152 王妃様は待てなかったみたいです
更新が遅くなってしまいました(_ _;)
3回目ワクチン接種の副反応で熱と頭痛で、復活するまで5日かかってしまいました(-_-;)
皆様もご自愛ください。
リンクさんがジェンド国に出征してから一か月が経った。
ローディン叔父様はクリスウィン公爵領、マリウス侯爵領やマーシャルブラン侯爵領の田んぼの指導に忙しかった。
その間は、バーティア子爵領の本邸や商会の家でディークひいおじい様の魔法教育やマリアおば様から令嬢教育を受けていた。
バーティア子爵家にもブレンダーやミキサーが置かれることになって、子爵家のトマス料理長や料理人さん達がトマトケチャップを作るのが楽になったと喜んでいた。
ちなみにトマトケチャップは王都のお店で個別に販売してほしいとのお客さんからの要望で、瓶に入れて販売している。
売れ行きも好調だ。
もちろん他の飲食店でもトマトケチャップを作って販売し始めたところもある。
トマトの種類や入れるスパイスによって味が微妙に違うので、それぞれに買ってみて味の違いを楽しんでいるのだと言ったお客さんもいた。
『トマトケチャップを真似して作成して販売してもいいか』と、王都の商会やバーティア領の商会にわざわざ聞きに来てくれた店のオーナーもいた。
もちろん、トマトケチャップ自体は私の独自のレシピではないので『自由に作って販売していい』と回答している。
実は、デイン伯爵やディークひいおじい様は、私が何か作る度にレシピ登録されているか否かを機関に問い合わせているらしい。
その上でラスクやバター餅のように未登録だったものは、私の名で登録し、他の大陸とかにすでにあったものは、問い合わせの事実を記録に残して置き、人を陥れて金を巻き上げようとたくらむ者たちをあぶりだして捕まえているそうだ。
ちなみにレシピ登録は登録者を守るものであり、数年経てば誰でも自由に使えるという決まりごとがある。
アメリカンドッグもトマトケチャップも、私が心のバイブルとしているあの絵本が書かれた大陸で登録されていて、すでに100年以上経っているので誰でも自由に使っていいレシピなのだ。
ただそれを自分のレシピだと豪語し悪用しようとする者たちの牽制にはとても役に立つ。
わざわざうちに問い合わせしてくれた良心的な店主さんたちには、『元祖』とか『本家』とかのうたい文句をつけない、ということを了承してくれれば自由に作って販売しても問題はないと言っている。
そもそもトマトケチャップの登録者は別にいるのだから、それを掲げた時点でお縄にされる可能性があるからだ。
その他にトマトケチャップを作り、勝手に『元祖』と謳ってレシピ登録をしようとした輩や、『勝手にレシピを使って販売した』と言いがかりをつけて、バーティア商会から使用料と慰謝料をがっぽりと懐に入れられると踏んだ愚か者が怒鳴り込んできたらしいが。―――みんな仲良く牢につながれている。
報告を聞いた時、どこの世界にもこんなやり方で金を得ようとする卑怯な人間がいるんだと、びっくりした。
一度やろうとしていたのであれば、過去にも同様の手口で行った可能性が高い。
そんなわけで、今でも何人か牢につながれていて、さらなる罪の洗い出しをされているらしい。
◇◇◇
「そういえば。ついこの間、うちの本邸のポルカノ料理長が王宮に呼ばれて行って来たのよ」
バーティア子爵家本邸で受けていた授業が終わり、休憩をしているとマリアおば様が思い出したように言った。
ポルカノ料理長と言ったら、天ぷら。
新鮮な魚介がたくさん水揚げされるデイン辺境伯領は材料の宝庫だ。
今では自ら港に通って、船から水揚げされる魚をいろいろと天ぷらにしているらしい。
「てんぷら?」
