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金持ち要素、低い。

第一章

進級して、もし可愛い女の子が隣の席だったらみんなはどう思う、少なくても「やったぜ! 俺の人生バラ色だぜ」くらいは思う人はいるんじゃないか? まあ、俺は思わないが、なぜかというと・・・・・・・まあ、それはまたの機会にしようそれでだ、可愛い女の子が隣の席だったらって話だっけ、そんなような話だった気がする。まあとにかく俺が言いたいのは、名前は知らないけど、なんかね普通に見ればロングヘアーで可愛い女子がね、なんでか知らないけどこっちを見てんの怖い、なんかした俺、やだーまだ見ている何だろう。名前は確か・・・・・・・・・

「ねえー」

 なんか近いところから声がするでも、その後誰も反応しない、まあそうだよな、だいたい人を呼ぶときは名前を言うのが当たり前だし、言わないと気づかないよね普通。そう思うのってもしかして俺だけ?

「ねえーってば」

 言ったそばから、まあ、本人に言ってないけど、この子馬鹿なの?

「ねえ、聞いてんの!? 瑛太」

 今度は名前呼ばれたよ、誰かー返事してあげなくていいの? カワイソウダヨ、ふーん、気持ちがこもんないことは言わないもんだな。

「神崎瑛太―!何無視してんだー」

神崎瑛太・・・・・・・俺だったわ、眠いけど少しだけ探してみるか、なんかまな板が目の前にあったが気にしない、よし寝よう。

「ねえ! 私ここまで無視されると怒るんだけど、いいってことかなあ」

 さすがに怖くなったので、今まで無視してた残念な胸の持ち主の美南桜に目をやる、ちなみに特にいらない情報だがこいつは幼馴染である、幼馴染は、あと一人いるが、さすがにこのまま無視すると危なそうだし命とか、なので、とりあえず反応しよう。

「何だよ」

「いや、何だよって言われても、特にないし」

 少し照れたような顔を隠すように俯いて言った。

「えっ何、用もないのに呼んだの、やめてくんない、面倒くさい」

「なによ~、ただ挨拶ようって思っただけなのに、ここまで言われないといけないのよ」

 涙目になった、相変わらず撃たれ弱いな、表情がコロコロ変わるよな。 

「悪かったよ」

「そうよ、私は何も悪くない、全部あんたが悪い」

 そういって両手を腰に当てて言った。

 こいつ、すぐ調子に乗りやがって、ぶっ飛ばしてぇ。

「調子乗んな貧乳が!」

 殴りたい気持ちを押し殺して、その代わりに素晴らし言葉を放ってやった。

「あんたこそ調子乗んないで!」

 そう言って机を叩いた、バキって音がしたんだけど、周りの人がビビってんだけど、怖いよね、俺なんかちびりそうだったもん。

「まあまあ、落ち着いて桜ちゃん」

 そこに喧嘩を止めに来た男が来た、てか、さっき言ってたもう一人の幼馴染の陶山旭日だ、かっこいいよー旭日、貧乳を止めて。

「桜ちゃんここでやると問題になりかねないから学校裏とかの方がいいよ」

「そうだね、ありがとう旭日、よし行こうか瑛太君」

 そんな笑顔で言われると怖いよ、何で旭日は美南の味方なのー、僕悲しいよ。

「旭日、朝のSHRまでには帰ってくるから」

「俺はSHRまでに帰れないかもしれない」

 最後の言葉を残して、美南と一緒に教室を後にした。


 美南の裁きを受けたが何とか朝のSHRに間に合った、だが美南のせいで心身共に疲れてしまい気が付いたらみんなが帰っていた。

「疲れた、家に帰ろう」

 校門に近づいたら一人の女の子が立っていた、俺の隣の席の人で俺をの事を見てた女子だ、名前は確か泉宮千夏だったような気がしたな、まあ、俺には関係はないしこのまま通り抜ければ、問題ない。あれ、今フラグ立ったかな? あっ、今立ったね♪

「あの」

 案の定問題発生、声かけられた、超面倒くさい、帰りたい。

「すみません、少しお聞きしたいことがありまして、よろしいでしょうですか」

 断りたい、でもここで断ると隣の席だから気まずい気分になっちまう。聞かれるだけっぽいから、まあいいか。

「いいよ」

「ありがとうございます」

 てか、泉宮さんは言葉使いがきれいだな、何でだろう?

「で、何を聞きたいの」

「あ、はい実は、駅までの道のりを教えてほしくて……」

 恥ずかしそうに言った。

「えっ」

 少し間抜けな声が出てしまった。こいつ今日どうやって来た、もしやバカなのか? なども、思った。


 教えて欲しいと言われて、今日どうやって学校に来たの? という疑問があったが、教えて欲しと言われたからとりあえず聞かずに駅までの道教えてあげたんだか、説明してもよく理解できなかったと言うので一緒に行くことにした、てか俺も電車だし、でも超気まずい。


「なあ、聞いていいか」

 駅に向かってる最中に疑問をぶつけることにした。

「何ですか?」

 「何ですか?」のセリフ、美南をとうに超えている(可愛さが)なんてことだ美南は泉宮に勝てないじゃないか、可哀想。

「今日どうやって来たんだ?」

さっきから思ってたことだ、これを聞かなければ寝れない、嘘だけど。

「えっ? あ、そう言うことですか」

 泉宮は納得したような顔した後笑顔で話した。

「実は、行きはしっかり来れたんです、でも先生の話を聞いてたら忘れてしまったんです」

 笑顔で言ってるけど可愛い子じゃなければ、ただのバカ発言だよなー、てかバカってよりは記憶力悪いのかな、でも可愛は正義だから、許されちゃうよね。

 それから、俺は泉宮さんを駅まで送り届けた。


家に帰った後俺は、ふと思った。

「それにしたって、あの子どこかで会った気がするんだよな」

 そう初めて会った気がしない、だが俺が女子と基本まともに話せないはず……気になるが、調べる理由って程じゃないし、てか調べようがないからなー、まぁ、そこまで気になるわけじゃないからいいか。


 突然だが俺は、妹との二人暮らしだ、妹の名は神崎綾香かんざきあやか、妹は自由なため必要な時以外は俺には基本関わってこない、いや別にただお兄ちゃんとして妹が心配なだけだから、断じて、妹が関わってこないから、寂しいわけじゃないから! シスコンじゃないから!

「あっ………てか、今日土曜日じゃん」

 学校の準備をしてた俺は、休日を寝て過ごすのも、なかなかいい案だったが今日は勉強しに学校の図書室に行くことにした、さすがに少しでもいいから勉強しないと学校の授業に追い付かなくなるからな、それにあそこの図書室は休日でも、だいたい学校が始まる時間に開く、さらにだ、わざわざ学校に来てまで勉強しに来る奴なんていないから、だいたいいつも貸し切り状態になるわけだ。

「おおっと、気分が舞い上がっちまったぜ」

 独り言聞かれると寂しいやつみたいになるからきおつけないと、あれ? 今日は誰がいる、誰だよ。

「えっ、泉宮なんでいんの」

 昨日の今日出会うとは思ってなかったから、びっくりして見れば分かる質問してしまった。

「私は、先生に、ここなら静かに勉強できると聞いて、勉強しに来ました」

「そうか、偉いな」

 誰その先生、まあ、今回だけは褒めてやろう、男にはそういうのは言うなよ。

「別になんも偉い事はしていませんよ」

「そんなこともないと思うぜ、勉強はやりたくてやるやつは、滅多にいないからな」

「じゃあ、神崎さんも偉いですね」

「えっ、なんで?」

「神崎さんも勉強しに来たんですよね?」

「まあ、そうだけど」

泉宮さんと俺の勉強する理由が結構違う気がする。

「なら、神崎さんも偉いです」

 泉宮は笑顔でそういった。やっぱ可愛い子に言われるとうれしいね!

「なあ、もし泉宮が良ければなんだけど一緒に勉強しないか、てか俺に教えてください」

 我ながら正直だな。

「ふふ、私はいいですよ」

 笑った時の泉宮さん可愛いし、優しいな! マジいい子。

「その代わりって程ではないんですが、連絡先交換しませんか?」

 泉宮さんはどこか落ち着かないように見える。

 何か、もじもじしてると照れるんだけど。

「いやな訳じゃないんだけど、何で?」

「この前のお礼をしたくて、だめならいいんですが」

「この前って?」

「駅案内ですよ」

 あれか。うっ、なんていい子なんだ、泣きそうになっちゃう。

「別に気にしなくてもいいのに」

 それに、俺に勉強を教えてくれるだけでも十分な恩返しになると思うし。

「じゃあ、私が知りたいんです、だめですか?」

 顔を傾げながら泉宮さんは言った。反則だよね。

「いや、むしろ交換してください」

「ふふ、素直ですね」

 微笑んだ顔はやっぱり可愛いな。


 その後、わからないところを教えてもらった、彼女泉宮千夏は俺が思っていた十倍勉強ができていた、この子はすごいな、可愛いし、優しいし、さらに言葉使いきれいだし勉強できる、あっ、これを非の打ち所がないっていうんだな。


第二章

 おかしい、何がおかしいって? 簡単なことだ、まだ二回ぐらいしか話してないのに今、現在泉宮さんが俺に話しかけている。まあ、泉宮さんが前より楽しそうに見えるし、俺もこれはこれで楽しいからいいんだけど。

「あの、聞いてますか?」

「ああ、ごめんでもちゃんと聞いてるよ」

 そう、ちゃんと聞いてる、ちょっとだけボーとしてだけだ。

「そうですか、まあ、いいです。で、どう思いますか」

「うん? 何が?」

「やっぱり、聞いてないじゃないですか」

 この怒った顔もかなり可愛い、だから心の底から言わせてもらう、「ありがとう」と。で、何の話をしてたんだろう? 


 そんなかんだで、放課後がやってきた。

「なんだよ」

「ねえ、一緒に帰らない?」

 ふむ、なぜかわからないが、美南が怒っているみたいだ、ここで断ると今よりひどい目会いかねない。

「まあ、いいけど」

 ここは、オーケーを出すのが妥当だろう。

「じゃあ、行こう」

 何か、怖い。


 歩いて十分が経った、さっきから、黙ったまんまなんだよなー、怖いな。こっちから話したほうがいいのかな?

「なあ、なんかようでもあんの?」

「別に、言わないとわからない人には言わない!」

 あからさまに、用事ありげに行っといてこれはないわー。

「なんじゃそりゃ、言わんとわからないだろ」

「そうだけど、でも今は、こうやって、拗ねるだけにしとく」

「はあ? 拗ねる? 気持ち悪いこと言わんでくれ」

 何か時間の無駄な気がする。

「はあ!? ぶっ飛ばされたいの?」

「冗談です」

 マジギレだった、怖いよ。

「ごめん、もうちょっとだけ待って信じる、だからもう気にしないで」

 なんでか知んないけど、機嫌が戻ったのか? 勝手に自己解決しやがった。

「まあ、お前がいいならいいけど」

「私がいいんじゃないの! 仕方ないから待ってあげるの。分かった?」

「うん、まあ分かった」

 これ以上話すと怒りが増しそうな雰囲気。

「まあ、期待しないで待ってる」

 少し無理に笑ってる気がするが、すっきりしてるし、いいのか? いいか。

「そうしてくれ」

 俺は不愛想に返した。


 家に帰って俺は思った、ここ最近、女の子に振り回されてる気がする、明日の俺いったい誰に振り回されるのかな? 時間の自分でフラグ立てるの好きだな、俺。


 結果から言うと俺は学校では、女子には巻き込まれなかった、ただ、注目して欲しいのは学校ではだ、そう学校ではない家にて巻き込まれた、妹に巻き込まれた。

「ねえ、聞いてんの?」

 俺がぼーとしているところに妹、神崎綾香が話しかけてきた。

「まあ、聞いているが、理解ができない」

 いつもの事だから心配はしてないが時々変なことを言ってくるから困る。

「だ~か~ら~欲しい物があるから、恋人の役をやれって言ってんの」

 なぜ、恋人役をやれって言われてる理由は、欲しいものが恋人限定だからそうだ。

「違うぞ、お兄ちゃんが言ってんのは、俺がなんで行かんとならんのだ」

 いつ行くかは知らないが、基本家から出たくない。

「いいの? 私が他の男と一緒に行って」

 悪戯っぽく話した妹、俺、よく考えろ・・・・・・・・・・・・。

「ダメだー!」

 妹が、男と歩いているところを考えると吐き気がする。

「じゃあいっしょに行ってくれるよね」

くっそ、ハメられた。なんか勝手にはまって言って気がする。

「分かったよ、いつ何時にどこに行けばいい?」

 仕方ない、他の男と行く羽目になるくらいなら、俺が行くか。

「今週の日曜日の朝八時にショッピングモールだよ、お兄ちゃん♪」

 くっそ、可愛いな。


とうとうその時が来た、言うほどの事では無いが、妹とのお出かけは疲れるから少し気合を入れるために言ってみただけだ。

「にしても、遅いなー」

 そんなことを言ってると人影が現れた。

「おーまたー」

 そんな言葉最近使ってる人いんのか? まあどうでもいいそんなことより・・・・・・・・。

「なぜ、家を出んのが別々だったんですかね」

「わざわざ、一緒に行くために合わせんの、面倒くさいから」

  なんだその理由、お前関係ないやん、待ってるの俺だし、お兄ちゃん待つよそのくらい待つよ。

「まあ、いいやでどうすんだ」

「え、どうするって?」

「いや、欲しい物買いに行くんだろ?」

「ああ、そうだった」

 ま、まさかこいつ忘れたのか!?

「じゃ、行こうお兄ちゃん」

 やっぱ可愛いな、妹最高―。


 何とか妹の買い物は特に何もなく終わった、よかった。

「はー、ありがとうお兄ちゃん、おかげで欲しいものが何とか買えたよ」

 今日はいつもみたいに疲れないかったので俺はよかった。

「まあ、いいよこのくらい、毎日はさすがにヤダけど」

流石に疲れちゃうかな。

「お兄ちゃん毎日・・・・・・ダメ?」

 上目使い、クッソ、可愛いなー

「出来たらな」

 そう返すしかなかった俺、妹に弱いな。

「やったーお兄ちゃんちょろい」

「妹よ、聞こえてるよ」

「お兄ちゃんは優しいから大丈夫」

 許しちゃう俺やっぱりシスコンなのかな?

「で、どうする妹よ」

「うーん、用事は終わったしなー」

「他に用はないのか?」

「特にないけど、どっか寄る?」

 まあ、たまには買い物も悪くはないな。

「そうだな、どっか行くか」

「あれ、ねえあそこにいるのって」

「気のせいだ、よし帰ろう」

 面倒だな、ここになんで美南がいるんだ。

「あっ」

 やばい、美南に見つかった早く逃げなくては。

「そうだお兄ちゃん桜さんと一緒にお店回ろうよ」

 なんてことを言うんだこの子。

「美南にも用事があるだろうし」

「私なら大丈夫だよ」

「げっ、美南」

 こっちに来るの早すぎだろ。

「リアクションがおかしいんだけど」

「気のせいだ」

 ここで、やっぱ帰ろうとかは無理だよな。

「一緒に行こう桜さん」

「うん、行こう」


 俺はハブられてしまい、美南と妹が楽しんでしまっている。

「ねー、どこから行くの? 綾香ちゃん」

「そうだねー、どうせ聞いても意味ないと思うけどお兄ちゃん行きたいところある」

 酷いな、まあ、無いけど。

「ないな、美南はなんか行きたいところないのか」

 どうせ、俺の要件があっても楽しくないだろうから、まだ美南の方がいいと思う。

「う~ん、あっそういえば服が欲しいだった」

 何か定番過ぎて面白みが無いな。

「じゃあ、皆で服を買いに行きましょう、特にお兄ちゃんは服がダサいから」

 何それ、お兄ちゃん悲しい。


「着いたー入ろう、桜さん、お兄ちゃん」

「いや、着いたのはいいが、ここ女子用じゃないか」

「そうだけど、どうかしたの?」

 だから何みたいな顔をする妹。

 えっ、マジで言ってんのかこの妹。

「なんかあったの? 瑛太」

 こいつもかよ、俺の妹と幼馴染が残念な子になってた、可哀想。

「いや、流石に入れないから外で待ってるね」

精神的に、特に他の女性客とかの目線。

「何言ってんのお兄ちゃん、一緒に行くんだよ」

「そうだよ、瑛太センスがないのは知ってるけど、ある程度は参考になるから」

 いや、ならないと思うけど。

「まあ、どうせ拒否権ないんだろうな」

 行きたくねえ、テンプレが起きませんように。


「で、お前ら何を買うんだ?」

「私は特に今欲しい服とかないからなあ、桜さん何が欲しいですが?」

「私は、今度クラスのみんなで親睦会を開こうってことになってて」

 おい、待て俺そんな話聞いてない。

「だから、服を買おうと思ってたの」

「そうなんですか、あれ? お兄ちゃんそんなこと言ってなかった気がしないんだけど」

「当たり前だ、だってそんな話聞いてないからな」

 クラスのみんなって言ってんのに俺は入ってないんだ。

「なるほど、じゃあ、やっぱお兄ちゃんも服を買わないとね」

 誘われて無いから、買わなくて、いい気がする。

「そうだな、ならさっさと服を買って帰ろう」

「面倒くさそうだねあんた」

 呆れた顔でこっちを見てくる美南。

「当たり前だろ、服なんかなんでもいいからな」

「だが、俺のを買ってから美南の服を選ぶことにしよう」

「なんで?」

 こいつは馬鹿なのか俺のほうが早く終わるから、その後は、お前らに任せれば俺が帰れるからだよ。

「最初に桜さんの服を買うと荷物をお兄ちゃんに持たせないといけないからですよ」

 ちげえよ、馬鹿が。でも、確かにそっちも面倒くさそうだけども。

「とりあえず、隣に男物の服が売ってたから、俺の服を買ってからお前の服を買うってことで」

「まあいいけど」

「桜さんがいいならいいけど」

 二人とも渋々だが許可してくれた。


 俺の服は特に何も起きることなく適当に選ばれたものを買うことにした、そしてすぐに美南の服を買いにさっきの店に向かった。

「さーて、何にしようかな」

 美南が気合を込めて言う。

「美南お願いだからさっさと終わらせてね」

「さっ、桜さんたっぷり時間をかけましょう」

 綾香がニコニコしながら美南に言う。

「おいおい、妹よふざけるのもいい加減しろよ」

 俺は、もう早く帰ってゴロゴロしたいんだ。

「ふざけてないよー、お兄ちゃん、てへ」

 あざといが、この笑みに勝てない、俺の負けか。

「で結局何を買うんだ? 上と下どっちだ、それとも両方か?」

 諦めて、なるべく早く済ませるように進行する。

「もうちょっと、他の言い方なかったのかな?」

「諦めてくれ」

「そうだね」

 そう、俺が女子に向かってきれいな言葉が出ると思ったなら大間違いだ。

「えっと、一応両方買おうと思ってるけど」

「とりあえず、一回一周してから選びますか」

「そうだね」

 回ってる最中にあるものを見つけてしまった、それは。

「おい、待て、ここパンツも売ってんじゃないか!」

 そう、パンツ、パンティーだ。

「見なければいいんじゃない、お兄ちゃん」

 聞こえる、「変態め!」という妹の目、そして地味に美南ちゃんも見ないで、こっちを見ないで、そんなゴミを見る目で見ないで!

「ま、まあ、適当に選んで買っちゃおうぜ」

 男子高校生は新品でも気にしちゃうの、早くして。

「適当には買わないよ」

「そうだよ、兄ちゃん桜さんはいい服を着ないといけないんだよ」

 その理論。それに、美南だぜなんでもいいだろ、何着てもそれほど変わらん。

「あっ、これとどう?」

 美南が俺に聞いてくる。

「ああ、いいんじゃない」

「ねえ」

「うん?」

 半目でこっちを見てくる美南。

「さっきから、適当に言ってるでしょう」

「まあな」

「そこは、嘘でも違うって言ってほしかった」

 怒った風に腕を振り回しぶつけてきた、アニメとかのポコポコとかじゃあない、普通に痛い。

「嘘言ってもしょうがない」

「お兄ちゃん、そこだよ、モテないのは」

 すかさず妹が俺のメンタルをえぐってきた。

「やめろ、お兄ちゃん傷つくよ、いいの?」

 まあ、本当なんだろうな、でも本当に傷つくよ!

「これなんてどうかな?」

 そういって持って来たのはワンピース? いや、俺服あんまり知らないし、てか女子の服を知ってんのも、おかしいと思う。

「いいんじゃない、それで」

「面倒くさいからって、適当に言わないでよ」

「あっ、でも本当に似合ってますよ、桜さん」

「本当? 綾香ちゃんが言うならそうかな?」

「ああ、ホント、ホント」

「適当な気がするけど、じゃあ、もう一つ着てみるから」

「えー、面倒それでいいじゃん」

「うっさい、次は比べるだけだからちゃんと見てね」

「分かったよ」

「よろしい」

 そういって嬉しそうに更衣室に入っていった。あれ、俺の妹知りませんかー、あいつ、さっきまでいたのに、一瞬でどっか行きやがった。


「ほら、どう?」

そう言って着た服は、ワンピースかな、いや違うか、カーディガンとのセット結局何なのか分からん、たいして期待してないが損した。てか、あんま変わらん。

「う~ん」

 正直言っちゃうと俺からしたら、さっき言ったが変わらないからなー。

「そうだなー、まあどちらかと言うと今着てる方かな」

「そう? 適当じゃなく?」

「ああ、まあ俺には服のセンスはないから、俺が好きなのは、今着てる方だな」

 本当にセンスがないから、まあどうちらかと言うとだがな。

「で、どうするんだ?」

「う~ん、待ってもうちょっと考えさせて」

「あいよっ」

 何か、祭りの掛け声ぽくなったな。

「ねえね、お兄ちゃん」

「なんだ妹よ」

 てかこいつさっきまでどこに行ってたんだ?

