13.森の調査 (2021/8/14)
ユアと依頼をこなした翌日は、雨が降っていたため宿でだらだらと過ごして次の日を迎えた。
昨日は、何もできなかったから今日は、森の調査でもしようかな? と思って森に来ていた。と言ってもいつもと変わらないけど……。
そういうわけで森をうろついてはゴブリンなどをたくさん狩っていたのだが……。
「何だか今日は、ゴブリンとの遭遇が多過ぎない?」
とゴブリンの頭部を槍で突き刺しながらそんなことを思った。
この前ユアと一緒に来たときは、半日くらい? で3匹しか見かけなかったけど今日は、森に入ってから昼にもなっていないのに30匹以上は狩っている。途中でウルフも狩っていたわけだし明らかに多い。
「ユアがいたときは、たまたま遭遇しなかったにしてもこの遭遇率は異常だよね……」
とそんなことを思いながら魔石を取って、ゴブリンの死体を一か所に集めて燃やす。
それから同じようなことを繰り返してお昼ご飯にしようと思った頃には、狩った数が50匹を超えていた。数は多いかもしれないけど、一撃でゴブリンを倒せるから戦闘自体は全然疲れないけど、魔石を取る作業がなかなか疲れる。いちいち胸元を切り開いて大体真ん中の位置を慎重に探りながら切っていくと魔石がある。それを何度も繰り返すからだ。
戦闘は、1匹当たり10秒未満で終わるのに対して魔石を取り出すのに1、2分かかる。解体する方が倒すよりも時間がかかるのは、仕方ないかもしれないけど、こんなにゴブリンばっかり狩っていると流石に面倒臭くなってくる。
「森の異常だということは分かるけど、結局何が起こっているのか分からないから見つけ次第倒していくしかないよね……。それにしてもどこからこのゴブリン達はやって来ているの?」
とそんなことを思った。普段はあまり気にしていなかったけど、これだけのゴブリンが出てくるのはおかしい。ゴブリンがやってきている場所が分かって、そこを潰せばもうやってこないはず。……多分。それならゴブリンの後でもついて行けば何か分かるのかな?
「……よし。ゴブリンの後をつけてみよう」
そう思い昼食を食べ終えるとゴブリンを探しに森の中を歩き始めた。
そうしてゴブリンを探し始めたのだがなぜかゴブリンが見つからない。
「さっきまでそれなりの頻度で発見していたのに……」
とそんなこと愚痴をこぼしながらゴブリンを探すこと約1時間。ようやくゴブリンを発見した。
それからゴブリンの後をついていったがこれといって何かしていることはなく、他のゴブリンとも合流することも無かった。ただ辺りをキョロキョロと警戒しながらうろついているといった感じだ。
「もっと長いこと後をつけていれば変わるのかな? でも、そろそろ暗くなりそうだししっかり準備をしてからの方がいいかな?」
そう思って後ろからゴブリンに近づいて頭部を突き刺した。頭部から槍を抜くとゴブリンは、前のめりに倒れた。そうして開けた前方には、戦闘態勢で茂みに隠れていた4人組がいた。
「あ」
ゴブリンのことばかり気にしていたから、近くに他の人がいたことに驚いていると向こうも驚いているようで3人は、口を開けてポカーンとしていた。もう1人は、目を見開いて驚いていた。……ん? あの子はもしかして……。
「……ユア?」
そう声を掛けると彼女は、急に声を掛けられて驚いたのか何度も頷いた。どうやら私はユアのパーティと出くわしたみたい。
それにしてもゴブリンの後をもう少しつけようか考える前に魔法で周囲を調べたけどそのときは、近くには誰もいなかった。つまり私が考えてからゴブリンを倒すまでの間に、この距離まで近づいて来たことになる。魔法に頼り過ぎていたからこういうことに気付かなかったのかもしれない。今度からは魔法以外でも周囲を気にするようにしようとそんなことを思った。
それからしばらくして驚きから立ち直った彼等は、3人で顔を見合わせてから茂みから出てきた。そしてオノマだったかな? その子が私の方へ歩いて来た。他の子は、彼より一歩下がっている場所でユアはさらに後ろにいた。
ユアの方を見るとこの前買ったブーツは、履いていたけど防具は、何故か身に着けていなかった。どうしてだろう? と思ってユアを見るとオノマ達と私を交互に見ていた。そんなユアの様子を見て何となく事情を察した。
多分だけどオノマ達の事を気にして防具を着けていないのかな? と思った。普段から依頼のお金渡していないのにそういったものを急に身に着けたら変に思われるかもしれないと思ってやめたのかも? でも、何があるのか分からないから装備は、ちゃんと身に着けて欲しいと思った。
そうしてオノマ? は私の近くまで来ると話しかけて来た。
「そのゴブリン、俺が最初に見つけたゴブリンだ。それを横から掻っ攫っていいと思っているのか?」
何を話しに来たのかと思ったらそんなことを聞いてくるとは思わなくて少しびっくりした。正直な話、私の方がかなり前からゴブリンを見つけていたからそっちの言い分がおかしいんだけどね? まぁ、周囲の確認を怠ったことが原因でこんないちゃもんをつけられている訳だけど……。
「あのゴブリンは、後ろから隙を窺っていたから私の方が早く発見していたわよ。まぁ、ゴブリンの前にあなたたちがいるとは、思わなかったけど……」
「ふんっ、言い訳は、それだけか? ん?」
「(ウザいわね。こいつ)」
「何を呟いている?」
「……何も言ってないわよ」
少しびっくりしたけど、何事もなかったかのように返答をした。あまりにもうざい顔をしながらそんなことを言ってきたからうっかり心の声が漏れたのかもしれない。とそんなことを思いながら、もし今思っていたことが聞こえていたら面倒くさい事になっていたかも……。とそんなことを思った。
「まぁいい、何を言ったのか分からなかったが特別に見逃してやるよ。このゴブリンを置いてどこかに行ってくれればな?」
私が倒したのによくそんなことが言えるわね。まぁ、これ以上彼等と関わるのは、面倒だと思い彼等の言うことを聞いてその場を離れようと思った。
「はぁ~」
そうため息をつきながらユアをチラッとみると彼女は、あたふたとしながら私の方を見てきたので首を横に振った。まぁ、ゴブリンの1体何て銅貨3枚だし、彼等との面倒ごとを避けれるならそれくらい安いものかと思いながら彼等に背を向けて歩き出した。




