173.準備
「……とりあえずユアが言った遊びは場所とかの問題で無理そうかも?」
「確かにそうかも……」
「そ、それなら一緒に裁縫とか刺繍をやってみないかな?」
その話を聞いて裁縫はしたことあるけど刺繍はしたことないから少しだけ興味がある。でも、それらをやるにしても道具が無いことに気付いた。ちょっとしたことなら少し道具があるからできるけど……。
「でも、道具とかは……」
「それならお母さんに言って借りてくる」
ローナさんが道具を貸してくれるならそれでもいいかな? と思ってユアを見ると私が何を言いたいのか気付いたようで頷いた。
「……それじゃあフローラ、お願いしてもいいかな?」
「うん! ちょっと待っていてね? 聞いて来るから」
そう言ってフローラは部屋を出て行った。そして残った私達はというと。
「レーナちゃんって裁縫とかできる?」
「少しなら……。ユアは?」
「私も少しなら。でもほとんどは服の修繕が多かったから……」
ユアはそう言いながら苦笑いを浮かべた。
「それは私も同じだよ」
と言いながら私も少し苦笑いをした。
それからしばらくするとフローラが戻って来た。
「お母さんから道具を借りて来たよ」
そう言ってフローラは持ってきた道具を私とユアの前に置いた。それは大き目な箱に入ったものだった。もしかして裁縫道具セットを借りてきたのかな? そんなことを思いながらフローラに聞いてみた。
「この大きな箱は何?」
「これは裁縫道具セットだよ。必要なものは一通り入っているから足りないものはないはずだよ?」
「そ、そんなにもいいものを借りて来たの……」
フローラの話を聞いていたユアはフローラが高価そうなものを持って来て少し顔を引き攣らせていた。私もこんなにもいいものを持って来るとは思っていなくてびっくりしたけど本当に使っても大丈夫なのか不安になる。
「ローナさんは本当にこれを貸してくれたの?」
「うん。ちゃんとお母さんに言って貸してもらったよ?」
フローラはそう言いながら私達の様子を見て首を傾げていた。多分だけどそれなりに高価なものを持ってきた自覚が無いのかもしれない。まぁ、そんなことを言ったら私が持っている武器はどうなんだ。と聞かれるかもしれないけど……。
「そ、そうなんだ……」
ユアはというとフローラの反応を見て諦めたような表情をしていた。まぁ、これを貸してくれると言ったそうだし使うしかないけど。
「フローラ、道具を借りて来たのはいいけど何を作るの?」
「それは、……えっと。……何を作りたいかな?」
「その前に布とかはどうすればいいの? ローナさんに言って布を買えばいいの?」
「え? ……あ。ど、どうしよう……。とりあえず一回お母さんに聞いて来るから待っていて」
そう言うとフローラはローナさんに聞きに行くために部屋を出て行った。