「桜さんまだなの? さすがに疲れちゃった」

 そう言って疲れたアピールをする妹あざといな。

 まあ、なんだかんだで、四時間は立ったしな。

「そんなの、俺も疲れてるよ」

「だったら、桜さんに言って来てよ」

 こいつ直接早く帰ろって言わないのか、せこいな俺のせいにできると思ってんのか、まあ、やっちゃうけどな。

「おーい、美南何やってんの?」

 てか、あいつまだ更衣室に入ってんのか? 出てこないと他のお客様に迷惑なので、出てください。

 あれ? 返事がないどうしたんだ。

「おーい、どうしたんだ? 入っても大丈夫か?」

 俺はカーテンを開けた時、俺は思った、あっ、フラグ回収したなこれ。

 入ったらそこには下着姿の美南桜がいた。顔赤らめてた。

「きやぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「グッヘ」

 俺は、美南におもっきり殴られた、痛い。

「待て、待てちょっと言い訳させろ」

「黙れ!」

「あ、ちょと」

 この後俺はすごく叩きのめされた、だがすぐに妹が来てくれたおかげで、そこまでひどい目になる前に止めることが出来た。


「確かに、ちょとやりすぎた感はあるけど、普通開けないでしょう」

 まだ、恥ずかしくてなのか美南の顔はまだ赤い。

「まあ、そうだけど、まだ着替えてたと思うわなかったんだよ」

「いや、どっちがいいか着なおしてたんの」

 そうゆう事、でもなんで俺の声聞こえなかったんだよ。

「まあ、分かった、俺が悪かった」

「そう! あんたが悪い、そう言う時は綾香ちゃんとか呼べばいいじゃん」

「そだな、分かったから忘れよう」

 でも、さっきの流れで行くのは難しけどな。

「わ、忘れろって無理に決まってんでしょ!」

「流石に無理だよ忘れろなんて、お兄ちゃん」

 そうかな? そうなんだな、覚えておこう。

「いやいや、すまんでも、美南がビッチじゃなくてよかったよ」

「お兄ちゃん、それはやばいって」

 妹よ、そういうのは早く言いなさい。

 そう俺は思った瞬間美南がものすごいパンチを俺に向かって放った、瞬きをすることも許されなかった。

「痛い、痛い、ごめんなさい冗談冗談」

 まあ、半分冗談、半分本当なんだがな。

「言って良い嘘とダメな嘘くらい分かれ!」

 美南が激怒、周りの目線が痛い。

「ごめんって」

「今回は酷すぎる、バカー」

 そう言うと、美南はどこか行ってしまった。

「お兄ちゃん、やり過ぎたんじゃないの?」

 心配そうに覗く妹。

「そうだな」

 確かに思ったことしか言ってないが、悪いことを言い過ぎた。

「さて、機嫌どうしたら直してくれるかな?」

 まあ、いつものことちゃ、いつもの事だが。

「いつも通りのクレープでいいかな?」

「知らないよ、そんな事」


 結局、クレープをおごると言う事で今回は許してくれた。やっぱ優しいな美南。


月曜の朝、旭日にあった。

「なあ、旭日」

「うん? 何」

「俺、誘われなかったんだけど」

「何に?」

 分かってるくせに。

「クラスの誰か主催の親睦会」

「ああ、でも君の事誘える人いないと思うよ」

 そうだけどさー。

「なんでお前ら言ってくれなかったの? 悲しすぎて泣くよ!」

「まあ、俺から言っとくって、言ったんだけどね」

「おまえか!」

 今日俺は犯人を見つけた。

「ごめんよ、言おうと思ったけど、忘れてた」

 絶対悪いって思ってない、だって笑ってるもん。

「それに、行くの? まさか」

 嘘だろ、みたいな顔をする

「俺は、どうするんだろうな?」

「さあ、でも強制じゃないから、来なくても大丈夫だよ」

「来てほしくないのか?」

「まさか、でも君は嫌いだろ、こういうの」

「そうだな」

 なるべくなら、行きたくは無い、だが行かないと「あいつ浮いてる」みたいな雰囲気が出るから、行っといて損はない。

「ちょっと考えるわ」

「考えたまえ」

 なんで上から目線なだよ。

「お前、後でぶっ飛ばす」

 本気で思ったことを旭日に放って俺は、自分の席に着きSHR が始まるのを待った。


昼休、昼食は基本一人で食べる事が多い、購買で買う時は教室の自分の席で食堂はもちろんそこで食べる、だが食堂は大抵複数で食べに来る人が多いから、購買の方が多い、で、今も購買でパンを買って教室に戻ってる最中だ。

「今日は陶山もいないし美南は友達と食べてるから、一人か」

 悲しいな、俺って。

「あの」

 はあ、今日も楽しくいってみよう。

「神崎さん」

「うわっ」

 びっくりした。さっきの「あの」って俺にだったのか。

「泉宮さんか、どうしたの?」

「あ、あの、もしよければ一緒に食べませんか」

「いいよ、てか、ありがとう、一人で食べんのも結構つらいんだよね」

 本当に一人悲しいやつだなと自分でも思う。

「泉宮さんは弁当なんだね」

「はい、これでも、料理は出来るんですよ」

 こう見えてもって、普通に出来そうなんだが。

「すげえな、料理もできんのか」

「はい、お母様から、いろいろ教えてもらって」

 ちょっと照れながらも、母親を尊敬してるようにも見えた。


「あっ、そういえば、親睦会に泉宮さんは行くの?」

 少し気になってたことだったので来てみたが、泉宮さんは、すぐには答えずに、考えた後、いつも通りの声で答えた。

「正直言うと、まだ決めてなくて・・・・・・・」

「そうか、俺も決めてないんだよな」

 事実、迷ったから参考までに、聞いてみただけだ。

「そうですか」

 俺の間違えでなければ少し、声のトーンが下がった気がする。

 なんか、話が止まったな。な、なんか気まずくなったな。

「あ、あの」

 先に、沈黙を破ったのは泉宮さんだった。

泉宮さん、ちょっと声が裏返ってますけど、大丈夫?

「どうしたの?」

「あの、もしよければ一緒に行きませんか?」

 な、なにー、これは、お誘いですか。

「まあ、そうだな」

「どうですか?」

 心配そうな、声で話してくる。

「そうだな、行くか」

「はい、行きましょう」

 なんか急に明るくなった気がする、どうしたんだ?

 その後、楽しく昼食を取ることが出来た。


 泉宮さんとの昼食の後、陶山を探すことにしたが。

「いないんだけど」

 あいつから、親睦会の内容を聞いときたかった。美南でも、泉宮さんでもよかったが、美南は他の友達としゃべってるし、泉宮さんは聞こうと思ったら、先生に呼ばれるし、本当は、あいつには、あまり頼りたくない、いちいち、ちょっかい出してくるし、正直言って、面倒だ。

「あっ、いた」

 どこにいたかと思えば、最後に回った、図書室だった。

「お前、何でこんなところにいるんだ」

「あれ、見つかったか」

 冗談ぽく返した旭日の顔は、ムカついた、てかキモイ。

「言いたくないならいいが」

「別にそうゆう訳じゃないよ、僕も勉強しなきゃ、追いつかないんでね」

 これは、嘘な気がした。

「まあ、別に何でもいいが俺、親睦会に出る」

「嘘だ~」

 旭日は少しびっくりした様な表情をしたが、すぐにいつものへらへらした顔で言った。

「大マジだが、てか俺が聞きたいのは、日程と時間とかその他のもだ」

「ああ、いいけど、君が行くなんて言うの珍しいね」

「そうか?」

「そうだよ、明日は雨でも降るんじゃないかい」

「まあ、浮かないための対策だよ」

「ふーん、まあ、いいさ」

 その後、場所と時間などを教えてもらった。


どうやら、今度の土曜日に親睦会を開くみたいだ、けど学校のテストも近頃あるみたいだから、そんな長いはできないかな。


 親睦会一日前、つまり金曜日。

「あの~」

「どうした?」

 放課後、泉宮さんに話かけられた。

「あの、明日ですよね、親睦会」

「ああ、そうだけど」

「やはりそうでしたか」

 泉宮さんは困った顔をしていた。

「どうしたの?」

「実は、私いつどこで、親睦会やるか知らないんです」

「え?」

 泉宮さんの話はこうだ、最初に親睦会の事を知ったのは委員長に親睦会を教えてもらったそうだ、だがその時はまだ行くかどうかは迷ってたので場所や日時を聞くのを忘れてたそうだ。

「そうゆことか」

 確かに今日は珍しく委員長は休んでるから委員長には聞けないし、泉宮さんはあまり、コミュニケーション能力が高いとは言えないから、他の人には聞けないだろう。

「でもよく、気づけたね」

 それが、なりより驚いたことだ。

「まあ、こんな浮かれた空気でしたので、もしかしてって思って」

 確かに、今日は少しいつもより騒がしい気がする。

「でも、本当に良かったね、下手したら行けなかったかもしれないしね」

「はい、気づけて良かったです」

 マジでよかったなー、これで泉宮さんが来なかったら、行っても一人でいるだけだったよ、美南も旭日もクラスの人と話すだろうから、俺一人になってたな。


「お兄ちゃん」

「なんだよ」

土曜日の朝俺は妹に起こされた。

「お兄ちゃん、今日親睦会でしょ」

 ニコニコして言う妹。

「そういえばそうだったな」

 適当に返す俺。

 にしたって早すぎる。

「確かに、俺はお前に今日の親睦会の時間を言ってないから、早めに起こしてくれたんだろう」

「そうだよ」

「分かってるけどな、でも朝五時は早すぎではないですかね」

 このくらい小学生にもわかる、多分。

「そう?」

「こんな時間にクラスの連中と集まる? 馬鹿か、誰も集まんねえよ」

 てか、この時間帯お店、やってるところあるのか?

「せっかく起こしてあげたんのに、ひどくない?」

 お前は、今まで俺を起こしたことがあったか?

「てか、なんでお前は起きてんの?」

 嫌がらせでやったの、そしたらやばいなこいつ。

「いやー、たまには早起きしようと思っただけだよ」

「嘘つけ」

目が泳いでる。

「なんで、お前が浮かれてんの?」

「別に浮かれてません!」

 さらに目が泳ぐ。

「どうした? 情緒不安定なの、それとも生理なのか?」

「違うわ、私は情緒不安定にならないし生理も来ないわ! アホー」

 何お前、アイドルなの?

「お前、キャラ崩壊してんぞ」

「キャラ、とか言わない、これが素です」

「お前に起こされたし、どっか散歩してくるわ」

 相手にしてるのが疲れたし、退散しよう。

「ねえ、それ私の事間接的に邪魔って言ってない!?」

「言ってるけど?」

 妹はその場に倒れた、よし、行くか。

「久しぶりだな、素の妹を見るの」

 あいつ、基本猫かぶってるからなー、素の方も可愛いんだけどな。


「さて、どこ行こうかな」

 あれ? あそこにいるのは、なんだ美南か。

「あっ」

 なんかテンションが上がった気がする。

「か~えろっと」

 あえて聞こえるように、言って違う方向に歩く。

「待ってよ~」

「はー、何でこんなとこにいるんだよ」

 呆れて、美南に話しかけると。

「いや~ね、盛り上がっちゃて」

「お前は、遠足に行くときの小学生か」

 てか妹同じじゃん。

「何よ、あんたも同じようなもんでしょ」

「俺は妹に起こされたんだよ」

「そうなの?」

 そうだって言ってんだろ、何で聞き返すの?

「まあ、起きてた理由は分かったけど、何してんだ?」

「暇つぶし?」

 何で俺に聞くの? 自分の事だよね。

「お前もか、俺も暇だからどっか行こうぜ」

 本当は帰りたいが、今帰るともれなく元気のない妹がいる。

「そうね、どっか行きたいところない?」

 美南が少しテンション上げめに話しかけてきた。

「どこでもいいよ」

「何それ、新婚夫婦のやり取りでもしたいの?」

「ちげえよ、行きたいところがないから、お前の行きたいところに行こうよってことだよ」

「ああ、そうゆう事ね」

 えっ、今のボケたんじゃないの? マジでわかんなかったの?

「俺は少しだけ暇をつぶしたいだけだから、さっさと行こうぜ」

「なんか自由過ぎる!」

 俺は自由に生きる男なんだよ。

「で、どこ行きたいの?」

「う~ん、どっか行きたいってよりは、おなかすいてるから、ご飯を食べに行きたい」

「そうだな、俺も飯食いに行きたいな」

「じゃあ行こうよ」

「ああ、どっか近場のファミレス行こう」


「なあ、ファミレスに来たにはいいが、これからどうするの?」

 俺が食べ終わり、美南が水を飲み始めたタイミングで聞く。

「そうだね、ご飯食べ終わっても何もすることないしねー」

「帰るか」

「えっ、暇だから一緒に時間を潰すために行動してたよね!?」

「そうだけど、別にもういいかなーって」

「嘘でしょ!」

美南は身を乗り出して言う、だが胸がないため、かなり残念だ。

「どっか行きたいところがあるなら行ってもいいけど」

「じゃあ、デートしようよ」

 若干照れてるように見えた。可愛くないわけじゃないけど、幼馴染は、女子には見れないよね、特にあいつまな板だし、だから俺はこう答える。

「やだよ」

「え~何でよ、いいじゃん」

 頬を膨らませて言う。そ、そんなことをしても可愛いくないんだからねっ。

「なんで俺がお前なんかと初めてのデートをしないといけないんだよ」

「私のこと嫌い?」

不安そうな顔でこちらを見れ来る。

「別に嫌いとかじゃなくてな、何で今幼馴染のお前とデートしないといけないんだよ」

「別にいいじゃん、てか逆に幼馴染だからよくない?」

 よくないな。俺の初デートは可愛い彼女に捧げるからな。

「まあいいよ、じゃあ買い物」

 テンションが下がってなのか、かなり投げやりだ。

「買い物なら」

「買い物ならいいんだ」

 まあ、デートじゃないからな。

「で、どこ行くんだ?」

「そうだねー、どうしようかな?」

「帰るね」

「ごめんごめん、分かったちょっとだけ待って」

 俺の服をつかみ懇願している。なんか哀れだな。

「少しだけだな」

「分かった」

 美南は顎に手を当てている。

「行きたいところあったか?」

「あっ、そうだ」

 何だこいつまるでなんか閃いたみたいな顔をしてるな。

「で、なんかあったのか」

「うん、瑛太そろそろ誕生日でしょ」

 今四月だよね、俺の誕生日六月の二十一日なんだけど、これそろそろって言うの? 言わないよね。

「まあ、俺が思ってることは言わないから、俺の誕生日がどうした」

「誕生日プレゼントで服を選んであげる」

 ニコニコして美南が言ってくるでもさプレゼントって言ってるのに選んであげるってことは買わないよって事? それプレゼントじゃないよね。

「まあいいか、ショッピングモールでいいんだよな」

「そこでいいんじゃない」

 家の近くにショッピングモールがあるのは便利だと思う。けどあれだよな、近場だから、ちょっと遠い所からクラスメイトが来ると思うと家から出たくないよね、俺だけじゃないよね。


 服屋に来たのはいいが、さっきから俺の服を選んでるようには見えないんだけど。

「なあ、今何やってんの?」

「えっ? 服を見ているんだけど」

「誰の?」

「私の」

「じゃあな」

「嘘です、嘘です、本当にごめんなさい」

 本当になんなの、てか何しに来たの俺。

「まあ、冗談はこれくらいにして、あんたに合うのがあんまないんだよね」

 マジ、泣くよ、泣いちゃうよ。

「お前が、選ぶって言ったんだろ」

「まあ、そうなんだけど、仕方ないからなー、回りながら探していきますか」

「そうするか」


 服を探して既に一時間は過ぎている。

「なあ、そんなに俺に合う服無いの?」

「合わないっていうか、どれもイマイチって感じ」

 それ合う服無いってことだよな。

「まあ、無理して探さなくてもいいけど」

「いや、別に無理してるわけじゃないんだけど、あっ」

 美南が、こちらを見てると思ったがそうじゃなかった、後ろにある服に注がれている。

「あの服も着た方がいいか?」

「いや、大丈夫」

 じゃあ何で見たんだ?

「そうか、だったら今日は帰ろうよ」

「何で?」

 首を傾げて言う。

「帰りたいから」

「ふ~ん、まっいいか」

 今回はやけに素直だな。

「じゃあ、今日の親睦会でまた会いましょう」

「そうだな、お互い楽しめるといいな」

「そうね、少しだけだけどじゃあね」

「ああ、じゃあな」

 俺たちはそう言うと、お互い自分の家に向かった。


 家に帰ってらまだ玄関に妹がいた。

「何やってんの」

 少し自分の顔を引きつった気がした。

「あ、お兄ちゃん、お帰り」

 暗いトーンのまま俺の顔を見て言った。

「ああ、ただいま」

 もしかして、まだ引きずってんの、メンタル弱すぎだろ。

「眠い。zzzzzz」

「えっと、もしかし眠かっただけ?」

 マジかよ、心配して損した。

「邪魔だ」

「お兄ちゃん~眠い~」

 揺さぶりながら言うと、妹が甘えるように言う。

「うっせえ、黙って、自分の部屋に行け」

「分かった、お兄ちゃんの部屋に行く」

 ニコニコしながら、俺の部屋に向かってる妹。

「いいのか、襲うちゃうぞ」

「わ、私お兄ちゃんならいいよ」

 上目づかいで俺を見る妹、なかなか悪くない。

「そろそろ、ホントウニ、オソウヨ」

「お兄ちゃん・・・・・・キモイ」

 マジの目だった、そしてさっきまで俺もマジの目立った。

「ひどい」

「事実だから仕方ない」

「俺、部屋で親睦会まで暇潰すから、もう部屋に入ってくんなよ」

「はーい」

 絶対に来るな、これ。

「邪魔はするなよ、少し寝るから」

「はーい」

 妹は手を挙げながら言う、こいつ絶対来るね。


「はー、眠いな」

 てか何時だよ、十時か。特に感想はないな、集合は四時だし特に気にしないで寝れるな。


「お兄ちゃん~」

 マジで来やがった。

「眠いんだよ、邪魔しないでくれ」

 えっ? みたいな顔で見る妹。

「でも、三時半だよ」

 え? マジで、俺どんだけ寝てたんだよ。

「ごめん、ありがとう」

 マジでただ邪魔しに来ただけだと思った。

「ふふん」

 手を腰に当てて立つ妹、ありがたいって思った俺を殴りたい。

「じゃあ、俺は準備したら出るから、部屋から出ってくれ」

「何言ってるの? お兄ちゃんのお着換えを手伝うのが妹の使命ですから」

「普通にキモイ、出ていけ」

 でも時間があれば、着替えさせるのもありだな。

「じゃあ、お兄ちゃん遅れちゃ駄目だよ」

「ああ、分かってる」

 面倒だなー、眠い。


「ふむ、時間ギリギリだったはずなんだけどな」

 周りにクラスメイトらしき人は見当たらない、腕時計も携帯も家に忘れてしまったから、時間を知るすべがない。

「時計はどっかないかな」

 無いな、この辺、回ったら誰かと会うかな?

「あっ、神崎さんこんにちは」

 歩いてすぐ出会ったな。

「泉宮さん、こんにちは、悪いんだけど、今何時?」

 出会ったすぐ時間聞くってあまりよくなかったかな?

「えっと、もう四時ですね」

 嫌な顔一つせず答える泉宮さん、やっぱりこの人女神だ!

 でも四時だったのか、にしたってみんな来るの遅くないか?

「じゃあ行くか」

 集合場所に行くように誘う。

「そうですね」


 着いたのはいいが来てる人は、十五人くらいだな。でも美南も旭日は…いるな。

「よっ」

 俺が美南と旭日に声をかけると。

「本当に来たんだね、瑛太」

「来なかったら、私ぶっ飛ばしてた」

 考えただけで、寒気がする。

「まあ、行っとけば、そんなすぐには浮かないはずだからな」

「え? いやあんたならすでに浮いてるけど」

「そうだね、瑛太もうすでに浮いてるよ」

「いや、そんなはずは・・・・・あれ?」

 学校始まってから、今までのクラスメイトの態度、もしかして俺、浮いてる?

