194.目が覚めたユア
……とりあえず男のことは終わったからユアを起すのか連れ出さないと。
そんなことを思いながらユアに近づくと呻き声を上げながら目を覚ました。
「っう、ぅん」
「ユア、大丈夫?」
「……レーナちゃん?」
「そうだよ。一応怪我の治療をしたけど他に痛いところとかない?」
「ん? ……院長先生!!?」
私がそう問いかけるとユアは意識を失う前のことを思い出したようで、急いで周りを見渡し始めた。
(院長先生? もしかしてあの男性が……)
そう思ってユアを見ると胴体が別れた男性を見て固まっていた。
「いん、ちょう、せんせい?」
ユアはそう言いながらゆっくりと立ち上がりその男性の元へ歩いていく。近くまで歩いた後は崩れるようにその場で座り込む。そしてゆっくりと手を伸ばし男性に触れた。
「!? いんちょう、せん、せい……」
ユアはそう言いながらその男性の胸元で泣き崩れていた。
私は、そんなユアをみながら、もう少し早く、この部屋まで来ていればその男性を救えたかもしれないのに……。そんなことを思いながらユアを後ろから軽く抱き締めた。
「私が来るのが遅かったから……。ごめんね、ユア」
そう言うとユアはゆっくりと体を起こし言葉を詰まらせながらも一生懸命話してくれた。
「そ、そんな、こと、ないよ。レーナ、ちゃん、は、助け、に、来て、くれた、から……」
「……そう思ってくれるのなら私としても嬉しい」
そう言ってユアを抱き締めながら落ち着くのを待っていた。
それからしばらくするとユアが泣き止み、呼吸が落ち着いた頃に孤児院で何があったのかを聞いてみた。
「そう言えばユアは孤児院に行っていたはずだけどどうしてこんなことになったの?」
「!? ルミアが!!」
ユアは急いで立ち上がろうとしたので引き留める。
「落ち着きなさい。ユアは、ルミアがどこにいるのか知っているの?」
私がそう言うとユアはルミアのことを何も知らないことに気付いたようで、私からの視線に逃れるように逸らしていた。
「……レーナちゃんは何か知っているの?」
「怪しそうな場所くらいなら目星が付いているけど、そこに居るかは分からないかな?」
「どこなの!?」
ユアは慌てた様子で聞いて来た。その様子をみて気持ちは分からなくはないけどこんな状態で行ったらユアが危ないのでは……。と心配になったのでとりあえず落ち着かせようと思った。
「とりあえず落ち着きなさい」
「でも!?」
「無策で行ったらどうなるかくらいは分かるでしょ」
そうユアに少し強めに言うと私が言っていることを理解したようで、ユアは少し気まずそうにしながら、胸元に手を当てて少し深呼吸をしていた。
「……ごめんなさい」
そして私の方を見てくるとユアは先ほどのことを謝って来た。




