119.ユアの気になること
部屋に入ると私はベッドに座わるとユアは私の前に立っていた。どうしたのかな? と思ってユアを見るが何か言おうとはしているけど私と目が合うと俯いてしまった。本当にどうしたのかな? とそんなことを思っていたけど立ったままで動かない。
「こっちにおいで?」
そう言いながら手招きするとユアが近くに寄って来たので右手でユアの右手を掴み引き寄せる。
「きゃっ」
するとユアは私の脚の間に座った。
「このあとユアは戻るのでしょ? 何か言いたいことがあるならはっきり言わないと」
「……うん」
「ほら、隣に座って?」
「このままじゃあ駄目?」
と後ろを向きながらそんなことを言って来た。
「別にいいけど話しにくくない?」
「このままの方が落ち着くというか嬉しいから」
「ユアがそれでいいなら構わないけど、何だか昨日あたりからユアは甘えん坊さんだね?」
「そ、それは……少しあるかもしれないけどレーナちゃんは、その、い、嫌かな?」
と体を強張らせながら少し震えていることがわかる。私はそんなユアの背中から優しく抱いた。
「嫌じゃないよ。だから少し落ち着きなさい」
「う、うん」
それからしばらくすると無駄な力が抜けて来たのか私にもたれ掛かってきた。
「レーナちゃんといると何だか落ち着く。何だかお母さんみたいで……あ、別にお母さんだと思っているわけじゃないよ!」
「はいはい」
そう言いながら頭を撫でてあげる。懐いてくれているみたいだから私としては嬉しいからね?
「……レーナちゃんは私に凄く優しいけどどうして?」
「……ユアが可愛いから?」
「そ、そういうのはいいから……」
と言ってユアは俯いていた。ユアの顔を覗こうとしたらプイッて顔をそらされた。顔が見られないのは少し残念だけど耳が赤く染まっていたから照れていることは分かった。
「……本当に、どうして、なの?」
「そんなにも知りたいの?」
「レーナちゃんが言いたくないのなら聞かないけど教えてくれるのなら聞きたい」
どうしてそこまで知りたいのかな? とそんなことを思いながら少しだけ話すことにした。
「……そう、それなら少しだけよ?」
「うん」
「……簡単に言っちゃうと私もユアと同じような境遇だったからかな? あ、でも、さっき言ったユアが可愛いから気になっているのもあるけど」
「そ、そうなの、その、大丈夫だったの?」
ユアは赤い顔を私に向けて心配そうにそんなことを聞いて来た。
「私がここに居るから大丈夫だったんじゃない?」
「そうなのかもしれないけど私と同じように暴力を振るわれたんじゃあ……」
(あ、そう言う心配をしていたのね)
「確かにあったけど痛いのは最初だけで途中から痛くなくなるからね」
「え?」
「?」
ユアは驚いた顔をしていたけど、今変なこと言ったかな?
「それって長いこと暴力を振るわれていたんじゃあ……」
「それはわからないけど、過去の事なんてどうでもいいよ。今が楽しければ……」
過去のことを思うと少しゾッとするけど今の生活は楽しいし私を好いてくれる子もいるから今の方が幸せかもしれない。
「……そうだね。こんなこと聞いちゃってごめんね」
「気にしなくてもいいよ」
それから私達は他愛もない話をしているとお昼頃になったのでご飯を食べに食堂に向かった。