「いやだってあんた、基本一人でいるのに、浮かない方が不思議って話だよ」

「そうだね、瑛太一人寂しいやつって見られてるよ絶対に」

「お前ら、ひどいな」

「皆そろったね、じゃあ行くよ」

 俺を無視して美南がクラス全体に声をかける。

「えっ? ここじゃないの」

「うん、そうだけど」 

何で、そば屋の前に集合したの? そば屋可哀想だよ。


 歩いて十分経ったぐらいのところにそば屋があった。

「何でだよぉぉぉぉぉ」

 何で集合場所そば屋にしたのに、集合場所のそば屋じゃないんですかー、最初のそば屋可哀想だよ、なんか比べて駄目みたいじゃん、いいそば屋だよあそこは。

「なあ、美南何で集合場所のそば屋じゃなくて、ここのそば屋なんだ」

「それは、何でだっけ?」

 知らないのかよ。

「瑛太、それはね、集合場所のそば屋は団体のお客が駄目だったんだよ」

 旭日が代わりに答える。なるほど、良かったー、あそこのそば屋が嫌われてんのかと思った。

「席はどうなってんの?」

 店に入って、俺は気になることを聞いた。

「席は自由だよ」

 俺が聞くと旭日が答える。

「クラスメイト全員揃ってるのか、すげえな」

 余った席に着いた俺はそんなことを思った。

「あの、お隣いいですか」

 泉宮さんがそう言いながら、座ってくる。まあ嫌じゃないけど、俺なにも言ってないけど座っちゃうのね。

「来たのはいいけど、結局隅で誰とも話さないで終わりそうだな」

「そんなことはないですよ、今日は私がいますから」

 隅って言うのは変わらないですけど、と泉宮さんが言いながら微笑んだ。

「そうだな、やっぱ来てよかったな」

 可愛い女子と話すだけで俺は幸せになれる。

「私も来て良かったです」

 本当に来てよかったな、まだ始まったばっかりだけど、楽しいな。

「じゃあ皆~、取り合えずこの店でご飯食べたら、カラオケ行く予定だから、五時半から六時の間にこの店を出るつもりで、話すのもいいけど速めに食べてね」

 委員長がそう言うと皆が「はーい」と答えている、少しうるさいんじゃ、気にしちゃ駄目か。


 数分後、皆のテーブルにはそれぞ頼んだそばが並ぶ、中にはそばではなく、うどんを頼んでいる人もいた、そば屋に来たんだからそば食べろよと思いつつ、俺はなるべく気にしないで泉宮さんと話しながらそばをすすった。


「はー、お腹いっぱいだー動きたくない」

「そうですね、少し食べ過ぎた感じがありますね」

 本当にその通りだ、この後カラオケ? 無理だね帰って寝たい、てか思ったよりそば多いい。

「瑛太、帰っちゃ駄目だからね」

 笑いながら、美南が言ってくる、怖い。

「俺が、帰る理由がないのに?」

 自分ではそんなに目が泳がないように気を配る。

「帰って寝たいとか思ってんじゃないんの?」

「ま、まさか」

「さっきから目が泳いでる」

 目が泳がないようにするのって難しいね。

「分かった、ちゃんと行くよ」

「そう、来なかったらぶっ飛ばすね」

 マジで行かないと俺がこの世からいなくなりそう。


 カラオケ屋に着いたのは場所が近いのもあったため、六時に着いた、流石にカラオケのワンボックスにクラス全員は入らないため、十二が二つ、十一が一つ計三つのグループに分けて入った。美南と旭日は他のグループに入ってしまい、泉宮さんだけ一緒だった。

「一人じゃなくてよかったが、なんか気まずいな」

「そうですね」

 俺が小声で俺が話すと泉宮さんも小声で答える。

 何で気まずいかというと、さっきから誰もしゃべってないためだ。それにこのグループにはまとめ役が一人としていない、てかよく見たら、ほとんどのやつが、学校で一人でいるやつが多いい気がする類は友を呼ぶって事か。何とかしなきゃだよな。

「私帰るね」

 この沈黙の中一人の女子が言うとその女子につずいて次々帰る宣言をしていく、とうとう残ったのは、俺と泉宮さんだけだった。

「皆帰っちゃたね」

 カラオケで解散って言ってなかったのに帰っていったけど、あの人達大丈夫な。

「そうですね、どうします神崎さんは」

「俺は・・・・・」

「いや、ごめんなさい、二人しかいないのに帰らないって意味ないですよね」

 そういうと泉宮さんは席を立って出口に向かう。

「待って、もし、もしよければだよ、俺と一緒にカラオケで遊ばない? お金ももったいないし」

「いえ、私もカラオケしたことないのでしたいです」

 えー、断られた。

「じゃあ、一緒に歌おうよ」

「そう、ですね、歌ってみます」

 笑顔でそういった。


「そういえば、これって何時間までなの」

 歌い始めてから、もう一時間は過ぎてる気がする。

「あっ、そう言えば何時でしたっけ」

 そういうと、俺はテーブルの上にある時間が書いているカードを取って見た。

「なあ、今何時だっけ?」

「えっと、今は七時半ですね」

 俺が尋ねると、すぐに返事が返ってくる。

「なあ、俺だけじゃ信用ならねぇから泉宮さんもカード見てくれない?」

 俺は言いながら、泉宮さんにカードを差し出す。

「はい」

 そう言うと、紙を受け取った瞬間泉宮さんの顔は真っ青になる。

「あ、あのこれ時間が過ぎてるとおもんですけど」

「やっぱりそうか」

 そう、カードには七時と書いてある、時間短くない、本来は一部屋に最低十一人だよ、う~んやっぱ少ないと思うんだよな~。

「神崎さんこれって、大丈夫なんでしょうか!?」

 少し食い気味に聞く泉宮さん。

「まあ、大丈夫って言われると大丈夫ではないよな」

「私警察に捕まっちゃうんでしょうか」

「え?」

 急に変なこと言い始めたぞ、大丈夫ですか泉宮さん。

「だって、時間外の使用って、本来一回分の映画のチケットで二回見るみたいな感じじゃないですか」

「そうなのか? 俺はカラオケに来ることはないけど、確かこういうのって延長代を払って終わりじゃないの?」

「え? そうなんですか」

「そうだと思う、電話もあるし聞いてみようぜ」

「それもそうですね」

 少し落ち着いたがまだ顔は青ざめてんな。それから俺は出口付近にある電話に近づき、電話をしてこの事をについて聞いてみると、後で一時間分を乗せとくと言われた。

「やっぱり問題なかったぞ」

 さっきまで真っ青な顔になって顔がほっとした表情絵と変わった。

「そうですか」

「でもここ一時間ごとでしか変えられないからな、残り三十分どうする」

「歌うの疲れてしまったので遠慮したいところですよね」

「ああそうだな、じゃあ休憩がてら軽く話しながら時間まで待つか」

「そうしましょう」


あれ? おかしいなー十分経ってんのにまだ一言も話してないんだけど。てか気まずい、俺から話を振った方がいいのかな、何かあったけ、話題。

「あの、急にですけど修学旅行一緒の班になれるといいですね」

「ああ、そうだな急だな、でも一緒になれたらいいな」

「はい」

 ごめんねー、せっかく話振ってくれたのに終わらせちゃって本当にごめん。

「そういえば、修学旅行ってどこだっけ」

「確か、京都のはずです」

「京都か、行ったことあるの? 泉宮さんは」

「私はないけど、神崎さんはあるんですか」

「まあ、中学生の時に行ったな」

 正直つまらなかった、美南も旭日もいなかったから余計だ。

「そうなんですか」

「でも、京都楽しみだな、泉宮さんや旭日、美南と一緒に行けたらいいなって思うよ」

「そうですね、皆で楽しい修学旅行になったらいいですね」

「ああ、そうだな」

「本当に先の話ですけど」

「そうだな、あっ、時間もいい感じだしそろそろ出ようぜ」

 時間は七時五十五分を指していた。

「本当ですね、じゃあ出ますか」


「まあ、流石に他のみんなは帰ってるか」

 カラオケボックスを出たら、当然だがそこには誰もいなかった。

「私たちは本来の時間の一時間も過ぎてますからね」

「じゃあ帰るか」

「はい、そうしましょう」

「駅まで送るよ」

 もう少し一緒にいたいし、一人で帰らせる訳にもいかないしな。

「そうですね、どの道一緒ですしね」


「なあ、泉宮さんって友達っていたの」

 今のは自分でもかなりデリカシーがないと思った。

「いいえ、いませんでした、でも小学生の時はにいました一人だけ」

 小学校以降は会ってないんですけどね、と苦笑いで言う泉宮さん。

「そうか、なんか悪いな」

 自分で聞いといてなんだが、何で聞いたかが分からない。

「いえ、今は神崎さんがいるし、昔の事はもう気にしないことにしました」

「そっか」

 少し気まずい雰囲気が流れる。

「はい、神崎さんはどうなんですか」

 さっきの仕返しだろうか。

「俺は、二人だけいたよ、美南と旭日」

 少し自慢げに言う俺、情けねえ俺。

「それは少し羨ましいです」

 本当に羨ましそうだ。

「小学校や中学校はあまり良くなかったかもしれないけど、高校生はきっといい思い出になるよ」

「そうですかね?」

「だって、俺と友達になってから前よりも楽しいだろ学校」

「確かにそうですね」

 俺がそう言うと、頷く泉宮さん。

「泉宮さんにはそのうち美南と旭日とも仲良くなって皆で遊べたらいいなって思うんだけど、どうかな」

「私も美南と旭日とも仲良くなってみたいです」

「そうだな、そのうち遠くないになれるさ、友達に」

「はい」

 そんな話をしていたら駅のホームに着いた、残念だがここで泉宮さんとお別れだ。

「じゃあね」

「はい、さようなら」

 泉宮さんはホームに来た電車に乗り、そう言うと電車の扉が閉まった。


第三章

「ねえ、昨日は何で先に帰ったの?」

 朝俺は美南の不機嫌な声で言われた。

「別に俺は帰ってない」

「じゃあ何でいなかったの?」

 俺はこの時点でかなり面倒だったが、その時の経緯を説明した。

「な、なんで、泉宮さんとそんな長くカラオケボックスにいたのよ」

 少し、あたふたしながら美南が言う。

「いや、だから言ってんだろ、歌ってたら時間が過ぎちまったんだよ」

「そんなの信じられる訳ないでしょうが!」

 机をたたき俺に迫ってくる。

「そうかな」

俺は顔を横にそらして言う。

「そうだよ、個室だよ、も、もしかしてレイプ!? 警察に行きな」

 驚愕の真相を知ったような顔になった。

「ちげえよ!」

 そんなことするか、犯罪だよそれ。

「第一そんなことしたら泉宮さんと俺来てないと思うんだけど」

「もしかしたら瑛太が脅したかもしれないし」

 だから、それ犯罪だよ。

「する訳ないだろ」

「本当?」

 美南が疑いのまなざしを向けてくる。

「本当だって、泉宮さんに聞けばいいじゃん」

「てか、何いつからそんなんに仲良くなったの泉宮さんと」

「え? いつからって言われても、あんま、覚えてない」

 仲良くなったのをいちいち覚えっていないくね。

「違う私が言ってるのはそうゆことじゃないし」

 怒りながら、そっぽを向く。

「じゃあ、どうゆう事だよ」

「いいわよ別に、私が勝手に嫉妬しただけだから」

 美南が顔を赤くしながらい言う。

「最近お前変だぞ」

「変? 変・・・・・・」

 美南は俯いて言う。

「おい、大丈夫か?」

 さすがの俺も不安が出た。

「大丈夫な訳ないじゃん!」

 さっきとテンションが変わり過ぎている。

「私は、ずっとずっと」

「おい、どうした」

「ふざけんな!!」

 美南がそう叫ぶと、教室から出て行ってしまった、クラスのみんなが数分俺の方を見ていた、そして俺がそこでずっと立っていると、陶山に声をかけられた。

「おい瑛太、桜ちゃんになにしたんだ」

 心配そうに言ってくる。

「いや、何もしてないはず」

 何かしたとしても、それが何か分からないから、こうなったんだけど。

「じゃあ、その辺は後で聞いてやる」

「ああ、頼む」

俺はこの後の授業は全く頭に入らなかった。


 放課後、机越しに俺と旭日が座っている、ちなみに美南は居なくなってから、帰ってこなかった。

「で、お前は桜ちゃんに何を言ったんだ」

「いや、何も変なことは言ってないはずだけど」

「いいから、全て言いなはれ」

 何だそんな変な言い方なの。


 俺が美南との会話を全てを話し終えたところで旭日は、「はー」とため息をついた。

「なんだよ、俺なんか悪いことしたのか」

「いや、悪いことしたかって言われたらそりゃあ悪いことしてると思うよ」

「そうなのか」

「まあ、でも今回は桜ちゃんも少し悪いと思うけど」

「どのくらいの割合」

「一対九で瑛太が悪い」

「結局俺が悪いって言ってるもんじゃんそれ」

「まあそうだね」

「俺どうすればよかったんだよ」

「そうだね、相手の気持ちに気づいてあげる事かな」

 そんな事出来たら、俺もっと気が利いた事いつも言えるよ俺多分。

「じゃあ今回は何を気づいてあげればよかったんだよ」

「それは俺からは言えないな」

「何でだよ」

「そうゆうのはお前が気づいてあげるか、本人が言うかのどちらかだな」

「だって、美南言わないし、俺分かんねえよ、そうゆうの」

「そうだろうね、だからそれが一割が、桜ちゃんの悪い所なんだよ」

「なんだそれ、結局俺が全部悪いみたいじゃん」

「いや、桜ちゃんもそれを知ってたはずだからね、それを我慢できなかったから桜ちゃんも悪いんだよね」

 てか結局解決してないんだけど、こいつ俺が解決してやるぜ、みたいな雰囲気だったのに、意味わかんねえよ。

「お前と話しても結果が出なそうだから、俺帰るな」

 こいつに相談するんだったら泉宮さんにした方がよかったよな、絶対。

「あ、ちょっと」

 後ろで、珍しく慌てた旭日を見たが俺は振り返らず、帰った。


「さて、どうしたもんかな」

 いつも美南を怒らせてるが今回は少し違う気がする、その時の言葉というか、何かため込んだのが爆発した感じだと思う。

「でも、ここまで分かったとしても、肝心の理由が分からないんだよな」

 明日、美南来るのかなー、泉宮さんに、相談のメールでもしとくか。

「お休み」

 誰もいない部屋でそう言ってから寝た。


次の日、俺は早く行きたくもないのに、早起きしてしまった。

「最悪だな」

 だがそうも言ってられない、メールを確認したところ、今日の朝泉宮さんが相談に乗ってくれるとのメールが返って来たからだ。

「どのくらい時間にいるかは分からないけど、待たせるのも悪いしさっさと行くか」


「やっぱ、早かったかー」

 だって誰もいないもん。

「誰もいない教室って、不思議な気分になれるな」

「そうですね」

「うわっ」

 俺は後ろから女子生徒に声をかけられて、カッコ悪いことに尻もちをついてしまった。

「泉宮さんか」

 後ろから声をかけて来たのは泉宮さんだった。

「すみません、ぼーとしていたので、つい」

 泉宮さんが笑いをこらえながら言う、この時今度仕返しをしようと心に決めた。

「私は、ぼーとしないので何も出来ませんよ」

 どうやら顔に出てたらしい。

「そんな事より神崎さん相談の方はいいんですか」

「あっ、そうだったな」

 今の会話で結構マジで忘れてた。

「メールした通りなんだが」

 俺は迷惑ながら、今の状況を包み隠さずメールで教えた。

「いくら相談だからって名前まで書かない方がいいと思うんですけど」

「そうなのか」

 確かに俺は、さっき言った通り包み隠さず、名前から場所時間までしっかりと教えたのだ。

「はい、もし本人にばれたらまた何か言われると思います」

「そうか、今度からきおつける」

「そうしてください」

 泉宮さんは少し微笑んだ。

「じゃあ、さっそくなんだが」

「はい、何でしょう」

「俺何が悪かったんだ?」

「・・・・・・・・・・・・」

「えっと、俺なんか変なこと言った」

 何か泉宮さんが少し冷たい目線を送ってくる。

「いえ、別にそんなことないと思います」

 何か、少しボー読みなんだが。

「てか、俺どうしたらいいと思う」

「デートでも誘ったら良いんじゃないんですか」

 えっ、何か急に適当になった気が。

「デートか」

「まあ、女子ならデート誘われて喜ばない子はいないんじゃないですかね」

「そういうもんか」

「た、多分ですけど」

 急に弱気になったな。

「どうしたの」

「いや、相談に乗ったのはいいですか、基本一人の私が相談にしっかり答えられたのかが分からなくて」

「いや、そんな事無い、すごいためになったよ」

「本当ですか」

「ああ」

 涙目の泉宮さん、かわいいー。

「本当にありがとう、泉宮さん」

「いえ、私なんかの答えが役に立ててよかったです」

 まあ、デートに誘うのは危険が伴うので遊びに行くってことにすれば行けるだろう。


昼休、俺は一人になるため、外通路でご飯を食べることにした。

「本当ここは最高だな、この通路昼休中は誰も来ないからいい所だ」

 てか今日、美南来なかったな、大丈夫なのかあいつ。

「どうやら美南に接触する理由を探さないといけないみたいだな」

「おお、ちょうどいい所にいた神崎」

 後ろから女性の声がした、てか、先生がいた。

「なんですか、未婚先生」

「おい! クソガキがぶっ飛ばされたいか!?」

「いえいえ、まさか」

 この先生は、二年の始業式、教室でこの先生澤菜みこな(さわなみこな)先生で、クラスメイト(バカ)が「結婚してないさそうっすね、俺未婚先生って言いますね」と言ったところ、うちのクラスでは未婚先生と言われるようになった。

「まあ、ならいい、話を戻すぞ」

「どうぞ」

 まあ、先生が勝手に取り乱したんだがな。

「明日なんだが、美南の家に行ってこれを渡しに行って来て欲しい」

 そう言うと、未婚先生、澤菜みこな先生が封筒を渡してきた。

「何で明日渡すのに、今渡すんですか?」

「私が持ってると、無くしそうだからお前に押し付ける」

「それ、先生としてどうなんですか」

「まあ、別に今日渡しに行ってもいいが、明日来なかったら、明日の分もあるから二日連続で行く羽目になるがな」

 俺の言葉を無視して話始める。

「じゃあ、やっぱ先生が持っといてくださいよ」

「もともと、そのつもりだが」

 じゃあ、何でさっきお前が持ってろって言ったんだよ。

「だから返せ」

 そう言うと、未婚先生が手を出してくる。

「どうぞ」

 あまりこの先生得意じゃないんだよな。

「今、得意じゃないとか思っただろ」

 なぜわかったー。

「人の心読み過ぎると、嫌われますよ」

 今まで心読んできたやつ、嫌いになったもん一日だけ、だけど

「結婚できない理由これかって思っただろー」

「そこは心読んで!」


「先生の相手疲れたなー」

「あれ? 瑛太じゃないか」

 旭日が先生と入れ違いで現れてきた。

 うわー、また面倒奴に絡まれたな。

「今、面倒いのが来たって思ったでしょ」

「お前もかよ!」

 本当にどいつもこいつも心読みやがって。

「で、何だよ」

「いや別に、桜ちゃんと仲直りしたのかなーって思ってただけだけど」

「うざい」

 たまにいるよな、聞いて欲しくない事ばかり聞いてくるやつ、うざいよな。

「まだだよ」

「多分明日も来ないと思う、瑛太から行かないと、もしかしたら、もう来ないかもしれない、早い方がいいよ」

「分かってるよ、そのぐらい」

 だから、会う理由を探しているんだ。

「まあ、分かってるなら、いいか」

「悪いな心配かけて」

「僕は、これからも君達とは、仲良くしたいからね」

「そうか、本当にありがとう」

「いえいえ」

 ギャルゲーなら、行動は明日まで何もできないけど今日、一応下見で美南の家に行っとくか。


「来たはいいが、やっぱ特にする事無いしなー」

 俺は美南の部屋を見たがカーテンが邪魔で中の様子がうかがえない。

「何をやっているんですか?」

 後ろには女の人が不思議そうにこちらを見ている。

「うわぁ! びっくりした、泉宮さんか、どうしたのこんな所で?」

 後ろにいたのは、泉宮さんだった、どうしてここに?

「私、先生にこれを頼まれて来たんです」

 そう言うと泉宮さんは封筒を見せてくる、あれ? これって

今日先生が言ってたやつじゃないですかね。

「そうなんだ」

 あの離婚先生が、後でシバク。

「そっか、じゃあ俺帰るね」

 そう言って歩き出した、だがそれは次の言葉のせいで、逃げられなくなってしまった。

「あの、一緒に行きませんか」

「ねぇ、泉宮さん」

「分かってます、喧嘩中なのは知っています、でも一人で行くのけっこ辛くて」

 どうしよう、今のところ特に話す内容、決め手ないんだよね。

「じゃあ、行きますよ」

「え? 待って」

 だが遅かった、すでに、インターホォンを押していた、音が鳴るとすぐに反応があった。

「はい?」

 声から察するに、美南の母親だろう。

「すみません、先生から預かったものを届けに来ました」

「そうですか、ありがとうございます、今行きますね」


 数分後、美南の母親が出てきた。

「来て頂きありがとうございます」

 ここは、テーマパークかなんか、なんですかね。

「あれ? 瑛太君も来ているのね」

「はい、まあ」

「じゃあ、となりの子は彼女ね」

「違います」

 本当にこの人の相手疲れるな。

「私は、泉宮千夏です」

 泉宮さんがそう言って頭を下げる。

「私は、美南璃子みなみりこです」

 早く帰りたいなーと、美南の母親の微笑んだかを見て思ってしまった。


「で、どうするの?」

 と、美南の母親、美南璃子が言った、一応さんをつけた方がいいのだろう。

「俺はまたの機会にしときます」

 また来る羽目になるんだから、家に入るのはその時でいいか。

「私も今日これを渡しに来ただけですし」

 そう言うと泉宮さんは封筒を璃子さんに渡した。

「じゃあ、失礼します」

 そう言うと泉宮さんは走ってどっか行ってしまった。

「じゃあ、俺も」

「あっ待って」

 逃げようとしたが失敗してしまったみたいだ、今回で逃げるのも二回も失敗してる、運無いなー。

「なんですか」 

 俺が嫌そうに言うと、璃子さんはニコニコしながら。

「桜を呼んでくるの」

「やめて下さい」

 ここで、呼ばれたら最悪だ。

「何で?」

「今美南とは少し喧嘩してて」

 流石に素直に言えば、無理に合わせようとしないだろう。

「なるほど」

 璃子さんは手に顎を乗せて言う、何がなるほどって?

