168.ルミアの想い
「……私が悪いんです。……小さい時に、ユアお姉ちゃんが治療院に連れて行かれた時からずっと腕を隠していたのに……。それなのにお姉ちゃんの腕の酷い火傷をみて一瞬、気持ち悪い、と思ったんです。でも、それじゃあ、いけない。ユアお姉ちゃんは頑張っているからと思ったけど、近づいて来たユアお姉ちゃんの腕が怖くて拒絶しちゃって……」
なるほど。頭ではユアのことを考えていたけどあの酷い火傷を見て怯えていたのか……。確かルミアはまだ7歳ということもあってユアの酷い火傷の痕を怖いと思っても仕方ないと思う。
仮にだけど、私がルミアと同じ7歳のとき(前世の時と仮定して)同じような状況になったとしても気持ち悪がらないか、と聞かれると私は無理だと思うし……。
「それは、仕方ないと思うよ?」
私がそう言うとルミアは泣いていた顔を上げて不思議そうにこちらを見て来た。
「どうしてですか?」
「普通の子はあんなに酷い火傷を見たらそう思うのが普通だと思うから……。普通に生活していたらそんな酷い怪我をする機会なんて普通はないでしょ?」
「そ、そうかもしれないけど……。でも、ユアお姉ちゃんは冒険者として仕事をしているからそんな危険にあってもおかしくないはず」
「確かにルミアの言う通り冒険者は危険な仕事かもしれないけど、あんな火傷をすることなんて滅多にないはずだからね? どちらかというと切り傷とか噛まれた痕と言った感じだから」
「そうなの?」
「うん。だからルミアがユアに思っている気持ちも分からなくはない。でも、ルミアが思っているほど無理をする必要はないよ?」
そう言うとルミアは困惑したような表情をしていた。ユアの腕を見ても怖がらないようにしないと、とかちゃんと仲直りしないと、と思っていたと思うから困惑しても仕方ないと思う。でも、ユアは怖がらないでいて欲しいとかそんなことは想っていないと思う。
「多分だけどユアは火傷の痕を見ても大丈夫とかそんなことまでは求めていないと思う」
「え?」
「恐らくだけど今まで通りユアと接してくれればいいと思うの。まぁ、火傷の痕のことは見なければ大丈夫くらいにはなって欲しいけど……」
「そ、そんなことでいいの? 私、ユアお姉ちゃんに酷いことをしたと思うけど」
「あくまでも私の予想よ? でも、まぁ、それで大丈夫だと思う。ユアはルミアのことをとても大切に想っていたから……」
「そ、それは、本当に?」
ルミアはその話を聞いて少し嬉しそうにしながらも心配そうに確認をしてきたので頷いた。すると少しだけホッとしたのか肩の力が抜けたような気もする。
「他の子達はどう思っていましたか?」
「それは、心配していたよ? でも、冒険者になってから来た子ばっかりとか言ってあまり構っていないからあまりよく思われていないかもしれないとか言っていたけど……」
「そ、そんなことは……」
ルミアは私の言ったことを否定しようとしたけど思い当たる節があるようで口を噤んでいた。ルミアのことを思うと否定したい気持ちはあるのかもしれないけど、ユアのことを追い出そうとした男の子の話をルミアも知っているのか否定できなかったのかもしれない。




