95.オノマ達の行方
崖の上を目指して進んでいたけど私達がいた場所は、谷のような場所だったためかなり迂回してその場所に行くことになった。道中ゴブリンに遭遇したけどそれは、たいしたことなかったけどユアが短剣を抜くと刀身が折れていて使い物にならなかったので、急遽短剣を貸すことになった。
ユアが持っていた短剣は、オノマ達が新たに買ってくれた?短剣らしいけど随分値段をケチったようでかなり粗悪なものだった。もしかしたら処分品の物を買ったのでは?と思うほどだ。そんなことがありながらだいぶ時間が掛かったけどユアがオークと遭遇した場所に着いた。
「多分この辺りだと思う」
ユアがそう言った場所は、まぁ、よくみる森の中といった感じだけど地面が抉れていたり木々が結構折れていたので、ユアの言っていた通りだと思う。
「そう、みたいだね。……この辺りを探索する前に腹ごしらえでもしよう?もう昼頃だし今度は、いつ腹ごしらえできるか分からないから」
そう言ってユアに干し肉を渡すとちょっと驚いたけど、苦笑いをしながら受け取ってくれた。それから私も干し肉を取り出して食べ始めた。
そんな感じで軽い昼食を済ましてから折れた木々や地面にある足跡を辿って行くと開けた場所に出た。
「崖だね」
「うん。確かあっちだったかな?私達が走った方向は……」
そう言ってユアが視線を向けた方を見ると地面には、大きな足跡といくつかの足跡が続いていた。
「この先に進む?」
この先何があるのかは、分からない。それでもいいのか確認の意味も込めてユアに聞いた。
「……うん」
一方ユアは、少し間があったけど覚悟を決めたのか頷き、足跡が続いている方に歩き出したので私もユアの隣に並ぶと周囲を警戒しながらその足跡が続いている方に歩いて行った。
それから戦闘があった場所。おそらくこの辺りでユアが落ちたようで足跡の数が減っている。その後、森の中へ途切れることなく足跡は、続いていた。
足跡がくっきりとついていることで探す手間が省けてありがたいがそれは、この地面が柔らかいということで、現にユアは、何度か足を捕られて転びそうになっている。逃げていた彼等も何度か転んだような跡と戦闘をしたような跡も見られる。一応、彼等でも助け合って逃げていたようだ。ユアには、そんなことしなかったのに……。そんなことを思いながら歩みを進めていくと戦ったと思われるところで赤い血痕が落ちていた。それが彼等の逃げていく方向に続いて行く。
「ここで誰かが怪我をしたみたいね」
「うん……」
そう頷くユアだったが少し表情が強張っている。彼等が生きていないかもしれないとは、ユアも思っていたと思うけどこの血痕を見てもしかしたら本当に……。と思っているのかもしれない。最悪彼等の死体を目にするかもしれないから血痕をみただけならもっと気丈に振る舞って欲しいけど……それは、難しいかな?とそんなことを思っていた。
「ユア、大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「……この先もっと酷い事になっているかもしれないけど?」
「覚悟は、しているから。だからちゃんと何があったのかを知りたい」
とユアは、何があったのかちゃんと知らないといけないと思っている節がある。無理に知る必要もないと思うけどあれでも一応、ユアのパーティだからな……。
「そう。無理は、しないでね?私もいるから」
「うん。ありがとう。でも、レーナちゃんを巻き込んでいるのは、私なのにね……」
「そんなこと気にしなくてもいいから、先に進もう?」
「うん」
そうして私達は、足跡を辿って歩き始めた。