「ええ。それと新商品の魚介のフライを披露することになってね。どうやら、サンダー商会から揚げるだけで美味しく食べられるのだと人気が出ていることがクリスウィン公爵に伝わって、そこから王妃様に伝わったみたいなのよ」
「しょうなんだ」
「王妃様、アーシェラちゃんが次に王宮に来るまで待っていられなかったようよ。ふふ」
確かに。天ぷらと魚介のフライは次に私が王宮に行った時のお土産、と言っていたけど。
デイン領のお土産である海鮮丼は、ひと月前のリンクさんが出征する前日に、王妃様やクリスウィン公爵とリュードベリー侯爵、そしてアーネストおじい様やレイチェルおばあ様に渡すことが出来た。
王妃様の部屋で海鮮丼と手こね寿司を堪能していた時に、お土産話の中で、天ぷらやアジフライやエビフライの話が出て、『揚げたてが一番美味しい』と言ったら、次に王宮に行った時、私と一緒に目の前で揚げたてを食べるのだと、王妃様がルンルンとしていた。
でも、近ごろのデイン商会の冷凍加工食品の評判を聞いて、待ちきれなかったんだろうなあ。
フライは冷凍されたものを揚げると出来るけれど、天ぷらはちょっとコツがいる。なので、先日デイン伯爵家本邸のポルカノ料理長や王都別邸のクラン料理長が王宮に呼ばれて、天ぷらとフライものを披露することになったのだそうだ。
揚げたてを披露するということで、国王陛下や王妃様、クリスウィン公爵をはじめとする高位貴族の目の前での調理だった為、『寿命が縮まった』とポルカノ料理長やクラン料理長が言っていたという。
確かに。ポルカノ料理長やクラン料理長は平民だからね。
国王夫妻を目の前にしたら震えただろう。
とにもかくにも。天ぷらと海鮮物のフライは好評だったようだ。
天ぷらは、野菜類、特に菊の花の葉っぱが美味しく食べられたことで、食べ方を教会などに周知するとのことだった。
「アーシェラ様。漬け込んでおいたものを見てもらえませんか?」
すでに勝手知ったるバーティア子爵家本邸の厨房に行くと、トマス料理長がニコニコと笑顔でタッパーを持ってきた。
パコリ、と蓋を開けると。一つのタッパーには肌色の。もうひとつには唐辛子がまぶしてあった。
これは塩漬けのタラコと、調味液と唐辛子を入れて作った明太子だ。
うん。美味しそうに出来上がっているみたいだ。
「これはタラコね。アーシェがデイン領で作ったものだけど、もうひとつの、こっちは辛そうね」
ローズ母様が唐辛子入りの明太子に興味津々だ。
塩漬けのタラコが成功したので、試しに作ってみた明太子だ。
バーティア子爵家には、保存魔法や冷凍で魚介類が送られてくるので、デイン領で見つけた食材をいろいろ送ってもらっている。
「お土産にいただいたタラコが美味しかったものですから、自分でも作ってみたかったのです。アーシェラ様に教えていただいて私が作りましたので、よろしければご賞味ください」
トマス料理長は炊きたてのご飯をよそって、そこにタラコと明太子を少しずつ乗せた。
ああ。まるで日本の食卓のようだ。
ごはんは平たい皿に盛られているけど。
「白いご飯とタラコって相性いいわよね。それにしても、生のお魚でお刺身が食べられたのもびっくりだったけれど、お魚の卵も塩漬けで美味しく食べられるのも驚いたわね」
マリアおば様は器用にお箸で食べている。
私がローランドおじい様から久遠大陸のお土産でお箸をもらってから、和食の時はお箸を愛用しているので、みんなも自然と同じようにお箸を使うようになったみたい。
デイン領は海に面している辺境伯領。
前世は海に囲まれている国に住んでいた私は、デイン辺境伯領に行った際、天ぷらやアジフライをはじめとするフライものの他にも、嬉々としていろいろ作っていたのだ。
お読みいただきありがとうございます。