「一つだけ聞いてもいいですか」

「何?」

「美南は何で休んですか」

 これは、聞けるなら聞いときたい。

「一応、熱ってことで休んでるけど」

「けど?」

「本人は、行きたくないって言ってる」

 なるほど、やっぱりあれが原因か。

「そうですか」

「そうよ」

「もし明日も休むなら、また明日も来ます」

「何で?」

「明日もなんか渡す物があるんだそうです」

「そうなんだー」

 他人事だな。

「はい、じゃあ失礼します」

「多分明日も、休むと思うからまたね」

「いやですよ、明日は来るようにしてくださいよ」

「なんで?」

 首を傾げても可愛くないですよ。

「勉強が追いつけて、いけなくなりますよ」

「優しいのね、瑛太君は」

「いや、そんなじゃないですよ」

 学校に来てくれれば、捕まえやすいから、来て欲しいだけだし。

「それじゃ、また来ます」

「またね~」

 二度と来たくねー。


 帰ってから考えたが、何を渡すかわからないけど、美南に合うのって、かなり難しい気がするだって、女子はの部屋に入るのって俺無理だー。

「さて、どうしよう」

 仲直りした事自体、した事が無いからな、てか友達少ないから経験が無い。

「そうだ、こういう時に女である妹に相談すればいいんだ」

 そう思った俺は、急いで妹がいる部屋に飛び込んだ。

「妹よ、相談に乗ってくれ~」

「うるさい!」

そう言うと、妹が俺の顔面を蹴った、俺は蹴り飛ばされて部屋の外に出された。

「ちょっと待って、相談に乗ってくれ」

「やだ、誰がアンタなんかの相談にならないといけないんだよ」

 いや、俺兄だよね。

「えっ、ちょっと待って」

 俺が言い終わる前に、部屋を閉められた。

「今日のあいつ、機嫌悪かったな、どうしてだろう?」

 今日はやる事が無いしなー、でも寝るには早いゲームするか。


 翌日、俺は寝不足だった、それもそのはず寝たのは三時、そう次の日になっていたのだ。

「眠い」

 最悪だ、ゲームのし過ぎだ辛い、今日美南来なかったら、会わないといけないんですけど。

「あれ? お兄ちゃん顔死んでるよ」

 寝たい気持を抑え、リビング来たのに妹が悪意ある言い方でそんなことを言っ

てきた。

「うるせえ、眠いんだよ」

「ゲームでもしてたの?」

「何なの最近皆、心読むの流行ってるの?」

 そんな、趣味悪い流行終わっちまえ。

「いや、だってお兄ちゃん、寝不足の時だいたいゲームをしてるじゃん」

 そうだっけ? まあ、妹がこう言ってるからきっとそうなんだろう。

「てか、何で昨日の夜機嫌悪かったの?」

「それは、昨日の夜は勉強してたのを邪魔されたから」

「誰に」

「クソ兄貴に」

「どこの誰だ、そのクズ野郎は!」

 マジで、そんな事したやつがいるなら、すぐ絞めなければ。

「お前だよ!」

「俺?」

 馬鹿なそんなことは・・・・・・・・あの時か。

「そうか、すまん!」

 俺は地面に頭をつけながら言った。

「もういい、昨日のことだし、早くご飯食べよう」

「ああ、そうだな」


 その後、仲良く兄妹でご飯を食べた、本当だからね、だって父親は仕事から帰ってくる事がほとんどないし、母親は365日旅してるから、帰ってこない。

「本当幸せだよな~、妹と二人暮らしマジいいね」

 路上でそんな気持ち悪いセリフを言ってる、我ながらキモイな。

「早く学校行かないと遅刻するなこれ」

 そう言うと、妹の暮らしの喜びを顔に出しながら、学校めがけて全力で走った。


「あっ、見つけた」

 学校に着くと、先生、離婚先生に見つかった。

「なんですか?」

「昨日言ってたプリント」

 先生が持ってたプリントは何か量がおかしい、プリントって十枚でも大した量にならないよね、何か三十センチぐらいあるんだけど。

「てか、今日も休みなんですか、美南は」

「うむ、だからプリントを持って行ってくれ」

 マジで言ってるの?

「先生、これ今から持ってろって言わないよな」

「えっ? 持たないの」

「何で持つと思った」

「鍛えるため」

「先生、俺運動キャラに見えるか」

「いや全く、ただの嫌がらせだから気にするな」

 先生が生徒に嫌がらせとか、問題だと思うんだけど。

「じゃあ、放課後でもよかったじゃないですか」

「いいじゃん、先生寂しんだよ」

 可哀想だな、先生。

「じゃあ、放課後に」

「えっ?もう行くの」

「行くに決まってるんじゃないですか」

「そっか、じゃあね我が生徒」

「じゃあ」

 そう言って、俺は先生から離れて教室に向かった。

「どんだけ寂しいんだよ、あの先生」


「今日は行くんだよね、美南の家に」

 あれ? 言ったっけこいつにそんな事。

「まあ、そうだけど、それがどうしたの?」

「いや、楽しそうだなって思ってさ」

「楽しくないから、しばくぞ」

「ヤダ」

 ムカつくな、こいつぶっ飛ばしてー。

「そろそろ、チャイムなるから席に行っていい?」

「ヤダ」

「失せろ」

 そう言って俺は自分の席に向かった。


時間は、放課後になったやはり美南は休みだった、いろんな人の宣言道理休んだため、先生のところに行くことになった。

「はあ、先生会いに来てあげたよ」

「マジ、先生超うれしい」

 キモイな。

「先生プリント」

「え?」

 なぜ、首を傾げる。

「だから、プリントだってば」

「あー、あっプリントね」

 最初から言ってんだけどな。

「はいどうぞ」

 渡されたのは、朝見た三十センチほど積み重なったプリント、ではなかった。

「あれ、先生これ」

 よくわからなくなった俺は、先生に理解を求めた。

「プリントだけど」

 そうじゃねえよ。

「あの三十センチぐらいあったプリントは」

「ナクシタ」

「おい、お前先生として失格だな!」

「冗談だよ~」

 マジ先生として逸脱している気がする。

「じゃあ、ここにある数枚のプリントだけでいいんですよね」

「ああ、そうだ」

「じゃあ、持っていきますね」

「えっ、もう行くの」

 それ、朝同じ事やった。


 美南の家に来た。

「ふうー、行くか」

 俺はインターホォンを鳴らした。

「はーい、美南璃子でーす」

 帰りてー。

「神崎瑛太です」

「瑛太君かー、入っていいよ~」

 玄関空いてんのか、不用心だな。


「お邪魔します」

「はーい」

 俺が玄関入ると、美南のお母さん、美南璃子が、メイド服で、正座して新婚夫婦みたいなまねごとをしていた。

「あの、美南に会いに来ただけなんだけど」

「あの子、今買物に行ってるよ」

 休んでるのに家を出るとか大丈夫なのか。

「じゃあ、取り敢えずこれ」

 そう言って俺は、美南璃子さんにプリント渡した。

「じゃあ、悪いんですが、ここで待ってていいですか」

「別にいいけど、どうするの、まだ襲っちゃ駄目だよ」

「襲わねえよ!」


「流石に、美南の部屋で待たされるとは」

 俺でも、てか俺だからこそ女子の部屋で待つとかきつすぎる。

「はあ、早く来いよ美南」

 そんな願いが伝わったのか、玄関から扉が開き美南の声が聞こえた。

 数分経つと、扉が開き美南が見て最初に言った言葉は「出ていけー!」だった、どうやら美南は美南璃子から、あるい程度聞いているみたいだ。

「あの美南さん怒ってる?」

 部屋の外に追い出された俺は、部屋の中にいる美南に話しかける。

「当たり前、勝手に部屋に入ってるんなんて有りえない」

「すみません」

「別に、この件は許す」

「この件は、か」

 つまり、この前の喧嘩は許してないってことだよな。

「入っていい」

「駄目、着替え中」

「入りたい!」

「死ね」

 だって、あれだよ、女子の着替えだよ、最高じゃん、入りたいじゃん。

「着替え終わった、話だけ聞く」

 美南が言った言葉には緊張が含まれたように感じた。

「ああ」

 そう言うと俺は、扉を開けた。


第四章

「美南、許してくれとは言わない、てか何で怒ってるかも分からないから、何を許してもらうか分からないし」

「だから、機嫌を取る猶予を俺にくれ!」

 こんなことを言うべきではなかった、もっと他の方法で許してもらえばよかったかもしれない、本当に自分で馬鹿だなーと思った。

「私が上げないって言ったら」

 不機嫌な顔で言う。

「その時は、俺はお前のゆうことを聞く」

「どういう事?」

 流石に何を言ってるのか分からないのか俺に聞いてきた。

「お前が、近づくなって言えば、近づかない、お前がずっと謝れって言えば、俺はずっと謝る」

「馬鹿みたい」

「馬鹿なんだよ」

 俺は昔から馬鹿なんだよ。

「分かった、猶予をあげる」

「本当に?」

「うん」

 俺が家に来て初めて、少し美南が笑った。


 俺は美南に用済んだんだから、帰ってくれないと言われたので、俺は素直に帰ることにした。

「はあ、扱いひどいなあいつ」

あの後、美南と話して、一か月だけ待つと言われた。

「一か月か・・・帰ったら作戦会議だな」

 誰かとする訳でもないのにそんなことを言った。


 気づいたら朝になって俺は学校でくつろいでた、結局、帰った後何もしなかった、眠すぎて、てか一人で考えてもいい案が浮かばないだろうとも、思った。

「なあ、旭日」

「なに?」

「仲直りした訳じゃないけど、猶予をもらったんだけどさ」

「へ~、猶予ね」

「どうかしたか」

「いや、何でもないよ」

「そうか、どうしたら美南が許してもらえると思う?」

 これを聞いてその通りにすれば、完璧だ。

「遊びに誘ったら、最近お前とはろくに遊んでないだろ」

「俺と遊んであいつ許すか?」

 あまり、効果があるようには思えないんだけどな。

「許されるかどうかは分からないけど、喜ぶと思うよ」

「喜ぶと、許すに変換出来るのか?」

「少なからず、まずは喜ばせた方がいいと思うよ」

「そうか、お前が言うならそうかもな」

 こいつが予想を外す事無いしな。

「そんな事じゃ、また失敗するよ」

「どういうことか分からないけど、頑張るよ」

「まあ、頑張れ」

「ああ」

 美南は学校に来ていた、もう休むつもりは無いみたいだ。

「なあ、昨日の今日で普通に話しかけるのって逆効果かな?」

「どうだろうね、でも遊びに行く時に話せなくなるくらいなら、話しかけて嫌われた方がいいんじゃないの」

 嫌われる前提なんだ。

「取り敢えず、挨拶だけしてこようかな」

「そうすれば」

 適当だな、てか他人事だな。

「よう美南、久しぶりだな」

 歩いて美南にポップな感じで話しかける。

「昨日会ったばかりだけど」

 冷たく返される。

「そうだな」

 やっぱまだ怒ってんのかな。

「別に、今は今まで通りでいいよ」

「そうか、分かった」

「うん」

「なあ、美南」

「うん?」

「今週の土曜、空いてる?」

「・・・・・・特に予定はないけど」

 いつも通りって言ってるやつが、いつもと違うんだけど。

「遊びに行かないか?」

「別にいいよ」

 ゆっくり、平常心を保つように言う。

「そうか、場所はショッピングモールとかどう」

「いいんじゃない」

「そうか、じゃあ後で集合場所と時間を教えるよ」

「分かった」

 よし、これで第一関門突破だ、俺はすぐ旭日に駆け寄った。

「やったよ旭日、うまく誘えた」

「そんなすぐに、逃げるように来なくてもいいんじゃない」

 「てか目立ってるし」と言う旭日、確かに美南がこっちを見ている。

「別に逃げてきた訳じゃないけど」

「だったら、やめた方がいいと思う、誤解されそう」

「そうか?」

「そうだよ」

 確かにこういう細かいことに気を付けた方がいいかもしれないな。

「そうかもな、気を付ける」

「そうしな」

「分かったよ」

 そう言ったら旭日はうんうんと頷いた。

「ところで、遊びに誘ったのはいいけど女子が好きそうな場所ってどこ?」

「なあ、俺はね女子ではないので分かりません」

「マ、マジ」

「うん」

 まあ、そうだよね、男だもんね。

「そうだな、じゃあな」

「うん」

 俺は旭日に聞いても意味をなさないと思ったので泉宮さんに会おうと思ったんだが、チャイムがなったので、昼休のご飯の時に話しかけることに決めた。


「なあ、泉宮さん、女子が喜ぶそうなところってどこですか?」

 昼休俺は、泉宮さんと机をくっ付けて昼食を取っていた。

「うん?」

 俺がそう言って、泉宮さんの方を向いたらもぐもぐしていた、小動物みたい、可愛い~、待ってそれは今は違う。

「あの、女子が喜ぶ場所ってどういう所ですか?」

「そうです」

「それは、美南さんが喜ぶところ場所ですか」

「ま、まさか」

「別に隠さなくてもいいのに」

 まあ、そうだな、泉宮さんにはバレてるもんな。

「まあ、実はそうなんだ」

「やっぱりそうだったんですね」

「まあね」

「美南さんが喜びそうな場所ですか」

「いや、別に女子が喜びそうなお店でいいんだけど」

 それに泉宮さんはきっと、美南とそんな仲良くないだろうし。

「そうですか」

 俺は女子の気持ちの理解度がマイナスをたたき出しているから参考として聞きたいだけだからな。

「そうですね、私だったら、服、雑貨用品とかですかね」

「服と雑貨用品か」

「はい、女子なら服大好きです」

 いいのか、その決めつけ、批判食らうぞ。

「どうですか、参考になりましたか」

「ああ、参考になったよ、ありがとう」

「はい、参考になって良かったです」


 俺は帰る途中で妹に相談してないことを思い出した。

「おーい、妹」

 妹の部屋の前で、どこか飲み物のCMでありそうな感じで言った。

「なんですかーお兄様―」

 妹が面倒くさそうに答えていた、ごめんね。

「ちょと相談みたいのがあって」

「え~、やだな~」

「お願いします!」

 見えないのを分かってるが、土下座してみた。

「いだっ」

 扉が開いた、間抜けな声が出てしまった、死にたい。

「そんな所にいるからだよ」

 いや、別に責める気はないけど。

「で、何なの?」

「女子が喜ぶ店って知ってるか」

「ああ、どこか知ってるか」

「えっ! お兄ちゃん、もしかしてデートなの」

 何でびっくりしてんの。

「いや、遊びに行くだけ」

「そう、桜さんか」

 何で分かったー。

「ふふん、お兄ちゃんの事はすべてお見通しだ!」

 なぜ自慢げ、てか、もし全て知ってたら逆に怖いわ。

「もちろん、お兄ちゃんのエッチな本やCD、道具がどこにあって何回使ってるかも知ってるよ」

 なぜ知ってるー。

「何で、知ってるの?」

 ここまでくると、逆に気になる。

「え? お兄ちゃんの部屋に監視カメラがあるから」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 衝撃の事実に俺は、黙り込んでしまった。

「お、おい俺の部屋にはカメラなんてなかったはず」

 流石に、カメラがあれば気づくはず。

「カメラって言っても、隠しカメラだよ」

 そんな笑顔で言っても駄目だよ、普通に怖い。

「それより桜さんが喜びそうなお店でしょうー」

 それより、問題が増えたよ! 後で部屋にあると思われる隠しカメラを絶対に探すからね、絶対だからね。

「女子が喜びそうなところでもいいんだが」

「可愛い喫茶店とか」

「合わねー」

 今の合わないは美南と妹の二人に言ってみた。

「私に合わないって言うのはいいけど、桜さんには言っちゃ駄目だよ」

「あまり簡単に心読むのやめてもらっていいですかね」

 心読まれるのって恥ずかし。

「お兄ちゃんの思考は猫以下だから」

 猫を馬鹿にするな! あいつらだって必死に考えてんだよ!

「大丈夫、猫を馬鹿にしてない、お兄ちゃんを馬鹿にしてる」

 俺だって、必死に考えてんだよ!

「てか、話を戻すけど可愛い喫茶店て、どこにあるの?」

 正直に言って喫茶店にも行った事が無い、行ってもファミレスかコンビニしか行かない、コンビニはまた別か。

「それぐらい調べなよって言いたいけど、候補を後で書いて置いとくよ」

「ありがとうございます」

 俺がそう言うと、俺は妹の部屋から追い出された。

「え?」

 俺が困惑してると笑顔で妹が。

「もう用ないでしょ、バイバイ」

 俺のこと嫌い! ねえ、嫌いなの!


 数時間後、妹からいい感じの店を三個ぐらいお勧めされた。

「明日、泉宮さんに聞いてみるか」

 あっ、でもこういうのって自分で考えた方がいいのかな。

「妹に聞いてる時点で、終ってるか」


次の日の朝俺さっそく泉宮さんに話してみた。

「どこがいいと思う」

「それって、自分で考えた方がいいんじゃ」

「分かってるけど、可愛いかどうか分からないんだよ」

 てか、どこも同じに見える。

「分かった、でも私が言うのはあくまでも参考だよ」

「はい!」

 泉宮さん、マジありがとうございます。

「で、どれがよさそうですか」

「う~ん、このお店かな」

 指をさしたのは、なんか微妙だった俺は妹が渡された中で一つだけ妙なものがあった、それは・・・・・・・・・

「この女子が大喜び素的なラーメンって何?」

 確かにラーメンは何か女子受けは良さそうだけど店がひどい、てか汚い。

「いいじゃないですかラーメン」

「ラーメンねえ、ごめん泉宮さん」

 俺はふか深く頭を下げた。

「えっ、何で私変なことを言ったかな、なんか傷ついたんだけど」

「じゃあね、泉宮さん」

「え? あっ、うんじゃあまたね」

 まさか泉宮さんが女子力が全くないとは、今日俺は知りたくない情報を手に入れてしまった。

「旭日」

 仕方ないので、俺は旭日に聞いてみることにした。

「何かな」

 何でこいつこんなカッコつけがたるのかな、バカなの?

「今失礼なこと考えただろ」

 それ女子が言うから需要があって男が言っても何も起きない、てかマイナス。

「そうだけど」

「えっ? そこって否定することじゃないの」

「なんでお前なんかに気を使わなきゃいけないんだ」

「親友のだから」

「じゃあ、親友じゃないから問題ない」

「えっ、俺たち親友じゃないのか」

「友達以上親友未満」

「何それ、本のタイトルでありそうな名前は!」

 俺の名ゼリフとして代々受け継がれていくだろう。

「てかそんな事はどうでもいい」

「あんまどうでもよくは無いけど、何?」

 残り二つの店を見せた。

「どれがいいと思う」

「どれでもいいんじゃない」

 こいつに聞くのも間違って可能性が出てきた。

「取り敢えず、何となくで」

「う~ん、だったらこれかな」

 少し悩んだようにしてから、ある店を指す。

「ラーメンねえ」

 正直に言おう、三つともラーメンだ、一番変なのは、泉宮さんが当てたやつ、でも他もラーメンだった、まあ、残り二つはそれなりにマシだが。

「機嫌を直してもらうのにラーメンは、ちょとなー」

「俺もそう思う」

旭日も同感のようだ。

「なんで俺の妹は、はあ、ラーメンしか知らないのか」

「流石にそれはないと思うけどね、たぶん自分で調べろって事じゃない」

「そうかもな」

 仕方ねえ、もう時間が無いから帰ったら調べるか。


 帰ってやったことは、ネットで、女子が好きな店と調べた。

「いろんなのがあるけど、うちの近くのショッピングモールにあるのか?」

 これは一回ショッピングモールに行かないと、てか明日じゃね。


 今日が美南と行く日だが。

「何も決まってねえー」

 俺は馬鹿だった、人に聞く前に自分でショッピングモールに行って決めるべきだった、まあ、集合時間は一時に設定してるから、それまでにショッピングモールを回ろう。

「よし、行くぞ!」

 朝、俺は眠いのを我慢して家を出た。


「着いた、時間がないしガイドマップを見て絞っていくか」

 朝ご飯を食べてないので、まずはなんかいい感じ喫茶店ぽい感じのところに入った、別に入る必要は本当は無いが、仕方ないお腹すいてるから。


食べた後は、雑貨用品を見たり、服を見たりした、遠くから、だって女物が多いんだもん、無理入れない、てか俺は気付いてしまった。

「回らなくとも、ガイドマップさえあればよかったんじゃないかと」

 だって俺食べたぐらいだよ、後は全部遠くからだよ、てか店入って何すんの、やる事無いよ。

 そんなことを思っていれば、そろそろ一時になる、お昼はここで食べるってことになっている、意味ないことをしてた訳じゃない。

「流石にまだ来てないか」

 そろそろと言っても十五分前だ、まだ早い。


以外にも美南は早く十分前に来た。

「おーい、美南こっちだ」

 何かこのセリフ青春の香りがする。

 美南は特に何も言わずかけよて来た。

「お、珍しく美南が可愛い」

 説明がうまくはできないが、黒いストッキングとミニスカ、どこにもありそうな服に上着を羽織っていた。

「珍しくとか、ひどい」

 だがそんなを言ってはいるが美南は顔が少し赤くなっているのが窺える。

「じゃあ、最初は飯を食いに行こうぜ」

「うん、分かった」

 朝食べた場所に戻る。


「いろんな種類あるんだね」

 そこは、可愛いカフェだねとかじゃないのかよ。

「何にする?」

「う~ん、このサラダかな」

 女子はサラダとか好きだよな。

「別に気にすることないんだぞ、好きなもの食べな」

「べ、別に気にしてないし」

結局美南は、サラダとパンケーキを頼んだ、あんま変わんないんじゃね。


 ご飯を食べた、男のマナーとしてご飯はこっちが出した、その後雑貨用品があるお店に行った。

「なんか欲しい物ある?」

「えっ、何で?」

「お詫び」

 なんせ、俺は金を持っている、残念ながらお金には困らない。

「別に・・・・・・・」

「いいから、何か買ってあげる」

「うん・・・・・・・・」

 あれ、なんかテンション低いな。

「じゃあ、これで」

 美南がそう言って、あるブレスレットを指した、価格にして千八百円ハートが特徴的な奴だ、こんな安いのでいいのか。

「分かった、じゃあ買ってくるよ」

 俺はそう言うとレジに行って購入した。

「はい、どうぞ」

「うん・・・・・・ありがとう」

 美南がそう言うと、ブレスレットをカバンにしまった。

 あれ、つけないのか?

