振り返り
さつきは、もうすっかりなまずのおなかのなかにのみこまれていました。
しかし、そのなまずのおなかのなかには、砂粒ほどの星々も、その星々の周りをまわる時間も、惑星も、天も、はいっていました。したがって、そこには夜空もあれば、青空もありました。
さつきは、せっかくなので、ちゃぶ台とコーヒーとを用意して、そこで語り続けることにしました。
「ちきゅうでは一年が終わろうとしているのね。
だけれども、このうちゅうの無数の星のなかでは、一年も、一日も長さが全く違う。
時間すら、ねじまがるし、いや、時間というものすら存在しない。
だけど、さつきにとっては、ちきゅうで経験する時間は、たしかで、わたしたちだけのもの。
ああ、これから先、どうなっていくのかなあ。
わからない、わからない、わからない。
でも、ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・すべてのことにありがとう。
これだけは伝えたいかな。
これから先、いろんなことが起こるだろうし、いろんな人と出会うだろうし、
思ってもみなかった新しいことはいつも開かれている。
でも、すべては導かれている。
不安?
不安。
さつきには不安しかないよ。
さつきは生きていくための糧を持っていないし、保障もされていない。
生きるということは、ただ不安、不安、不安なことなのかもしれない。
それは、消えない。
決して消えない。
でも、だからこそ・・・だからこそ、冒険したっていいじゃないかと思う。
今年こそは・・・今年こそは・・・
そう思ったって、いいよね。
たとえ、これまでが、同じことの繰り返しだったとしても、
だけど、たしかに前に進んできて、挑戦して、成長してきたことは確かだもの。
これまでが、痛みと失敗と挫折とだったとしても・・・さつき、あなたはやれることはやるだけやりきったのだから。
すばらしい、すばらしい、さつきちゃん、あなたは。」
さつきは、天に映る自分の顔にむかってそういって自分をはげますのでした。
「さつきちゃん、あなたはあなたを信じればいいの!
ちきゅうでも、どこでも、いろんな人がいろんなことを言ってくる。
けれど、いい?最後には結局あなたしかいないの。」
さつきは、一年間頑張ってきた自分のことが愛おしくなって、天に映る自分を抱きしめてキスをしました。
すると、天が開けて、また輝くばかりのうちゅうがひろがっているではありませんか。
あれだけおおきかったなまずは、どじょうやめだかのような大きさになってくるくると水槽のなかを回っています。
さつきは、そっとなまずに「さよなら」を言って、うちゅうのなかを歩き回ったり、泳いだりしながら、次の星を探すことしました。
なんといったって、うちゅうには、東西南北もなければ上も下も右も左も、地面も空もなく、時間も場所もときにふわふわと、ときに嵐のようにごっちゃになっているものですから。
「そういえば、さつきは留学中で、うちゅうせんのなかにお友達がいたよね。
どこに行っちゃったんだろう。」
そんなことを考えながら、さつきは、色とりどりに着飾った星々の間を探し回りました。




