169 なつかしのおからどーなつ
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翌日の朝、すでに勝手知ったるデイン家の厨房に行くと、クラン料理長を筆頭に皆が新たに豆乳づくりをしていた。
豆乳もおからもさらに量が増えている。準備万端のようだ。
豆乳おからドーナツは、小麦粉の半分の量をおからに変えて、液体部分を牛乳から豆乳に変えるだけだ。
そうやって出来たおからドーナツは、小麦粉だけのものとは少し違ってもっちりサクサクで美味しいし、とってもヘルシーなのだ。
分量を教えると、慣れた手つきで料理人さん達がドーナツを作っていく。
今でもバーティア商会の王都支店にちょくちょく手伝いに行っている彼らは、すでにドーナツ作りのプロだ。
サクサク手際よく作っていく姿は堂に入っている。
シンプルなドーナツは、いつものリングドーナツとちょっと違ってしっかりとした食感に揚がっていた。
出来上がったおからドーナツを、みんなで『いただきます』をして、ぱくり。
ああ。お豆腐屋さんのおからドーナツだ。
すっごく美味しい。そして懐かしい。
「おいちい! おからどーなつ、しゅき!」
「あら。美味しいわ。いつものと違ってもっちり食感が加わってる感じね」
ローズマリーおばあ様は、バーティア商会の王都支店で販売しているドーナツを食べていたらしい。
違いがちゃんと分かっている。
「なんていうか、リングドーナツより食べ応えがあるのね」
ローズ母様も違いが分かっているらしい。
「このおからで作ったドーナツ美味しいですな。いつものリングドーナツとは違いますが奥深い味わいがある」
「そうですね。いつものリングドーナツはサクふわという感じですが、豆乳とおからで作ったこのドーナツはサクふわに、もっちりという食感が加わっている感じですね。なんというか、素材に旨味が入っている感じがしますね」
「これで過敏症の子がドーナツを食べられるならいいですね」
「普通に美味しい。これなら過敏症の子じゃなくても売れると思います」
クラン料理長や料理人さん達はすぐにコツをつかんだようだ。
「ローディン様。これお店で出しても売れますよ」
そうクラン料理長が言うと、ローディン叔父様が笑顔で頷きながら3個目を頬張っていた。
「ああ、いいな。こんなに旨かったら過敏症の子だけじゃなく、皆に受け入れられるだろうな」
「そうね。それに材料ならカーマイン男爵の薬屋から仕入れることが出来るもの」
マリアおば様が頷く。
「ああ。このドーナツは美味い」
ローランドおじい様も2個目を食べている。気に入ったようだ。
「おからで作ったドーナツか。うちの奥さんに言ったら喜ぶと思います」
デイン家別邸のマーク副料理長がポツリと言った。
「あらどうして?」
「―――ええと。少しお聞き苦しい話になってしまいますが」
「構わないわよ。言ってごらんなさい」
マリアおば様に促されて、マークさんがちょっと言いづらそうに話し始めた。
「うちの奥さん、子どもの離乳食に豆のペーストを苦労して作って食べさせていたんですが、その間私たち家族の食事も豆料理が多かったんです。―――そしたら、妻が年中悩んでいたお通じが良くなったと言っていたのです。それに少しお腹周りが細くなったと喜んでいました」
お通じ=便通。たしかにちょっと言いづらかった理由がわかった。
「まあ、いいことじゃないの!」
マリアおば様は気にしていない。どころか、『それならもっと食べようかしら』と言っている。
女性は大抵同じ悩みを持っているものだ。
確かに豆は便秘改善にはいいはずだ。
腸のぜん動運動を促す食物繊維がたっぷりなのだ。
長年便秘に悩んでいたマーク副料理長の奥さんは、それから豆料理をよく作るようになり、お通じはだいぶ改善されたとのことだ。
「なるほどな」
ローディン叔父様とローランドおじい様が納得したかのように頷いた。
「野菜と同じく豆類もお通じに良いといいますから、おからも同様でしょうね」
クラン料理長がマーク副料理長の言葉に同意を返す。その通りだ。
おからドーナツは食物繊維がたっぷりで、しかもカロリーが普通のドーナツの三分の一なのだ。
「おからをかわかして、くっきーをちゅくってもおいちい」
昔ダイエットのためにおからクッキーをよく食べたものだ。
「いいですね! やってみます!」
おからを乾かすのはローディン叔父様が火の魔法の応用で、さっくりとやってくれた。
奥さんに食べさせたい! と意気込んだマーク副料理長が率先してクッキーを焼いた。
出来上がったクッキーは、おから100%の物は食感がザックリ。小麦粉と半々の割合で作った物はサクッとする。
プレーンの他、ナッツを入れたものは食感も味も良く、紅茶の葉を入れたのは薫り高く、美味しいクッキーが何種類も出来た。
油脂は、バターを入れたものと、オイルを入れたものの二種類で作ってみた。
「少し硬めですが、美味しいですね。これはいけます!!」
料理人さん達にも大好評だ。
「バターじゃなく、オイルで作っても美味しい。これなら過敏症の子も美味しく食べれるでしょう」
「でも子供にはちょっと固すぎますね。小麦粉とおから、半々の割合のものがいいかと思います」
「確かにな。子どもが食べやすくなかったら意味が無いものな。配合をいろいろ試してみよう」
料理人さん達、ちゃんと食べる子供のことを考えてくれている。すごく頼もしい。
「おからが、おなかのなかでふくらむから、すうまいでおにゃかいっぱいににゃる」
水分を飛ばしたおからがお腹の中で数倍に膨らむのだ。
「確かに、乾燥させたおからの粉、ものすごく嵩が減りましたよね」
クラン料理長がうんうんと頷いている。
「たっぷりののみものといっちょにたべりゅと、おなかのなかでふくらむ」
「そうですね。水分を含んで、もとに戻る量を考えたらわかります」
「まあ、それならお菓子を食べすぎなくていいわね」
「そうね。頭を使うと知らず知らずのうちにお菓子をたくさん食べてしまうのよね」
ローズマリーおばあ様はデザインを考えたり、いろいろと考えたりしている時、どうしても甘いものが食べたくなるという。
それって、脳が糖分を欲しているということだよね。
「これなら食べすぎにもいいかもしれないわね。気に入ったわ」
「これでお通じも良くなって、過敏症の子も食べられるなんていいですね~」
マーク副料理長は奥さんへのお土産用にクッキーをもらい、ホクホクしている。
クラン料理長とローディン叔父様がおからの確保の話をしている。
おからを使ったドーナツとクッキーはすぐに商品化されるみたい。
それに、バターや牛乳を使用しないパンの話をしているから、過敏症の子が食べられるものが増えそうだ。うん、いいことだ。
―――さて。じゃあ次は。
―――よし、あれを作ろう!!
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