「じゃあ、次服見ようよ」

「うん・・・・・・・」


 俺たちは、女子に人気の洋服屋に来た。

「なんかいい服とかあるか」

「そうだね、まだわかんないなー」

 なんかぎこちない。

「まあ、そうだよな来たばっかだし」

「そうだよ、あははは」

 笑いがわざとらし。

「どうした、美南さっきからちょとおかしいぞ」

「うん・・・・・・大丈夫だよ」

 全然大丈夫じゃない。

「そっか、でも何かあったら言えよ」

「言っていいの?」

 小さくて聞き取れない。

「なんか言ったか」

 俺がそう聞き返すと美南は笑って。

「ううん、何にも」

 なぜか俺はこの笑顔の奥に皮肉めいた何かを感じた。

ここもお詫びっと言って服を何着か買った、美南はさっきの顔とはた違う表情が窺えた、そうこの顔は人が呆れたときに見せるような顔だ。


 服も買い終わり、時間も気づけば五時になっていた。

「そろそろ、帰ろうよ」

 不意に美南がそんなことを言う。

「別もうちょっとぐらい、いいんじゃね」

「そうだけど、私もう帰りたい」

 美南は笑顔で言う。

「えっ、どうゆう事?」

「意味わかんない? 帰りたいの私」

 美南は依然、笑顔。

「別にいいんじゃない、そもそもちょっと仲良くなっただけだし」

 続けて、美南が言う。

「何が」

 突拍子もないことを言ったので美南に聞き返した。

「別に無理して友達を続ける必要ないんじゃないのって事」

 美南は笑顔を崩さない。

「俺はお前と———」

「別私じゃなくとも、女子なら最近仲良くなった泉宮さんがいるじゃない」

「そうゆう事じゃないんだけどな」

「じゃあ、何」

 何か、考えた事が無かった、俺は美南の事どうゆう感情で接してしたんだろう。


 俺はお金持ちだ、いや俺はと言うのは正しくはない、正しくは俺の家はお金持ちだ、だからこそって訳じゃないが、俺はそのことを誇りに思っていた、だから俺はお金持ちの事を皆に自慢みたいなことをしていた、小さい時の俺は馬鹿だった、だからお金を持っているというのは、どうゆう事かを知らなかった、そして俺は小学校の時人気者になっていた、ただこの表現にも間違いがある、俺は上っ面の人気者だった、お金を俺は貸したり買ったりしてやっていた、お金は余裕があったから、特に気にはしてなかった、でもそれは周りの友達からクラスへ、そうして学校全体へ広がっていた、しかもこの学校には生徒だけじゃなく先生にもだ。

 そして、ある日俺はお金が底をついた、お金持ちとはいえまだ小学生、学校全体にお金を使えば、当たり前だった、だが学校全体と言っても、その中でも俺にたかってこない人もいた、そしてその中にいたのが、幼稚園からの友達の美南桜と陶山旭だった、こいつらは本当にいい奴らだった、こういう事がよくないとも知っていて、俺が困ってるとも知っていた、そして俺は何もできないことも、だからこいつらは、俺に代わりにほぼ全校生徒、教師に喧嘩を吹っ掛けた、「こいつから金をとるものに言う、これ以上やるなら警察ごとにしてやる」とあまりにもダサい喧嘩の売り方だったが、俺はうれしかった、そして俺はこいつらと友達、いや親友になった。

けど、どうなんだろう? 俺はいったいこいつらの事をどう思っているんだろう、確かに俺は信用している。

俺は目の前の美南に目を向ける。

俺は本当に親友と思っているのだろうか、ただ依存しているのではないかと。

「ねえ、どうなの」

 いろんな事を考えていた俺は現実に戻される。

「俺は・・・・・・分からない」

「そう、じゃあね」

 そう言うと美南は俺からどんどん離れていく。

「俺は、どうしたらいいんだよ」

 俺の頬に涙が流れていた。


第五章

 俺はベットの上で寝転がっていた。

「俺は、何を間違えたんだろう・・・・・全部か」

 俺は苦笑いを浮かべた。

 帰った後いろいろと考えた、今日の遊びのどこが悪かったのかとか俺は美南と旭日にどんな感情を持っているのかとか、けど、どれも分からなくなっていた。

「俺、人に頼り過ぎたのかな」

 よく人は助けを求めるのがいいみたいなことを言ってる人とかよく聞くけど、実際はよくないのかもしれない。

「けどなー、結局一人じゃ、何もできないんだよな俺」

 駄目なのかもしれないけど、今俺はそれしかできない。

「あ、もしもし」

 ケータイを開き俺はある人に電話を掛けた。


「ごめん、休みの日なんかに呼んじゃって」

 日曜日、俺は電話の相手と待ち合わせをしていた。

「いえいえ、別に大丈夫ですよ、いつも暇なので」

俺が昨日電話を掛けたのは泉宮さんだ。

「本当にごめん」

悲しみを抑えている泉宮さんに俺は謝った、土下座で。

「で本題に入ると、今ピンチなんですよね」

「まあ、ピンチでいいのかな」

 この状況をピンチと言う言葉で正しいかは定かじゃないが、まあやばいな。

「そうですよ、大切な友達が一人いなくなちゃうんですから」

 まあ、本当に友達いや親友なのかが分からないんだけどな、だがこれは流石に自分で解決したい。

「相談内容は電話でもしたけど」

「あれですよね、仲直りがしたい」

「そうです」

 こんなに簡単なことが出来ないってもどかしいよな。

「そんなことはとても簡単です」

「分かってる、簡単なのは」

 俺は俯いて話す。

「でもやり方が分からないと」

「はい、まったくその通りでございます」

「私が教えてあげるのもいいんですが、自分で気づいた方がいいでしょう」

「いや、それが出来ないから頼ってるんだけど」

 俺だって出来るなら自分で解決したい。

「ゴホン、君は頼ると答えが返ってくると誤解してないかい」

 なぜ、老人みたいな、言い方をする。

「それ以外に何かあるのか」

「その答えを一緒に探すことです」

 泉宮さんが輝いて見えた。

「それって、時間の無駄じゃない」

「大切なことは時間をかけるものです」

 そうゆうもんなのだろうか?

「でも時間をかけて何の意味を持つの」

「気持ちです」

「気持ち?」

「はい、気持ちです、気持ちは人を変えるのです」

 人を変えるねえ。

「あ、信じてないですね」

「まあ」

「やっぱり、むうー」

 可愛い!

 まあ、確かにそう言うのって変えるとかよく聞くしな、でも、どうなんだろう実際人は変わるのだろうか。

「まあ、怒んないで、今回は泉宮さんを信じるよ」

「私を信じるですか」

「ああ」

「まあ仕方ないですね、いいでしょう」

 カッコイッス、泉宮さん。

「で、どうするの」

「そうですね、ノープランなので後日改めて作戦を考えてきます」

「今日、ここまで来た意味ないっすね」

「そうですね」

 気まずい雰囲気が漂う。

「帰りますか?」

 俺が一つ提案してみる。

「本当に来た意味・・・いやいや、そうですね帰りましょう」

 途中まで何か言いかけたがやめた、俺も聞かなかったことにした。

「じゃあ、帰りますか」

 俺達は、どのみち考えることもあるので大人しく帰ることにした。


家に帰って最初にした事は妹と遊んだ。

「おい、妹よ」

「何、お兄ちゃん帰って」

 ひでえ、でもそんな妹がいい。

「遊ぼうぜ」

「いーやっ!」

「何でだよ、トランプしようぜー」

「お兄ちゃん思考がボッチ」

 だってボッチだし。

「じゃあ、トランプじゃなくていいから遊ぼうぜ」

「えー、ヤダ」

「適当にあしらわないで」

「だって、そろそろテストだし、お兄ちゃん面倒くさいし」

 最後のは傷つくよ。

「いいから、俺を慰めてくれ」

「自分の息子を慰めたら」

 それは、その慰めは違う、絶対に違うと思う。

「てか、結局それ俺慰められてないよね」

「息子もお兄ちゃんの一部だから問題ない」

「やめろーそれ以上しゃべるなー」

 お前のセリフに問題がある。

「せっかくお兄ちゃんを慰めてあげてたのにー」

 お前の慰め方は理解できない。

「いいから遊ぼうぜ」

「う~ん、じゃあ、ダウトだったらいいよ」

「ダウト?」

 俺はそんなゲーム身に覚えがない理由、友達いないからな。

「簡単なゲームだよ、今は二人だから、ジョカーを除いたトランプカードを切ってだいたい同じになるように配る、そうして数字の小さい順にカードを置いていく、でカードが順番じゃないと思ったらダウトと言う」

「そうすると、どうなるんだ」

 正直、ババ抜きをしたい、てか説明が長い。

「でね、ダウトと言って、もしあってたら言われた人が置いてたカードを全て取る、でもあってなかったら言った人が置いてあるカードを全部取る後はどちらかがカードがなくなったら終わり、分かった?」

 全然分かんない。

「よくわからんから、後はやりながらでお願い」

「そうだね、後は実践で身に着けともらおう」

 何か、バトル漫画師匠が言いそうなセリフだな。


 数十分後、俺達はあることに気づいた。

「なあ、妹よ」

「何お兄ちゃん」

「これ、終わらなくね」

「そうだね」

 互いに持ってるカードが分かるため、嘘かどうかは結構わかる。

「終わりにするか」

「そうだね」

「俺こんな悲しい遊びは久しぶりだ」

「私は初めて」

「やった妹の初めてゲット」

 嬉しくなんかないんだからね。

「お兄ちゃんキモイ」

「うっ」

 俺の心が折れそう。

「待て妹よ」

「何?」

 さっきのトランプが疲れたのか適当に返事を返してくる。

「妹を可愛がるのは兄の務めだ」

「妹はもう兄から自立した」

「馬鹿な!」

 そんなことがあり得るのか、いやあり得ない、妹は兄にすがるべきだ。

「お兄ちゃん」

 妹、笑顔

「うん?」

「キモイ」

 妹、ごみを見る顔。

「そうっすんね」

「うん」

「あ、じゃあ部屋戻るわ」

「うん、じゃあね~」

すげー笑顔なんですけど。


次の日の学校で泉宮さんと昼を取っていた。

「で、泉宮さん考えはまとまったんですかね」

「まったく、もってまとまってないわ」

 なぜ誇らしげ。

「いつ、泉宮さんのプランは完成するんですか」

「分かりません」

「どうやって、簡単なことを気づかせてくれるんですか」

「分かりません」

「ある程度は頭の中で出来てるんですよね」

「まったく出来てません」

 こっちが頼んでおいてあれだけど。

「どうしてくれるんだよ!」

「本当にごめんなさい」

「いや、まあこっちも何も分からなかったから責める気は無いけどさ」

「そうだよ、自分の事棚に上げて言いわけ?」

「お前が言うな」

「すみません、ごめんなさい」

 謝罪、ダブルコンボが来た。

「まあ、お互い一人で考えても仕方ないし、これからは二人で考えようぜ」

「そうですね」

 その後、何をすればいいか考えてみたが俺はそもそも聞いてるのは俺だから考えても分かるわけがなかった。

「どうしましょう」

「そうだな、この件は泉宮さんに一任する」

 要するに丸投げだ。

「丸投げ・・・・・・・」

 正解。

「まあ、泉宮さんが必死に考えてる間も俺も違うことを考えるよ」

「他に問題があるんですか」

「まあ、でもこれは一人で探したいから」

「そうですか・・・・ならこの件も自分で考えてほしかったです」

 今日一の笑顔ですね。


学校も終わり、俺は家で考えてみた。

「まあ、考えたところで意味ないけど」

 なんで美南が怒ったのか、少しでも理解できるようになりたい、じゃなければまた同じ失敗をする、後なんで俺はこんなに必死なのかを自覚したい。

「でも、なんでなんだろう」

 俺は美南に何を求めてるのだろう。

「まさか・・・・・・好きなのかな」


 次の日の朝学校で美南を探す、一応学校に来てはいるが、俺の方を見たりしないし、話しかけても反応しない、つまり無視をされている。

「どうすればいいんだ」

「おはようございます」

「おっ、泉宮さんおはよう」

「神崎さん、私やっとプランが降りてきました」

「おお、それはどんなプランですか」

 少し不安な気持ちが高まる、泉宮さんちょっと天然みたいのがあるからな。

「あまり考えながらやると少し硬くなっちゃうと少し意味がなくなるので」

 両手を前に突き出してきた、聞くなと、なるほど。

「そこまで言うなら、どうしたどうしたらいいんだ」

「えっとですね、土曜日を開けておいてください」

「ああ、分かった」

 とりあえず頷く、便利だよね頷けば基本頷けば会話成立する。

「じゃあ、土曜日よろしく」

「はい、こちらこそ」


 今日は泉宮さんが指定した日、何日か日をまたいだ気がしたが、気にしないことにしよう。

「こんにちは、神崎さん」

 時間ぴったりに来た、その笑顔可愛いですね。

「うん、こんにちは泉宮さん」

「今日は、デートではないですが、遊びましょう」

「遊び?」

 この状況で遊ぶのか、マジか。

「はい」

 マジか。


 俺達は、ショッピングモールに来ていた。

「なあ、何でここに来たんだ?」

 ここは美南と遊んだところと全く一緒だ。

「それは、もっと私が理解出来るように、今日は取り敢えずあの時と一緒の行動をしてください」

「それって、美南と遊んだルートをまたやれと!?」

「そうです」

 楽しいそうだな、俺楽しくないよ、ただ虚しいよ。

 そうして、俺は泉宮さんを連れてあの時と同じルートをたどった。

「最後はここです、ここでなんか振られました」

 何かこの言い方だと、俺が美南に告白したみたいじゃないか。

「そうなんですね、ハッハッハー」

 ぶっ飛ばしてー、わざとなのがなおムカつく。

「これって意味あるんですかねえ」

「どうでしょうか」

 俺なんのためにこんな事したの? 嫌がらせか!

「強いて言えば、神崎さんがなんで失敗したか理解する上で必要なことですかね」

「理解する上で、必要なことですか」

「そうです、とても必要です」

 正直、あまり理解出来ない。

「そうしてこれからするのは、私と美南さんとの違いを見つけるための遊びです」

 違いがかー、それの方法は気づかなかった。

「その、遊びはこれなんですよね」

「はい」

「美南と同じルートではないですよね」

「どうしましょうか、どっちが言いですか?」

「同じルートはやめてください、お願いします」

 お俺は必死に頼み込んだ、でも周りの目線が痛い。

「まあ、この件はどっちでもいいので、嫌なら他のルートでいいですよ」

 それは助かるぜ。

「で、どこ行くの?」

「どこでもいいですよ」

 俺が聞くと泉宮さんが無表情で淡々と答えた。

「どこでもって言われても」

「じゃあ、適当に回りましょう」

 特に決めてなかったのかよ。

「泉宮さんがいいなら、別に俺はいいけど」

「では、そうしましょう」


 そう言って俺たちはショッピングモールの一階を回り終えたところで俺は一つ疑問が出た。

「これ、全部回るのか」

 このショッピングモール三階あるぞ。

「ええ、まあそのつもりですけど」

 マジですか、嫌だな。

「今の所何も分からないんですけど」

 てか、結局俺美南と回った所行くじゃん。

「そうですか、これではあまり意味がないのかもしれません」

「マジっすか」

「はい、でも回っていきましょう」

「あ、はい分かった」

 何か少し丁寧な言い方になったな。

 そして俺と泉宮さんは二階へ、そして三階へ向けて歩いて行った。


「あの、泉宮さん三階に来てしまいました、どうするんですか」

「では、ここで質問です」

「はい、何でしょう」

 まあ、この雰囲気からして質問じゃなく、問題だと思うんだけど。

「私とのデートは楽しかったですか?」

 一応質問だった。

「ええ、デートかはともかく普通に楽しかったですよ」

 女子となんかあまり遊んだことなかったし。

「そうでしょうか」

「どういう事?」

 俺は疑問になって聞く。

「泉宮さんと私どっちがの方が楽しかったですか?」

「そんな事・・・・・・・」

 選べる訳がない、と言いかけたところでやめてしまった。

「ちゃんと理解できているじゃないですか」

「そうか」

 俺は今完全に理解してしまった、自分の気持ちに。

「やっと、分かりましたか」

「いや、まだ分かんないだらけだ」

「え?」

 困惑する泉宮さん、それはそうだろう、だって言ってる意味分からないもん。

「でも、もう大丈夫だ」

 やらないといけない事はしっかりと今、理解できた。

「そうなんですか?」

「うん、でも後一つだけ頼んでもいい?」

これは、一人では出来ないから、泉宮さんに頼もうと思う。

「いいですよ、何ですか?」

「それは・・・・・・・・・・・


六章

 俺は、失敗してしまったあの日から俺は考えていた。

「やらないといけない事は気づいたが、結局どうすればいいのか分からないんだよな」

 決行は一週間後、何が何でも計画を立てないと、場所さえ決めてないからな。

「まあ、そう言うのは未来の俺に任せるか」

 俺は寝ることにした。


 明日になっても、ただの俺だった、未来の俺は俺だった。

「取り敢えず、学校行くか」


 学校には泉宮さんがすでにいた。

「おはよう泉宮さん」

「あ、おはようございます神崎さん」

「後の人はこっちで呼ぶから」

 何かこの感じ意味深だな。

「はい、分かりました」

「場所どこにしたらいいと思う?」

「それは自分で考えるって言いましたよね」

 そうなんだけどなー、女子受けする場所を知らないしな。

「まあ、考える事が重要だからな」

「その通りです」

 満面の笑みで頷く泉宮さん。

「取り敢えず、頑張るよ」

 俺はそこで、残りの人が来たので、泉宮さんとは一回お別れだ、バイ。

「じゃあ、俺はここで」

「あ、はいではまた」

 泉宮さんは察してくれたみたいだ。

「旭日おはよう」

 元気よく、話しかける。

「おお」

旭日は困惑している。

「どうした」

 笑顔で聞く俺。

「気持ち悪い」

 素直の感想ありがとう。

「お願いがあるんだけど」

「何かやだ」

「別に大した事じゃないよ」

「何かな」

 少し冷静になったか、もうちょっといじりたかった。

「まあ、美南の件だ、手伝ってくれ」

「そのことか、別にいいよ」

「ありがとう」

 お前いい奴だな、お前は友達だハッハッハッハ

「詳細は後で教える」

「了解」

「じゃあ、また」

「おう、今度こそ仲直りするのか」

「ああ、やっとだ」

俺はカッコよくその場を離れた。

「ただのカッコつけだなこれ」


放課後がやってきてしまった、どうしよう美南を誘うのは、どのタイミングがいいのか悩ましい。

「あそこにいるのは泉宮さんだ」

 今日は泉宮さんとは全然話してなかったんだよね。

「だが俺少し考えよう、俺こんな性格ではなかった気がする」

 どちらかと言うと陰キャで皮肉れてる、どっかの主人公設定だったはず、なんかテンション変だ、もともとこんな性格だからだな仕方ない、確認という名目で泉宮さんと打ち合わせをしよう。

「やっほー、泉宮さん」

 何か性格がどんどん陽キャみたいになってる、まあ独り言みたいなもんだから問題ないけどさ。

「帰るんですか」

「そう、でさどっか寄らない」

「私、ナンパはちょっと」

「確かに陽キャでチャラそうな感じだけど、違うから」

「で、何が目的ですか」

「楽しい思い出を作ろう」

 俺は笑顔で言う。

「本当に気持ち悪いです」

 本当にごめんね。

「まあ、聞きたいのはどこ行くかは、そんなに気にしなくていいんだよね」

「そうですね、神崎さんに期待は出来ないので変に考えなくていいと思います」

 何か傷つく。

「よし分かった、場所は遊園地にする」

「なかなかいいと思いますよ遊園地」

「おお、泉宮さんに褒められた」

 超嬉しいです。

「何か、私が怒りん坊みたいじゃないですか」

 別にそう言う事じゃ無いんだけどね。

「優しいよ泉宮さんは、ただ俺褒められた事が無かっただけ」

「そう言えば、そんな気がします」

「まあ、同級生を褒める機会なんかないからね」

「そうですね」

 馬頭されても、可愛い子ならいいけどね。

「じゃあ、旭日にも連絡しとくか」

 あいつ程度なら、メールで十分だな。

「ちょとだけ、待って」

「はい、どうぞ」

 流石泉宮さん、いやな顔全然しない。

 すぐに旭日にメールを送る・・・・・・ん? 何かもう返信来てる、早いなあいつ暇なのか、『OK』か。

「旭日OKだって」

「そうですか」

「うん」

「大丈夫あいついい奴だから」

「はい、少し緊張しているだけです」

「そっか、じゃあ日曜日頼むよ」

「はい、ではそろそろ帰りますか」

「そうだね、じゃあ一緒に帰ろう」

「え!? ま、まあいいですよ」

 なぜ、まあ何だよ、顔もちょっと引いてるし泉宮さんは俺のこと嫌いなのか。

「嫌なら別にいいけど」

「そう言うわけでは無いので」

 手を前に出して違うと否定を入れてくる。

「では、何でしょう」

「私いつも何でもないように振舞っていますが同級生の男子と会話したことなかったので、流石に恥ずかしくて」

「そうなんだ」

 でもさっきから顔は照れてるって言うよりは嫌いな奴に見せるような顔に近い気がするんだけど、気のせいかな。

「でも、泉宮さん可愛いから男とは慣れておいた方がいいお思う」

「そんな事無いです、神崎さん良い病院後で教えます」

 なぜ俺がおかしいみたいになってるんだ。

「多分俺がおかしいわけでは無いと思いますよ、泉宮さん」

「じゃあ、世界がおかしいです」

 なぜ、意地でも可愛くなりたくないんだよ。

「まあいいよこの件は」

「はい」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 どうしよう、何か会話が途切れた、泉宮さんは何事もなかったかのように歩いている、会話する気はないのか。

「あの、泉宮さん何で今日は黙ってるんですか」

 いつも、喋ってばっかだったのに、二重人格なの?

