196.地下の先には……
そうしてシャフナーが地下へと入っていた場所へと着いた。
「この中にルミアを攫ったと思われる人が中に入ったから多分この中にいると思う」
「そうなの……」
ユアは緊張しながら地下へと続く階段を見ていた。
「この中に入ろうと思うけどユアもそれでいい?」
「うん」
「この中にはどれだけ敵がいるのかわからないからそのことを意識して中に入るわよ?」
「分かった」
そうして私達は地下へと続く階段を下りて行くとその先には扉があった。
「開けるわよ?」
「うん」
ユアが頷いたのを確認すると私はそっと扉を開けた。そして扉を開けた先の部屋にあったのはたくさんの食料が置かれた場所だった。
「……食糧庫?」
「多分?」
でも、この場所にシャフナーが入っていたのよね? それも『気晴らしに……』とか言っていたよね? そんなことを思いながら何か手掛かりを探そうと思って魔法で部屋を照らすと急に部屋が明るくなって隣にいたユアが少し驚いていた。
「(お!?)」
「……とりあえず何か手掛かりがないか調べてみようか?」
そう言って私達は分かれて手がかりがないかを調べ始めた。
それからいろいろな場所を確認したり仕掛けが無いのかを確認したりして探していると物を退かしたときに床の一部が木でできている場所を発見した。これはいかにも怪しいかも……。とりあえずユアを呼んで一緒に確認した方がいいかもしれない。そう思いユアを呼んだ。
「ユア、ちょっと来て」
そう言うとユアが私の方にやや急いでやって来た。
「どうしたの?」
「これ見て」
そう言うとユアは私が指を指した方を見た。
「……一部は木でできているけどどうしたの?」
とユアは首を傾げながらそんなことを言ってきた。
(あれ? 思っていた反応と違うけど……)
とそんなことを思いながらユアに何を言いたいのかを教える。
「……多分だけど、この下に何かあると思うから開けるわよ?」
「う、うん」
それから指が入りそうな場所を探してその木を持ち上げた。するとそこには地下へと続く階段が出てきた。ユアは私の隣から何があるのかを覗いて来た。
「木の板の下がこんな仕掛けになっているなんて……」
ユアはそう言いながら驚いているみたいだ。でも、驚きは最初だけのようでちらっとユアの横顔を伺うと何やら緊張したような面持ちをしていた。まぁ、私がユアにルミアがいるかもしれないと言って連れてきた場所だからかもしれないけど。
「それじゃあ先へ進むわよ?」
そう言って階段を下り始めるとユアが慌てて後を追いかけて来た。
それからしばらくの間、階段を下りて行くと僅かだけど人の声のようなものが聞こえた。
「ユア、僅かだけどこの先から少し声が聞こえる」
「本当に?」
ユアは若干声を震わせながらそう聞いて来た。もしかして少し緊張しているのかな?
「うん、だから急に何かあるかもしれないけど何があっても冷静に対処するように心掛けてね?」
「わかった」
ユアは強張った声で返事をしてきた。ちょっと緊張のし過ぎでは? そう思いながらユアの手を握った。
「!?」
「ユア、緊張し過ぎだよ? それじゃあ、視野が狭くなるし、急に何か起こった場合、動けなくなるかもしれない。難しいかもしれないけどできるだけ力を抜いて?」
「わ、わかった」
ユアがそう言ったのでこの先にあるだろう扉の前で一度確認しようとか思いながら握っていたユアの手を放そうとしたらユアがしっかりと握って来た。
「あ……。し、しばらくこのままじゃあ、駄目、かな?」
「……わかった。でも、何かあった場合は振り払っちゃうかもしれないけどそれだけは理解していてね?」
「うん」
そうして私達はそのまま階段を下り切った先に扉が現れた。そして奥から人の声が聞こえる。何を言っているのかは分からないけど、確実に誰かいるのは間違いない。
私達は、顔を見合わせるとゆっくりと扉を開いた。
 




