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どろどろの食べ物になんでも見える窓

この星では、飢えるということや渇くということがないみたいです。


だけど、いくら食べても飲んでも、みんなの色はますます暗くなっていくばかりです。

まあ、一瞬・・・そのときだけですが、ぱっと色とりどりの色が咲いたかと思うと、マッチの火が消えて黒くなるみたいに、すぐにまた紫と黒が入り混じったドロドロになって、身体の中に溶けていきます。


大地から生え出た食べ物は、あまりありません。


どろどろとした油。

それに、一粒だけで、舌が重くなるほどの甘い甘くドロドロとした物質。

どんなさらし職人も及ばないほど白く白く輝く粉にそれを溶かした飲み物。

それらを華やかなネオンのように絵の具で塗りたて、着飾ったものを、人々は行列をつくって毎日毎日、一日に5回も6回も食べるのです。


このほしには、溶けた豚のような人たちがぞろぞろぞろぞろと歩き回り、我慢しきれずに、どろどろとした油を飲みたがるのです。


ですが、このほしにすっかり適応することを覚えたさつきは、はじめは敬遠していたそれらの食べ物以外に食べるものがほとんどないので、それを食べて生きていく以外にありません。


「わたしたちは、ずっとこれを食べて生きて生きているけれども、何ともない」

ハアハアを息を切らした、灰色の人が言います。

「食べてもおいしいし、何ともないよ。」

となりの紫色のくすんだ色の人も暴れまわりながら言います。


それにしてもそれらの食べ物は、目を惹きつけ、好ましい色と香りをしているのです。


さつきは、よだれがでそうになりました。

「た・・・食べたい。」


さつきは、ドロドロした油と甘いものと白い粉を混ぜてそれに色とりどりの色をつけた

その食べ物をスプーンですくうと、口にいれました。


すると、口いっぱいに幸せが広がり、まるで目が覚めたようになり、あまりの味わいにうっとりしました。


この一口で、さつきの頭はすっかりぶっ飛んでしまい、つぎの一口、次の一口が止まらなくなり、

結局、何十分も、何時間も、日が暮れるまで、それを口にいれ続けてしまったのでした。


「いけない、いけない。

こんなにおいしいんだから、もう次の一口で終わりにしよう。」

そう思っても、そこでやめることはできません。


「もう一口だけなら。

もう一口で終わりにしよう。」


そんなことを、何十回も何百回も続けてしまいました。


その食べ物は、もう樽の中からすっからかんになってしまいました。


そうするとさつきは、かなしくてかなしくて仕方がありません。


まるで、この世のすべてが終わりになったように不幸な気持ちになりました。

世界から見捨てられ、生きていく元気の素を奪い取られたように感じました。


「ああ、もうだめ、もうだめ、がまんできない。

あれが食べたいの、あれがないと・・・少しだけでいいから。」


「鎖を付けたら、ちょっともらえるかしら。」

さつきは鎖をちょっとだけたくさんつけることにしました。


このほしの顔のない濁った人たちは、鎖を取り、鎖をつけかえ、「おかわり」をたくさんくれました。


「まだ、なんともなっていないから、だいじょうぶ。」


さらに、彼らは、きらきらと光り見ているだけでさつきを気持ちよくさせてくれる「大きな窓」を無料でプレゼントしてくれました。

ただし、それをつかうには、その窓と自分を鎖でつなぐということがないといけません。


その「窓」は、24時間いつでもどこでも、さつきといつでもどこでもいっしょにいてくれて、

鎖を通して、ひっきりなしに、「すべてのこと」をさつきのところに流し込んできてくれます。


さつきは、起きているあいだじゅう、ずっとその窓からはなれることができず、その窓に映ることだけが、「ほんとうのこと」なのだと知ってしまいました。


このほしでは、顔のないマーブル色の住人たちが、たくさんの鎖を自分の所有する窓にくくりつけ、その窓を通してだけ世界をみているようなのですし、また、その鎖と窓を通してしか、人は生きていくことができないほしのようなのです。



さつきは、息が苦しくなり、頭の中に窓のなかの数えきれないほどの窓という窓が開かれるようになって、まるっきりこのほしの中で身動きが取れなくなりました。

身体は重くなり、気が狂いそうになります。

ですが、このほしのすべてが、なにもないかのように、機械的に、歯車のように一定のペースで動き続けてゆくのです。

気が付くと、さつきの腕にも足にもだけでなく、頭にも首にも胴体にも下にも耳にも指にもたくさんの鎖がまきつけられ、そして、こともあろうか、さつきはこれらの鎖にあきたらず、「もっともっと、もっともっとつけて、つけなきゃ、つけなきゃ・・・」と思わずにはいられないのです。


鎖があることで、さつきは心地いいのです。

あの不安は、鎖があることで、鎖をできるだけたくさんたくさん巻き付けることで解消されるような気がしています。


だって、このほしのひとはみんなみんな鎖であのドロドロとした食べ物を手に入れて、鎖で窓から窓へとつながって、鎖によって生きて、鎖に喜びを感じているのですもの。


不安があったり、しんどさがある時、その解決方法はいつも鎖につながっています!

鎖を使ってどろどろとした気持ちよくなる食べ物を食べればその時は楽になるのですし、

鎖を使って窓を開けば、かならず、なにか、解決方法がみつかる・・・はずなのです!











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