「なんか今日は眠くて」

「そういう事だったんだ」

 別に嫌われてなかったのか。

「じゃあ、帰りきおつけてね」

「何でですか」

 可愛いからと言いたいけど、また否定されそうだしなー。

「女子だし、電車だと痴漢に会う可能性もあるだろうしね」

 帰りは痴漢は多分無いと思うけど。

「そうですね」

 一応納得はするんだ。

「本当にきおつけてね、眠いだろうけど家までは気を引き締めてね」

「そこまで言うなら、家まで来てください」

「え? 何でですかね」

 確かにきおつけてとは言ったが、なぜ俺が行く流れに。

「私家まで気を張れない気がするので、一緒に来ていただけると、ありがたいのですが」

 女子の家に行くのは少し気が引けるが、でも一人にするよりはマシか。

「うん、分かった」

 俺は泉宮さんについて行った。

「分かっていたけど、本当に反対方向だな」

「そうなんですか?」

 何か本当に泉宮さん眠そうだな。

「そうだよ、降りる駅さえ教えてくれれば寝ててもいいよ」

「そうですか、じゃあお願いします」

 そう言って駅名を言った後寝た、可愛いです。


 降りる駅が来たので、泉宮さんを起こしてその駅を降りた。

「目は覚めてきた? 泉宮さん」

「うん、だいぶ目が覚めてきた、ありがとうございます」

「別に、可愛い寝顔見れたし、ラッキーだった」

「サ、サイテーです」

「可愛かったよ」

 本当に可愛かったな、妻にしたい。

「忘れてください」

 顔が赤くなってる何これ、泉宮さん超可愛いな。

「まあ、忘れるのは無理かもなー」

「何で、ですか」

「可愛いから」

「むう~」

 むくれても可愛い。


駅から歩いて数十分後泉宮さんのマンションに着いた。

「なんか豪華なお宅出すね」

 まあ、俺も人の事は言えないけど、てか俺お金持ち感がかなり無い気がする、なんか俺平凡だな。

「そうですかね?」

「そうだと思うけど」

 こんな豪華なマンションなのにそう思わないのってまさか、こやつ金持ちなのか。

「そうだったんですね」

「うん、では俺はここで」

「何を言ってるんですか、せっかくなので上がってください」

 ふう~、泉宮さんは時々大胆ですね、DTには辛いぜ。

「でも、急だから泉宮さんの親に迷惑かけるだろうし」

「いえ、今親は居ないので問題ないです」

 ふう~、泉宮さん誘てるのかな? 違うんだろうな~。

「いいんですか、男入れるんですよ」

「別に、問題ないです」

「何で?」

「神崎さん、だってチキンじゃないですか」

「信用して頂き、どうもありがとう」

 馬鹿にするな、俺はやるときはやる男だ、多分。

「では、入ってください、お腹もすいた頃だと思いますので何か作ります」

「マジで」

 女子の手料理が食えるのか!

「ええ、私の料理はすごいですよ」

「それは楽しみだ」

 もう、眠くは無いのか?


 俺の思い違いかもしれないが料理はかなり時間がかかるものって思ってたんだけどな、時間は三十分もかからなかった。

「出来ました」

「すごい」

 俺の前に五品も並んでいた。

「泉宮さん料理得意だったんだ」

「料理は一番得意です」

 本当にすごいな、ちなみに俺の得意料理、目玉焼き。

「いただきます」

「はい、どうぞ」

「うまい」

 なんだこれ、超うめえ、今までで一番だ。

「そうですか、良かったです」

 泉宮さん嬉しそうに笑った。

「泉宮さん食べないんですか?」

 作ったのは泉宮さんなのに俺だけが食べるのは流石に辛い。

「そうですね、食べます」

「おうおう、食べたまえとても美味しいから」

「なぜ神崎さんがそんなに上からなんですか」

 まあ、美味しいもの食べるとなんか浮かれちゃうからな。

「では私も、いただきます」


 会話しながら食べていたから二時間もたってしまった。

「てか本当になんかごめん、こんな長居して」

「いえ、大丈夫ですよ私も楽しかったので」

「そうなら俺も良かった」

「はい、今日はとても楽しめました」

「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ」

「はい、ではまた明日」

「うん、じゃあまた」

「はい、さよなら」

 俺は泉宮さんと今日ほど楽しかったことはなかった、後は美南を何とかするだけだ。


 俺は泉宮さんの家を出て一時間かけてようやく自分の家に着いた。

「今日が月曜日だから遊びに行く日は日曜日まだ時間はあるけど、めちゃくちゃ緊張するな~」

 でも、やる事はもうやったから後は待つだけなんだよな。

「もう十二時じゃん、寝よう」


次の朝、俺は妹に起こされていた。

「なんだ妹通称綾香ちゃん」

「何で私の名前が別称みたいになってるの」

「だって、妹の方が馴染んだし」

「妹の方が別称でしょう」

「で、何の用だ」

「お兄ちゃん、桜さんと喧嘩したんだって」

 そう言えばこいつには言ってなかったか。

「まあ、そうだけど」

「何で言わなかったの、お兄ちゃんデリカシーが無ければ、考えることも出来ないんだから」

「いくら何でも酷いいだろ」

 まあ、事実だけど。

「言ってくれれば、私がフォローしたのに」

「確かにあの時そんな事言われたら頼んでいたかもしれないけど、今は違う、だから一人で考えてやるから、大丈夫だ」

「本当?」

 ジト目で見てくる妹、俺信用無いな。

「本当だ、安心して待ってろ」

 一度は言ってみたかったセリフでも、死亡フラグでも使われるから心配だな。

「安心はしないけど、待ってる」

「おう、そうしとけ」

「うん」

 今日も朝が来た、学校行きたくねえ。

「お兄ちゃん学校行かないと駄目だよ」

「分かってるよ、じゃあ行ってくる」

「うん、行ってらっしゃいお兄ちゃん」

 俺はここ最近で一番の笑顔を見た気がした。


 学校に着いた俺だが今日なんもやる事無いんだよな。

「神崎さん昨日はありがとうございます」

「いや、俺の方こそありがとう、ご飯なんか頂いちゃって」

「いや、あれは色々含めたお礼なので、気にしないでください」

「俺は特に何もしてないと思うけど」

「そんな事無いです、私にとっては神崎さんがいてくれたおかげで、とても楽しいんです」

「そうか、俺も楽しいよ泉宮さんと居て」

「そうですか、何か嬉しいです」

 泉宮さんが頬を赤らめて笑った。

「でも、ごめんね、楽しい状況なのに迷惑かけちゃって」

「いえいえ、私は好きで手伝っていますから」

「まあ、その、ありがとな」

「いえいえ、これからもよろしくお願いします」

「おう、何か新郎新婦みたいだな」

「そ、そ、そ、そんな事無いですよ!」

 照れている泉宮さん可愛いな。

「でも、泉宮さんは料理が出来るし、可愛いからいい奥さんになるよ」

「確かに料理は多少上手に出来ますが、可愛くはありません!」

 何でこんなに可愛いんだろう泉宮さんは。

「まあ、とにかく俺の方もありがとう」

「はい、じゃあ今回はお互いともってことですね」

「そうだな、泉宮さんは後旭日と美南と友達になれれば完璧だね」

「そうですね、私頑張ります」

「おう、頑張れ」

「はい!」

 泉宮さんが可愛い笑顔でそう宣言した。


 あれから三日が過ぎて遊園地前日だ、美南にも日曜日は明けといてください、マジでお願いしますと、言っといたので大丈夫のはずだ、多分ね。

「今日は前日だけど一応最終確認した方がいいかな」

旭日は、電話でいいとして、いや、泉宮さんに電話して、会わないかとか言うと流石に気持ち悪いか。

「てか、時間を教えてない、やばいな」

実は、察してる方もいるだろうが、俺は泉宮さん、旭日に一緒に遊園地に来て遊ぼうと言ってある、誰に説明してるんだろうか。

「誘ったはいいが時間は教得るの忘れてた」

 最終確認も何もないそもそも終わってない相当馬鹿だな俺、でも仕方ないそれが俺だ。

「電話するか」

 俺はため息をつきながら、泉宮さん、に電話した。


 ワンコールで泉宮さんが出た、きっと暇なんだろうな~。

「ごめん、俺」

『電話していきなり謝るって、何かしたんですか!?』

「いや、そう言う事では無いんだけど」

『じゃあ、何ですか?』

 呆れながらも用件を聞いてくれる当たり、本当に優しいです泉宮さん。

「えっと、ほら、時間言ってなかったじゃん」

『そう言えばそうでした、前日ってかなり失礼ですね』

「いや~、美南に要件伝えるのが大変だったからな、普通に忘れてました本当にごめんなさい」

 俺は素直だからな、しっかりと謝る。

『別に私は大丈夫ですが、陶山さんの方は言ってあるんですか』

「まだ」

 ハッキリと言ってないことを堂々と言う。

『それって、私なんかと電話している暇は無いんじゃないですか』

「大丈夫、旭日はいい奴だから」

 俺は旭日を信用している、もちろん美南も。

『そうですか、でも早めには連絡してくださいね』

 俺の自信が伝わったのか納得はしてくれた。

「うん、早めに連絡するよ」

 旭日にも来てもらわないと、困るしな。

『で、お時間の方は』

「おっと、また忘れるところだった」

『それされると、私行けなくなるんですが』

 それは大変だ、可愛い子がいなくなるのは困る。

「時間は八時半に俺達の学校の最寄り駅に集合だ」

 場所も伝えてなかったこともここでバレてしまった。

『分かりました、ではまた明日』

 もう、終わりか、残念だが仕方ない。

「うん、じゃあまた明日」

『はい』

 ブツ、と音が鳴り泉宮さんとの電話が終わった。

「次は、旭日か」

 電話にするか、メールにするか迷うところだ、これが小説だとすると、分を増やすために、ここは電話で済ますだろう、けど曲がりなりにも友達あるいは親友だ電話した方がいいか? 楽さを優先しよう。

「これで、よしっと」

 俺は旭日にメールを送った。

「もう十二時か、お昼の」

 お腹がすいてきたな。

「飯でも食うか」

 そう言って俺は自分の部屋から出てリビングに向かった。


 そこにはピザをほおばっている妹がいた、二次元だとこれとても可愛い、しかも妹というのがポイントが高い、ポイントカードだと一回で貯まるレベルで。

「あ、ほにひちゃん」

 おい、全然喋れてないじゃねえか、もうちゃんしか原形をとどめてないぞ。

「何してんの」

 聞きたくなかった事をあえて聞く、何か書いてるんだよな。

「ゴクン、あ、これ? お兄ちゃんが何をしてたかをノートに書いてるの」

 怖えよ! 確かに横に機材がいっぱいある。

「すごいやめて欲しいな」

 結局、俺は前に盗聴器がある事知った時に探してはみたものまったく見つからなかった、俺の妹怖いよ。

「なあ、何か食う物あるか?」

「う~ん、何かあったけ?」

「それを聞いてるんですけど」

「知らない、あ、でも私昨日コンビニで何か買って置いてあるよ」

 知ってるじゃねえか。

「何買ったんだ?」

「えっと、ピザ味のおにぎりと焼きそば味のソフトクリーム、後は」

「待て待て、ちょっと待て!」

何? ピザ味のおにぎりって、それに焼きそば味のソフトクリームもヤバいって、売れるわけがない。

「何でそれ、買ったの?」

「最近のコンビニの流行商品だから」

「マジか」

「マジっすよ」

「やっぱ、コンビニ行ってくるわ」

 冷蔵庫に入ってるのは他にもヤバいものがある気がする。

「そう? いってらっしゃーい」

「ああ、行ってくる」


 コンビニにて。

「マジで、あった」

 本当に流行なのか、この商品。

「あっ、神崎さん、こんにちは」

 あれ? 何でここに泉宮さんがいるんだ。

「あの~神崎さん~」

 もしかして幻覚か? もしかして頭がおかしくなったのか? いや、それはもともとだ。

「神崎さ~ん」

 触ってみるかいや、幻覚じゃ無かったら、いろいろ終わりそうだな。

「頭ならいいか」

 俺は、そっと泉宮さんの(幻覚?)頭をそっと撫でた。

「あっ本物だ」

「見れば、分かるでしょ!」

 泉宮さんは頬を赤らめながら怒り出した。

「ごめん、まさかコンビニに来てるとは思わなくて」

 てか、この辺て泉宮さんの家からだと遠いい気がするんだけど。

「いえ、私のお母様がこの辺に住んでいるので」

 あれ? 別居なのか、あるいは離婚か? まあ、考えるのも触れるのも失礼だし、気にしないことにするか。

「そうなんだ、でもなんでコンビニに?」

「お母様の家に行く前にコンビニで少し食べていこうと思って」

「そうなんだ、何買うの」

 そう言いながら俺と泉宮さんは店内のぶらつく。

「私、コンビニあまり来たことなくて、スイーツとか食べたいんですよね」

 なるほど、お腹を含まらせに来たというか、気になるものをつまみに来たのか。

「じゃあ、このちっこいパフェとか?」

 こういうサイズは軽く食べれるようになってるから、ファーストフードとかにある、細長いパフェが食べたい人向けじゃないから、個人的に好きじゃないんだよな。

「そうですね、いっぱい食べたいので、この小さいやつにします」

 そう言うと、俺が指を指したやつよりも二回り小さいやつを手に取った。

「はい」

 俺はすぐさまに、かご取って、入れるように促す。

「あっ、ありがとうございます」

 泉宮さんは深々とお辞儀をするすぐにどっかに行き、数分もかからずに戻ってきた、手にはたくさんの、デザートがあった。

「これ、全部買うの?」

 見たところ、二十個ぐらいある、おそらくここのコンビニにあるデザートを全て買ったのだろう、流石に心配になる。

「はい?」

 何を言ってる? みたいな顔をする泉宮さん。

「いや、金銭的に」

「問題ないです」

 お金持ちなのか?

「そうなんだ」

 少し、適当な返事になってしまった。

「あっ、これもいいですね」

 そう言うと、今度は菓子があるコーナーに行って、チョコを持って来た。

「これ、全部買うのか」

 買うのは問題なくても、食べれるのか?


 やはりと言うか、予想通りで、食べきれずコンビニの前で二人で食べていた。

「なあ、これ今食べないといけないのか?」

「流石にこの量を持っていくのは」

 確かに、これは重いしな、だって袋三つもあるもん。見たことは無いけど、文化祭準備の時の差し入れみたいな量だな。

「まあ、良ければ俺の家に置いてってもいいけど」

 よくわからんが、泉宮さんの母親の家の近くみたいだしな。

「そうさせてもらって良いですか?」

「ああ、そうしな、時間の事もあるし」

「はい、お願いします」

「任せとけ」

「でも、今食べてる物だけ食べ終えましょう」

「そうだな」

 そうして、俺たち二人は食べ始めた。


「食べ終わりましたし、そろそろ行きますね」

 手をパンパンと叩いて泉宮さんが言った。

「そうだな、これは任せろ」

 そう言うと、袋を指した。

「はい、お願いします」

「それでは、また明日」

 泉宮さんが手を振ってくる。

「ああ、また明日な」

 最近、本当によく挨拶をするな。


 家に帰って、コンビニで買った物を食べたかったが、さっき泉宮さんが買ったお菓子を一緒に食べたので、かなりお腹が膨れた。

「おい、妹通称綾香ちゃん」

「だから、私の名前が通称ってどういうことだ!」

「まあ、いいだろ、妹だし」

「そうだけど、名前を呼んでほしいの」

 なぜ、照れてる。

「まあ、そんな事はどうでもいいけど、コンビニで何か買ったけど食べるか?」

「う~ん、どうしよっかな」

 そう言うと、俺が持ってる袋を取り上げて袋の中身を見た。

「どうする」

「このデザートだけもらう」

「ああ、どうぞ」

「うん、じゃあね~」

 妹はそう言うと二階に向かった。

「はあ、俺も二階に行くか」

 二階にある俺の部屋に向かった。

「さて、寝るか」

 口の中が甘い。


起きたのは、十九時だった。

「結構寝てたな」

 後は、明日の準備しとくか。

「でも、必要なものあるかな、うーんお金は少しは必要だし、後は何が必要だ?」

 そんなこと言っていたら、もう十一時になっていた。

「やば、そろそろ寝ないと」

 明日は、勝負の日だ、ここで片を付ける。

「そのためにも、今日は寝よう」

 そうして、俺は目を閉じた。


 目を覚ましたら、六時だった。

「時間的にはまあまあだな」

 いい朝ではあるが、気持ちもうちょっと寝たかった。

「旭日からメールが返ってた」

 てか、メール確認しなくても別に返事は何かは、分かるし。

「まずは、朝飯を食って、その後美南を迎えに行く」

 学校の最寄り駅だから、だいたい俺が学校に行く感じだから。

「八時には家を出たいところだな」

 まあ、美南を呼ぶから、八時前には出とくか。

「さーて、飯でも食おう」


「だいたい、こんなもんだろ」

「何してるの? こんなに早くに」

 ご飯が食べ終わり、家を出る準備をしていた所を妹に見つかった。

「今日はお兄ちゃん遊ぶ日なの、お前は家にいろ」

「え~、私も行きたい」

「駄目だ、今日は大事な日だ、明日以降なら遊んでやる」

「えっ、本当に? やったー、何しようかな」

 本当に何する気だ、お願いだからトラウマを刻むような遊びはやめてくれよ。

「じゃあ、行ってくるから、いい子に待ってるんだぞ」

 我が子のように言う、これ一度は言ってみたかったんだよね。

「分かった、お土産楽しみにしてる」

「買ってくるなんて言った覚えないぞ」

「駄目だよ、妹には優しくしなきゃ」

「ヤダよ面倒い」

 それに、何か買っても、いつも要らないな~、みたいな顔をしてるくせに。

「買えたら、買ってくる」

「お兄ちゃん、やっさしー」

 本当に調子がいいやつだな。


 俺は早めに家を出て来て今、美南の家にいる。

「インターホン鳴らすの怖いよ、美南には言ったけど、朝鳴らすのは失礼だよな」

 まあ、ここには何回も来てるから、それほど緊張はして無いんだけどな。

「逃げてねえよな、あいつ」

 そう言って、インターホンを鳴らすと、すぐに声が聞こえた。

「は~い、あなたの奥様で~す」

「お前、今すぐ夫に謝ってこい」

 痛い、そして、女だったらどうするんだ、その人が可哀想だ。

「ハッハッハッハー」

「今日も痛々しいですね璃子さん」

「だって、私の夫はアナタだから」

 まさか、俺だと分かってて、やってたのか、冗談でもあんたの夫に失礼だ。

「あの、用件聞いてもらっていいですか」

 この人と話してると、軽く一時間はかかりそうだ。

「えっ、私に会いに来たわけじゃないの?」

「ちげえよ!」

 俺は、寝とられ系には興味がねえよ。

「じゃあ、桜ちゃん?」

「そうです」

「今いないよ」

「え?」

 今いないって言わなかったか、嘘だろあいつ逃げたのか。

「確か、三十分前ぐらいに家を出たわよ」

「どこに行ったか分かりませんか!?」

 半分パニックになりながら質問する。

「分からないけど、コンビニに行くとは言ってたけど」

「そうですか」

 嘘か本当かと言えば、多分家を出るときの口実で言っただけと思うが、一応探してみるか。

「すみません、失礼します! 桜さんが家に帰ってきたら教えてください」

「は~い、承りました」

 あんたは店員か。

「じゃあ、失礼します」

 そう言うと、俺はさっそうと走り始めた。


「ここ周辺のコンビニは回り切ったと思うんだが」

 やばいな、まったく見つかんねえ、一応泉宮さんや旭日には遅れるかもとは言っといたが、最悪今日が延期になる可能性もある。

「けど、やっぱ今日片づけたい」

 こんなに気まずい状態を継続したくないし、させない方がいい。

「本当にどこ行きやがった」

 後行きそうなところは、公園か? あるいは学校?

