31.野営5
それから火を起こして鶏肉を適当な大きさに切り分けた。それを串に刺して焼く。鶏肉が焼けるまでユアとお話をしながら時々お肉を回してあげるといい感じにお肉が焼けてきた。
「そろそろいい感じかな?」
「そ、そうだね」
すると、ユアが周囲を気にしながらそう言ってきた。どうかしたのかな? と思い辺りを見渡すと近くに居る人達が私達の方を見ていた。
あ~、もしかして、いい匂いにつられて私達の方を見ていたということかな? まぁ、見られてもあげることなんてないけど。と思いながら串を2本取る。そして、塩と胡椒を掛ける
「ほら、ユアの分」
と言いながら片方をユアに渡した。
「あ、ありがとう」
そう言いながらユアは受け取ったけど、周りの視線が気になっている様子だった。
「ユア、周りの人は気にしなくていいよ」
「き、気付いていたの?」
「まぁ、一応、ユア程敏感じゃないけど」
「そ、そうなの。でも、私何もしていないのにもらってもいいのかな? とも思って……」
「気にしなくていいよ。一緒に行動している仲なんだから。ユアが居ることで助かっていることもあるし」
「そ、そうなの?」
「そうだよ」
と言って私が肉に齧り付くとユアも同様に齧り付いた。
ん~、なかなかおいしいなぁ、やっぱり塩コショウは大切だなぁ。と思いながら食べているとゲンツさん達が馬車から出てきた。そして、私達の様子を見て眉を少し上げた。
「いい匂いがすると思っていたが嬢ちゃんが原因だったのか」
とゲンツさんがそう言った。まぁ、一緒の馬車で動くメンバーでもあるから少しは分けた方がいいのかな? と思い串を2本持ってゲンツさん達の方へと向けた。
「食べますか?」
「いいのか?」
「一応、一緒に行動するメンバーなので……。それに、馬の操縦とかは何もできないので私達からのお礼みたいなものです」
「そう言うことなら頂こう」
「俺も」
と言って2人は串を受け取った。




