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137 女神様がみせたもの

誤字脱字報告ありがとうございます。

いつも助かっています。

これからもよろしくお願いします。



「では、次に、女神様の水晶を使いましょう」

 ん? 魔力鑑定終わったけど、まだなんかあるの?


 レント前神官長が胸の紋章の中から女神様の水晶を呼び出して、台の上に置いた。

 これは大神殿の奥にあるとてつもなく大きい結晶石から神官長のみに与えられた結晶石だ。

 いつ見ても胸の紋章から水晶が出てくるのは不思議でかっこいいなぁ。


「では、私が授かった水晶もここに置きますわね」

 カレン神官長もレント前神官長同様に女神様の水晶を呼び出して、レント前神官長の置いた水晶の隣に自分の水晶を置いた。

 レント前神官長に導かれて右手でレント前神官長の水晶に、左手でカレン神官長の水晶に触れた。すると、さっきとは違う強い光が身体に入ってきて、思わず目を瞑った。



「これは――――――」

「いったい何色の色が入っているのでしょう……」

 アーネストおじい様とレイチェルおばあ様の息を呑むような声が聞こえた。


「さあ、アーシェラ様。目をあけて見てください」

 レント前神官長に促されて、目を開けてみた。


 二つの水晶は複雑な色を放っていた。


 赤、白、青、黄、紫、緑、ピンク、オレンジ、銀に金……そしてプラチナ。

 水晶自体が金とプラチナの光を放っていてキラキラ光っている。


 かつて菊の花が咲いていた教会で見た、あの色彩だ。


「女神様の水晶に映し出されているこの輝きは、アーシェラ様の魂の輝きです」

「! アーシェの魂の色彩(いろ)なんですか!?」

 ローディン叔父様が驚いてまじまじと水晶の光に見入った。

 大きな声を上げたのはローディン叔父様だけだったが、リンクさんやローズ母様、ディークひいおじい様も小さな感嘆をこぼしていた。


 私とローズ母様とリンクさん、そしてディークひいおじい様はクリスウィン公爵邸で一度、魂の年齢のことを聞いている。その特徴のことも。

 クリスウィン公爵家出身の王妃様が私と同じく女神様の加護を貰っているので、同じ公爵であるクリスフィア公爵、クリステーア公爵のアーネストおじい様とレイチェルおばあ様も魂の年齢のことを知っているのだろう。

 女神様の水晶に映し出された色彩を見て驚いてはいたが、納得していた。


 レント前神官長が鑑定の結果をきちんと最初から説明してくれた。


「魔力鑑定の水晶は血でつながれた魔力のみを映し出します。そして、女神様の水晶は、()()()()を映し出すのです」


 神殿の水晶は純粋に魔力鑑定のみで単純に魔力の色とその強弱が見える。


 女神様の水晶はどのような力があるか知らないけれど、その一つとして、魂の色彩(いろ)を映し出すとのことだ。

 魔力鑑定の時とは違い、水晶球の中を複雑な色がくるくると駆け巡り水晶自体が輝きを放っている。


「人は、輪廻転生を繰り返します。あらゆる世界、鉱物、植物、動物、人間―――そして転生の度に魂の記憶はまっさらに戻る。その繰り返しなのです。そして魂の経験を積み上げていきます。―――そして。まれにアーシェラ様や王妃様のように、魂の年齢が高い方がいらっしゃいます」

「魂の年齢が高いのですか?」

 とローディン叔父様が問う。


「はい。魂の年齢が高い方は―――このように、魂の輝きが力強く厚みがあるのです。それで魂の年齢を推し量ることが出来るのです」

「へえ。それじゃあ私の魂も見てもらいたいものだな。どんな色をしているのか興味がある」

 そうクリスフィア公爵が言うと、レント前神官長が首を横に振った。

「―――申し訳ございません。私たち神官長は女神様の水晶を与えられてはいますが、自らの意思で魂を鑑定することは不可能なのです」

「そのとおりですわ。魂は神様の領域のものです。私自身が望んでも人の魂の輝きを見ることは出来ません。こうやって見ることが出来ること自体が極稀(ごくまれ)なのです。女神様の水晶を通して魂の輝きを見るのは、今回が初めてですわ。―――これは女神様が『私たちに見せている』のです」

 とカレン神官長が言うと、クリスフィア公爵が。

「そうなのか。残念だな。自分のを見てみたかったが、できないんだな?」


「ええ。アーシェラ様が女神様方の加護をいただいておられることが分かっておりましたので、女神様にアーシェラ様の魂の輝きだけは、見ることをお許しいただけると確信しておりました。―――そして知るべき者にこのことを伝えることも」

 そう言って、レント前神官長がここにいる全員を見渡す。


「―――鑑定の結果を申し上げます。アーシェラ様は王妃様と同じく、女神様方の加護をお持ちであることを確認いたしました。―――私は女神様の御心を代弁する者として、アーシェラ様に女神様の加護が有ることを認めます」

「私も当代の神官長として認めます」

「私はアースクリス国王陛下の名代として認めます」

「四公爵家の代表としてクリスフィア公爵の名の下に認めます」

 レント前神官長の後、カレン神官長、王妃様、クリスフィア公爵が次々と宣言した。


 んんん? ―――これはいったいなんだろう?


