100.オークとの戦闘
「ユア、落ち着いて」
そう言いながらオークの様子を窺うと体が赤黒く汚れていて口元は、真っ赤だった。そして私達を見ているオークは、涎を垂らしながらこちらに近づいて来る。右手には、剣が握られている。
「あれは、オノマの剣……」
ユアがそう呟いていた。確かにオノマと戦った時に使っていたかも?そんなことを思っている間にオークが私達の方に近づいて日が当たる所に出てきた。そのオークの体は所々切り傷があった。おそらくオノマ達がつけた傷だけど致命傷になるような傷はなさそうにみえた。
「ユア、私がオークの注意を引くからユアは隙を見て攻撃を仕掛けて、それともし狙えるのなら関節辺りを狙って欲しい」
「分かったけどレーナちゃんは、大丈夫なの?」
「それは、やってみないと分からないけど……」
そもそもオークを見ること自体初めてだし。どういった魔物かぐらいしか知らないから強さもよく分からないけど。オノマよりは、強いとだけは、言える。
そんなことを思っているとオークがこちらに向かって走って来た。
「ユア、頼むよ」
「やってみる」
そう言ってユアが右へ走り出して私は、オークに向かって走る。オークは、私に向かって剣を振り下ろしてくるが私は、刀を横に振りオークの剣筋を右にずらしながら左前へ進みオークの右膝を切り付けるとオークは、「ブォー」と悲鳴を上げながら私のいる方に剣を振るが私には、当たらず空を切ると同時にユアがオークの後から左膝裏を切り付けてユアを見ると剣を振り被ったので私が左膝裏を思いっきり切り付けてから距離を取る。
今度は、先ほどよりも深く切り付けることができた。オークは、悲鳴を上げながら左膝を突くが私の方を見ることもなくユアに視線を向けていた。ユアは、遠回りをしながら私の方に向かっているようだ。
私は、オークに一番深い傷を与えたのにそれでもユアに注意が向かっていることに不味いと思いユアの方に走り出そうとしたら、オークが立ち上がりユアの方に走り出した。それなりに深い傷を与えたはずなのにそこまで速さが損なわれていないことを不味く思いながらもユアに向かって走り出したが距離的にオークの方が近いため先に追いつくのか微妙な所だ。
ユアはオークが向かってきたことに気がついて走る速さを上げていたがオークが追い付いて剣を振り被っていた。間に合うか!と思いながら走っていたがユアに向かって剣が迫っていく。ユアは、近づいて来る剣に顔を強張らせながら胸辺りに迫って来る剣との間に短剣を滑り込ませて刀身に左手を添えると同時に剣がその短剣にぶつかった。オークの膂力もありユアの体が宙に浮かび始める。それと同時にユアの手が痺れたのか握りが甘くなっていた。
「しっかり握って!」
私がそう言うとユアは、何とか短剣を握りしめていたが「パキ」という音とともに刀身が折れた。ユアは、迫りくる剣に目を瞑っていたが何とか届きそうな間合いに入り下から上にあげるように思いっきり振り抜いた。すると、剣は上に弾かれてユアに当たることなく空を切った。
それから少し時間を置いて鈍い音とともに「うぐっ!」というユアの声が聞こえた。チラッとユアの声がした方を向くと少し離れた木の根元にもたれかかりながらこちらを見ていた。どうやらあのまま飛ばされて木にぶつかったみたいだけど一応、無事みたい。
そのことに安堵しながら私はオークを見据える。