「でも、学校は、基本何も用が無いと中には入れないからなー」

 となると、残りはこの周辺にある二つの公園のどっちか。

「小さい所か、大きい所、どっちから回ろうか」

 見つかりにくいのは、小さい方かな?

「まあいいか、取り敢えず行くか」

 また、強く地面を蹴った。


「やっと見つけた」

 小さい公園で美南を見つけた、ブランコに座っていた。

「美南、探したぞ」

 逃げたくせに、思いのほか簡単に見つかったなあ。

「何でここに来たの」

 俯きながら返す美南。

「言っただろ、今日は時間を空けとけって」

「分かったとは言ってない」

 確かに、俺は一方的に言った気がする。

「でも、用事があった訳じゃないんだろ」

「用事がある」

「何の?」

 用事があるのは困る。

「あんたと会わないって用事」

 それ、用事じゃないだろ。

「なら、来いよ」

「やだ」

 即答する美南。

「お前が一か月待つって言ってただろ」

「やっぱ、あれ無し」

「それは困る」

「何で」

「何でもだ、少なくとも、今日は付き合ってもらう」

「行きたくない」

まだ俯いて、言う美南。

「どうしたら、来てくれる?」

 あまり、ここで時間をかける訳にはいかない。

「どうしても行かない」

 ふ~、こうなったら無理やりでも連れていくか。

「美南、ごめん」

 俺はそう言うと美南をお姫様抱っこをした。

「えっ!? 何するの?」

 困惑する美南。

「お前が行きたくねえって言ってるからだ」

 やっぱ、男とはいえ、女子を抱えて走るのは辛いな。

「早く、降ろして!」

「おい、やめろ、騒ぐな俺がやばいやつになる」

 最悪俺が捕まってします。

「じゃあ、降ろして」

「あのなあ、少し黙ってろ」

駅まではこのまま行くか。


 駅に着き、ようやく電車に乗った。

「ふーう、もう逃げるなよ」

「分かったわよ」

 美南は頬を膨らませていたが、渋々納得した。

 時間はどのくらいロスしたかな。

「八時二十分かー」

 まあ、大丈夫だろ、時間には余裕を持つようにしといたからな。

「どうしたの?」

 俺が時間を読み上げたのが心配になったみたいだ。

「まあ、たいしたことないよ」

 流石に美南が逃げてたから、とは言えないな。


「やっと着いた」

 結局着いたのは八時五十分だった、二十分の遅れだ。

「ここ学校の近くの駅? 何でここに」

 美南には言ってあったはずなんだけどな、聞いてなかったのか。

「集合場所だよ」

「あー、なんか言ってた気がする」

 やっぱり聞いてなかったのか。

「あっ、見つけた」

 すぐに泉宮さんと旭日を見つける。

「え! 何で旭日と泉宮さんがいるの」

 驚きつつ、俺だけに聞こえるように言ってくる。

「まあ、お前に言ってないからな」

「そうなんだ・・・いや、そう言う事じゃ無くて」

 まあ、サプライズみたいなものだから気にしないでほしい。

「行くぞ」

 俺はそう言うと美南の手を引っ張て、泉宮さんと旭日がいる所に向かう。

「え? ちょっと待ってよ」

 悪いがお前のせいで、俺や美南、旭日、泉宮さんの遊ぶ時間が削られたんだ、もう待つわけにはいかない。

「さあ、行くぞ」

 次の電車まで時間が無いので、皆で駅のホームまで走った。


 何というか、まあ、当たり前なのだが、駅員さん怒られた、走ってしまったのだし、怒られても何も言えない、でも電車には無事に乗れた。

「あんたが走らなければ、こんな恥をかかなくてもよかったのに」

 美南はさっきとは違い、少し楽しそうに言う。

「私とした事が、こんな悪いことをしてしまいました」

 泉宮さんは、あまり怒られる事が無かったのか、さっきから反省している、旭日は、さっきから笑っている、ぶっ飛ばしてぇ、でも皆んなすごく楽しそうだ、これは駅員さんにお礼を言わないといけないかもしれない。


 九時五十五分に遊園地の最寄り駅に着いた。

「このままだと、遅れるが問題ないよな」

 午後六時に閉まるが、多分大丈夫だろう。

「ねえ、どこ行くの?」

 美南が話しかけてくる。

「言ってなかったっけ?」

 時間のことは言ったのは確かだが、場所は言ってなかったっけ。

「言ってない」

 そうか、言ってなかったか、まあ、その方がサプライズ感があっていいし、このままでいいか。

「見てからのお楽しみ」

「何それ、うざい」

 やめて、それ言われるの意外とくる。


「やっと着いた」

 駅から十分かけて遊園地に着いた。

「遊園地?」

「そうだけど」

 美南はなぜか疑問そうに言う。

「今日は、皆で遊びたい、この前は何で怒らせたかは正直分からん、でも仲良くしたいとは、心の底から思ってる」

「・・・・・・・・」

 美南は黙って俺の話を聞いている。

「だから今日は美南と旭日や泉宮さんと楽しく遊びたい、駄目か?」

「・・・いいよ、今日は付き合ってあげる」

 美南は本当に仕方なさそうに言う。

「ありがとう、美南」

「もういい、今日は楽しく遊ぶんでしょう」

「ああ」

 今日は、絶対に間違えない。

「さあ、行くぞ」


 遊園地に入って、最初に乗ることにしたのは、ジェットコースターだった。

「あの、マジで乗るんですか」

 俺、こうゆうの苦手なんだよな、てか怖い。

「そうだよ、ジェットコースターだよ、めちゃくちゃいいじゃん」

 楽しそうに言う美南、それに反して俺はすげえやな顔していた。

「私、ジェットコースター乗ったことなかったんですよね」

「そうなんだ」

 泉宮さんは目を輝かせてあちこちを見ている。

「どうして皆あんな恐ろしい物に乗りたいのだろうか」

「まあ、瑛太見たな考えの方が珍しい方だと思うけどね」

俺がジェットコースター見ながら愚痴っていると旭日が話しかけてきた。

「半々ぐらいだろ」

 ジェットコースター嫌いの人もいるよ、絶対どこかに。

「そうかもね、でも瑛太は乗るんだよ、ジェットコースター」

「分かってるよ」

 やなこと思い出させるな。


「ぎやああああああああああああ」

 俺は情けないことにジェットコースターで女子みたいに悲鳴を上げていた。

「やっほうー」

「わわあああああ」

 美南は楽しそうに、泉宮さんは少し怖そうにしていた、旭日は。

「・・・・・・・・・・」

 無言だった、クソ、顔がいいだけじゃなくジェットコースターも乗れるのか。

「いいの、こっちなんか向いてて」

 旭日が俺の視線を感じてか話しかけてきた。

「何がだよ」

「この先」

「え?」

 俺は前を見ると、一回転していた。

「いぎゃああああああああああああああ」

 こうして、俺の精神ゲージはジェットコースターでほぼなくなってしまった。


「はあ、ちょと休憩」

 俺はタイムを皆に要求した。

「私も」

 泉宮さんもやはりダメだったみたいだ。

「泉宮さん大丈夫?」

 俺の心配はねえのかよ。

「初めてだったので少し怖かっただけです、でも楽しかったですよジェットコースター」

「よかった、やっぱ楽しかったよねえ、それに比べて瑛太は」

 俺を馬鹿にする目を向けてきた、仕方ねえだろ苦手なんだから。

「泉宮さんはジェットコースターは駄目じゃないんだな」

 俺は結局ここの中で一人だけなのか。


「ねえ、次何に乗る?」

 休憩も終わり、皆で次何に乗るかを決め始めていた。

「じゃあ、もう一個のジェットコースターの方を行こうよ」

 ここには二種類のジェットコースターがあるちなみにさっき乗ったのはここの遊園地で一番デカイ、ジェットコースターで次乗るのはさっきのよりは小さいやつだ。

「美南は本当に好きだなジェットコースター」

 あんな危ない物が好きとか、どうかしてるぜ。

「それは、あんな速いのは面白いでしょ」

 ちょっと、何言ってるか分かんない。

「私も乗りたいです」

 泉宮さんも賛成なのか。

「いいじゃない、瑛太も小さい方ならまだ大丈夫だろ」

「まあな」

 怖いは怖いが小さい方が安全だし、距離がそんなに長くない。

「じゃあ、行きましょう」

 本当に美南、楽しそうだな。


「ぎやああああああああああああああああ」

 俺は小さい方でも同じ事をやっていた。

「はあ、死ぬかと思った」

 小さい方もあまり変わんねえ。

「瑛太、小さい方でそれはちょっと」

 旭日が可哀想な人を見る目で見てくる。

「そうだよ瑛太、こんな楽しいのに」

 美南は、なぜ怖いのが分からないみたいだ。

「そうですね、ジェットコースターとてもいいです」

 泉宮さんはジェットコースターがお気に召したようだ。

「ねえ、次何乗る?」

 美南は楽しそうに言う、時間は十時五十分か。

「なあ、そろそろ十一時になるし、早めに飯食わねえか」

 後、体力が持っていかれたから休憩したい。

「そうだね、混む前に昼食は取った方がいいかもね」

 旭日も賛成する。

「う~ん、そうだね、ご飯を食べよう」

 美南は一回悩んだがすぐにご飯を食べることにした。

「そうですね、私も少しお腹が空いてきたところでした」

 泉宮さんは意外と食いしん坊キャラなのか?

「じゃあ、行くか」

 そうして、俺達は飲食が出来る、飲食ロードと言うネーミングセンスがない所に向かった。


「で、皆は何買うの?」

 飲食ロードで歩いていると、美南がそんな事を言い始めた。

「まだ、ここの見きれてないからね」

 旭日は見てから選ぶと言った。

「あれでいいんじゃないか」

「なんですか?」

「食べ歩きをしながら、ちょこちょこ食べる方がいいんじゃないか」

 提案したのは俺だが、何て普通な事なんだろう。

「確かにいいですね」

 泉宮さんは俺の案に乗ってくれた。

「まあ、もしラーメンとかカレーなどのやつが食べたかったらそれはそれで、待ってればいいし」

「じゃあ、そうしましょう」

 美南をこれに賛成だ、これ普通の事だけど、言う事に意味があるから。

「あっ、私あれ食べたいです」

 泉宮さんが指を指した物は焼きトウモロコシだった。

「あれが食べたいの?」

 俺は、別に今食べたくなるものではない気がしてしまい、聞き返した。

「はい、私焼きトウモロコシ食べたことなかったので」

「そうなんだ」

 今時いるのか? 焼きトウモロコシを食べた事が無い人。

「では、買ってきます」

 言ったとたん返事をする間もなく焼きトウモロコシが売っている売店へダッシュで向かった。

「ねえ、瑛太今時焼きトウモロコシ食べてない子っているの?」

 美南も気になってか、俺に聞いてきた。

「まあ、ここに実際いるし、要るんだよきっと」

 俺は軽く返した。

「ただいま帰ってきました」

「早いね、泉宮さん」

 俺達今、二言葉ぐらいしか話してないぞ。

「これが食べたくて、はーむ」

 泉宮さんはそう言うと、焼きトウモロコシを食べ始めていた、頬を膨らませながら食った、可愛い。

「良かったね」

 呆れ混じれに泉宮さん言葉を送った。

「ふあい」

 口の中にいっぱい入ってるから、何言ってるか分からん。

「あっ、私あれ買ってくる」

 今度は美南が他の売店に向かった。

「歩きながら食おうとは言ったが、皆自由だな」

 と言っても、主に美南と泉宮さんだがな。

「瑛太、僕たちも何か、買うか」

「そうだな」

 俺もかなりお腹空いたし。


 それから、十分ぐらい食べ歩きをしていた。

「結構食べたね」

「そうだな」

 美南が満腹したようで、お腹のあたりをさすっていた。

「あの、あともう一つ買ってきていいですか?」

「別にいいよ」

 泉宮さんはまだ食べるようだ、どんだけ食べるんだ。

「ありがとうございます」

「じゃあ、俺達あそこのテーブルで座って待ってるから」

「あっ、はい、分かりました」

 そう言うと、ここから少し遠くの方に行ってしまった。

「遠いなら、そっちの方の椅子に座ってたんだけどなあ」

「そうねえ、泉宮さんあまり素直じゃ、ないからね」

 俺が独り言で言っていたのが美南に聞こえていたみたいだ。

「美南って、泉宮さんの事知ってたの?」

 あまり記憶ないけど、美南とは高校一年も一緒だったが確か泉宮さんは居なかった気がするし、二年もそんな話したところを見た気がしないんだが。

「知ってるも何も、同じ小学校だったじゃん」

「そうなの?」

「まさか、覚えてないの?」

「旭日は、知ってたか」

 美南には返事をしないで、旭日に質問をする。

「知ってはいたよ、でも話したことは無かったよ」

 まさか小学校が一緒だったとは。

「中学校は、一緒なのか?」

「うんん、小学校だけ」

 首を振ってから答えた。

「お待たせいたしました」

 そう言って泉宮さんが返ってきた、手にはラーメンがあった。

「泉宮さん大丈夫? 食べれるの」

「はい? 大丈夫です」

 泉宮さんは何が大丈夫か分からなそうに答えた。

「泉宮さんってかなり大食いなんだね」

「そうですか?」

 美南の質問を食べながら返す泉宮さん、あんたは立派な大食いキャラだ。


 泉宮さんのラーメンを食べ終わるのを待ちつつ、皆で楽しく会話していたら、十一時半になっていた。

「じゃあ、そろそろ後半戦と行くか」

「そうだね」

「はい、そうしましょう」

「じゃあ、さっさと行こう」

 俺が、最初に先陣を切ると、美南、泉宮さん、旭日の順で乗ってきた。

「じゃあ、どうする?」

「う~ん、ジェットコースターだと瑛太がへばるし、メリーゴーランドにしよう」

 俺が聞くと、美南がメリーゴーランドを提案する、特に否定する理由がなかったので行くことにした。


「俺、メリーゴーランド乗ったことないんだよね」

「まあ、あれは子供向けだろうしね、後カップル」

「あー、なるほど、通りで縁が無い訳だ」

「久しぶりに乗りたい」

「まあ、美南が乗りたいなら俺はそれでいいけど」

 俺が賛成すると旭日もうなずく。

「私も乗ってみたいです」

 メリーゴーランド経験者美南しか居ないのか。

「俺も一回は乗ってみたいしな」

 経験するのは大事な事だからな。

「じゃあ、乗ろう乗ろう」

 美南はとても楽しそうだった。


初めてのメリーゴーランドは特に何も思わなかった。

「なんだこれ、ジェットコースターよりはるかに遅い」

 まあ、当たり前で、こっちの方が俺はいいんだが。

「怖い系じゃないから」

「知ってるわ!」

 旭日が馬鹿にしに来やがった、俺は馬鹿では無い、天才だ!

「てか、俺は何でお前と一緒なんだよ」

 できれば、三人乗りに乗って両手に花をやりたかったのに。

「俺と共に行こうぜ」

「キモイわ、旭日」

「そんなこと言って、本当は嬉しいんだろ」

「マジでキモイから」

 何で、こいつが俺の親友なんだろう、人類の謎だな。

「早く終わらないかな」

 この年で、メリーゴーランドは乗らない方がいいな、と俺は思った。


「楽しかったねえ」

「ええ、とても良かったです」

 美南と泉宮さんはとても楽しめたようだ、女子は例外みたいだ。

「二人とも楽しそうで良かったね」

 男と女ではやはり感性に違いがあるのだろう。

「はい、また今度乗ってみたいです」

「そうだね、でもジェットコースターに何回も乗ると飽きそうだね」

 泉宮さんと美南は楽しそうに会話をしている。

「じゃあ、どこ行くか?」

「近くにある空中ブランコとかコーヒーカップとか行こうよ」

 俺が聞くと、美南がすぐに反応する。

「いいですね、どっちから行きますか?」

 美南が提案して、泉宮さんとが聞く。

「どっちでもいいけど、空中ブランコは乗りたくない」

「乗るけど、じゃあ後にするか」

「まあ、それでいいや」

 美南相手じゃあこっちが意見言っても負けるから仕方なく空中ブランコ乗るんだろうな、俺優しいから。

「じゃあ、コーヒーカップ行こう」

 美南が先頭に立って歩いて行く。

「コーヒーカップと言ったら、目が回るのが定番だな」

 起こりそうだな、てか起こるな。


 コーヒーカップの前で、俺たちは立ち止まっていた。

「何で皆、こんな所で止まってるの?」

 正直何で止まってるのか見当もつかない。

「コーヒーカップは戦闘だよ、気を付けないと死人が出てしまうわよ」

 美南は何を言ってるか分からないんだけど。

「そうですよ」

 なぜ泉宮さんはここでは乗ってるの? さっきまで何も知らないお嬢様って感じだったなのに。

「さあ、皆準備は出来てるかい」

 旭日は平常運転だな。

「瑛太、今失礼な事考えてただろ」

「まさか、いつも通りだなとは、思った」

「そう、では行こう」

 切り返しが早い。

「てか、何でコーヒーカップって戦場なんだ?」

「いいからついてきな」

 おい美南お前がワイルドな言い方すると誰か分からなくなるだろ。

「まあいいけどさ」

 どうせ、説明してくれないんだろうし。

 だが、俺はちゃんと説明させるべきだった。


「いぎゃああああああ、何でこんな馬鹿みたいに回すんだよ!!」

 もう意味わかんないよ、止めろよ! 従業員。

「ここからだよ、瑛太」

 相変わらず、美南はワイルドに言う。

「絶対おかしい、従業員がやめてくださいって言うだろ」

 危ないよ! 子供がまねしたらどうするの? だから止めてください従業員さん~。


 コーヒーカップが終わり、皆休憩をしていた。

「はあー、お前ら馬鹿だろ」

 コーヒーカップが終わると皆気持ち悪そうにしていた。

「だから言ったでしょう、コーヒーカップは戦場だって」

 自爆だろ。

「今回は、引き分けですね」

 美南も泉宮さんもコーヒーカップになると熱くない?

「じゃあ、もう一回行くか」

 旭日は馬鹿なのか? 行く訳ないだろう。

「よし! いっくぞー」

 美南は拳を天に突き付けて言う。

「行きますか」

 駄目だこいつら、泉宮さんまでも乗ってる。

「ほら、行くよ瑛太」

「行きますよ、神崎さん」

美南と泉宮さんに手を取られて俺は向かった、コーヒーカップに。

「普通にこの状況は嬉しいけど、行くところがコーヒーカップなんだよな」

 終わったら、皆気持ち悪くなってるんだろうな。

「絶対皆、馬鹿だよ」

 俺の命なくなるな、ジェットコースターより怖い。


 コーヒーカップをあの後も十回も乗った、俺には分からないが、どれも結局引き分けだそうだ、皆気持ちが悪くなってしまい、休憩スペースに来ていた。

「お前らさっきのコーヒーカップ何回も乗るのは間違えただろう」

「そうだね、何回も乗るのは違かったねえ」

「そうですね」

 美南の泉宮さんもうなずきながら言う、旭日も吐きそうな顔で顔を立てに振っている、こいつ馬鹿だなと思った。

「ここからどうする?」

 正直言って皆で回るより、少数二人又は一人で動いた方が好きな所行けてそれはそれで、楽しいだろう。

「そうだね、一回一人で回ってみる?」

「そうですね、それで後で、楽しそうな物を一人ずつ挙げて回りましょう」

「いいね」

 美南が案を挙げて、泉宮さんがその案に乗っかり、旭日が賛成する。

「じゃあ、一時間後にここに集合しよう」

 まあ、俺も一人に一回なりたかったしな。

「でもここ小さい遊園地だからそんな無いぞ、てかほとんど回ったぞ」

 マジで小さいしなあここ。

「同じところでも良いんじゃない」

「そうですね」

 お前らジェットコースターとコーヒーカップを選びそうですね。

「そう言う事で、皆一時間後にここに」

 美南はそう言うと立ち上がって、どこかに向かってしまった。

「じゃあ、俺達も行くか」

「はい、そうしましょう」

「そうだな」

 そう言うと、俺と泉宮さん、旭日はそれぞれ行きたい方向へ向かった。


あれから一時間が経ち、集合場所に俺は向かっていた。

「美南が嫌いなものはお化け屋敷」

 だからあえて俺が連れて行こう、さっきまでの鬱憤を晴らさせてもらう、あとできれば泉宮さんが怖がってるところを見たい。

「瑛太、何か良くない事企んでるね」

「おっ! 何だ旭日か、びっくりさせるなよ」

 別に旭日にばれても問題は無いが、サプライズとして残したい。

「いや、何も企んでないさ」

「僕は別にいいけどな」

 何か企んでるのは、バレたみたいだが気にしないで行こう。

「なら、言うな」


「もう皆いるな」

 集合場所直前で旭日が言ってきた。

「そうだね」

 でも、俺と旭日が一緒な訳なんだから二人を皆と言うのはどうなんだろうか?

