187.ユアの容態
投げた小太刀はややずれた場所に飛んでいった。
(やっぱり狙って投げるのは難しいか……)
とそのことを悔しく思いながら他に何かできないかと考えていたがいい案が思い浮かばずにいた。このままじゃあ、ユアが……。とそんなことを思っていたら男の人の悲鳴が聞こえた。
何が? とそう思って男の人の方を見ると私が投げた小太刀が腕に刺さっていた。そして振り下ろされていた剣は振り下ろしている途中で手から離れて胸辺りからずれた場所に振り下ろされた。そのことに少し安心したが右の脇腹が切られて血を流していた。
早く治療をしないと! そう思ったけどユアの近くにはあの男が居る。早くどうにかしないとユアが危険だと思い、攻撃をできないように左腕に向かって刀を振るうと左肩からその先を切り飛ばした。そして左膝裏を切り付けて横っ腹を思いっきり蹴り飛ばすと男は部屋の壁まで飛んでいった。私はそんな男のことは置いておいて急いでユアの元へ駆け寄った。
そうしてユアに声を掛けながら近づいたが反応が無い。どうやら気を失っているようでぐったりとしていた。とにかく先程切り付けられた傷口を確認する。
「!?」
確認してみると思っていた以上に傷が深く驚いて、急いでポーションを使って治療をした。そんな深い傷なのに私が作ったBランクポーションを掛けるだけで血が止まり少しずつ皮膚が再生していく。その様子を見たりしながら私が来る前や入った直後の怪我の具合は大丈夫なのか確認した。
「……他の場所の怪我は大丈夫かな? でも、かなりの血を流したからその影響があるかも……」
そんなことを思いながらユアが着ている服を捲ったりしながら血を拭って傷口が塞がっていることを確認していく。そしてそれらの作業が終わり一息つく。
「とりあえずこれでいい、かな?」
そう呟きながらこれでユアの治療がひとまず終わった。後はユアが目覚めるのを待ってからいろいろ聞かないと……。そんなことを思っているとふと、ユアの近くで倒れている男性が視界に入った。
「……そういえばユアは近くにいた男性を見ながら泣いていたよね?」
そんなことを思い出してユアの近くに倒れている男性の様子を確認した。まぁ、扉を開いたときには胴体が切り離されていたから、こと切れていることが分かっていたけど、あの時のユアの様子を見る限り知っている人だったんだろうな……。そんなことを思いながらどんな人なのか見たけど、50歳前後の男の人だった。妙に痩せ細っている上に手を触るとゴツゴツしていていた。何か重労働でもしていたのかな? そんなことを思わせる手をしているなぁ。と思ったときに気付いたのだがその手はまだほんのり温かかった。もしかしてこの男性はユアの目の前で殺されたのでは……。とそんなことを思い至った。
「ユア大丈夫かな……」
私の予想通りだとしたらユアが目を覚ました後、そのことを理解して気丈でいられるのかとても心配だった。変に塞ぎこまないといいけど……。そんなことを思いながらユアのことを見ていた。




