132.後処理
「ユア! 大丈夫!?」
「うっ」
私は駆け寄りながらそう声を掛けるとユアからくぐもった返事が返って来た。とりあえず意識はあることに安心しながらウルフが死んでいることを確認してマジックボックスに収納すると血だらけのユアが出てきた。
一瞬驚いたけどすぐにウルフの返り血だと思った。
「痛いところある?」
「た、多分大丈夫……」
そう言いながらユアはゆっくりと体を起こした。とりあえず顔に付いた返り血は拭いてあげようと布の切れ端を出して水を含ませる。
「とりあえず顔に付いた返り血を拭くから動かないでね?」
「え?」
とユアが呆けている様子に構わず顔に付いた血を拭っていく。拭いているときユアが少し唸ったりもしながらも顔を綺麗に拭いていく。
「……よしこれで大丈夫」
と言ってユアの顔が綺麗になったことに満足しているとユアがお礼を言ってきた。
「あ、ありがとう」
「いいよ。これくらい。……それより武器の調子はどうだった?」
「……レーナちゃんから借りていた短剣ぐらいには調子がよかったかも?」
「それなら問題なかったのかな?」
「うん。……それよりも魔物を狩ると言ったけどウルフと戦うなんて思ってもなかったよ!」
とユアは少し不満そうに言って来た。
「そ、それは出てきた魔物を倒すということしか言ってなかったから……」
「そ、それは……」
とユアも私が何を倒すとしか言っていなかったことに気付いて何とも言えないような表情をしていた。
「でも、ウルフと1人で戦ったことが無かったからちゃんと戦えるのか凄く不安だったから……」
「そうなの?」
ユアが初めてウルフと戦ったと聞いて驚きながらユアに確認すると頷いていた。
(1人でウルフと戦うのはあれが初めてだったの……。それなら少し悪いことしたかも……)
とユアにウルフを回したことを少しだけ反省しながらもユアがウルフと戦っていたのを見た感じあまり問題があるようには見えなかったような? とそんなことを思っていた。
まぁ、ユアは思っていた以上に気を引き締めて戦いに望んでいたからそこまで問題があるようには見えなかったのかもしれない。
「……でもユアは上手く戦えていたと思うよ?」
「……本当に?」
「うん。最後の攻撃の後は避けようと思えば避けられたような気がするけどそれ以外は良い感じに戦えていたと思うよ?」
とユアに言うと少し顔を赤くしながらも少しだけ嬉しそうにしていた。
「でも、駄目な部分が多いよね?」
「そこまでって程じゃないけど最後の攻撃の後しっかりと避ければ問題ないと思うよ? あれじゃあ他にも魔物がいたら不味いことになっていたかもしれないし……」
というとユアは気まずそうに顔を逸らした。
「私が居たからいいかもしれないけどもし1人の時も考えてね?」
「……はい」
「まぁ、失敗は付きものかもしれないけど私が居るときは付き合ってあげるから」
「本当!?」
「う、うん……」
私が付き合ってあげると言ったらかなり食い気味に聞かれて頬が少し引き攣りそうになるのを堪えながら頷くとユアは凄く嬉しそうな顔をしていた。
もしかして誰かと訓練をしたことが無いのかな? とそんなことを思いながら嬉しそうにしているならいいかと思った。




