20.後処理 (2025/5/18)
辺りを見渡すとゴブリンの死体が散乱して所々血だまりができていた。自分がやったことだけど凄い惨状になっていた。
「ちょっとやり過ぎたかな?」
とそんなことを思っているとユアが私の方へとやって来た。
「レーナちゃん、大丈夫?」
「うん。ユアも大丈夫?」
「大丈夫だけど……」
と言って私を見ていた。何かあるのかな? と思って自分の服を見るとローブやスカート、ブーツがゴブリンの返り血などで赤く汚れていた。特にブーツは血以外にも色々と付着していていたが……。
「自分の血じゃないから大丈夫だよ」
そういうとユアは、ホッとした様子を見せた。あまりにも酷い惨状になっていたからに心配かけちゃったのかも……。とそんなことを思ったけどユアが無事ならとりあえず、それでもいいかな? と思った。
「キャッ」
するとユアが悲鳴を上げたので何が起こったの!? と思ったらまだ生きていたゴブリンがユアの足を掴んでいたので私は、すぐにそのゴブリンの頭を思いっきり踏みつけて潰した。
「大丈夫?」
「……う、うん」
そう声を掛けると返事は、してきたけどユアの顔が少し引き攣っていた。もしかして、ゴブリンに急に掴まれて怖かったのかな?
「ゴブリンに掴まれた足は大丈夫?」
とそうユアに聞くとユアは軽く動かして確認をした。
「多分大丈夫だと思うの」
「それならよかった……」
と思いながらまた、同じようなことがあったら危険かもしれないと思い、ゴブリンの頭を全て落とすことにした。
そうしてゴブリンの頭を全て落としたがその間に3匹ほど生きていたみたいで抵抗してきた。まぁ、かなり弱っていたから簡単に頭を落とすことができたが……。
そんな感じでゴブリンにしっかりと止めさしてユアの所に行くとユアはゴブリンを見ていた。
「どうしたの?」
「え? な、何でもないよ!」
と驚いた様子を見せたがすぐに首を振りながら何でもないと言ってきた。でも、ゴブリンを見ていたから何かあったのでは、と思ったがゴブリンを見ても分かることは、無かった。私が離れている間にゴブリンに何かされたってことはなさそうだし気にしなくても大丈夫かな? と思っていたらユアがこんなことを聞いて来た。
「それで、ゴブリン達解体するの?」
「う~ん。たくさんのゴブリンを解体するのは、面倒だし上位種と思われるゴブリンとその武器だけ回収したら街に戻ろうかな?」
「それは、もったいないよ。せっかくゴブリンを倒したのだからちゃんと解体しようよ?私も手伝うから」
「え? でも帰りが遅くなっちゃうよ?」
「門が閉まる前なら大丈夫。それに、レーナちゃんが助けてくれたから少しでもお返しをしないとだし……」
とユアはそんなことを言っていた。そう言われるとユアを見捨てないでポーションで治療をしたり大量のゴブリンからある程度守ったりもしたけど、全部私の自己満足でやっている部分が多いから何だか悪いような気がする……。
「そんなこと気にしなくてもいいのに……」
「でも、私の為にやってくれたから少しはお返ししたいの! ……駄目かな?」
とこちらの様子を窺いながら聞いて来た。そんな風にお返しをしたいと言われると駄目とは言えない……。
「……分かった。お願いしてもいい?」
「うん!」
そういうとユアは嬉しそうにしながら作業に取りかかった。まぁ、彼女もそれで満足するならいいかな? とそんなことを思いながら先ほど私が言ったゴブリンの解体をしてから剣の回収をした。それが終わると私もユアと同じようにゴブリンの解体作業を行った。
それからゴブリンの解体を終えるとユアが私の所にやって来た。
「レーナちゃん、こっちは、終わったよ。はい」
そう言ってユアが解体した分の魔石を私に渡してきた。
「ユアが貰ってもいいよ?」
そう言うとユアは、手と顔を横に振った。
「いいよ。レーナちゃんのお手伝いをしようと思ってやったことだから」
う~ん。何かユアの為になる事は、無いかな? とそんなことを考えていたらあることを思い出した。
「それなら、この前買った防具は、私のお手伝いをしたお礼として貰った。という事にしなさい」
「え?」
「また今回のようなことがあったら危険だからそう言う事にしておくの。いい?」
「う、うん」
と私の勢いに押された感じかもしれないが頷いたからとりあえずそれでいいと思うことにした。
「そう言う事なら受け取るね?」
そう言ってユアから魔石を受け取った。
「……それじゃあ街に戻ろう?」
「うん。でもその前に少し汚れを落として行った方がいいかも……」
と言ってユアは私を見た。そう言えばゴブリンの返り血などで私が汚れていたことを思い出した。
「……そう、ね。近くで汚れを落としてからの方がいいかも。近くにある川で洗ってから街に戻ろっか?」
「そうだね」
「え~と。……確かこっち」
そう言ってユアの手を掴む。
「え?」
「じゃあ行くわよ?」
と言ってユアの手を引きながら歩いて行く。
それからしばらくすると川が見えてくる。
「本当に川に着いた」
ユアはそう言って驚いていたけど、私は川に入って汚れを落とし始めるとユアも同じように汚れを落とし始めた。
「よし終わったかな?」
そう言うとユアがこっちを見て来た。そしてじっとこちらを見つめてくる。何かついているのかな?
「……どうしたの?」
「えっと、その、顔にもまだ血とかが…」
「そうなの?」
と言って水で顔を洗い始めるが水がすごく冷たい。とにかく耐えないと! そう思い我慢しながら水で顔を洗った。
「落ちたかな?」
「う、うん。顔は、落ちたけど髪には、まだついているよ?」
「髪ぐらいなら街に戻ってからでもいいよ」
流石に見えないからと言って全部水で洗えない。冷たいし……。どこに付いているのか分からないのなら宿に戻ってからゆっくり洗った方がいいからね? とそんなことを思っていたらユアがこんなことを言ってきた。
「それなら、汚れが付いている所は、私が洗うよ」
「そこまでしなくてもいいよ」
「大丈夫。小さい子達の髪とか良く洗っていたから。それに一部の汚れを落とすぐらいすぐ終わるから」
「……分かった」
私がそう言うとユアは私の髪の汚れを落とし始めてくれた。
それからユアは、丁寧に落としてくれたのかは、分からなかったけど思っていたよりも時間が掛かった。もしかしたらかなり汚れていたのかもしれないけど……。
「終わったよ」
とユアがそう言ったのでようやく終わったみたい。
「ありがとう」
「ど、どういたしまして」
とユアは、少し照れくさそうにしていたけど、時間がそれなりに経っているからユアには、悪いかもしれないけど早く街に向おうと思った。
「終わったばかりで悪いけど、そろそろ街に行きたいからすぐに出発しても大丈夫かな?」
とユアに聞くと頷いたので街に向かって歩き始めた。




