107.脅迫に見せながらの荒療治
「うぅ」
そう言ってゆっくりと目を開けたので彼女の視界に入るように移動した。
「目が覚めたかしら?」
「!?」
そう声を掛けると彼女は、驚いていて目を見開いた。
「あ、あんたはあの時の……!? どうして生きているの!」
と言って私を見ていたが急に視線が後にいったと思ったらユアにそんなことを聞いて来た。
「ユアを見て『どうして生きている!』と言ったけどどういうこと?」
「そ、それは…」
彼女の言った言葉に怒りを覚えながらそんなことを聞くと彼女は顔色を悪くしながら汗を流していた。自分でもまずい事を言ったという自覚があるのかな?
「か、彼女はオークに襲われて崖から落ちた。だから怪我をしてないのはおかしい」
何か言いだしたと思ったら先ほどの話とずれた話をし出した。さっき生きているのがおかしいみたいに言っていたけど今度は、怪我をしていないのがおかしいって……。
そんな彼女の様子を呆れて見ていた。
「な、何!」
「ユアから何があったか聞いているから知っているわよ?それとユアの怪我は私がある程度治したからないように見えているだけだから」
「そ、それなら私も治しなさい!」
「はぁ?」
おっと、いけない。思わず本音が……。
「な、何よ! 治せるなら治しなさいよ!」
それにしても治せるなら治しなさい。とかおかしなことを彼女は、口走っているの? と思った。人に頼み事する態度としては、最低だ。
まぁ、お願いされてもユアのようには、治さないしポーションとかも使わないけど……。
「それが人に頼むものいいなの?」
「け、怪我をしている人を治療するのは当たり前でしょ」
「あなたは、人を殺そうとした側のくせに?」
そう言うと彼女の顔が一気に青い顔になる。心当たりがあるみたいな顔している。
「それなのにあなたが殺そうとした人があなたを助けてほしいと言ったのよ?だから今生きているわけ。分かる?」
「(え?)」
小さい声だったが彼女が驚いた声が聞こえた。そしてユアに視線を向けたがユアは、視線が合うとすぐに逸らして私の後ろに隠れた。まぁ、あれだけのことがあったからユアが隠れるのも仕方ないかもしれないけど……。そんなことを思いながら魔法で周囲の確認をすると近くに人がいるけど動かないで止まっている。ただ敵意は、無いようにも思えたのでとりあえず動き出すまで放置しようと思った。一応、誰なのかも確認のためチラッとだけみたら知っている人だったからとりあえずそのままにすることにした。
「だから、もう二度とユアを関わらないというのならある程度なら治療してもいいけどどうする?」
そう言うとメンデスは、口元に小さな笑みを浮かべながらさらなる要求を言ってきた。
「怪我の治療費を全部払ってくれるなら守ってやってもいいけど?」
と上から目線でそんな要求をしてきたので私は、彼女の折れている箇所に手を当てる。
「痛い!何するのよ!」
と怪我をしている場所を触ったことに対して怒って来た。
「余計なことをいう子にはお仕置きが必要でしょ?」
そういと彼女は、まさかみたいな顔をして少したってから力を入れて折れている足を元の向きに無理やり戻した。
「痛い!痛い!痛い!……」
と彼女の喚き声を無視しながら元の位置まで無理やり戻した。するとユアが恐る恐る私に声を掛けて来た。
「れ、レーナちゃん」
「何?」
「な、何でもないです!」
私がどうしたのかな? と思ってユアに聞くと何でもないと言って首を横に振っていた。本当にどうしたのかな? そんなことを思いながらメンデスの方に視線を向けると涙を浮かべながらこちらを睨んでいた。
「何?」
「私の言った条件じゃないとまも!痛い!痛い!痛い!」
彼女の言った条件しか守らないみたいなことを口走ろうとしたのでもう一度怪我をしている場所を触って微調整をした。一応、ちゃんと治そうとしているから問題はない。
「何?」
「わ、分かったわよ。(絶対に守ってやらない)」
と小さな声で『絶対に守ってやらない』と呟いていた。こいつ、口に出していることに気が付いているのかな? と思いながら太い木の一本を右手で持って火を移しメンデスの元に戻る。
「な、何」
と言いながら動揺を隠せないメンデスだったがそんなことを気にしないで彼女に歩み寄り左手首を右足で押さえて左足を彼女の胸に乗せる。
「な、何!」
彼女の額からは、凄い汗が浮かんでいた。私は、そんな彼女の顎を左肘で抑えながら左肩を掴み少し上を向ける。そして口元を彼女の耳元に持っていき耳元で囁いた。
「(『絶対に守ってやらない』とは、どういう事かな?)」
そう言って彼女の左腕よく見ると血が流れていたけどその部分に火を押し当てた。
「ふぐぅ!ふぐぅ!ふぐぅ!いふぅ!……」
彼女がそう喚いている間に切り口を火で炙っていき一度止めて彼女に言った。
「納得しないともう一度同じことするわよ?」
「分かったわよ……」
と余程疲れたのか元気が無かったが大きな声で宣言をしてほしいと思った。
「大きな声で『ユアには、二度と関わりません』と宣言しなさい」
「なんでそんなことを!ふぐぅ!ふぐぅ!ふぐぅ!いふぅ!」
彼女が反論して来たのでもう一度左肘で押さえて切り口を綺麗に焼き顎に当てていた左肘を一旦離した。
「宣言する?」
「わ、分かった。宣言する」
彼女がそう言ったので顎で言うように促すと彼女は宣言をし始めた。
「『私は、ユアには、二度と関わりません!』こ、これでいいでしょ?」
「いいわよ」
と言いいながら魔法で周囲を確認してから彼女の拘束を解いた。そして……
「ちゃんと聞こえましたか?」
と森の中にいる人に声を掛けた。




