134.ユアの異変
ギルドを後にして宿に帰るために歩いていたのだがユアが私に何か話そうとしては諦めるといったことを何回も繰り返していた。
(何か話したいことでもあるのかな?)
とそんなことを思いながら歩いてるとユアと別れる場所まできていた。そこで立ち止まりユアをみると一瞬目があったがすぐに視線を外された。本当にどうしたのかな? とそんなことを思っていると右手を胸に当てその上に左手を添えてゆっくりと深呼吸をしていた。もしかしてさっきから何か話そうとしていたことをこれから話すのかな? と思いユアが話し出すのを待っているとユアが私の方を見た。
「あ、あの……。私も、レーナちゃんと、同じ宿に、泊まっても、い、いかな?」
と緊張しながらそんなことを聞いて来た。そこまで緊張するような話ではないと思うけど……。
「別に構わないけど変に緊張し過ぎじゃない?」
「そ、そうかな?」
「うん。それはいいけど孤児院の方は大丈夫なの?」
そう聞くとユアが気まずそうに視線を逸らしていた。
(もしかして孤児院で何かあったのかな? でもオノマ達もいないはずだから問題なんて起きなさそうだけど……)
「何かあったの?」
とユアにそう聞くとしばらく視線を彷徨わせていたけど頷いた。なので何があったのか聞こうかと思ったけどユアがとても暗い表情をしていたため聞くのを躊躇った。もしかしたら思った以上に不味いことになっているのかも……。と思い訊ねることをやめることにした。
「……そう」
と言うと私達の周囲に重い空気が漂った。この空気をどうしよう……。と思ったけど私に何ができるのかが分からず悩んでいた。でもこのままここで突っ立っているのも……。と思い宿まで移動しようと思いユアに手を差し出した。するとユアがその手を見て少し困惑したような表情で私を見て来た。
「……とりあえず一緒に宿まで行こう?」
するとユアは私が差し出した手の意味を理解したようで少し笑みを浮かべながら私の手を握ったので宿屋へ向けて歩き出した。
宿に着いて中に入ると受付の所に座って居たラナさんが私達に気が付いて声を掛けて来た。
「あら? レーナちゃんとレーナちゃんに背負われていた女の子だよね? どうしたの?」
「と、泊まりにきました」
「そうなの? レーナちゃんと同じ部屋に泊まるの?」
とレナさんに聞かれたユアは頷いていた。
「レーナちゃんは1人部屋を借りているけど2人部屋に移動する?」
「う~ん、1人部屋と2人部屋の違いって何ですか?」
「広さが1.5倍くらいになってベッドが2つ置いてあることかな? 因みに宿泊費は基本一律になっているから変わらないわよ?」
そう言うことなら今の部屋のままでもいいかな? ユアが寝るだけだしベッドもそこそこ広いし。あ、でも毛布くらいは貰っておこうかな?
「それじゃあ今の部屋のままでお願いします。後毛布が1枚欲しいです」
「分かったわ。それで彼女は何泊するの?」
「えっと……」
と言ってユアが私を見てきた。もしかしていつまで一緒に泊まっていいのか知りたいのかな?
「好きなだけいいよ」
「……1泊のお値段は?」
「お風呂を利用するなら銀貨2枚です」
「ぎ、銀貨2枚……」
とユアは値段の高さに少し頬が引き攣っているように見えた。




