30.野営4
鳥を2羽持って野営地に戻ると近くにいた冒険者達が驚いたような顔で私の方を見てきた。
? ただ鳥を狩ってきただけなのに何を驚いているのだろう? とそんなことを思いながら馬車の近くまで戻るとちょうど馬車から出てきたゼロスさんと会った。
「レーナの嬢ちゃん、どこに行って……。その鳥は?」
「ん? さっき山で狩ってきた」
「山でってしばらく姿を見なかったがこんな短時間に2羽も狩ってきたのか……」
「短時間? 結構時間が掛かったと思うけど?」
「……そうか。とりあえず、それだけの時間で獲物を狩れるのは凄いことだぞ? それに、鳥はどうやって仕留めたんだ?」
「? 弓だけど?」
「弓もうまく扱えるのか……」
「弓はそれほどうまくはないと思うけど? まだまだって感じなので」
「レーナちゃん?」
すると私とゼロスさんの話声が聞こえていたみたいでユアが顔を出した。
「あ、戻ってきたよ」
「そうなの。よかった」
するとユアがホッとした様子を見せた。そう言えば出て行く際にも心配そうにしていたから戻ってきて安心したのかな? まぁ、心配されるようなことではないとは思うけど、私のことを気にかけてくれる人が居るのはちょっと嬉しい。
「……あ、ゼロスさん、もしかしてお話中でしたか?」
「まぁ、そうだが大したことはないから気にしなくてもいい。ただ、レーナの嬢ちゃんは狩りの腕がなかなかいいということは理解しておいた方がいい。もしかしたら他の冒険者にも絡まれるかもしれないからな」
狩りの腕はいいとは思ったことはないけど、ゼロスさんが言うのなら気には留めておこうと思うけどどうして他の冒険者に絡まれると言われたのかが分からなかった。
「え? どうしてですか?」
「簡単に食糧調達ができるかもしれない人材は貴重だからだ」
「え? そんな理由で?」
「そんな理由でってことはないぞ? レーナの嬢ちゃんは経験がないかもしれないがそれなりに長いスパンで依頼を受けるときにはかなり重宝されるからなぁ。まぁ、一応、俺がいるからそこまでではないと思うが、できるだけ気を付けた方がいいとだけ言っておく」
「分かりました」
そう言うとゼロスさんは馬車の中へと戻って行った。そう言えば馬車から出てこようとしていたはずだけど戻ってよかったのかな? とそんなことを思っているとユアがこんなことを言ってきた。
「レーナちゃんが一人で狩りに行ったと聞いて心配していたんだよ? それで、そろそろ探しに行くと言って馬車を出たときにレーナちゃんと会ったんだよ?」
そんなことがあったのか……。余計な心配を掛けちゃったのかな? とそんなことを思いながら今度はゼロスさんにも声を掛けてから行動するようにしようと思った。




