22.食事と続き (2019/8/29)
ローナさんの元に行くと服を作っていた。
「お母さん、今日のお昼はどうするの?」
「ごめんね。今忙しいから自分で作るか外で食べてきて頂戴」
とこちらを見ることなく作業をしていた。どうやら本当に忙しいようでせっせと手を動かしている。
さっきは、そんなことをしていなかったから私がフローラに教えてもらっている間に注文を受けたのかな?
「そうなの……。レーナちゃんは、どうする?」
「私? 私は外に食べに行くよ?」
「……それなら私も一緒に行ってもいいかな?」
「別にいいけどフローラの口に合うかは、分からないよ?」
「大丈夫だからついて行ってもいい?」
「いいよ。じゃあ、早速行こうか?」
「うん」
フローラはローナさんに何か言ってからお店を後にした。
それから私は、宿の食堂へと向かった。あそこの宿の料理はとても美味しいから多分フローラの口にも合うかな? とそんなことを思いながら。
それからラナさんの宿屋の前に到着した。
「このお店だよ」
「ここって……」
フローラは何故か驚いたような表情をしていた。私は、そんなフローラの手を引っ張って店の中に入って行った。
「お金大丈夫かな……」
そう心配そうに呟いたフローラだがその呟きは、レーナの耳には届かなかった。
レーナは、知らないことだがレーナが泊まっている宿は、上等な部類に入る宿でその店の料理は、その辺で食べるより割高である。その代わり他所と比べて料理は、とてもおいしい。それを知っているフローラが金銭面で心配をしているのだがその辺りのことを知らないレーナは、気にしないで気軽に食べに来ている。まぁ、知った後でも変わらないような気がするが……。
食堂の方に行くとそれなりに人がいたが隅の方のテーブルが空いていたのでそこに座るとフローラは、私の隣に座った。するとラナさんが他のお客さんが来たことに気付いてやって来た。
「あら? 珍しいわね。今日は、お友達と一緒なの?」
そうラナさんが聞いて来た。友達、友達と言っていいのかな? 今日、出会ったばっかりだしどうなのかな?
「う~ん、どうなのかな? 今日初めて会ったから」
そう言ってフローラの方を見た。すると目が合うとフローラは、俯いた。
「と、友達になりたいれぇす」
そう言って顔が赤くなっていた。直接言うことが恥ずかしいのか途中で噛んじゃったのが恥ずかしかったのかは、分からなかったけどそんなフローラの様子をみて。
「(かわいい)」
と思った。するとなぜかフローラの顔がさらに赤くなった気がした。気のせいかな?
「ふふ、仲は、いいみたいだね? それで、何が食べたいかな?」
とラナさんは、ニコニコしながら何が食べたいか聞いて来た。フローラは、苦手なものとかあるのかな?
「フローラは、苦手なものは、ある?」
「と、特には」
「じゃあ、ラナさんのおすすめ2つください」
「1つ銅貨3枚だよ」
そう言ったので私は、銅貨3枚渡した。その横でフローラがポケットから銅貨3枚渡していた。
「ちょうどね。ちょっと待っていてね」
そう言ってラナさんは、厨房の方に消えて行った。
それからしばらくしてラナさんが料理を運んできた。そうして並べられたのは、パンとシチューだった。そう言えばこの宿の初日にシチューを食べたなぁ。
「じゃあ食べようか?」
「うん」
そうして私達は食べ始めた。
「!?」
この前みたいなシチューかな? そんな風に思って食べ始めたらこの前のシチューとは、違う味がした。お肉が違うのが大きいのかな? 前食べたのと味がとか噛み応えが違う気がする。そんなことを思いながらおいしくご飯を食べた。
「おいしかったね?」
「うん。すごくおいしかったよ」
とそんなことを話しているとラナさんが食器の回収にやって来た。
「おいしかったかな?」
「おいしかった」
「ものすごくおいしかったです」
「それは、よかったわ」
そう言うとせっせと食器をまとめて行く。
「ごちそうさま」
