205.ユアが去った後の孤児院
それからリリとララが泣き止むのを待ってからユアに彼女達とはどういう関係なのか聞いた。ユアの話では孤児院で一緒に過ごしていた女の子達だそうだ。確か4歳とか言っていた。それならユア達が彼女達を心配して慌てた理由も頷ける。とそんなことを思っているとあることを思い出した。
確かシャフナー達の話しでは、孤児院には3人しかいないとか言っていたはず……。おそらくルミア以外に囚われたのがこの子達だったのだと思う。でも、ユアの話では孤児院には6人いたはず。だから3人しかいなかったというのはおかしいと思ってルミアに聞いてみようと思った。
「ルミア、そう言えばさっきの男が孤児院には3人しかいなかったと聞いたけど、他の3人の子達はどうしたの?」
そう言うとルミアの表情が一瞬だけ引き攣ったけど何があったのか話し始めた。
「……3歳の男の子達は院長先生が『引き取り手が決まった』と言って3歳の男の子達は引き取られたの。それでもう1人の男の子はその……」
とルミアは言い淀んでいた。2人の男の子は引き取られたことは分かったけどもう1人男の子に何かあったのかな……。そう思い恐る恐る聞いてみた。
「何か、あったの?」
するとルミアが気まずそうにしていたけど、ユアもルミアのことをみていることに気付いてゆっくりと話し始めた。
「……私がその男の子に凄く怒っちゃって……。それでその男の子が孤児院を出て行ったきり帰って来ていないの……」
ルミアが怒ったの? とそんなことを思ったけど、ユアが追い出された話を思い出してもしかしてその男の子はユアを追い出す原因となった男の子なのでは? と思った。それならルミアが怒ったのも仕方ないかも、と思った。ルミアはユアのことを大切に想っているみたいだから……。
「その男の子ってもしかして、ユアが孤児院を出て行った原因となった男の子のこと?」
「そ、それは、そうだけど……。それ以外にもいろいろあって……」
ルミアは少し曖昧にそんなことを言って俯いていた。ユアを追い出す原因になっただけ、じゃなくて他にも要因があったの? そんなことを思っていると、ユアはその話を聞いて少し驚いた表情をしながらルミアの方を見ていた。
「ねぇ、ルミア、何があったのか教えてほしいの」
ユアがルミアに向かってそう言うと気まずそうにしながら少しずつどんなことがあったのかを話し始めた。
「その、最初は些細なことで直ぐには分からなかったけど、孤児院のお金がたまに足りないことがあって……。それが少しずつ大きな金額になっておかしいな? と思うようになって場所を変えたりしたの。でも、誰が何のためにそんなことをしたのかは分からなくて……。
それが、その……、ユアお姉ちゃんが出て行った後、落ち込みながら孤児院に戻ったらその男の子が『今、孤児院を出て行った女が孤児院のお金を盗もうとしていて追い出したよ。僕えらいでしょ!?』って言ったの。ユアお姉ちゃんはそんなことしないからおかしいと思ったの。そのときに気付いたけど、どうしてお金を盗んでいることに気付いたの? と思い『どこで盗んでいたの?』と聞いたの。そしたら『台所の下の棚を弄っていたから』と答えたのを聞いたとき、今までお金が減っていた原因はこの子だと思って怒ったの……。
それから何と言って怒ったのかは覚えていないけど、男の子がお金を盗っていたことを認めて、怒っていたら男の子が何か叫び返してきたと思ったらどこかに走って行って……。それっきり孤児院には帰って来ていないの……」




