22.馬車の中で
出発をしたのはいいけど、知り合いのゼロスさんとほぼ初対面のゲンツさん。この2人と同じ馬車に乗るのはいいのだがその、何というか空気? 緊張感が漂っている気がする。そんなことを思っているとユアが私の服の裾を引っ張ってきた。
「どうしたの?」
そう聞くとユアが私の耳元に口元を近づけてきた。
「(その、何だか気まずくて)」
どうやらユアも同じことを思っていたみたい。まぁ、普通に考えたら私と同じことを思っているのは当たり前なのかもしれないが……。
「(……依頼が終わるまでなるべく気にしないようにしよう。気にしたら疲れるかもしれないし)」
「(そ、そうかもしれないけどできるかな?)」
「(まぁ、一応、努力はしてみよう?)」
とそんなことを話しているとゼロスさんが話しかけてきた。
「2人で何を話しているんだ?」
そう聞かれてもそのまま答えるのは良くないかもと思い少し濁した感じで答えておくことにした。
「これからどうしようかみたいなことを話していただけですよ」
「道中のことか?」
「まぁ、そんな感じです」
一応、道中のことを話していたからあながち間違っていないはず。……多分。
「それなら別にひそひそと話さなくても」
「ゼロス。その辺にしておきなさい。彼女達も彼女なりに理由があるはずだから」
「……それもそうだな。変に聞いて悪かった」
「いえ、気にしないでください」
「そ、そうです。大したことは話していないので!」
「それならいいが……。もし、気になることや知りたいことがあったら何でも聞いてくれ」
とゼロスさんにそんなことを言われた。……せっかくだし私達がこの馬車乗ることになった理由でも聞いてみようかな? とそんなことを思った。