「ご、ごちそうさまです」
「また来てね?」
「はい」
「は、はい」
そう言って私達は、店を後にした。
店を出てからは、フローラと話をしながらフローラの部屋へと戻った。部屋に戻ってからは、この街周辺の地理について教えてもらった。
東門の方は、広大な森林が広がっていて東門の道をまっすぐ進んで行くと大きな川がありその辺りに集落が1つあるらしい。その川の反対側は、隣国のパラディア王国領だそうだ。因みにこの国は、ローランド王国というらしい。
フローラにこの国の名前を聞いたら「え?」って顔をされた。まぁ、教えてくれる人がいなかったのもあるから仕方ない。そもそも、いろいろなこと知らないのだからいちいち驚かなくてもいいのに……。
まぁ、そんな話は、置いといてこの街からその川までは、馬車で2週間以上かかるらしい。そんなにも遠いのかと思って聞いたら山が険しく道がくねくねしているらしくどうしても時間がかかるとのこと。一応、隣国の関係を聞いてみたがさすがにフローラでも分からないらしい。というか10歳ぐらいの子に聞く内容じゃないか……。
それから西門の方は、前みた通り、辺りに平原が広がっていてその周囲はほとんど森で囲まれているという感じだ。その道を南西方面に進んで行くと隣町のバーグという街に着くらしい。道中で山を越えるが最短馬車で3日、遅くても5日で隣町に着くそうだ。そしてそのバーグからさらに南下して行くと王都アネシスに着くらしい。バーグから王都までは、馬車で1週間前後かかるらしい。他にもいろいろな街を教えてもらった。
とりあえず王都までどれ位かは、大体分かったけどどうして馬車換算しているのかと聞いたら、歩いて行く人は、あまりいないらしい。いたとしても基本的には、冒険者の人くらいだそうだ。なんでも、道中に魔物に遭遇するかもしれないから基本的には、乗合馬車に乗って行くことが一般的らしい。護衛も雇っているからその方が安全らしい。
こんな感じにいろいろ教えてくれた。それ以外のことは、追々話そう。
そうしてフローラにいろいろなことを教えてもらっていると夕方頃になっていた。
「……大まかに話すとこんな感じかな?」
フローラにいろいろ教えてもらえてよかったがこうやって人の話を聞いたりするのは、案外疲れるなぁ。と思った。こんなに長いこと人の話を聞いていることがなかったからこんなにも疲れるのかな? まぁ、そんなことは、いっか……。
「ありがとう、フローラ。いろいろ教えてくれて」
「いいよ。その、私に分かることなら教えてあげるから」
と頬を赤く染めながらそんなことを言ってきた。
「(可愛いなぁ)」
「?」
そんなことを思っているとフローラが私をみて首を傾げていた。もしかして今思ったこと口に出していたのかな?
「じゃあ、何か教えてほしいことができたらまた来るよ」
「う、うん。その、遊びに来てもいいからね?」
とこちらの様子を窺いながら言ってきた。その様子をみて少し微笑ましく思った。同時にこれがもしかして友達始まりなのかな? どのように付き合って行くのかは、分からないけど彼女となら上手く行けるかも、とそんなことを思った。
「ふふ、分かったわ。また来るね?」
そう言うとフローラは、嬉しそうに頷いた。
「うん!」
そうしてフローラと別れてからローナさんにも声を掛けて行こうかなと思ったけどお客さんが来て忙しそうだったのでそっと帰ることにした。
その帰り道は、これからフローラとどう仲良くして行こうかと考えていたが過去に友達と思われる関係を作ったときもこれと言って何かした記憶が無かった。どちらかって言うと遊びに誘われて一緒に遊んでいた関係だったから自分からどう付き合っていけばいいのかが分からなかった。でも、彼女の様子を見て思ったけど多分そういうことを心配しなくてもいいような気がした。何となく思ったことだけど自分と同じようなことを考えている気がしたから……。
そんなことを考えたりしながら宿へと戻った。




