プロローグ
第二作目を初投稿日にそのまま出すという意味不明な行為をしていますが、趣味行動ですのでご了承ください。
誤字脱字報告よろしくお願いします。
「疾ッ」
短く息を吐き、自身の身体を引き裂かんとする大剣を油断なく右に避け、大剣特有の攻撃後の一瞬の硬直タイムを狙い、刺突を放つ。
しかし、その完全な一撃を、地面に多少とはいえ刺さった大剣を強引に横へ動かすことで、なぎ払いを成功させ、弾き返されてしまう。
無論、今、彼の動体はガラ空きだ。
そこを狙わない者はいない。
隙を見つけたとばかりに、その牛頭の筋肉質な魔物、ミノタウロスは、大剣をふりかぶり……、そのまま横へと、地面に倒れ伏した。
その顔は訳がわからない、という表情そのもので、お手本としては申し分ないものであった。
ミノタウロスの身体周りには、パチパチと電気効果のエフェクトが走っていた。
彼の扱う武器は爆破属性。属性が違うと、そうわかるだけにはミノタウロスにも脳があった。
だがしかし、ミノタウロスは、そこで行き詰まってしまった。
一体何が起こったのか、この一対一の、狭い通路という状況下で、まだ両者ともどもに一撃も受けていないこの状況で、どうやって『麻痺』を与えたのか。いや、そもそも誰が一対一だと?
「ふう、他人任せもいいところね、クライス」
「ああ、悪い。今回は一人じゃキツくてな」
そういい、少年は突如横からやってきた少女の差し出す手を掴み、立ち上がった。
そこで、ミノタウロスも納得した。
そうか、自分は一対一の状況だと思わされていたのだ、と。
誰も、勝負はずっと一対一で続けなくてはいけない、というルールなど作っていないし、ましてや生殺が身直に存在し、それがいつ自分に降りかかるかわからないこの世界で、途中から二対一など卑怯だろっ‼︎‼ と言っている余裕など、誰にもないのだ。
いや、厳密に言えば、それをいう権利は誰にでもある。
だが、自分がその立場に回ったら、絶対にそうするであろうから、誰もそれを口にできないだけなのだ。
現実とは、誰が思うよりも残酷だ。
実際に残酷な経験をしていようが、それを超す残酷などいくらでもある。
世界記録がいつか破られるのと同じで、残酷や絶望という上限もいつの間にか天井知らずとなり、誰かが天井に手が届いたとしても、また天井知らずになるのだ。
それを体現させるような世界、それがここなのだ。
エフェクトという流血でもなんでもなく、ただHPバーが〇表示になった時点で死んでしまう。たとえ、痛みを何も感じていなかろうが……。粉々に砕け散る破片、死亡エフェクトになって……。
そんな世界にずっと痛いなど、誰も思わないし、帰りたいと思うだろう。
だが、彼らにそれは許されない。
このゲームだった異世界に放り込まれた彼らには、この世界を永遠と救済しなければならない、地獄以上の使命が、天命があるのだから……。
※読んでくださりありがとうございました。
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次の投稿は『転生日記』の方を明日する予定ですので、
早くて明日、遅くて三日後になると思われます。