「どうでもいいな、うん」


「で、誰から行くの?」

 最初に言葉を発したのは美南だった。

「てか、何で皆黙ってたんだ?」

 皆座った瞬間黙り始めたので俺も気を利かせて黙ってた。

「何となく、てへぺろ♪」

 美南うざい、男だったら気色悪い、女だったが、あざとい。

「じゃあ私からいい?」

「良いんじゃないの」

 特に誰も最初は自分がいいってやつはいないだろう。

「じゃあ、行きましょう」

 そうして、俺と泉宮さんと旭日は美南の後ろについて行くことにした。

「怖くない乗り物に乗りたいなあ」


「じゃじゃーん、空中ブランコでーす」

 美南は楽しそうに手を広げて言う。

「わー、楽しそうですね」

 泉宮さんは今日は子供みたいだな。

「そう言えば、さっき言っててたな、空中ブランコ」

「早く乗りたかったんだよねえ」

 美南は目を輝かせながら言う。

「じゃあ、さっさと乗ろうか」

 旭日は、なぜか急がせる。

「じゃあ、行くか」

 別に早く乗る分には構わないけど、何でだ?


「あれ? さっき、乗ってるところ見てなかったけど、何でこの椅子上がるの」

 高いのは超怖い、低い所で遠心力を感じたい。

「誰かー、降ろしてー」

「ハッハッハッハー」

 旭日が気持ち悪い笑顔を向ける、こいつこれを知ってて俺を早く乗せたのか。

「旭日、後で覚えてろ」

「覚えてたらね」

 旭日に言葉を最後に、椅子が回り始めた。

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いよー」

 早く終わってください、俺がします、マジでお願い。

「ハッハッハッハッハー」

 旭日いつか潰す。

「いーやっほいー」

 美南元気だな、ここまで元気だと、この前までの喧嘩はなんだろうと思ってしまう、一応仲直り又は、納得させられるように考えてきたんだけどな。

「キャー」

 泉宮さんは悲鳴を上げていた、でも怖い方ではなく楽しい方の悲鳴だ。

 いいなー皆楽しそうで、俺も声を上げていくか。

「ぎゃあああああああああああああああ」


「こんなもんに乗せるなよ」

「瑛太、本当に情けないね」

「旭日お前いつか消す」

「楽しみに待ってるよ」

 こいつ嫌い、ほんとヤダ。

「次は誰が行く」

 これは誰が二番目にアトラクションに連れて行ってくれるという意味だ。

「私、いいですか?」

「泉宮さん、大丈夫? 俺乗れる」

「大丈夫です」

 うん、分からない、真顔怖い。

「まあ、取り敢えず行きますか」

「そうね、行きましょう」

 泉宮さんと美南楽しそうだな。

「行きたくないなあ」

 何か遊園地はトラウマになりそうだな。

「ほら、さっさと行くよ」

 俺が少し立ち止まっていたら美南に呼び掛けてきた。

「分かってるよ」

 俺はそう言うとちょっと走り、皆に追い付くように足を動かした。


「ふーう、なるほど泉宮さんこれは何?」

「これは、ウオータースライダーです」

 ボートに乗るタイプだ。

「怖くないけどさ、濡れたら絶対寒いよね」

 まだ、夏でもないのに何であるんだ?

「そうですね、これは濡れると寒いというスリルを楽しむものです」

 嫌だな、そのスリル。

「僕は遠慮しとこうかな」

 旭日は逃げようと試みる。

「駄目だ」

「何言ってるの旭日行くに決まってるでしょう」

 俺と美南によって逃げるに失敗する。

「えっ、ちょっと待って」

 俺と、美南で旭日を連行する、その後ろに泉宮さんが歩く。

「ハッハッハ、楽しそうだな旭日」

 旭日は濡れること全般好きじゃない、後ボートなどの不安定な乗り物が苦手だ。

「お、お前」

 旭日は恨むように、こちらを見る。

「これでお互い様だな」

 旭日にこんな弱点があるとは思わなかった。

「どこがだよ」

 旭日をいじり倒すって楽しい。

「さあ行こうか」

「はあ」

 旭日は渋々スライダーに乗ることにした。


スライダーは二人ようになっていて、美南と泉宮さん、俺と旭日に分かれて乗ることにしてた。

「じゃあ、行ってくるね」

「行ってきます」

 美南は手を振ってきて泉宮さんは頭を下げてから乗り込む。

「行ってらっしゃい」

「じゃあ下で」

 俺と旭日は美南と泉宮さんに手を振った。

「「キャー」」

 美南と泉宮さんは楽しそうに滑り降りていく。

「さっ、俺達も行くか」

「乗らなくてもいいんじゃない」

「何を言ってるんだ旭日、馬鹿なのか?」

「お前に言われたくない」

「まあ、学力はお前の方が上だからな」

 学力に関しては何も言い返せない。

「けど、何かお前時々馬鹿になるからなー、俺はお前にも言われたくないけどな」

「馬鹿で、悪いな」

 拗ねた、カワイイネ。

「さっさと乗るぞ、後ろが詰まる」

「分かったよ」

「よし、今回のアトラクションは楽しいな」

 旭日がジト目でこっちを見てきたが気にしないで乗った、落ち始めと同時に横から悲鳴が聞こえたのはおそらく気のせいだろう。


「ラストは俺か」

 美南、泉宮さん、旭日が終わりとうとう俺の順番が来た。

 ちなみに旭日の選んだアトラクションは思い題したくないし、面白みが無いので、省略。

「そうだね、瑛太何にしたの?」

「私も気になります」

 美南と泉宮さんは既に俺が選んだアトラクションに興味があるようだ、お化け屋敷と言った瞬間の顔がとても楽しみだ。

「俺だけ最初に言ったらつまらないだろ」

 主に俺が。

「そうですね、では楽しみにしてます」

「それもそうね」

泉宮さんと美南は俺のサプライズを楽しみに待ってくれるらしい。

「じゃあ、行くか」

 水上バナナボートから一番遠いいから、十分も無駄にしてしまう、正直もったいない気もするでも、また来ればいいだけか。


「お、お化け屋敷?」

 美南が恐る恐る目的地の名前を上げる。

「そうだけど」

「えっと、私少しトイレに」

「私も」

泉宮さんと美南は逃げるようにトイレに駆け込む。

「女子トイレの前で待ち構えたいがそんなことしたら、おまわりさんが来そうだな」

「当たり前だ」

 旭日が馬鹿を見る目でこちらを見る。

「旭日、捕まらない程度に後ろにきっとある窓側に行って監視してくれ」

「普通に嫌だなんだけど」

「前は俺が見るからいいだろ」

「前よりは、マシか」

 そう言うと、旭日は女子トイレの後ろに回った。

「これで、女子トイレは包囲した」

 これを誰かに聞かれたら、警察呼ばれそうだな。


 十分後、諦めたようで、美南と泉宮さんが、トイレから出てきた。

「あんた達、そこまでして私たちをお化け屋敷に入れたいの?」

「別に僕は、そう言う訳じゃあ無いけど」

 美南が呆れながら言うと旭日が否定して、皆が俺の方を見る。

「俺は女子が恐怖で震えている姿を見たい、可愛いし」

「気持ち悪い」

「歪んだ性癖をお持ちで」

「最低だな」

 三人に否定された、確かに言い方は悪かったが、怯えている女子は可愛いと思うのは普通じゃん。

「まあ、何とでも言え、その代わりと言っちゃなんだがお化け屋敷に来てもらうぞ」

「瑛太がクズになった」

「最低です」

「カスだね」

 皆から批判を食らう。

「お化け屋敷が可哀想だな」

「最低です」

「クズだね」

「本当に何でも言うなよ! 泣くだろ俺が」

 悲しくなったので、俺は皆に心情を訴えた。

「だって何とでも言えって、瑛太が言ったんじゃん」

 美南が軽蔑のまなざしを向ける。

「だからって本当に言わなくてもいいだろ」

「瑛太馬鹿だね」

 旭日は笑いながら言う。

「最低です」

 泉宮さん、あんたはいつまで言うんだよ!

「まあ、とにかくお化け屋敷行こうよ」

 泉宮さんに反応したら負けだと思い話を進めることにした。

「分かったよ」

 美南は仕方なく行く事にしてくれた。

「じゃあ、さっさと行こう」

 旭日はこの茶番に飽きたのがさっさと行かせようとさせる。

「ああ、行くか」

「最低です」

 泉宮さん、いつまで言ってんの!?


 俺たちはトイレから十分かけてお化け屋敷に入った、トイレからお化け屋敷まではさほど距離は無いが、美南と泉宮さんがグダグダしたため、遅くなった。

「ねえ、走って出ようよ」

「美南走ったら危ないだろ」

 怯えている美南を、微笑みながら返した、神様のようにまたは教会とかでイメージするシスターのように。

「神崎さん、本当にいい性格してますね」

 怯えながらも、しっかりと軽蔑のまなざしを向ける。

「いくら何でも酷くない」

 好きなところを選ぼうって言ったのは、一応そっちだったよね。

「まあ、俺の辛さを分かち合えたことで、皆平等になったね」

「いや、お前の方が嫌な思いしてると思うけど、数的に」

 足を止めて、話を始める。

「黙ってろ」

 旭日に言われなくてもそんな事は分かってる、でも思い込めないとやっていけないんだよ。

「でも、ここ意外と怖いな」

「怖いていうか驚く、だろ」

「その通りなんだけど」

 美南も泉宮さんは驚き対しては結構免疫があったはずなんだけどな。

「うわわわわわわ」

「きゃー!」

 泉宮さんと美南そろそろやばそうだな。

「別に美南と泉宮さん、二人で行くなら先に行ってもいいから」

 俺は、もうちょっとお化け屋敷を堪能したい。

「俺は?」

 旭日が自分に指を指して聞く。

「お前は、俺と居ろ一人行動はよくない」

 つまり、ただの巻沿いだ。

「ふーう、分かったよ」

 ため息をつき、歩き始めた。


 お化け屋敷を出るまで五分かけてしまった。

「あれ? 美南は」

 泉宮さんがお化け屋敷の前のテーブルの所で休んでいた。

「え? あれ? 美南さんはどこに?」

 泉宮さんは今まで気付かなかったみたいだ。

「俺、その辺探してくる、お前たちそこにいてくれ」

「ああ、分かった」

「分かりました」

 本当は探したいと思うが我慢してもらう。

「じゃあ、行ってくる」

 そう言って俺は走り始めた。


「遊園地に行く前も美南を探して、遊園地に来ても美南を探すことになるとは」

 あいつは、どれだけ俺に迷惑をかけるつまりだ?

「まあ、俺が悪いんだけどな」

「でも近場は探したのに見つかんねえぞ」

 いったいどこまで走ったんだ?

「さて、走り過ぎで喉が渇いたな・・・・・・・喉が渇いた!」

 そうだ、走ったら、疲れるし喉も乾くなら、どこかの自動販売機、飲食ロードのどこかの可能性がある。自動販売機は確か六個あったはず。

「まずは、飲食ロードを見てから、近くにある休憩スペースも見とくか」


 結果は、どこにもいなかった。

「てことは、自動販売機の方か」

 でも、どの辺から探したほうがいいのだろうか。

「それなりに近い場所に三つぐらいあるからそこから回っていくか」

 とりあえず、考えすぎるよりは動いた方がいいか。

「行くか」


「全然見つからねえ」

 残りの自動販売機はコーヒーカップの近場と遊園地入り口付近、観覧車の隣にあったはず。

「パンフレットを見てたとはいえ、すげえ覚えてんな俺」

 自分を褒めながらも残りの自動販売機に向かった。


「やっと、見つけた」

 見つけた場所は、観覧車の隣の自動販売機だった。

「あれ? ここどこ」

「美南、頭打ったか?」

 心配にはなったが、少しからかうように言う。

「何よ、少しは心配しなさいよ!」

「お前、本当は怖くなかったんだろ」

「えっ・・・・・・・・何で?」

「だってお前怖いのは事実だろうけど、さっきのお化け屋敷は怖いというか、驚かす系だったから、怖くないと思った」

 後演技ぽかったし、と付け足した。

「ふーん、あんたにしてはよく分かったね」

「長い間ずっとお前の近くに居たんだぞ、それぐらい分かる」

「まあ、少し怖かったけど」

「そうなんだ」

 怖かったんだ。

「観覧車に乗ろう、話したいことがある」

「分かった」

 泉宮さんや旭日と合流する方が本当は先だが、話したいことが気になったので乗ることにした。

「じゃあ、行きましょ」

「ああ」

 俺たちは観覧車に乗った。


 俺達は青色のゴンドラに乗った、窓は窓が小さく綺麗であろう景色が見えない、少し残念だが高所恐怖症だから今回は良しとした。

「なあ、言う気はあるんだよな」

 ゴンドラが四分の一が終わったところで美南に話しかける。

「うん、言う気はあるよ、でももうちょっと景色見ようよ」

 そう言うと美南は小さい窓の奥にある景色を見る。

「分かったよ」

 俺も美南を習い景色を見ようとする、少し怖かったが、小さい窓から見ても外の景色はとても綺麗だったおかげなのか、不思議と怖くなかった。

「ねえ」

 ゴンドラが四分の二になる前、つまり頂上になる前のタイミングで窓を見ながら話しかけてくる。

「なんだ」

 俺は軽く返す。

「私ね・・・・・・・・」

 美南はまだ外を見ながら言う。

「何?」

 話を振ってきたが止まったので聞き返した。

「私は、いろんな事考えてた」

 美南はやっと窓から俺の方に視線を向けた。

「私は、どうすればいいか分からかった、でも瑛太は考えて今日動いてくれた」

 美南は話しながら、意思を固めたように唾をのんだ。

「・・・・・・」

 俺は黙って聞く。

「私は、私は瑛太が好き、大好き!」

「えっ」

 美南の、告白に俺は動揺してしまった。

「急に言われても、困るのは分かってるつもり、でも私は気持ちをはっきりさせたい」

「俺は・・・・・・・」

 今回は、しっかり答えないといけないと思いつつ次言う言葉が正しいのか迷っていた。

「今回は逃がさないよ、答えるまで」

 観覧車を選んだ理由は少なくとも逃げられないようにするためみたいだ。

「前はお前がどっか行ったんだろ」

「そうだけど、違くて、答えて!」

 美南は顔を真っ赤にしながら言う、多分告白した時からだと思う。

「分かった、答えるよ」

 俺は少し迷いつつも答えることにした。

「ごめん、俺はお前とは、親友でいたいだから彼氏にはなれない」

「・・・・・・・そう」

 美南は悲しそうな顔をする。

「でも、言った通り俺は親友になりたいぐらい好きだ、誤解はするなよ」

 ここは重要だから念を押した。

「だったら、私の彼氏になってもいいじゃん!」

 少し怒ってるせいか、美南は大きな声で言う。

「ごめん、俺は恋が分からない」

 本当の事だ、俺は恋と言うものが何なのか分からなかった人生の中で。

「だから、好きか分からないのにお前と付き合うのは失礼だと思ったお前に」

「何よ、それ」

「言ったろ、俺は親友レベルで好きだって、だから大事にしたい」

 これは、美南だけじゃなく旭日や泉宮さんにも同じく思う。

「だから、少なくとも俺は恋を知るまで誰とも付き合う気はない」

「・・・・・・・・・・・」

 美南は黙って俺の話を聞く。

「だからもし、恋が分かったら、その時また言う事じゃダメか?」

 さっき断っておいて結局キープか、最低だな俺。

「・・・・・・・分かった、でも条件がある」

 子供みたいに頬を膨らませながら美南が言う。

「何?」

「私のことは、美南じゃなくて桜って言って」

「えっ、そんな事でいいのか」

 もっと重い罰が待ってるんではないかと思ってたが、そう言う訳では無かったみたいだ。

「うん」

「分かった、桜」

 俺は言った瞬間顔が熱くなったのが分かった。

「何、瑛太」

 美南は嬉しそうに言う。

「お前が言ったんだろ」

「お前じゃなくて桜」

「分かってるよ、桜が言ったんだろ、名前を言えって」

 女子の名前を言うのは、思ったより恥ずかしかった。

「私が言ったけど、何か問題でも?」

「無いけどさあ」

「そろそろ降りるわよ」

 なぜか勝ち誇ったように言う。

「分かったよ」

 どうやら気づかないうちにもう下まで降りてきてしまったようだ、今回の観覧車は人生で初めて終わるのが遅く、そして早く感じた。


 それから、俺と美南・・・いや桜は旭日と泉宮さんがいる所に向かい、無事会うことが出来た、まあ動くなと言ってあったから会えなかったらその方が問題だが。

「本当に見つかって良かったね」

「そうだな」

 旭日が俺にだけ聞こえるように言ってくる、おそらくあまりにも時間がかかたことに疑問を感じたんだろう、こいつは勘が鋭いから、面倒くさいんだよな。

「別に、何もねえよ」

「ふ~ん、まっいいけど」

 そう言うと旭日は黙りながら歩く。

「美南さん本当に良かったです」

 泉宮さんは若干泣きながら、桜に抱き着く。

「大げさよ、ちょっと先まで走って疲れただけだから」

「でも、もしもの事を考えたら、心配になって」

 なんていい子なんだ! 純粋すぎる。

「あの、美南さん出来ればでいいんですけど、下の名前で呼んでもよろしいですか?」

「うん? 別にいいけど、何なら連絡先も交換する?」

「えっ!! 連絡先までいいんですか!」

「うん、だって千夏とはもう友達でしょう」

「と、と、友達!」

 嬉しそうに言う。

「良かったね泉宮さん」

「ええ、どうせ何で神崎さんではなく瑛太さんと言ってもいいですか?」

 どうせて言われるのは結構傷つくな。

「別に良いよ」

 顔に出さないで答えるのは難しいな。

「なので、瑛太さんも私のことも下の名前でお願いします」

「分かったよ、千夏」

「はい、瑛太さん」

「じゃあ、僕もそう言わせてもらおうかな」

 旭日が千夏さんにちゃかり下の名前で呼べるように取り付けた。

「ええ、構いませんよ」

「時間はあまりないから、後一つだけ乗るか」

 三十分しか少しは急いだほうがいいかもしれないけど。

「そうね、じゃあ、観覧車にしましょう」

 俺が言いきったと同時に桜がそう言った。

「良いですね」

「そうだね、観覧車には乗ってなかったからね」

「なあ、いいのか?」

 俺は桜に皆にばれないように近づきこ声で話しかける。

「別にいいわよ、それに今日は皆と楽しみに来たんだし」

 桜は皆の方を見ながら俺だけに聞こえる声で話す。

「そう、桜がいいならいいけど」

「じゃあ、問題ないね」

 桜は笑顔で言う、それは名前を呼ばれたことなのか楽しくなってか分からないが、とても桜はとても楽しそうだった。

「じゃあ、行くか」

 俺たちは、観覧車に向かった。


「観覧車って、楽しいですね」

「景色、綺麗だね」

「そうだね」

「ああ」

千夏と旭日はとても楽しそうだったが、俺と桜は二度目なのでリアクションもそれなりになってしまう。

頂上に近づくと、桜が俺に告白してきたとを思いしてしまい、俺も桜も顔が熱くなってしまい、今回は観覧車が下に着くまでかなり遅く感じた。


 観覧車が終わると、閉園時間になってしまったので俺たちは帰ることにした。

「はあ、今日は疲れたな」

「そうですね」

「本当に、もう疲れたわよ」

「そうだね」

 俺が言うと、皆が似たような返事が返ってくる。

 にしても、久しぶりだなこんなに遊んだのは、いや純粋に遊んだのは初めてか。

「次は、遊びにしても、もうちょっと軽い方がいいな」

「そうですね」

「そうだね」

「瑛太の体力は普通の人の半分以下だから、あまり外で遊ばない方がいいかもね」

 旭日お前の言葉は余計だ。

「さあ、さっさと帰るぞ」

 旭日の声を無視して帰るように促した。

「じゃあ、帰るか」

 旭日は無視されたことを気にしないで話に乗ってきた。

「そうですね」

「そうね、帰りましょう」

 皆が歩く、その後ろを歩いていると、こんなにいい風景を見れるのもあまりないなと、柄にもないことを今日ばかりは普通のことのように思ってしまった。



                                           終わり


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