不安
「はは。なーんだ、なんともないじゃん。
バレなきゃいいんでしょ。バレなきゃ。」
そう言いながら、さつきは再びうちゅうせんのみんなのいる場所へと飛んでいきました。
そらくんに会うと、相変わらずさわやかな返事をしてくれます。
「ほっ。気が付かれていないみたい・・・そんなわけ、ないよね。」
「さつきさん、一緒に散歩でもしてご飯でも食べない?」
そらくんがそう勧めてくれるので、さつきは一緒にうちゅうせんの長くて広い壁を歩くのでした。
この〈ふね〉はまるで、夢の島です。
楽しいものは何でもそろっているし、食べたいものもおいしいものだらけ。
温泉に入ることもできるし、ずっと寝ていることだってできる。
空を泳ぐこともできれば、遊園地のようなアトラクションだってある。
何年あっても体験しきれないほどです。
豪華な部屋も自分のためにいくらでも作れます。
すべてが、タダで与えられるのでした。
「それでも、ぼくはこうやってゆっくり静かにあるいている時が好きなんだ。」
そう、そら君は言いました。
二人は、カフェに入り、お茶をしましたが、そのお茶というのも何とも言えずコクのある甘みのある味でした。
カフェから、星々を眺めながらふと彼は聞きました。
「ねえ、ずっとここに居たいと思う?」
「うん・・・。
こんな素敵で楽しい場所・・・ちきゅうにはどこを探したってないもの。
何不自由なく暮らせて、望むものは何でも手に入る。」
「そっか・・・。」
微笑みながら、そら君が外を見るので、さつきは気になりました。
「そら君、どういうこと?
何か不満でもあるの?」
「いや・・・。
この場所に何の不満もないんだ。」
「うん・・・さつきも、ずっとこの夢のような場所を感じてひたっていたい。」
「だけど・・・ここはあくまでもふねで、まだ旅の途中なんだよね。
りゅうがくに行くまでの前座というところだよ。」
「そうだよね・・・ずっと居たいけれども、新しいステージに向かわなくちゃならないものね。」
「・・・僕は・・・不安から解放されたいんだ。」
「不安・・・?
そら君ほどの人が不安を抱えているの?」
「それは君もそうだろう。」
「まあ・・・そうだけれども。」
「このふねは素晴らしいよ。
人の考えつくような素晴らしいことはすべてそろっている。
だけど、たしかに時間は流れていて・・・
僕は、いつもその未来のことに備えて不安になる。
たとえ、こうしてすべてを忘れてリラックスしている時でさえも、不安を忘れることはできないんだ。」




