113.ラーシュさん2
誰のギルドカードなのか確認してみると、そこに記されている名前はブラッドだった。メンデスが彼等はオークに食べられたといっていたから、もしかしたら遺品かなにかが出てくるのでは……と思っていたけど、本当にオークの体内から出てきて少しだけ驚いた。
「……君たちは何か知っているのか?」
「お二人から事情を聞いてギルド側でも把握しています」
「……そうか。辛い話を聞いて悪かったな」
ラーシュさんは私達に何か聞こうとしたけどそれをエレナさんが遮った。ラーシュさんはエレナさんを見た後、少し気まずそうに謝ってきた。
「私は気にしていないので大丈夫」
そういいながらユアをチラッと確認すると少し顔色が悪そうな感じだったが私の言った言葉に頷いていた。
「そのギルドカードは私が預かっておきます。ラーシュさんは引き続き査定をお願いします」
エレナさんがそう言うと、ラーシュさんはオークの体内から出てきたギルドカードを丁寧に洗って麻袋に入れエレナさんに渡した。
「あ、あのっ!」
その様子を見ていたユアは何か思い出したかのようにエレナさんに声を掛けた。
「ユアさん、どうしましたか?」
「こ、これを」
と言ってユアが身に付けていた袋の中からギルドカードを取り出して渡していた。一瞬何を渡しているのかな? と思ったけどそう言えば森の中でオノマのギルドカードを発見していたことを思い出した。
「これは……。どこで見つけましたか?」
「えっと、オノマ達の足取りをレーナちゃんと追っていたときに……山の、中で、見つけました」
「そうですか……。こちらも回収しておきますね」
エレナさんはそう言ってユアが渡したカードを回収してからエレナさんもラーシュさんの手伝いを始めた。そんなラーシュさんを見ていたら気が付いたのだがどうやら左足を怪我をしているのか左足を引きずりながら動いていることに気がついた。
「ラーシュさんは左足を怪我しているの?」
「ん? あぁ、これか?」
と言いながら自分の左足に視線を向けていた。その視線が何だが切なそうに感じたのだが気のせい、かな?
「これは昔、冒険者をしていたときの怪我の後遺症でな。怪我があまりにも酷くて冒険者に復帰することはできなかったけど今では普通の生活ができるくらいには動けるようになってるよ」
「そうですか……」
「君が気にすることはないさ」
そう言って彼は、作業に戻った。気になったから聞いちゃったけど聞くのは少し不味かったかもしれないと思っていた。
それからしばらくするとラーシュさんの作業も終わったようでエレナさんとラーシュさんが何か話してからエレナさんがこちらを向いた。
「それでは、報酬をお渡しする準備を整えてきますので受付カウンターの方で少しお待ち下さい」
そう言ってエレンさんは倉庫を後にしたので私達もラーシュさんにお礼を言ってから倉庫を後にした。




