21.オノマ達の行動 (2025/5/18)
そうして街に向かって歩いていると何とか夕方頃に街に着いた。
「無事に戻ってこれたわね」
「うん。戻ってこれた……」
そんなことを呟きながら門に近づくと兵士の人が声を掛けて来た。
「ちょっと君達いいかな?」
そう声をかけてきたのは、ヘルガさんだった。
「ヘルガさん?」
「君は、この間の……」
とヘルガさんはどうやら私の事を覚えていたみだい。
「そうです。どうかしましたか?」
「ついさっき君達が歩いて来た方から男女3人組のパーティがゴブリンに追いかけられながらやって来たけど君達は、大丈夫だったかい?」
大丈夫かと聞かれると大丈夫では、無かったような気がする。でも、無事に戻ることができたから問題はなかったのかな?
「まぁ、一応」
「それならよかった。彼等が魔物に追われている奴に擦りつけられたとか言っていたからもしかしたら他の人が……。と思ったが大丈夫そうならよかった」
「それって……」
ユアは後ろでそう呟いたがヘルガさんには聞こえなかったみたい。
「まぁ、無事なら問題ないが君達も彼等には、気を付けるように」
そう言ってヘルガさんは、去って行った。どうやらヘルガさんは彼等が言ったことを信用していない様子だった。流石に彼等とヘルガさん達に何があったのかは、分からないけど、ユアは何か知っているのかな? でも、彼等はヘルガさんに話した内容をギルドでも話している可能性が高いから何かひと悶着ありそう……。とそんなことを思いながら私達は門を潜った。
「私は、とりあえずギルドに行くけどユアは、どうする?」
「……私も行こうかな?」
ユアは、少し悩んでいたけど、一緒にギルドに行くみたい。
「じゃあ一緒に行こうか?」
「うん」
そうして私達は冒険者ギルドに向かって歩き始めた。
ギルドに着くとチラッと彼等が見えた。ちょうど受付の人と話を始めようとしている所だった。
「オノマ君達その怪我は、どうしたの?」
「酷い女に遭って彼女のせいで怪我をしました」
「そうなのオノマ君?」
「はい。最初は、森でゴブリンを探してようやく見つけて倒そうと茂みから飛び出した。そしたらゴブリンは俺達の方を向いたが、その瞬間ゴブリンを背後から倒した。俺達の獲物を横取りされた。だから返せって言ったら『背後からつけていたのは、私だからあんたは、関係ない』とか言ってきました」
「まぁ、それは、相手がいけないわね」
「そうでしょ? そのことをさんざん言ったら決闘をするとか言い出して勝ったら持って行ってもいいけど、負けたら私の言うことを聞きなさいとか言う傲慢な女で……」
「しかもその決闘に負けたのにゴブリンを譲りたがらない屑だったわ」
どんな作り話なの? と思いながらも彼等の話を聞いていると横にいたユアは、視線を彷徨わせていた。
「(とりあえず最後まで聞きましょう?)」
そう言うとユアは、顔を引き攣らせながら激しく首を縦に振っていた。どうしてそんな顔をしているのかな? と思ったけど、とりあえず彼等の話を最後まで聞こうと思い耳を傾ける。
「……それは問題ね。どんな人?」
「え~と、フードを被っていて丈の長いブーツにスカートを穿いていたわね」
「分かった。もし会ったらちゃんと懲らしめておくわ」
「お願いします、ですが他にもいろいろなことをされました」
「え? そうなの?」
「はい。その後、森の中で落ちていた槍を見つけたのですがそれは、私の武器と言って奪おうとしてきた。俺達は、それを阻止していたら諦めて去って行きましがあろうことか近くにいたゴブリンをたくさん引き連れて俺達の方に向かってきました!」
「それは、ギルドでも禁止している行為ね。間違いなくギルド側から重い罰、最悪奴隷として売られるかもしれないわね」
「はい。俺達は、必死に逃げましたが運悪くゴブリンの攻撃を受けてもう一人のメンバーは、たくさんのゴブリンに捕まって……」
「事情は、分かったわ。辛い出来事だったかもしれないけど今は、休んできなさい。私が絶対に制裁をしてあげるから」
「「「はい! お願いします!!」」」
と言った会話をしていた。それなりに離れていたのと人が並んでいることもあって表情とかは、窺えなかったがほとんど彼等がやったことを私にやられたかのように話を作っていた。それにしてもそれなりに離れているはずだけど話し声がしっかりと聞こえていたから多くの人に聞こえるようにわざと大きな声で言っているのかもしれない。とそんなことを思っていた。
「れ、レーナちゃん。どうしよう!」
ユアは、彼等の話を聞いて私に聞こえる声の大きさでそんなことを言ってきた。そんなに慌てることかな? と思ったけどこれが普通の反応だと今更ながら気付いた。
「どうしようと言われてもあんなに大きな声で言われたらねぇ……」
どうしたらいいのか……。でも、彼等の話を鵜呑みにする人は、どれだけいるのかな? いろいろ問題を起こしているみたいだし、信じない人もそれなりにいると思うけど……。
「それもそうだけど、ギルド職員が彼等に付いたら……」
「あぁ、そういうこと」
ユアが何故そんなに慌てているのかが分かった。ギルド職員がその話を信じて処罰を与えたら大変なこと危惧していたのだと。
「でも、ギルド側の職員も彼等の問題行動とかを把握していたらそこまでのことは、しないのでは?」
ギルド職員と言ったらエレナさんとギルドマスターのエミリアさんとしか話したことないけど、そう言ったことはちゃんと把握していそうだ。だからユアが慌てていることを少し不思議に思った。
「そ、そうだけど彼等と話している受付の人だけは、違うの!」
あまりにもユアが必死だったので、過去に何かあったのかもしれないと思った。
「……因みにどんなことがあったの?」
「それは……」
と言って、一旦深呼吸をしてからどんな出来事があったのか話し始めた。
その内容はユアが冒険者登録をした日のことで、オノマ達の要求でGランクの昇格試験を受けたそうだ。その時、初めて剣を持って戦ったのに試験をそのまま合格されそうになったということだった。まぁ、実際には、他の職員もたまたま見ていたことで事なきを得たが、もしそのときに他の職員が見ていなかったら戦闘に関することを何も知らないまま実践をさせられて死んでいたかもしれないとユアは言っていた。他にもいろいろとあったみたいだけどギルドの規則を守っていないこともあったそうだ。それと気に入った人に対しては、とことん甘いらしくてオノマ達のことを気に入っているらしいとのこと。だから私のことが危ないと危惧をしてくれたそうだ。
「ユアが言いたいことは、分かったわ」
そう言うとユアは、私にユアの言いたいことが伝わったという事が分かったのか少し安心した様子を見せたがそれでもこれからの事が不安らしい。
「でも、面倒臭い事になるのは、避けられそうにないわね……」
「それは……」
と言ってユアが申し訳なさそうにしていた。
「ユアが気にすることじゃないよ。彼等が悪いだけだから」
「でも「大丈夫だから」」
とユアが何か言おうとしたところに被せるようにそう言うとユアが不安そうに私の方を見て来た。
「……本当に大丈夫なの?」
「う~ん。それなりには……。何とかなると思うけど、少し時間が掛かるかも?」
ユアは、不安そうにしながらも一応納得してくれたみたいで頷いてくれた。




