絶命した場所や寝床にしていた場所の緑が無くなり、地面が黒くなり、さらに黒い靄のようなものが空間にも漂っていたのだが、今その場所は元の土の色に戻り、うっすらと植物が生えてきているようだ。周りの緑と比べると草がとても短いので、そこが浄化された場所だと分かる。

 立ち枯れていた大きな木は浄化の炎により無くなっていたが、その跡には小さな木の芽が芽生えていた。

 もうどこにも黒くなった土肌や靄は見えない。それどころか大地や木々の周りに光が満ち、そして山の空気にさえも薄っすらと光のようなものが見える。これが浄化されたということなのだろう。

「少し集中して視てごらん。アーシェラちゃんには浄化魔法の痕跡が見えるはずだよ」とクリスティア公爵が言う。

 言われた通りに、意識を集中してみると、先日魔術陣を展開した跡が視えた。あの時は金色に光っていたけれど、今は大気に溶け込み透明になっている。だけど、くっきりと痕跡は残っているのが視えた。

「んーと、とうめいだけど、このまえのまじゅつじんが、まわりにろっこ。それと、おそらとじめんにも、のこってりゅ」

 というと、クリスティア公爵が満足そうに笑み、ローディン叔父様とリンクさんが「その通りだ」と頷いた。

「そう。魔力はしばらく痕跡が残るのだ。それを感じることができるのは魔力持ちの証。さらに術式が視えるのは高位の魔力の持ち主ということなのだよ」

 そうなんだ。私はすべての魔力属性を持っている。つまり、高位の魔力持ちである。まだ基礎的なことしかできていないのであまり実感はないのだが。

「そして、これはあまり知られていないことなのだが。光魔法の持ち主は一度触れた術式は自然と身につくのだよ。覚えておくといい」

 と、クリスティア公爵は私たちにだけ聞こえるように言った。

「あい?」

 術式が身につく? 術式って訓練をこなしてやっと身につくものじゃないの? 触れただけで身につくってどういうこと?

「! って……それって、すごいスキルだな」

「ということは、アーシェはもう浄化魔法を使えるようになったということですか?」

 私と同様にリンクさんとローディン叔父様も驚いたようだ。

「その通り。光の魔力を持つ者には役目がある。そのためのスキルの一つであると覚えておくといい」

 クリスティア公爵は私に言いつつも、ローディン叔父様やリンクさんの目を見て言う。その言葉を受けて、二人は何か思案するような表情をした。どうしたんだろう?

 ……そういえば。以前王妃様から、王家や公爵家の者には役目があるのだと聞いたことがある。

 その役目のために魔術を容易に扱える特別な能力みたいなものがあるみたい。一度触れたらその魔術の術式と扱い方も自然に身につくなんてすごい。

 まだ浄化魔法を扱えるようになったという実感は全然ないけど。

「まあ、術式は身につくが、それを行使するだけの魔力量が伴わなければ身体に負担がかかる。そのへんは気をつけることだな。特にアーシェラちゃんは幼いからな。無理をしないようにしなさい」

「あい」

「分かりました」

「気をつけます」

 とにもかくにも、毒により不毛の地となっていた場所は無事に再生することができたようだ。


「浄化の後、イヌリン小伯爵が設置した結界の魔道具を撤去したんだよ」

 とローディン叔父様が教えてくれた。

 あの危険な獣を閉じ込めるための結界のせいで、この山に元から生息していた動物たちも結界から出ることができずにいたのだ。危険な獣も一掃されたことだし、これからは動物たちも安心して暮らせるだろうね。

 良かった良かった。


お読みいただきありがとうございます。

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