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隔離

さつきの目が、「開けた」ようになりました。

まるで夢から醒めたみたいに。


ううん、

あれが現実だったのでしょうか、

それとも、目が覚めて、さつきは「閉じ込められて」しまったのでしょうか。

わかりません。


わかりませんが、ただ、ひとつ言えることは、

さつきの身体やこころがずっしりと重たい感覚になってきた、ということです。


それまで、楽しかった、何でも好きなことをできて、思い通りになならいことは何もなかった・・・そんなうちゅうせんでしたが、その景色も記憶もかすんできます。


「あれ・・・あれ・・・あれ・・・なんだったっけ。

なんだったっけ・・・。」

さつきは、そうひとりごちます。


そして、そのことは、なんだかとても寂しくて、辛くて、どうしようもない・・・

どうしようもないのだけれども、

どうにもならない。


泥沼の中にどんどん沈んでいきながら、

その沼の中にあるものが次第にはっきり見えてくるという、そんな感じなのです。


そして、すべてのことは、急に、じゃなくて、気が付かないように、気が付かないように、じわじわと起こることのように思われたのでした。


さつきは、思い出したように口を開きました。


「そうだ!

そらくん・・・うみちゃん!

それに・・・にいちゃん!にいちゃんは!?

どこ?どこ?どこ?

どこにいるの?

どこにいったの?」


そこにいるのかいないのかもわからなくなってきました。

「いなくなっちゃった」わけでもない。

だけど、いることがわからないのです。


「そ、そうだ。

ヘビ・・・ヘビさん!

あなた、さつきに何をしたの?」


ヘビが出てきていいました。

だけど、顔は見えません。

「何もしていないですよ。

すべては、あなたが・・・そうあなたがやったことでしょう。

〈知恵のアプリ〉を立ち上げた。

それは、わたしがやったことじゃない。」


「で・・・でも・・・。」


ヘビは、嗤うでもなく、意地悪でもなく、ただ、淡々と伝えるのみです。


「ちがう・・・悪いのは、さつきじゃ・・・さつきじゃない。

さつきじゃないんだからっ!」


そんなことを言うと、ふと、子どもの頃・・・そうです、まだにいちゃんもさつきも小学生だったころのことを思い出します。


さつきは、悪いことをしました。


仲の悪かったお友達の筆箱が自分の席に置いてあったのを、そのまま持ち帰ってしまい、

「ねえ、さつき、私の筆箱知らない?」

と言ったのを

「知らない」

ととぼけて、そのままにしておいて、

「さつきは悪くない」

とニヤニヤしてしまったり。



いっぱい運動して、疲れ果てて、寝る前にいっぱいジュースを飲んでしまい、

夢の中でトイレに行って、

はっとめがさめたら、

なぜかさつきのお布団とパジャマがぐっしょり。


さつきは、焦って、隣で寝ていたにいちゃんをさつきの寝ていたところまで転がして、

その後、自分はしらっとおきがえだけ済ませて、

すべてをにいにの仕業にすることに成功したのでした。


そして、にいにのことを「またやっちゃったね。ばっかじゃない」と笑っていましたが、

そのときの、にいにの哀しそうな顔が忘れられません。


でも・・・ママに「大丈夫よ」と慰めてもらったり、かまってもらえているのを見て、

「本当は、さつきなのに・・・正直にいえばよかった」

と思ってはあとのまつりだったり。


とにかく、です。

さつきのお腹のあたりがキリキリと痛むのが分かります。



さつきは、悪い子


さつきは、悪い子


さつきは、悪い子


どうしようもない子



そして、

誰も、助けられない。


泣きたくとも、涙も出てきません。


頭がグルグルとします。


いや、それだけじゃなくて、身体と世界全体が、上も下も分からないような泥の中に沈んでかき回されているような感じがします。



うちゅうせんは?

うちゅうせんはどこでしょう?


うちゅうせんにいたはずじゃなかったの?



どこ?


どこ?


どこ?


ここはどこ?



わたしはだれ?



ねえ、みんな!


みんなどこにいるの!?




どこからともなく、声が響いてきました。


「言い訳しても無駄ですよ。

さつきさん、あなたは接続してしまった。〈知恵のアプリ〉に。

もう、ここにはいられませんよ。」



さつきの息が詰まったようになります。


たくさん、いいたいことはあったのですけれども、

たぶん、何を言っても言い訳のように聞こえるだろうし、

きっと、全部否定されてしまうのが何となくわかったから。


ひとことも、話すことができませんでした。



「裏切られたようで哀しいです。

もう、お別れです。

あなたはもう、ここには、いることはできません。

みんなとも、もう会うことはできません。」


さつきは、まるで全身が凍り付いたようになって、うまく感情が付いてきません。


これが嘘だったらいいのに・・・。


ああ・・・あれだけいけないっていわれていたのに、

なんで・・・なんで・・・やっちゃったんだろう。

さつきの、バカバカバカ・・・。


助けて・・・。


だけど・・・会いたい、会いたい・・・会いたいよ、みんなに!


「もし、今後、あなたがみんなと会おうとすれば、

あなたは〈悪い人〉なので、捕まえられて、ブラックホールに何百年と閉じ込められる刑罰を受けねばなりません。」


「う・・・うう・・・」

さつきはどうしていいか分からなくて、崩れ落ちそうになりますが、

それでも、何とか自分を保とうとします。


・・・ここで、崩れてしまったら、崩れてしまったら、だめだ。


だって、ひょっとしたら、まだ、可能性があるかもしれないでしょ?


その可能性を、自分で潰しちゃいけない。


でも、さつきは自分自身を保つので精一杯でした。




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