1.冒険者ギルド (2019/7/21)
街に入ってから辺りを見渡すと大体の建物が木造でできていた。街に入る前は、もしかして中世のヨーロッパみたいにレンガとかで建物ができているのかな? と思ったけどそんなことはなかったみたい。思いの外日本の建物に近くて個人的には良かったのかもしれないと思った。
とりあえず先ほどの兵士の人が言っていた通りに門から続いている道をまっすぐ進んで行くと一際大きな建物があった。
「これが冒険者ギルドかな?」
そう思って中に入ってみたがあまり人がいなかった。店内を見渡してみると酒場と併設しているみたい。でも夕方まで時間があるからまだ依頼から戻って来ていない人が多いのかもしれない。そんなことを思いながら近くにいる受付の人に向かって歩いた。
近くまで行くと受付の人がこちらに気付いたようで声を掛けてきた。
「どうかしましたか?」
そう声を掛けてきたのは10代後半ぐらいでセミロングヘアの女性だ。凛とした感じでかなりの美人さんだ。
「ギルドに加入しに来ました」
「加入の方ですか。少し待っていてください」
そう言ってその女の人は席を外した。それからしばらくすると1枚の紙を持って戻って来た。
「ここに名前、生年月日、特技を書いてください。もし字が書けないのなら代筆を行いますが必要ですか?」
「大丈夫です」
私はそう言いながら紙を受け取ってからとある問題があることに気付いた。生年月日は、そのままでいいにしても名前をそのまま書くのは、よくないような気がする。……どうしよう? 仮に今までの名前をそのまま書くのは、何かあったら不味いかも知れないし、偽名を使った方がいいかな?
そう思ってもいい名前がパッと思いつかない。それならあの名前ならいいかも? そう思ってその名前を書いた。それから特技はどうしよう? ゲームをしていたときは、魔法と近接武器等を使っていたけど、この世界で魔法を使える人は珍しいのかな? と考えたが今は何も情報が無いからわからない。こう言う時は、書かない方が無難かな? そう思い何も書かないことにして受付の人に渡した。
「レーナさん。8歳ですか……」
まぁ、名前は、前世の時のままだから呼ばれ慣れているから何かあっても問題ないと思う。それに、この世界でもいそうな名前だと思うしそこまで浮いた名前でもないはず……。
それにしても受付の人が8歳って部分に気がかりそうだったけど大丈夫かな?
「何か問題でもありましたか?」
「いいえ、特に問題は、ありません」
「そうですか」
先ほどの受付嬢の様子が少し気になったが問題ないと言っているからとりあえずは、大丈夫なのかな?
「登録に少し時間がかかるのでその間にギルドの説明をします」
「お願いします」
「それでは、冒険者のランクについて話したいと思います。冒険者ランクは、下はIから上は、Sランクの10段階で分けられています。基本IからHが見習いでGからEが駆け出し、DからCが一人前、BからAが腕利きと言う目安です。Sランクについては、余程の功績がないとなることができません。Iランクが一番下ですが、これは10歳未満の子が基本Iランクで、それ以外の10歳以上になると1つ上のランク、Hランクから開始することになります。これは、レーナさんにも適用されるのでよく覚えて下さい」
なるほど最初は、Iランクスタートか……。ランクを上げるのが大変そうだ。
「次に、依頼については、そこの掲示板にランクごとにわかれています。そこから依頼を選んで受けてください。いくつ受けてもいいですが依頼によっては危険な場合もあるので気を付けてください。それと自身のランクの1つ上までしか依頼を受けることができません。ただしHは、上のランクの依頼を受けることができません」
「どうして?」
「Gランクからは、討伐系の依頼があるため、ある程度戦闘ができないと駄目だからです」
「なるほど」
「そのためHからGランクに上がるためには昇格試験を受けて合格しないとGランクになることができません」
それってある程度戦闘ができればGランクから始められるのかな? それならどうしたらいいのかな?
「何をしたらその試験は受けられるの?」
「試験に関しては、受付で受ける旨を伝えてもらえれば受けることができます」
それならギルドカードができてから聞いてみよう。
「せっかくなので他のランクの昇格方法について説明します。基本的な昇格方法は一定以上の功績があれば昇格することができます。ただし、A、B、Dランクに上がる際には、昇格試験を受けてもらいます。それに合格することができればランクは上がります」
「その功績は、どのように判断しているの?」
「基本的には、依頼の達成状況で判断します」
「依頼の成功率とかですか?」
「大体は、それでいいですが自分と同ランクの依頼をたくさん受けても上がることは、ほぼありません。1つ上の依頼を受けて達成することで加味されるものと思った方がいいかもしれません」
なるほどそういう目安なのか……。しばらくは、ランク上げの為に頑張った方がいいのかな? そんなことを思っていた。
すると受付の人が何かゴソゴソしだした。どうしたのかな? と思っているとカードらしき物を出した。
「こちらがレーナさんのギルドカードになります。記載内容に間違いがないか確認をしてください」
そう言われてカードを確認した。
名前 レーナ
年齢 8
特技
冒険者ランク I
特に問題なさそうだ。
「大丈夫です」
「では、ギルドカードに血を1滴垂らしてください。それにより登録完了となります」
そう言って針が渡されたのでそれを受け取り、人差し指の腹を刺して血を1滴垂らした。
するとその血がカードの中に吸い込まれた。
「これで、登録完了です。初回の発行は、無料ですが、紛失した場合は、再発行に銀貨5枚がかかるので無くさないように気を付けてください。他に何か聞きたいことはありますか?」
「昇格試験って今受けれるの?」
そう受付の人に聞くと少し不思議そうに聞いて来た。
「昇格試験ですか?」
「はい」
「申請してきます。少しお待ちください」
そう言って受付の人は奥へと消えていった。すると入り口から冒険者の人たちが帰ってきたみたいだ。
「ルノジス、今日は、いい酒が飲めそうだな!」
「ああ、今日は、パッと騒ぐぞ!」
「早く飲みたいぜ!」
チラッと後ろを見たが柄が悪そうな3人組だった。うん、絡まれたくないなぁ。と思いながら受付の方を見ていた。
「おい、あんな所に餓鬼がいるぞ?」
「ほんとだ。しかも身の丈にもあってねぇ武器まで持っていやがるぞ?」
「新人か?」
「わからんが小さすぎやしねぇか?」
「ほら、あれだろ、見習いじゃねぇか?」
「なるほど、それならさぁ……」
と言って急にこそこそ話し出した。やだなぁ、あんな奴らに絡まれたくないなぁ。と思いながら受付の人を待っていた。
それからしばらく待っていると受付の人が他の人を連れて戻って来た。
「あなたがレーナちゃん?」
そう問いかけてきたのは、先ほどの受付の人が連れてきた女の人だ。背は、高く170センチは超えていると思う。メリハリのあるスタイルのいい人だ。年もそれほど上そうに見えないから受付の人の上司とかかな? そんなことを思った。
「はい」
「私は、リンフレッド支部ギルドマスターのエミリアよ。昇格試験を受けると聞いたけどほんと?」
まさかギルドマスターが出てくるとは驚いた。というかなんで出てきたの? もしかして昇格試験ってギルドの偉い人が確認するのかな?
「そうですが?」
「そうなの? なら早速試験をやりに行きましょうか」
と言って歩き出したので私は、その後を追いかけた。それから少し遅れながら先ほどの男たちもその後を追って来た。これは、面倒なことになりそうだ……。