「―――魔力の鑑定だけかと思っていたんですが」

 ローディン叔父様が驚きを隠せないで言う。もちろん私も驚いたし、リンクさんやローズ母様もびっくりして声を出せないでいる。


「王妃様が昔5歳で鑑定をされた時は、条件が揃っていたのです。神官長と、当時の王妃様と王太子様……現在の国王陛下ですね。そしてクリスウィン公爵。この三つの承認があって初めて公式に国の機関を護衛の為に動かすことが出来るのです」

「アーシェラちゃんがご加護を授かっているのは分かっていたので、今までも護衛はついていましたが。今後のことも考えてきちんと形式を取るようにと、国王陛下からのご命令でした。なので、女神様の水晶を使って鑑定させていただきました」


「王家、公爵家、神殿の正式な承認をもって、アーシェラ様をお守りする機関が作られるのです」


 話がどんどん大きくなっていっているような気がする……

 ねえ、機関ってなに?


「形式上女神様の水晶での鑑定が必要だったということですね。―――承知しました」

 それまで黙って聞いていたディークひいおじい様が了承した。

 それはローディン叔父様やリンクさん、ローズ母様も同じだったようで、戸惑いながらも納得していた。



「―――では、話を元に戻させていただきますね。―――転生をするたびに記憶は消えますが、魂の年齢が高いと、これまでの生の『知識』が残ることもあるといいます。これを私たちは『知識(記憶)の引き出し』と呼んでいます。そして、その知識によって周りを大きく動かすのだと言われております」


「―――では、魂の年齢が高いから、なのですか? アーシェラがいろいろと考え付くのは」

 ローディン叔父様が問いかけると、レント前神官長が頷いた。

「おそらくは。魂の中の知識の引き出しが多いのでしょう」

「なるほど、そうなのですね。腑に落ちました」

 とローディン叔父様が深く頷いた。


「魂は何百回も何千回も転生を繰り返します。誰でも様々な経験を繰り返し、魂を磨き上げていくのですよ。多くの者の魂は白く輝く光に、何色かの差し色があると言われています。―――おそらく、王妃様とアーシェラ様はこれまで多くの生を経験した魂の持ち主なのでしょう。―――この、オパールのような鮮やかな輝きと力強さを感じる光はその証左ともいえましょう」


 レント神官長がそう言いながら、目を細めて女神様の水晶の中を駆け巡る光を見つめている。


「女神様の愛し子は、総じてオパールのような魂を持っていると文献に残っております。そして、知識の引き出しによって周りに大きく影響を与えるということですわ。本当にその通りですわね」

 カレン神官長の言葉に、クリスフィア公爵が大きく頷いた。

「確かにな。そして、その力を利用しようとする(バカ)がいる。―――だから、私に白羽の矢が立ったわけだ」

 ん? 何のこと?

「クリスフィア公爵?」

 ローディン叔父様やリンクさんが首を傾げた。ローズ母様と私も。


「ああ。さっき護衛の機関が作られると聞いただろう? これまでも同じことをしてきたが、正式にアーシェラちゃんの護衛機関の責任者になったんだよ。国王陛下から先ほど正式に任じられた」

「せきにんしゃ?」

「バーティアの商会の家や行く先々で不穏な輩を排除するのが主な役目だな。クリスティア公爵はジェンド国に。クリスウィン公爵はアンベール国にこれから行くことが決まっている。それにクリステーア公爵は孫可愛いさで目が曇るから不適任。―――正しく判断出来るだろうということで、私にね」

「ずいぶんな言われようだな」

 クリステーア公爵のアーネストおじい様が苦笑する。


「まあ、その他に不穏分子(リヒャルトの仲間)の問題も解決しなければならないからな。そっちはクリステーア公爵に任せる」

 クリスフィア公爵の言葉に、アーネストおじい様の表情が締まった。

「―――承知した。護衛の方はよろしく頼む」

「もちろんです」

 クリスフィア公爵が深く頷いた。


「―――さて、次はどこに行くんだ?」

 気軽なクリスフィア公爵の言葉にリンクさんが答えた。


「私の出征前にデイン辺境伯領と、フラウリン子爵領に行きます」

「わかった。護衛計画を立てておく。―――ああ。護衛は基本的に今まで通りだが、必要な時は呼んでくれ。私がいつでも駆け付けて行くから」

 天下のクリスフィア公爵様を簡単に呼びつけてもいいということか。なんて恐れ多い。


「はい。分かりました」

 とローディン叔父様が素直に了承していた。そうそうトラブルに巻き込まれはしないと思うけど。


「さあ、アーシェ。デイン領で海鮮丼作ってみような」

 リンクさんの魅惑の一言で、一瞬で心をわしづかみにされた。

「おしゃしみ!! たのちみ!!」

 『海鮮丼』と聞いた王妃様が瞳をキラキラさせた。

「まあ! それって、お父様が大陸で食べて美味しかったと言っていたものよね。私も食べてみたいわ!」

「おうひしゃま。おみやげにしゅる!」

 お刺身が受け入れられれば大丈夫なはずだ。

 もちろんカレン神官長も王妃様と同様におねだりしてきたので、ここにいるみんなにお土産を約束した。


 さあ! 今度はローディン叔父様も一緒にお出掛けだ!



お読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
デイン伯爵?辺境伯? 辺境の伯爵≠辺境伯
[一言] アーシェラちゃんは知識の引き出し処か記憶持ちですけど、これに加えて更に前世迄の生を生きた証を「記憶の引き出し」って形で受け継いだって事ですかね? だとしたら大きなクローゼット付きの棚なのかも…
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