兵隊さんと麻の花
あの頃はさ、この季節になるとこの辺一帯ずっと花が咲いてさ、とてもキレイだったよ。
その花畑でさ、隣に住んでたアー姉さんがさ、いっつもいっつも花つんで遊んでた。
アー姉さんはさ、髪ィ振り乱して、着物をこうだらーしなく着てケラケラ笑ってたよ。
時々マトモな時もあったんだけど大方そんな風だった。
「何であんなふうになっちゃったのサ?」
って、おやじに聞いたらサ、
「戦のせいだ」って答えたよ。
そうあの頃はずっと戦でさ、外国語喋る兵隊さんがよくこの辺にもウロウロしてて、凄くおっかなかったよ。
その兵隊さん達が、あの花が好きでさ、村中が兵隊さんの為に花造ってるようなもんだった。
おれもよく手伝わされたよ。
みんな大変だったけど、アー姉さんだけはそんなの知った事かっていうように毎日ケラケラ笑って遊んでたよ。
それが、ある晩のことさ。アー姉さんの叫び声が聞こえてオレ目が覚めたんだ。
何が起こったのかと、アー姉さんが兵隊さんに追いかけられてケラケラ笑いながら逃げてたんだ。
笑って笑って、逃げて逃げて、とうとう捕まって花の中に埋もれて消えた。
その後、月明かりの下で、何度も何度も姉さんの白い手や足が見えてさ、姉さんのヒイヒイいう声が村中に響いてさ、ズーッと響いてたんだけど、最後にバーンッていう音にかき消されて、それきりシーンとなっちゃった。
何があったのか見に行こうとしたら、いつ来てたのか、おふくろが慌ててオレを家の中につれて入った。
家に入ると他の家族が、ふとんの中で耳を塞いで震えていた。
次の日アー姉さんが消えた後には、まっかな血が花びらみたいに散らばってた。
じいちゃんがポツリと言ったよ、姉さんはこの花を食べたんだって。
この花は毒の花なんだって。
あの頃は子供だったから何の事だか分からなかったよ。
今でもこの季節になるとあの夜のこと思い出すんだよ。
この話は、大昔に書いて割と気に入っていたのですが、考えるところがあり長いこと封印してきました。
ですが、作品は作品として独立したものとして、もう一度オンライン上にさらすことにしました。
最後に、私は何の思想も持っていないことだけ、お断りしておきます。




