177.説得
それから宿に戻り、ラナさんに5日延期のお願いをしてから食事とお風呂を済ませて部屋に戻った。そしてベッドに座ると隣にユアが座る。
ユアにシュシュをあげてから私が何も言わなくても隣に座るようになった。最初の頃はおどおどしていたけど少しずつ改善してくれたことは私としては嬉しい。遠慮がなくなってきたことによってちゃんと仲良くなれているのかも? と思うから……。
そんなことを思いながら私はルミアとの約束を守るために話を切り出すことにした。
「ユア、少し話があるけどいいかな?」
「う、うん。いいよ」
ユアは私の方に向き直りながら少し緊張した面持ちで返事を返してきた。
「ユアはここに来てから大分落ち着いて来たよね?」
「それは、レーナちゃんのお陰で……」
ユアはそう言うと手首に付けていたシュシュに視線を落としてから手で触れ、嬉しそうにしていた。
そんなユアの様子をみて、私はユアの暗い感情を今までどれくらい和らげることが出きたのかな……。とか、ユアが孤児院での出来事を告白から10日ほど経ったけどどれだけの気持ちを整理が出来たのかな……。と思っていた。
ルミアはユアと仲直りをしたいみたいだし、ユアはルミアのことを気にしていたので私的には以前のような関係に戻って欲しいと思う。そうすればユアの気持ちもそれなりにはれてルミアとのしこりも無くなると思うから。
「……でも、そろそろ孤児院のことにも向き直って欲しいの」
「……」
「ユアはルミアのことを気にしているでしょ?」
「そ、それは……」
ユアはそう言いながらしどろもどろになって黙り込んでいた。その様子をみてやっぱり気にしているんだ。と思った。それならまだ可能性があるかも? と思いながら説得をし始める。
「孤児院の子達全員とは言わないけどユアが頼りにしていたルミアと言う子には、早めに話をした方がいいんじゃない?」
「で、でも、もし拒絶されたら……」
と実際にそのことを考えたのか目に涙を浮かべていた。やっぱりユアにとってはルミアのことが特別なのかもしれない。ユアが孤児院のことを話していたときにも似たようなことを言っていたからもしかして……。と思っただけど、孤児院の中ではルミアのことを心の拠り所にしていたのかもしれない。
「……恐らくだけどユアはルミアのことが気がかりなんでしょ?」
私がそう言うとユアがビクッとしてから頷いた。
「ユアはこのままルミアと話せなくても何とも思わないの?」
「そ、そんなことはない!」
とユアの力強い声が部屋に響いた。
「あ、きゅ、急に叫んでごめんなさい」
ユアは俯きながら謝ってきた。
「気にしなくてもいいよ。その代わりにユアはルミアのことを大切に想っていることが分かったから」




