87.後処理9
それからやや眠りが浅くなった頃、馬車に誰かが入ってきたので、目を開けるとジェイドさんが中の様子を窺っていた。
「どうしましたか?」
「もうそろそろ交代だが、……眠たいのか?」
「いえ、問題ないです」
「外で待っている」
ジェイドさんはそう言って馬車から出て行ったので、私は起き上がると武器を取り出した。これで準備はおしまいと思ったとき、ユアが隣でまだ寝ていることに気付いた。
「ユア、起きて」
そう言いながら軽く体を揺するとユアが眠たそうに瞼を開けた。
「れ、レーナふぁん?」
「もうそろそろ見張りの交代らしいよ」
「え? ちょっと待ってて」
そう言うとユアは起き上がると急いで準備しだした。それからしばらくすると準備ができたようなので馬車から降りた。
「……大丈夫か?」
「大丈夫です」
「は、はい」
「……そうか。とりあえずこの砂時計1回分だが、前回と同様に隅の方で寝てもいいか?」
「はい。大丈夫です」
私がそう言うとユアも頷いていた。そのことを確認したジェイドさんは前回同様に隅の方で寝る準備をして横になった。
「とりあえず、入口に気を付けながら腹ごしらえでもしよっか?」
「……うん」
そうして私達はご飯を食べてからたまに外の様子を確認していると何事もなく見張りの時間が過ぎて行くのだった。
見張りの時間が終わりそうになるとユミルさんとメアリーさんが起きてきて、しばらくするとジェイドさんも体を起こしてきた。
「……みんな揃ったみたいだけど、見張りの最中に何か異常とかありましたか?」
「いえ、特には」
「何もなかった」
「私達も」
とそう言ったので、皆特に問題は起きなかったようだった。
「それじゃあ、あとはランデルのことだけどどうしたらいいのかな?」
「さぁ? 一応、ゲンツさんに聞いた方がいいのかな? 勝手に別行動をして戻ってこないって」
「……そうね。いつまでも待つことはできないから相談した方がいいかも? でも、ゲンツさんはどこに居るの?」
「それなら外に……」
と言ってゲンツさんの方に向かう。本当は、盗賊の根城に行くときやランデルが勝手な行動をしていたときなども少し離れたところにゲンツさんがいることに気付いていたから見つけることはそこまで難しくはない。まぁ、魔法を使わなかったら気付かなかった可能性が高かったとは思うけど……。
そんなことを思いながらゲンツさんが隠れている? 大きめな木に向かって声を掛けた。
「ゲンツさん、少し相談したいことがあるので来てもらってもいいですか?」
そうことをかけるとゲンツさんがやや苦笑いをしながら木の陰から出てきた。




